初めまして。当サイトでは初投稿となります、隅倉と申します。不動産・一級建築士事務所にて不動産部の責任者として勤務しております。主な業務は賃貸仲介、管理業務です。日常の実務を通して、私の知見を読者のみなさんにわかりやすくお伝えしていきます。

今回は、入居者様から寄せられる苦情やお申し出の中から代表的なものをご紹介します。オーナー様ご自身で物件管理をされている方は、参考にしていただければと思います。

賃貸物件では、大きな括りで3つ、「騒音」「ゴミ出し」「設備不良」といった類の問題が存在します。これらの具体的な内容や、その対処方法に関してご説明していきます。

騒音問題

これは、いきなりですが一番悩ましい問題です。ここでは給水ポンプや換気扇などの設備系の音に関しては省略して、隣戸や共用部間での人対人での問題に焦点をあてます。

騒音は、人によって音の聞こえ方に大小がありますし、建物の構造上の問題もあります。音を出してる方を注意しても改善しなければ、基本的には退去勧告、連帯保証人に連絡などをしますが、それでもダメなら強制退去もしくは放置して様子を見るしかありません。

具体的な対応順です。まず、入居者様からの声をもとに、事実確認をするのが第一です。その場で「どうにかする」などとは言ってはいけません。

どんな音か、どのくらいの大きさか、何時頃に、どのくらいの時間続くのか、をお聞きした上で、追ってご連絡差し上げる旨を伝えます。事実確認は、共同住宅では上下左右にお住いの方々にお尋ねをします。

ここでの注意点は、音を出してる部屋と申し出た部屋がどこかを特定できない範囲で話す事です。

そして、音の種類や時間帯が判明したら、全戸に分かるようにアナウンスします。「今月○○日頃から、夜中過ぎに子供がボール遊びしている様な音がして眠れないとのご相談がありました。

床にカーペットを敷いたり、遊び道具を変えてみる等、他の入居者様方に配慮して頂けますようお願い致します。」などの張り紙やチラシを配って、まずは様子を見ます。

音の原因がどこからか判明していても、直接訪問や注意は最終手段と心がけます。張り紙の文言や内容を少しずつ具体的な内容に近づけていくのですが、大抵はこの辺で原因の方から電話があったり音がやんだりして解決していきます。

ここから先は、原因の部屋の賃貸借契約書に記載の条項を確認して、共同住宅においての義務や責任などを、直接問うていく事になります。書面がより有効でしょう。

ここまでやって改善がみられなければ、いよいよ退去を促すか長期戦を覚悟するか、判断しなければなりません。長期戦といっても、音の原因となっている行動を止めて頂くお願い程度しかできませんが…。

他の問題とも共通しますが、隣戸の生活に支障が出ているのであれば、退去勧告もやむなしと考え、早めの決断をおすすめします。

しかしあくまで、柔らかい文調から段階を追って、神経を逆なでするような文面は避けます。最終的には、期日を決めて改善しなければ、「賃貸借契約書第○条に則り、○月○日に本契約を解除します」といった形で退去勧告を行います。

ゴミ出し問題

地域によって様々なルールのあるゴミ出しですが、まず前提として、ゴミ袋を開封して個人情報を探るのは、賃貸借契約書で貸主側の権利として謳っておくことをおすすめします。その上で、くれぐれも取扱いには注意が必要です。

色々な問題が考えられますが、まずは「ゴミを出す側に問題がある場合」です。
①種類分けされていない(燃えるごみとビン・カンが混在している等)
②決まった日時に出されていない
③集積場に出すべきでない地域の方が出している

それでは順番に見ていきましょう。

①種類分けされていない(燃えるごみとビン・カンが混在している等)

まずは自治体(町内会)が配布しているゴミ出しの案内チラシなどを配布もしくは掲示し、改善を求めます。

もちろん入居時にも確認しますが、ルール違反があった時に、すぐに行うことに意味があります。入居があったばかりのアパート等の集積場ですと、誰がやったか一目瞭然です。

②決まった日時に出されていない

こちらも①と同じ対応になります。

③集積場に出すべきでない地域の方が出している

まず第一に警察に被害届を出します。違法投棄に当たりますので、オーナーや管理会社が代わりに処分したゴミの処理費を請求するところまで見越して行動します。

賃貸物件の入居者や近隣住民にも情報提供を募り、場合によっては監視カメラ(ダミーも可)や違法行為である事の大きな注意書き看板、カギ付ゴミBOX等の設置も検討します。

次に、「集積場に問題がある場合」です。これは、集積場が賃貸物件の敷地内か否か(自治体の管理下であるかどうか)、ここで少し対応が変わります。

両方とも自治体と相談の上で管理しますが、敷地内の集積所の場合、BOXの増設などの費用はオーナー負担がほとんどです。

様々な問題が考えられますが、猫やカラス対策の網をかぶせる、敷地内から敷地外へ集積場の移設等…自治体とも話しながら対応していけば、選択肢も広がるでしょう。

敷地外で、自治体が管理している集積場である場合、まずは自治会へそのままの内容を相談します。たいていは何かしら行動してくれますが、改善するにあたって費用がかかりすぎるような問題の場合、対応を断られるケースもあります。

現状の集積場が利用に適さない程であれば、市区町村の管理課にも相談してみましょう。

設備不良問題

設備不良に関しての対応方法は、シンプルに二択です。不具合がでた時、オーナーが行くか専門業者に依頼して訪問してもらうかです。(※管理業務を業者に委託している場合には、管理会社が対応します)

ここでは、設備に不具合が出た時の対応の注意点・重要点をいくつか挙げます。

①状況確認

入居者様からの設備不良の申し出は、電話の場合が多いでしょう。

その際に大切なのは、「どこ(場所)の、なに(機器の種類、できればメーカーや型番)が、どのように(水漏れなら勢いの度合い、異音なら金属音なのか摩擦音なのか等)悪いのか」「いつから(時期、周期)悪いのか」「緊急か否か(受付側で判断)」などです。

入居者様は、設備機器に詳しい方ばかりではないため、しっかりとした聞き込みが必要です。

そこで集めた情報を元に、いつ頃にどんなメンテナンス用品を用意して訪問するか、入居者様の連絡先を修理業者に教えていいか等を聞いておきます。これらを最初の電話応対で済ませると、たいてい1~2度の訪問で解決することができます。

②オーナー負担・入居者負担

設備に支障が出るときの原因は、主に2つです。経年劣化や通常損耗での故障(オーナー負担)、または、使用者の故意過失での故障(入居者負担)です。

訪問の際に、その場で原因と費用負担者をご説明することが大切です。ついでに水回りや吸排気設備などの手入れの仕方もアドバイスできると良いですね。

③修繕履歴

賃貸物件を取得した際から、残しておくことが大切なのが修繕履歴です。これは、物件を手放す際の評価額にも影響することがあります。

主な重要項目は、該当物件室名・連絡者・状況・修繕方法・使用品目・結果などです。備考枠などに、訪問時や電話応対時の細かい事柄を記載しておくことも重要です。

次の修繕にも役立ちますし、誰が見てもわかるようにしておくことで、オーナー以外も対応しやすくすることに意味があります。

総括

今回は入居者からのクレームについて代表的な事例をおおまかに説明していきました。

一つの問題を放置していれば、必ず周りに影響がでます。他の部屋も音漏れを気にせず過ごし始める、挨拶を無視される、隣戸間でいやがらせが始まる、駐車場にゴミが散乱している等…。

コミュニティというのは、少しの歪みから大きな悪循環が発生してしまいます。しかしどのような状況であっても、肝心なのは初回訪問の速さと丁寧な対応です。

入居者様からのお声は様々で、時にはうまく状況が把握できないこともあります。そこは経験でカバーしていくしかないでしょう。競合物件に負けない賃貸経営を目指すなら、良い状態の建物および生活環境を大切にしましょう。

【記事筆者】

隅倉 広樹
隅倉 広樹
建設会社グループの不動産・一級建築士事務所の不動産部責任者として勤務中。業務内容は賃貸物件の仲介・管理がメインで、売買や土地活用など多岐にわたる。グループ会社の建築・土木・舗装業のノウハウを生かし、社内カスタマーサービス部門にて2年連続満足度No1。
【保有資格】
宅地建物取引士、管理業務主任者、FP技能士2級、賃貸不動産経営管理士、少額短期保険募集人