住宅ローンを組んでマイホームを購入する場合は、消費税も発生し、経済的な負担が大きくなります。そのようなマイホーム購入時の経済的な負担を軽減するための制度として、すまい給付金があります。

すまい給付金とは、居住するための住宅を取得した場合に、収入などの条件を満たした場合に給付金が支給される制度です。

すまい給付金は一時所得として所得税の課税対象となるのですが、今回は制度の概要を確認し、給付金が課税対象になる条件、課税を回避するための方法などをご紹介します。

すまい給付金の目的や給付額について

すまい給付金の制度の目的や、給付額についてご紹介します。

すまい給付金は住宅取得者の負担を減らす制度

すまい給付金とは、消費税率の引上げ(2014年4月1日に消費税率が8%に引上げられました。2019年10月1日から10%に引上げられる予定です)による住宅取得者の負担増加を緩和するために創設された制です。自分が居住するための家屋を取得すると、収入等の条件に応じて給付金を受けることができます。

住宅ローンの減税制度は、所得税から控除される仕組みになっているため、その減税効果は所得が高いほど効果が大きく、所得が低いほど効果が小さくなるという特徴があります。

従来の住宅ローン減税制度だけでは負担の軽減効果が十分でない収入層に対して、住宅ローンの減税制度とあわせて、すまい給付金制度を導入することで消費税率の引上げに伴う負担の軽減を図るものです。

【出典】すまい給付金公式ホームページhttp://sumai-kyufu.jp/

給付額は収入と持分割合と消費税率で決定する

すまい給付金の給付額は、住宅を取得した方の収入、住宅の持分割合、消費税率によって決定されます。すまい給付金における収入とは、給与所得者の額面収入ではなく、都道府県民税を納付する際の所得割額に基づいて決定されます。

給付額を算定するための収入を知りたい場合は、市区町村が発行する個人住民税の課税証明書を入手し、証明書に記載されている都道府県民税の所得割額を確認する必要があります。

住宅の持分割合とは、住宅を複数人で共有している場合に、誰がどれだけの割合で所有権を持っているかを表すものです。例えば、二世帯住宅用の家屋を取得して親が7割、子が3割の割合で共有名義にする場合などです。

注意点としては、すまい給付金を受ける場合には単に持分を有しているだけではなく、実際に家屋に居住している必要があります。

すまい給付金の給付の対象となるのは、住宅ローンを利用している方、住宅ローンを利用していない場合は、住宅の引き渡しを受けた年の12月31日の時点で50才以上の方です。

【出典】すまい給付金:給付額について
http://sumai-kyufu.jp/outline/sumaikyufu/kyufu.html

消費税が8%の時に住宅を購入した場合

すまい給付金をもらうためには収入制限があります。また、すまい給付金の給付額については上限額が設定されています。給付金の収入制限と上限額は、住宅取得時の消費税率によって異なります。

消費税が8%の時に住宅を取得した場合、収入額が510万円以下の方を対象に、最大30万円の給付金が給付されます。

消費税が10%の時に住宅を購入した場合

消費税が10%の時に住宅を取得した場合、収入額が775万円以下の方を対象に、最大50万円の給付金が給付されます。

制度対象期間は2014年4月から2021年12月まで

すまい給付金制度には対象期間があり、2014年4月から2021年12月の間に引渡しされ、入居が完了した住宅となっています。(2018年10月現在)

対象期間が2014年4月からになっている理由は、同年同月に消費税が従来の5%から8%に引上げられたからです。すまい給付金の給付対象となる家屋は、消費税の引上げ後の税率が適用された住宅のみが対象となります。

【出典】すまい給付金とはhttp://sumai-kyufu.jp/outline/sumaikyufu/index.html

給付額の計算方法や課税対象の条件

すまい給付金の給付額の計算方法や、課税対象となる条件などをご紹介します。

給付額の計算式

すまい給付金の給付額の計算式は以下のようになります。

給付基礎額 × 持分割合 = 給付額

給付基礎額は、住宅取得時の消費税率と自身の収入によって決定されます。給付基礎額に所有権の登記上の持分割合を乗じた額が、すまい給付金の給付額になります。

すまい給付金の公式ホームページでは「すまい給付金の対象となるか」「給付金の額がいくらになるか」を知るためのシミュレーションを行うことができます。

住宅取得時の消費税率、住宅の所有権の持分、収入などの情報を入力することで、すまい給付金の額の目安を知ることができます。

【出典】すまい給付金シミュレーションについてhttp://sumai-kyufu.jp/simulation/index.html

消費税率による給付基礎額の違い

すまい給付金は、住宅を取得した時点で適用された消費税の税率によって、同じ収入や持分割合でも給付額が異なります。

同じ収入や持分割合の場合は、消費税が8%よりも10%の場合の方が給付額は多くなります。給付額が多くなる理由は、消費税の税率が高いほど経済的な負担が大きくなるからです。

消費税が8%の時に住宅を購入した場合

消費税率が8%の時に住宅を取得した場合のシミュレーションです。住宅を共有で所有しており自身の持分が50%、自身の収入が400万円の場合、給付額の目安は15万円です。

消費税が10%の時に住宅を購入した場合

消費税率が10%の時に住宅を取得した場合についてです。住宅を共有で所有しており自身の持分が50%、自身の収入が400万円の場合、給付額の目安は25万円になります。

すまい給付金を受け取ったら確定申告は必要なの?

すまい給付金の給付を受けた後、収入として確定申告が必要なのかを見ていきます。

すまい給付金は一時所得

所得税における課税所得の区分においては、すまい給付金は一時所得に該当します。一時所得とは、継続的な行為以外から得たいわゆる臨時収入のことで、例として懸賞の賞金、競馬などの払戻金、生命保険の満期金などがあります。

【出典】国税庁:一時所得https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1490.htm

一時所得が50万以上の場合には確定申告が必要

一時所得には特別控除があり、50万円までの一時所得は課税の対象になりません。

すまい給付金の給付額は最大でも50万円以内なので、一時所得がすまい給付金のみの場合は課税の対象にならないため、給与所得者は原則として確定申告をする必要はありません。

すまい給付金以外にも一時所得があり、合計金額が50万円を超える場合は、給与所得者の場合でも確定申告が必要になります。

すまい給付金を一時所得に含めない方法と注意点

すまい給付金を一時所得に含めない方法と、利用するための注意点をご紹介します。

確定申告書に指定の書類を添付する

所得税法第42条第1項は、一定の要件を満たした場合に国庫補助金等を一時所得に含めないことが規定されています。すまい給付金は、国の補助金を財源としていること等の理由から、同規定における国庫補助金等に該当します。

同規定の適用によって、すまい給付金は一時所得における総収入金額に不算入とすることができるので、課税の対象から外すことができます。制度の適用を受けるためには、確定申告において国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書を添付する必要があります。

【出典】所得税法http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=340AC0000000033

減価償却費の計算に影響する

すまい給付金を一時所得に含めない制度の適用を受けた場合、住宅を事業用とした場合の減価償却を計算する際や、住宅を売却した場合の譲渡所得を計算する際、住宅の取得金額から、すまい給付金の給付金額を差し引いて計算する必要があります。

すまい給付金は対象となる住宅で事務所などを経営する場合など、何らかの事業に用いた場合に一時所得に含めない選択をすると影響があります。

【出典】国税庁:減価償却のあらましhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm

状況に応じて選択することが大切

すまい給付金を一時所得から除外するかどうかは、状況に応じて選択することが大切です。すまい給付金以外に一時所得がない場合は、すまい給付金単体では課税の対象にならないため、一時所得から除外する手続きの必要はありません。

一時所得の金額が大きいために課税される場合は、後に減価償却の制度を利用する可能性があるかを考慮しつつ、すまい給付金を一時所得から除外する手続きを行うかどうかを検討しましょう。

まとめ

すまい給付金の制度についてご紹介しました。すまい給付金はマイホームを購入する消費者の経済的な負担を軽減するための制度です。住宅を取得した方の収入、住宅の持分の割合、住宅取得時の消費税の税率などによって給付金の有無や額が決定されます。

すまい給付金は一時所得となり所得税の課税対象になりますが、一時所得には50万円の特別控除枠があるため、すまい給付金を含めた一時所得の合計が50万円を超えなければ税金はかかりません。

今回ご紹介した情報によって、すまい給付金の制度を有効に利用していただけますと幸いです。

監修者:寺野 裕子(ファイナンシャルプランナー)