住宅ローンを組んで居住用の新築物件の建築、中古物件の購入、リフォームなどを行った場合に、納付した税金の一部が戻ってくる住宅ローン控除という制度があります。住宅ローン控除の制度を利用するためには、制度の概要、条件、注意点、確定申告、年末調整などを理解することが大切です。

住宅ローンの年末調整について

住宅ローンの年末調整の制度についてご紹介します。

年末調整とは?

会社などから給与をもらって所得を得ている方は、税金の計算のために年末調整を行います。

会社は社員の給与から税金として支払う分を毎月天引きして、所轄の税務署に納付しています。毎月の給与から算出する金額は概算なので、年末に正確な金額を算出して過不足を調整することになります。

年末調整の制度があるため、給与として所得を得ている方は通常は確定申告をする必要がありませんが、住宅ローンを組んで家を購入した場合は、確定申告をすることになります。

なぜ家を買ったら確定申告が必要なのか

住宅ローンを組んで家を購入した場合に確定申告が必要な理由は、住宅ローン控除という制度を利用するためです。(制度の内容については後述します)

住宅ローン控除の制度を利用するためには、初年度は、会社を通じた年末調整ではなく、自分で確定申告の手続きを行う必要があります。

住宅ローン控除とは

住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合に、年度末のローンの残高の一定割合に応じた額が所得税から控除される制度です。

控除された税額は、初年度は確定申告終了から一ヶ月ほどで戻ってくるのが一般的です。年末調整を利用している給与所得者は、2年目以降は12月の給与で計算されることになります。

【出典】国税庁:住宅を新築又は新築住宅を取得した場合:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1213.htm

確定申告について

【出典】国税庁:確定申告書等作成コーナー:http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei.htm

いつするのか

確定申告の期間は、2月16日から3月15日の間の約一ヶ月の期間になるのが一般的です。2月16日と3月15日が土日祝日にあたる場合は繰り下がるので、年度によっては開始日や終了日が変わる場合があります。

どこでするのか

確定申告は、住所を管轄する税務署で行うほか、郵送やインターネットでも手続きを行うことができます。

必要書類は?

確定申告に必要な主な書類としては、確定申告書、マイナンバーカード、税金の還付を受けるための通帳のコピー、源泉徴収票、住民票の写し、登記事項証明書、などがあります。必要な書類は申請者の状況によって異なるため、所轄の税務署に問い合わせておくと安心です。

2年目以降は年末調整で手続き完了

住宅ローン控除の適用を受ける場合は初年度は確定申告が必要になりますが、会社の給料によって所得を得ている場合は、2年目以降は年末調整だけで手続きを完了させることができます。

手続きに必要な書類は、初年度の確定申告後に税務署から送られてくる住宅借入金等控除証明書と、ローンを組んだ金融機関から送られてくる住宅ローンの年末残高等証明書があります。

年末調整に必要な書類の提出が間に合わなかった場合、自分で確定申告を行わなければならない場合もあるので、早めに準備しておくことが大切です。

控除額は条件により異なる

住宅ローンの控除額は条件によって異なります。ここでは条件ごとの控除額を見ていきます。

認定長期優良住宅や認定低炭素住宅とは

認定長期優良住宅や認定低炭素住宅に認定された場合、年間で最大50万円の控除を受けることができます。長期優良住宅の認定を受けるためには、住宅の性能について様々な項目を満たす必要があります。項目としては、劣化対策、耐震性、可変性などがあります。

認定低炭素住宅は、都市の低炭素化の促進に関する法律の認定基準を満たした建築物で、地球温暖化の抑制に役立つ建物のことです。どちらも申請の基準や手続きが複雑なので、住宅を管轄する自治体や住宅メーカーなどに確認しておくと良いでしょう。

【出典】長期優良住宅とは:https://www.hyoukakyoukai.or.jp/chouki/info.html
【出典】低炭素建築物認定制度:http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000065.html

住宅ローンの年末残高が4000万円以上ある場合

住宅ローンの年末残高によって、住宅ローンの控除額の上限は異なります。住宅ローンの控除額の上限は、住宅ローンの年末残高の1%かつ40万円までです。

住宅ローンの年末残高が4000万円以上の場合は、最大控除額は上限の40万円になります。3000万円の場合は30万円、2000万円は20万円が上限です。

控除額の基準になるのは年ごとの年末残高なので、支払いによってローンの残高が減少すれば、それに伴って控除額も減少していきます。

所得税額・住民税額以上は戻らない

住宅ローン控除は所得税の額が控除されて還付される制度なので、戻ってくる金額は所得税額が上限になります。控除額が所得税の額を超える場合は、住民税も控除の対象になります。

納付した所得税と住民税の額以上は戻らないことに注意が必要です。例えば、控除額が40万円であっても、所得税と住民税の合計が30万円の場合は、戻ってくる金額は30万円が限度です。

住宅ローン控除適用のための条件とは

住宅ローン控除の制度が適用される条件をご紹介します。

新築マンションの場合

新築マンションの場合の住宅ローン適用の主な条件としては、以下のものがあります。

・取得した日から六ヶ月以内に居住すること

・住宅ローン控除を受ける年の末日まで居住すること

.住宅ローンの借入期間が10年間以上であること

・勤務先から住宅ローンを借り入れる場合、利率が0.2%以上であること

・不動産登記簿において床面積の合計が50㎡以上あること(マンションについては専有部分のみ)

・年間の所得金額が3,000万円以下であること

・住宅に居住した年の前後各2年間を含む計5年間において、税金に関する他の優遇措置を受けていないこと

【出典】国税庁:住宅を新築又は新築住宅を取得した場合https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1213.htm

中古住宅の場合

中古住宅の場合は、上記に加えて以下の条件も満たす必要があります。

・鉄筋コンクリートなどの耐火建築物は25年以内、木造などの非耐火建築物は20年以内に建築されたものであること

・住宅が耐震基準を満たしていること

・親族から購入した物件でないこと

・贈与によって取得した物件でないこと

【出典】国税庁:中古住宅を取得した場合https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1214.htm

リフォームの場合

住宅をリフォームする場合の主な条件には以下のものがあります。

・自分が居住するためのリフォームであること

・リフォームの費用が100万円を超えており、その半分以上が自分の居住用部分についての工事費用であること

【出典】国税庁:増改築等をした場合https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1216.htm

住宅ローン控除の注意点

住宅ローン控除を受ける場合に、あらかじめ押さえておくべき3つの注意点をご紹介します。

入居する年と住宅ローン契約をする年が違う場合、1年損するの?

住宅ローン控除を受けることができる期間は、入居を開始した年から10年が原則になります。例えば、2018年に入居をした場合は、控除の対象になるのは2027年までです。

住宅ローン控除を受けるための入居以外の条件として、住宅ローンの契約を済ませておく必要があります。

注意点として、入居した年に住宅ローンの契約を済ませていない場合は、その年は住宅ローン控除の対象になりませんが、入居を開始した年から10年の期間は進行するため、結果として控除の期間が一年短くなってしまいます。

特に、年末に入居して住宅ローンの契約が翌年の年始になる場合などに、こうしたケースが多くなります。

住宅ローン控除の期間の短縮を防ぐためには、できるだけ年末に入居することを避けて年明けまで待ち、入居と住宅ローンの契約を同じ年に行うようにすると安心です。

夫婦共有から妻が専業主婦になったら住宅ローン控除はどうなるの?

夫婦二人で住宅ローンの借り入れを行なった場合、それぞれの所得税について住宅ローンの控除を受けることができるので、一人で住宅ローンを借りた場合よりも大きく減税できる可能性があります。

その場合の注意点としては、住宅ローン控除は所得税の額が減額される制度なので、所得がなくなって所得税が発生しなくなると、住宅ローン控除も適用されなくなります。

例えば、ローンを組んで購入した住宅を夫婦の共有名義として、住宅ローンを夫婦の連帯債務として借り入れした場合において、後に妻が専業主婦になって所得がなくなった場合は、妻については住宅ローン控除が適用されなくなります。

共有持分と連帯債務割合は、夫婦の場合、半々すればいいの?

夫婦の連帯債務によって住宅ローンを組んで住宅を共有する場合は、共有持分については夫婦で半々にすれば良いと思うかもしれません。

住宅の持分について、夫婦それぞれの出資の割合を考慮せずに単純に半分にしてしまうと、贈与と見なされて贈与税が課せられる場合もあるようです。

夫婦それぞれの出資の割合に応じて、共有持分について厳密に考えることが重要になってきます。

例えば、住宅代金が4,000万円、頭金1,000万円を夫婦が500万円ずつ負担、3,000万円の住宅ローンの連帯債務の割合が夫2,000万円、妻が1,000万円の場合についてです。

この場合の出資の合計は夫が2,500万円、妻が1,500万円で、出資の割合は夫が5で妻が3です。

出資の割合に応じて住宅の共有持分を決定すると、夫が8分の5、妻が8分の3になります。

まとめ

住宅ローン控除の制度についてご紹介しました。

住宅ローンを組んで居住用の物件の新築、購入、リフォームなどを行った場合に、所得税の一部が控除されて戻ってくる制度です。制度を利用するためには、初年度に確定申告を行う必要があります。

概要、条件、手続、注意点などを把握し、制度を活用していただければ幸いです。