固定資産税とは、土地や家屋などの固定資産の所有者に対して、毎年1月1日に課される地方税です。固定資産税は土地、建物、所有者の状況などによって軽減措置が設けられています。必要な要件を満たして軽減措置が適用されれば、税負担を減らすことにつながります。ここでは、固定資産税の減税に関する制度についてご紹介します。

土地に係る減税について

固定資産税の軽減措置について、土地に関連する減税の制度を見ていきます。

住宅用地の減税

住宅用地とは、一戸建てやアパートなど、人が居住するための建物用の敷地として使用される土地のことです。

住宅用地についての固定資産税の減税制度をご紹介します。

小規模住宅用地の軽減措置による減税

小規模住宅用地とは住宅用地のうち、住宅一戸あたりにつき200㎡以下の部分を指します。

税負担を軽減する目的から、小規模住宅用地は200㎡以下の部分について、固定資産税の課税標準額が本来の6分の1に軽減されます。
【出典】東京主税局:住宅用地及びその特例措置について:http://www.tax.metro.tokyo.jp/shisan/kotei_tosi.html#ko_02_02

一般住宅用地の軽減措置による減税

住宅用地のうち200㎡を超える部分については小規模住宅用地に該当しないため、小規模住宅用地の軽減措置の対象にはなりませんが、一般住宅用地の軽減措置の対象になります。

一般住宅用地の軽減措置の効果としては、住宅用地のうち200㎡を超える部分について、固定資産税の課税標準額が本来の3分の1に軽減されます。

住宅用地の軽減措置の例として、総面積300㎡の住宅用地については、200㎡までの部分は小規模宅地に該当し、固定資産税の課税標準額が6分の1になります。

残り100㎡の部分については一般住宅用地に該当し、固定資産税の課税標準額が3分の1になります。

私有地でも公共性が高い場合は非課税になる

地方税法第348条2項5号の規定に基づいて、私有地であっても公共の用に供する道路については、固定資産税の非課税の対象になります。

公共の用に供する道路とは、公道に接している通り抜け用の私道や、公道と一体となって道路の役割を果たしている部分などです。

非課税の適用を受けるためには、土地の所在地を管轄する市町村等の役所に申請を行う必要があります。

【出典】地方税法http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000226

建物に係る減税について

建物に関する固定資産税の減税制度を見ていきます。

新築住宅の減税

新築住宅に係る税額の減額措置によって、住宅を新築した場合は、固定資産税が2分の1に減額されます。

住宅用地の減税制度においては、固定資産税を算出する基準となる課税標準額が減額されるのに対し、新築住宅の減額措置においては、固定資産税が直接減額されるのが特徴です。

【出典】新築住宅に係る税額の減額措置:http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000021.html

新築住宅の減額措置を受けるための要件

2020年3月31日までに新築された住宅について、固定資産税が3年間、2分の1に減額されます。3階建て以上の耐火・準耐火建築物(マンションなど)については、減額期間が5年間になります。

新築住宅の減額措置を受けるための床面積の要件

新築住宅の減額措置を受けるためには、建物の種類ごとに床面積の要件が規定されています。

・一戸建て住宅は床面積が50㎡以上かつ280㎡以下

・店舗などが併設された併用住宅は、居住部分の床面積が全体の2分の1以上で、かつ床面積が50㎡以上280㎡以下

・アパートなどの共同住宅は、居住部分の床面積に廊下などの共用部分の面積を按分し、合計の床面積が50㎡以上280㎡以下(貸家の場合は40㎡以上280㎡以下)

・マンションなどの区分所有住宅は、居住部分が専有部分の2分の1以上であり、居住部分の床面積に廊下などの共用部分の面積を按分し、合計の床面積が50㎡以上280㎡以下(貸家の場合は40㎡以上280㎡以下)

認定長期優良住宅の減税 

長期に渡って住み続けるための処置が講じられた長期優良住宅に認定されると、新築住宅の固定資産税の減額措置の適用期間が通常よりも延長されます。

固定資産税が2分の1に減額される期間について、戸建て住宅は3年から5年に、マンションは5年から7年に延長されます。

【出典】認定長期優良住宅に関する特例措置:
 http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000022.html

耐震化のための建替えまたは改修を行った住宅の減税 

自治体によっては、耐震化のための建替えまたは改修を行った住宅を対象に、固定資産税等の減税措置を実施している場合があります。

例として、東京都では都の条例に基づいて、耐震化のための建替えや改修を行った住宅について、固定資産税の全額を免除する制度を実施しています。

制度の有無、要件、内容などは自治体によって異なるため、詳細は管轄の自治体に問い合わせると安心です。

【出典】東京都:耐震化のための建替え又は改修を行った住宅に対する固定資産税及び都市計画税の減免要綱:http://www.tax.metro.tokyo.jp/shisan/info/taishin-yoko.pdf

バリアフリー改修を行った住宅の減税  

所有する住宅についてバリアフリー改修工事を実施した場合、床面積100㎡までを限度に、工事が完了した年の翌年度分の固定資産税について、3分の1に相当する額が減額されます。

主な要件としては、賃貸住宅でないこと、新築から10年以上経過していること、65歳以上や要介護など特定の人が居住していること、改修後の床面積が50㎡以上あること、などです。

【出典】国土交通省:バリアフリー改修に関する特例措置:http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000027.html

省エネ改修を行った住宅の減税     

省エネ改修工事を行った住宅について、床面積120㎡の限度で、工事の翌年分の固定資産税額が3分の1減額される制度です。省エネ改修工事とは、サッシの二重化や複層ガラス化などの断熱改修工事です。

【出典】国土交通省:省エネ改修に関する特例措置:
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000026.html

そのほか固定資産税の減税について

地方税法第367条には、天災等の事情がある場合に、市町村の条例によって固定資産税の減免の制度を制定できることが規定されています。

このような固定資産税の減税制度についてご紹介します。

【出典】地方税法:http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000226

※以下の各制度の有無、要件、内容などは市町村等によって異なる場合があります。詳細は管轄の自治体にお問い合わせください。

地震や台風等の被害を受けた資産の減税 

地震や台風等の災害によって被害を受けた場合は、被害を受けた日以後に納付期限が到来する固定資産税について、減免の対象になる場合があります。

被害の程度や状況によって、全額、10分の8、10分の6、10分の4など、減免の程度が異なるのが一般的です。

生活保護や公的扶助を受けている方の減税

生活保護や公的扶助を受けている方は、扶助を受けている期間に納付期限が到来する固定資産税について、全額程度減免の対象になる場合があります。

公益上の理由があると判断される資産の減税

公民館や学校等で使用される資産など、公益上の理由があると判断される資産については、期間の間に納付期限が到来する固定資産税について、全額程度減免の対象になる場合があります。減免の対象になるのは、資産が無償で使用されている場合です。資産の所有者が賃料を得ている場合は減免の対象になりません。

【出典】石垣市:固定資産税の減免について:
http://www.city.ishigaki.okinawa.jp/home/soumubu/zeimu/pdf/koteishisan_genmen.pdf

重度の障害を持つ、特別障害者の減税 

障害者のうち、特に重度の障害を有する特別障害者の方は、固定資産税が半額程度減免になる場合があります。審査は各年毎に行われるのが一般的です。

そのほか減免を必要とされる人の減税 

そのほか、減免を必要とする特別な事情がある場合は、詳しい事情などを申請することで減免の対象になる場合があります。

そのほかの減税措置 

そのほかの減税措置としては、中小企業が一定の機械装置を取得した場合に、固定資産税が3年間2分の1に軽減される制度などがあります。

【出典】中小企業庁:http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/2018/180406zeiseikinyu.pdf

固定資産税の減税手続きについて

固定資産税の減税措置に不服がある場合の手続きについてご紹介します。

申請しなければ減税されない場合も 

減税措置の中には、申請を行わなければ減税されない制度もあります。制度の有無や手続き方法について、一度管轄の市町村に問い合わせておくと安心です。

不服がある場合は審査の申出が可能

本来減税されるべきケースなのに減税が実施されていない場合など、固定資産税に関する措置に不服がある場合は、審査の申出を行うことが可能です。

申請できる方は固定資産税の納税者

審査の申出を申請できる方は、固定資産税の納税者(課税年度における1月1日現在の所有者)です。物件の借地人や借家人などは申出をすることができません。

対象となる固定資産を共有している場合は、各共有者が単独で申出を行うことができます。

審査の申出先は市町村の固定資産評価審査委員会

審査の請求は、管轄の市町村の固定資産評価審査委員会に対して行います。

固定資産評価審査委員会とは、各市町村に設置される行政委員会です。中立的な立場から、固定資産税に関する事項についての不服の審査や決定などを行う機関です。

審査対象は固定資産課税台帳に登録された価格

固定資産評価審査委員会による審査の対象になるのは、固定資産課税台帳に登録された価格についてです。同価格について不服がある場合、委員会に対して審査の申出を行います。

委員会の審査の結果、固定資産課税台帳に登録された価格が適当でないと認められると、登録された価格が修正されることになります。

審査の申出期間は3ヶ月以内

審査の申出をすることができる期間は、固定資産課税台帳に価格等を登録した旨の公示があった日から、納税通知書の交付後3ヶ月以内です。

価格の修正があった場合は、その修正通知を受けた日から3ヶ月以内になります。

最後に

固定資産税の減税制度についてご紹介しました。代表的な減税制度として、住宅用地、新築住宅、長期優良住宅、省エネやバリアフリー住宅への改修、天災などの特別な事情がある場合、などがあります。固定資産税は所有者に対して毎年課される税金なので、減税制度が利用できるかどうかは税負担に大きな影響を及ぼします。今回の情報を活用して、減税制度を賢く利用していただければ幸いです。

監修者:添田 裕美(税理士)