不動産投資というと、「リスクが高い」「お金持ちがするもの」と思っていませんか?
確かに、実物の不動産に投資するには数百万~数千万円の資金が必要ですし、失敗しても簡単に売却することはできません。

しかし、J-REITという不動産投資信託を利用すれば、10万円台から不動産投資ができます。J-REITは証券取引所に上場していて、株式のようにいつでも売買可能です。

米中貿易摩擦で株式市場が不安定な値動きをする中、東証REIT指数(REITの総合的な値動きを示す指数)は年初来高値を更新し続けています。

今回はJ-REITの特徴やメリット・デメリット、株式市場との関係について詳しく解説します。

J-REITなら10万円台から不動産のオーナーになれる

J-REITは投資信託の一種で、多くの投資家から資金を集めて、オフィスビルや商業施設、マンションなど多数の不動産を取得し、家賃収入を投資家に分配する金融商品です。

個人投資家では買えない都心のオフィスビルなどに少額で投資できるのも魅力です。

J-REITは証券取引所に上場していて、10万円台から買うことができ、株と同じようにいつでも売買できます。現在の上場銘柄数は約60銘柄で、分配金利回り(年間の予想分配金 ÷ 投資額)は平均で4%を超えています(下図)

出典:不動産証券化協会

J-REITの投資対象不動産は7つ

高利回りが期待できるJ-REITが投資している不動産には、どのようなものがあるのか見てみましょう。

① オフィス 都心の大型ビル、地方の中小型ビルなど

現在のオフィス市況は好調で、まだまだ伸びる余地があります。J-REITの投資対象としては約40%と最も多くなっています。

【参考銘柄】
8951 日本ビルファンド投資法人
8952 ジャパンリアルエステイト投資法人

② 住宅 賃貸マンションなど

賃料、価格ともに安定しているので安定志向の方におすすめです。

【参考銘柄】
8986 日本賃貸住宅投資法人
3226 日本アコモデーションファンド投資法人

③ 商業施設 郊外のショッピングモール 総合スーパーなど

高い利回りが望めるものの、アマゾンなどのEコマースに押され苦戦。目利きが必要になります。

【参考銘柄】
8953 日本リテールファンド投資法人
8964 フロンティア不動産投資法人

④物流施設 空港や湾郊外にある大型物流施設など

供給過多で価格は下落傾向。ただし、利回りが上昇しているので買いの魅力が高まっています。

【参考銘柄】
8967 日本ロジスティクスファンド投資法人
3281 GLP投資法人
⑤ホテル

インバウンド(訪日外国人客)への期待は高いものの、ホテルの稼働状況に応じて賃料が変わるので、競争力のあるホテルを保有する銘柄を選ぶ必要があります。

【参考銘柄】
8985 ジャパン・ホテル・リート投資法人
3287 星野リゾート・リート投資法人

⑥ヘルスケア 有料老人ホーム、高齢者向け住宅など

平均分配金利回りは5%を超えていますが、まだJ-REITでは2銘柄しかなく規模の拡大は難しい状況です。3年に1度の介護報酬の改定で収入が左右されるリスクがあります。

【参考銘柄】
3308 日本ヘルスケア投資法人
3455 ヘルスケア&メディカル投資法人

⑦複合型

①~⑥の不動産を複数組み入れている銘柄です。1つの銘柄で分散投資できるのがメリットです。銘柄数は最も多くなっています。

【参考銘柄】
8954 オリックス不動産投資法人
8955 日本プライムリアルティ投資法人

J-REITの市場規模

J-REITは2001年に誕生しました。現在、約60銘柄が上場し時価総額は12兆円まで成長しています。一方、REIT先進国のアメリカでは226銘柄が上場しており、時価総額は112兆円に達し、日本の約10倍です。アメリカは世界一の経済大国とはいえ、GDPでは日本の4倍、株式市場では5倍の規模です。これらの指標と比べても、J-REITの拡大余地はまだあると見られています。

それではJ-REITのメリットを見ていきましょう。

J-REITのメリット

J-REITの主なメリットは次の3つです。

①不動産に直接投資するより少額で投資ができ、複数の不動産に分散投資ができる
②証券取引所でいつでも売買が可能
③分配金の利回りが高い

それぞれ詳しく解説します。

① 不動産に直接投資するより少額で投資ができる

不動産に直接投資する場合、100~1,000万単位でお金がかかり、多くの場合、金融機関から借入をして購入します。しかし、J-REITなら1口10万~100万程度で投資することが可能です。不動産管理の手間もかかりません。運用のプロが選んだ複数の不動産に分散投資ができるので、直接不動産を買うよりリスクを減らすこともできます。

②証券取引所でいつでも売買が可能

J-REITは証券取引所に上場していて、株式と同じようにいつでも売買可能です。一般の不動産投資と異なり、流動性が高い(現金化しやすい)のも大きなメリットです。

③分配金の利回りが高い

東証1部に上場している日本株の平均配当利回りは1.8%台です。一方、J-REITの平均分配金利回りは4%を超えています。高い利回りにはJ-REITの仕組みがあります。

企業は稼いだ利益のうち約30%は法人税として支払い、一部を内部留保し、残りを配当金とします。一方、J-REITでは利益の90%以上を分配金とすれば法人税がかかりません。ですから、利益の100%を分配金に回す銘柄も多いのです。

現在は、オフィス賃料が上昇傾向にあり、東京や大阪、名古屋など全国の主要都市で空室率が低下しています。また、低金利が続いているので、J-REITが不動産を買う時に銀行から借りるコストも低下しています。賃料の上昇と借入れコストの低下により、2017年はJ-REITのうち約4割が過去最高の分配金を記録しました。

J-REITのデメリット

ここまで、J-REITのメリットを解説しましたが、金融商品なので元本や分配金が保証されているわけではありません。株式などと同じようにリスクも理解しておく必要があります。J-REITの主なリスクは以下のようになります。

①倒産や上場廃止のリスクがある

現在は好環境が続いているものの、不動産市況の悪化により、倒産や上場廃止になる可能性もあります。その場合は、J-REITは無価値同然になってしまいます。

②金利上昇リスク

現在は低金利で借入金のコストが低下しているものの、金利が上昇すると返済にあてる資金が必要になり、分配金が減少するリスクがあります。

③自然災害リスク

現物不動産と同じく、地震などの自然災害によって投資対象の不動産物件が損害を受けた場合、資産価値が大きく減少するリスクがあります。

J-REITと株式市場との関係

米中貿易摩擦で不安定な株式市場と対照的に、東証REIT指数(REITの総合的な値動きを示す指数)は2018年11月に年初来高値を取り、12月に入っても高値を更新しています。以下のチャートは東証REIT指数に連動するETF(上場投資信託)の値動きです。REIT-ETFは、上場REITすべての銘柄にまとめて投資しているのと同じ効果があります。

出典:ヤフーファイナンス

以下はTOPIX(東証株価指数)のチャートです。TOPIXは東証1部全体の株価の値動きを表しています。

出典:ヤフーファイナンス

上記のチャートを見ると、10月から米中貿易摩擦の影響で日本株が不安定になる中、外部要因の影響を受けず、高利回りのJ-REITに資金が向かっていることがわかります。

ここ数年、日本株とJ-REITは勝ち負けを繰り返していて、みずほ証券の調べでは、2016年はJ-REITが9.9%の上昇に対し日本株(TOPIX)は0.3%上昇でJ-REITが良かったものの、2017年は6.8%下落で日本株は22.2%と日本株のパフォーマンスが高くなりました。

2018年はJ-REITのパフォーマンスは約9%、TOPIXは-12%とJ-REITが再び上回っています。(12月6日現在)

ただし、以下のグラフのように10年の長期で見ると相関(値動きの連動性)が高い時期もあるので注意しましょう。

出典:不動産証券化協会
※投資はあくまでも自己責任となります。利益を保証するものではありませんので、ご注意ください。

まとめ

米中貿易摩擦で株式市場に不透明感が高まる中、外部要因に影響を受けずに安定的な利回りを期待できるJ- REITに資金が集まっています。 現物の不動産を買うよりもはるかに安い10万円台から購入でき、管理や修繕などの手間なく不動産のオーナーになることができます。

金融商品なので元本や利回りが保証されているわけではありませんが、この低金利の時代に4%を超える利回りを狙える金融商品はなかなかありません。「不動産投資を少額からチャレンジしてみたい」、「利回りの高い金融商品を探している」投資家にはJ-REITをおすすめします。

【記事筆者】

山下耕太郎
山下耕太郎
一橋大学経済学部卒業。証券会社でアナリスト、ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴は20年以上。現在は、日経225先物を中心に現物株・FX・CFDなど幅広い商品に投資しています。
保有資格:証券外務員1種