不動産取得税は、忘れた頃にやって来る税金という言われ方をすることがあります。これは、不動産の購入をし、半年から1年程度経過した後に不動産取得税の納税通知が送られてくることが理由です。

不動産取得税は、不動産投資などをお考えの方やこれからマイホームを購入される方などにとっては無視できない税金ですから、

どのような計算で算出され、どこが課税しているのかという基本的な事項を押さえておくとともに、軽減となるケースについても知っておきましょう。

不動産取得税について

不動産取得税は、所得税や消費税などのように私たちの生活に馴染みの深い税金とは異なる税金です。不動産取得税とはどのような税金なのかについて解説します。

不動産取得税とは

不動産取得税とは、土地や家屋など不動産所有権の取得に対して課される税金のことで、課税はその不動産が所在する都道府県が行います。

固定資産税は、土地や家屋などの固定資産の所有に対して課税されるため、毎年税金を納税しなければいけませんが、不動産取得税は所有権の取得時の一回のみの課税となります。

この取得は相続による取得を除いて、売買による取得に限らず、交換、贈与、新築による取得も課税の対象となります。

不動産取得税を納める人

不動産取得税を納める義務を負う人は、不動産を取得した人です。不動産の所有権が移転することで発生する税金のため、例え所有期間が一日であったとしても納税義務を負うことになります。

不動産取得税の納税額

不動産取得税の納税額は、次の計算によって求められます。

不動産取得税額=課税標準額×税率

課税標準額は原則として不動産の価格のことであり、固定資産税評価額のことになります。軽減措置等が適用される場合には措置適用後の価額となりますが、詳細については後ほど解説します。

非課税になるケース

所有権の移転が相続による場合には、不動産取得税は非課税となります。これは相続による不動産の取得が形式的な所有権の移転であり、取得に該当するものではないという考え方によるためです。

しかし、相続を原因とする所有権の移転であっても、相続人以外に遺贈が行われた場合には、遺贈によって不動産を取得した方は不動産取得税を納税する義務を負うことになります。

以下も不動産取得税が非課税となるケースに該当します。

  • 法人の合併又は一定の分割によって不動産の取得が発生したケース
  • 学校法人、宗教法人などが本来の事業に用いるための不動産を取得したケース
  • 土地改良事業、土地区画整理事業の施行にともない換地を取得するケース
  • 公共の用に供する道路などの用地を取得するケース

免税になるケース

取得した不動産の価格が一定の金額未満であれば、不動産取得税が免税となります。

不動産の価格が土地の場合には10万円未満、新築・増改築の家屋の場合には23万円未満、その他の家屋で12万円未満の場合には課税されません。これらの金額のことを免税点と呼びます。

不動産取得税の納付方法

不動産を取得して半年から1年後に、都道府県から不動産取得税の納税通知が届きます。通知書に納付方法と納付期限が記載されていますので、これに従って納付を行うようにしましょう。

なお、不動産取得税は地方税のため、納付方法や納付期限などが都道府県によって異なります。

一般的には金融機関で納付の手続きを行いますが、一部コンビニエンスストアでの納付を認めている自治体もあるようです。

課税標準額と税率について

不動産取得税は、課税標準額と税率によって税額が決まります。

不動産取得税額の計算式とは

不動産取得税額は上記のように、「不動産取得税額=課税標準額×税率」で求められます。

課税標準額とは固定資産評価基準による評価額のことです。

新築の家屋などは固定資産評価基準によって評価した評価額、宅地は課税標準の軽減措置により固定資産税評価額に2分の1を乗じた金額、その他の不動産では固定資産税評価額が課税標準額となります。

税率は標準税率が4%と定められていますが、時期や不動産の用途などによって特例が適用され標準税率よりも低い税率が適用されることがあります。

取得時期別の課税標準額の計算法

不動産取得税の税額を決定する大きな要素の1つである課税標準額ですが、取得時期によって大きく変わることがあります。

宅地(1996年1月1日~2021年3月31日までの取得)の課税標準額とは?

1996年1月1日~2021年3月31日までの間に宅地を取得した場合、宅地の課税標準額は固定資産税評価額に2分の1を乗じた金額となります。

なお、住宅などが建っていない土地であっても、固定資産税評価に当たってその土地が宅地として評価が行われていれば、2分の1を乗じた金額を課税標準額とする特例を受けることができます。

宅地(2021年4月1日以降の取得)、または宅地以外の土地の課税標準額とは?

2021年4月1日以降に取得する宅地、または宅地以外の土地の場合の課税標準額は、課税標準額を固定資産税評価額の2分の1とする特例の適用がありませんので、

不動産取得税の税額計算では、固定資産税評価額が課税標準額となります。ただし、2021年度税制改正による変更がないことを前提としています。

新築家屋(固定資産課税台帳に登録される前)の課税標準額とは?

新築家屋を取得した場合に、その新築家屋が固定資産課税台帳に登録される前であれば、課税標準額は、総務大臣が定めている固定資産評価基準によって算出される家屋の評価額となります。

なお、固定資産税評価額も同じ基準によって算出された価額となるのですが、このケースでは新築の時点から賦課期日となる翌年の1月1日までの経過した期間に応じた減価が反映された価額となります。

新築家屋(固定資産課税台帳に登録された後)の課税標準額とは?

固定資産課税台帳に登録されている場合には、固定資産税評価額が不動産取得税における課税標準額となります。

中古家屋の課税標準額とは?

中古家屋の課税標準額は、固定資産課税台帳に登録されている固定資産税評価額となります。

増築または改築された家屋の課税標準額とは?

不動産取得税は新たに土地や建物を取得した場合だけでなく、既に所有している建物を増築または改築することによっても課税の対象となります。このような場合には、増築または改築による価値の増加分が課税標準額となります。

この増加分とは、増築または増築後の家屋について、固定資産評価基準で算出した評価額が従来の固定資産税評価額を上回った金額のことです。

取得時期別の不動産取得税の税率

不動産取得税算出のための適用税率は取得時期によって異なります。

2006年4月1日から2008年3月31日までに不動産を取得した場合の税率

  • 土地:3%
  • 家屋(住宅):3%
  • 家屋(非住宅):3.5%

2008年4月1日から2021年3月31日までに不動産を取得した場合の税率

  • 土地:3%
  • 家屋(住宅):3%
  • 家屋(非住宅):4%

2021年4月1日以降に不動産を取得した場合の税率

  • 土地:4%
  • 家屋(住宅):4%
  • 家屋(非住宅):4%

ただし、2021年度税制改正による変更がないことを前提としています。

住宅や土地に対する課税標準の特例

不動産取得税の課税標準額は、一定の要件を満たせば課税標準の特例によって軽減措置が適用となります。

新築住宅の課税標準の特例とは?

自己の居住用又は賃貸用の住宅の床面積が50㎡以上240㎡以下(マンションやアパートなどの場合には面積要件は40㎡以上240㎡以下)の新築住宅の場合には、課税標準の特例が適用され、

課税標準額から1,200万円の控除が認められます。また、2020年3月31日までに認定長期優良住宅を取得した場合には、課税標準額から1,300万円の控除が認められます。

なお、この特例は新築だけでなく要件を満たしていれば、増築又は改築した場合にも適用が認められます。

中古住宅の課税標準の特例とは?

下記の要件を満たす中古住宅を取得した場合には、課税標準の特例によって課税標準額が軽減されます。

  • 個人が自己の居住用に取得する住宅であること
  • 床面積が50㎡以上240㎡以下であること
  • 1982年1月1日以降の新築又は1981年12月31日以前の新築で新耐震基準に適合している証明を受けていること、もしくは2013年4月1日以降の取得で1981年12月31日以前の新築で既存住宅売買瑕疵保険に加入している住宅であること

課税標準額から控除できる金額は、取得した中古物件の新築された日によって控除額が変わります。東京都を例に挙げると次のとおりです。

住宅用土地の税額軽減の特例とは?

一定の要件を満たす住宅用の土地を取得した場合には、住宅用土地の税額軽減として一定金額の控除が受けられます。

ただし、住宅の場合と異なり、増築及び改築の場合は土地の税額軽減の特例の適用はないのでご留意ください。

新築住宅用の土地と住宅を同時に取得したケース

新築住宅用の土地と住宅を同時に取得するケースで税額軽減の特例を受けるためには、まず、住宅が課税標準の特例による軽減措置の適用要件を満たすものであることが必要です。

また、自己の居住用でなく、賃貸目的で取得した住宅の場合、新築後1年以内かつ未使用の住宅であることが必要です。

土地を先に取得し、その後住宅を新築するケース

土地を先に取得し、その後に住宅を新築するケースで税額軽減の特例を受けるためには、土地を取得した後の3年以内に住宅を新築していることが条件になります。

なお、新築住宅は課税標準の特例による軽減措置の適用要件を満たすものでなければいけません。

原則として土地の取得者が建物を新築することが必要ですが、親が土地を取得してその子どもが住宅を新築する場合にも適用となります。

住宅を先に新築し、後から敷地を取得するケース

住宅を先に新築し、その後から敷地を取得するケースで税額軽減の特例をうけるためには、住宅を新築してから1年以内にその敷地を取得することが必要になります。

このとき敷地を取得する者は住宅を新築した者と同一でなければなりません。なお、新築住宅は課税標準の特例による軽減措置の適用要件をみたすものでなければなりません。

中古住宅用の土地を取得したケース

中古住宅用の土地を取得したケースで、税額軽減の特例を受けるためには、中古住宅が課税標準の特例による軽減措置の適用要件を満たすものであること、住宅と土地の取得者が同一であることが必要です。

また、土地と中古住宅の取得時期については必ずしも同時である必要は無く、土地を取得した後の1年以内に土地上の中古住宅を取得した場合や、

中古住宅を取得した後の1年以内にその敷地である土地を取得した場合にも税額軽減の特例を受けることができます。

なお、新築後1年を超えて未使用となっている住宅用土地の取得のケースも中古住宅用の土地を取得したケースに含まれます。ただし、敷地上の住宅は1998年4月1日以後の新築住宅である必要があります。

軽減額について

住宅用土地の税額軽減の特例による軽減額は、次の2つの条件によって求められた金額のうち高い方の金額となります。

なお、軽減される金額が不動産取得税の税額を超過する場合には、軽減額は税額までであり、超過した金額が還付される訳ではありません。

  • 45,000円
  • A×B×3%

Aは「住宅用土地の1㎡当たりの価格×2分の1」、Bは「住宅の床面積×2」となります。

Aについて住宅用土地の1㎡当たりの価格に2分の1を乗じることができるのは、1996年1月1日~2021年3月31日までの間に宅地を取得した場合であり、

2021年4月1日以降の取得においては住宅用土地の1㎡当たりの価格で計算を行います。

Bについては1戸につき200㎡が上限となります。

この②の計算式で最も間違いやすいのは、Bで用いられる面積は住宅の床面積であることです。土地の面積ではないことに注意しましょう。

この軽減措置の計算により、1996年1月1日~2021年3月31日までの間に取得した住宅用土地で、住宅の床面積が住宅用土地の面積の2分の1よりも大きければ、ほとんどの場合に不動産取得税は発生しないことになります。

不動産取得の申告や徴収猶予、還付を受ける方法

不動産を取得した場合には申告が必要になります。また、不動産取得税には徴収猶予、還付の制度があります。これらの内容などについて解説します。

申告期限はいつまで?

不動産取得税は、都道府県が課する地方税であるため、都道府県によって異なる点があります。

不動産を取得した場合には申告を行う必要がありますが、この申告は不動産取得税申告書を都道府県に提出することで行います。

この不動産取得税申告書の申告期限も都道府県によって異なることがありますので、注意が必要です。

例えば、東京都では不動産を取得した時は、取得した日から30日以内に不動産取得税申告書を提出することとなっていますが、神奈川県では不動産を取得した日から10日以内と定められています。

また、愛知県では不動産を取得した日から60日以内となっています。

このように都道府県によって申告の期限は大きく異なるケースがありますので、不動産取得税申告書の提出期限については事前に確認をしておくようにしましょう。

申告をしなかったらどうなるの?

不動産取得税申告書の提出によって不動産取得の申告を行わなかったとしても、特段の罰則がある訳ではありません。しかし、申告をしなかったとしても不動産取得税の納税通知書は都道府県から送付されてきます。

これは不動産の登記情報が都道府県と共有されるため、不動産を取得した方が申告を行わなくても都道府県は税金の計算をして課税を行います。

それであれば申告しなくても何の問題も無いと思われるかもしれませんが、実は申告しないと余計な税金を支払うことになる可能性があります。

不動産取得税申告書の提出の際には、不動産取得税減額等申請書によって、不動産取得税の軽減を受けるための申請を合わせて行いますが、

申告を行わず都道府県が行った不動産取得税の計算では、軽減措置などの特例が適用されていないケースがあるためです。

不動産取得税の還付を受ける方法とは?

都道府県に納税した不動産取得税が、軽減措置などの特例を適用すると払い過ぎていることが判明した場合には、

不動産を取得してから5年以内であれば必要な書類を提出することで払い過ぎている税額の還付を受けることができます。

また、不動産取得税の還付とは異なりますが、不動産取得税の徴収猶予という制度があります。

土地を取得した後、その土地上に住宅が建築されることが確実である場合など、住宅が完成する迄の期間は土地の取得に係る不動産取得税の納税を猶予してもらう制度です。

このとき納税が猶予される金額は、土地上に住宅が完成しているものとして計算される減額分相当額となります。

この手続きは納税通知書と一緒に送付される徴収猶予申告書と必要書類を準備して、納期限までに完了させることが必要となります。

まとめ

不動産取得税の申告を怠っても罰則があるわけではありませんし、不動産取得税の納税通知書も都道府県から送付されてきます。

しかし、申告せずに課税された不動産取得税が正しいとは限りません。

不動産取得税の計算方法や軽減の仕組みを理解して、軽減措置などが正しく適用されているかの確認にお役立てください。

監修者:添田 裕美(税理士)