固定資産税は、固定資産を所有していなければ無縁の税金です。しかし、マイホームを購入したり、相続したりすることによって固定資産の所有者になると固定資産税の納税の義務を負うことになります。

固定資産税は、対象となる固定資産を所有している場合に毎年納める税金ですから、これから納税者となられる方にとっては、税金がいくらになるかはとても気になるところではないでしょうか。固定資産税の課税の仕組みを以下に解説していきますので、税の悩みの解決の一助になれば幸いです。

固定資産税はどんな税金?

固定資産税を実際に支払っているという方であっても、固定資産税がどのような税金かということを明確に理解されている方は意外と少ないのではないでしょうか。固定資産税について以下に解説していきます。

土地や家などの資産に課せられる税金

土地や家などの資産を固定資産といいますが、固定資産そのものに着目して課税を行うのが固定資産税です。

納税義務者

固定資産税を納税する義務を負う者は、毎年1月1日時点における土地や家屋、償却資産など課税対象となる固定資産の所有者です。

この所有者とは、土地と家屋については登記簿に所有者として登記されている方のことであり、登記されていない土地や家屋については、市町村に備え付けられている土地課税補充台帳、家屋課税補充台帳に所有者として登録されている方のことをいいます。また、償却資産については登記の対象とはならないことから、償却資産課税台帳に登録されている方となります。

納付先は市町村

固定資産税を課税しているのは市町村(東京23区は都)ですので、固定資産税の納付先は市町村となります。

市町村は毎年1月1日現在の固定資産の状況に応じて、課税の対象や納税義務者などを確定し、その年の4月以降から納税通知書を納税義務者に送付します。

課税の対象

固定資産税の課税の対象は、土地、家屋及び償却資産です。

土地とは、田、畑、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、その他の土地のことをいいます。

家屋とは、住家、店舗、工場、倉庫、その他の建物のことをいい、未登記の建物も含みます。

償却資産とは、会社などの事業のために用いられている構築物や器具備品などのことで、土地と家屋を除き減価償却が可能な資産のことをいいます。

税率は一律1.4%

固定資産税の計算に用いられる税率は、土地、家屋、償却資産などの固定資産の種類に関わらず一律1.4%の税率が使用されます。なお、1.4%は標準税率で、基本的に採用されている税率のことですが、市町村の条例によって標準税率とは異なる税率を定めることも法律で認められています。

固定資産税の算出方法

固定資産税は原則として「固定資産の評価額×標準税率(1.4%)」の計算によって算出されます。

このように固定資産の評価額が税額計算の基本となるため、固定資産税は固定資産の価値に応じた税金が課税されるのです。

しかし、実際の課税では税負担を軽減する措置が取られていることが多くあります。特に下記で解説する住宅用地の軽減といった特例がありますが、このような場合には、固定資産の評価額に特例などを適用した価額に税率を乗じた金額が固定資産税額になります。

固定資産税の評価額はどうやって決まる?


固定資産税算出の基本となる評価額はどのようにして決定されるのでしょうか。以下に解説していきます。

固定資産評価基準に基づいて評価

固定資産税は、市町村が課税する地方税です。税金であることから、税の原則に基づき公平であり、中立であり、簡素であることが求められます。この原則の実現を図るために、地方税法では市町村長は固定資産評価基準によって固定資産税の価格を決定しなければならない旨を定めています。

土地の評価

土地の固定資産税の評価額を求める方法には、住宅の密集度の高い地域で適用される「路線価方式」と山間部や周辺部で適用される「標準地比準評価法」とがあります。

路線価方式では、まず路線価を設定するための基準となる標準宅地の価格を求め、その価格によって主要な路線の路線価を決めて、次いで他の道路の路線価を決めていきます。土地の評価額は、その土地が面する道路の路線価に、土地の間口や奥行などの形状、接する道路の状況などの個別性を反映させる補正を行って算出します。

標準地比準評価法では、道路状況や宅地の利用状況などによってまとめられた状況類似地区ごとに設定した標準宅地の評価額を求め、標準宅地とその類似地域内にある土地と比較をして土地の評価額を算出します。

家屋の評価

固定資産評価基準に基づき、家屋の評価は、再建築価格を基準として評価額を求めます。

新築の場合

新築家屋の評価額は、「再建築価格×経年減点補正率」の計算によって算出されます。

再建築価格とは、評価を行う時点において、対象となる家屋と同一のものをその場所で再び新築する場合に必要となる建築費のことを指します。建物の外装材、内装材、設備などを市町村職員が現地調査し確認を行い、使用資材について固定資産評価基準に基づき再建築価格を算出します。

経年減点補正率とは、家屋は時間の経過に応じて老朽化し、損耗していきますが、この損耗の状況に応じた減価等を表すための補正のことをいい、家屋の構造、経年によって補正率が定められています。

新築以外の場合

家屋の評価額は、3年に1回の基準年度に評価替えが行われます。このとき評価替えの対象となる家屋が、在来分家屋とも呼ばれる新築以外の家屋となります。

新築以外の家屋の評価額も基本的には新築の場合と同じで、再建築価格に経年減点補正率を乗じて求めることになりますが、再建築価格の求め方が異なります。新築以外の家屋の再建築価格は、前基準年度の再建築価格に建築物価の変動割合を乗じて求めます。なお、求めた評価額が前年度の評価額を上回る場合には、前年度の評価額を据え置くことになります。

マンションの場合

マンションの固定資産税の評価額も、基本的には土地と建物と考え方は同じです。しかし、土地と建物を別々に算出するのは同じですが、敷地権割合や階段等の共用部分に対して持分に応じた割合を反映する必要があります。

土地は、マンション敷地全体の評価額に敷地権割合を乗じて算出します。

家屋については、一棟全体の評価額に専有部分の面積、及び専有部分の持分割合に応じた共用部分の面積を加味した割合を乗じて評価額を算出します。具体例を挙げると、専有部分の総面積が2,000㎡、共用部分600㎡のマンションについて、100㎡の専有部分を所有している場合、専有部分の面積及び専有部分の持分割合に応じた共用部分の面積は、100㎡+(600㎡×100㎡/2,000㎡)=130㎡となり、一棟全体の評価額に乗ずる割合は、130㎡/(2,000㎡+600㎡)となります。

固定資産税は地域によって多少の差がある

固定資産税の基本となる固定資産の評価額は、固定資産評価基準に基づき算出されますが、土地の補正の内容は市町村によって異なることもあり、家屋も物価水準の地域格差を修正する補正が行われます。

最終的には市町村長が、固定資産税評価額と税率を決定するのですが、税率も標準税率と異なる税率を市町村の条例で定めることができるため、固定資産税額は地域によって多少の差が発生することがあります。

固定資産税は変動する?

固定資産税は、基本となる評価額の見直しによって変動します。

評価額は適正な時価が趣旨

固定資産税の課税は、固定資産そのものに着目して行われます。これは固定資産の価格に応じた課税を行うということであり、固定資産の価格は適正な時価によって把握されるものとなります。

固定資産税評価額は、公示時価の70%の水準を目安としています。

土地・家屋は3年ごとに評価替え

固定資産税算出の基本は固定資産の価格ですから、本来は毎年評価を行って適正な時価の把握に努める必要があります。しかし、対象となる固定資産は大量に存在するため簡素化と課税のコスト削減の観点などから、土地・家屋については3年ごとに評価額を見直す評価替えの制度を採用しています。なお、平成30年度は評価替えの年度でした。

償却資産は取得金額を基本として経過年数に応じ、定率法により償却

償却資産は、納税義務者から申告のあった資産について、資産の取得金額を基本として経過年数に応じて減価償却を行って、1月1日現在の評価額を算出し、その評価額に税率を乗じて固定資産税を算出します。

固定資産税の優遇措置とは?

固定資産税には用途や仕様、建築時期などによって税額の負担が軽くなる軽減措置の特例適用があります。

住宅用地の軽減措置

住宅用地は、土地面積などの条件によって小規模住宅用地と一般住宅用地の特例があり、納税者の負担を軽くするために軽減措置が適用されます。

小規模住宅用地の要件と減額について

住宅やアパートなどの住宅用地で、一戸当たり200㎡以下の部分については、小規模住宅用地の特例が適用されて税負担が軽くなります。

小規模住宅用地の特例が適用されると、固定資産税評価額に6分の1を乗じた価額が課税標準額となります。

例えば、評価額が6,000万円の180㎡の宅地の課税標準額は、6,000万円×(6分の1)=1,000万円となることから、固定資産税は特例適用前の6分の1に軽減されます。

一般住宅用地の要件と減額について

住宅用地で一戸当たり200㎡を超えている部分については、一般住宅用地の特例が適用されます。一般住宅用地の特例が適用されると、適用部分については固定資産税評価額に3分の1を乗じた価額が課税標準額となります。

新築住宅に対する減額措置

一定の要件を満たす新築住宅に対しては、新築後一定の期間、固定資産税を減額する措置があります。

減額措置の適用が受けられる住宅は、居住部分の床面積割合が1棟全体の50%以上であり、一戸につき居住部分の床面積が50㎡以上280㎡以下であるという要件を満たすことが必要です。なお、貸家住宅の場合は一戸につき40㎡以上280㎡以下という要件になります。

減額される固定資産税額は、居住面積が120㎡以下の住戸については固定資産税額の2分の1が減額となります。居住面積が120㎡を超える場合には、120㎡部分に相当する固定資産税額が2分の1減額となります。

減額される期間は新築から3年間(認定長期優良住宅の場合は5年間)で、3階建以上の耐火、または準耐火の住宅の場合には5年間(認定長期優良住宅の場合は7年間)となります。

耐震建て替えに関する減額措置

1982年1月1日以前から存在する家屋を取り壊して、2020年3月31日までに建て替えを行った住宅について、要件を満たしたものについては、新築から3年間固定資産税が全額減免となります。なお、適用要件は厳しく、一部緩和される要件もあるため、市町村にて要件を詳細に確認されることをおすすめします。

最後に

固定資産税の課税の仕組みは複雑なため、様々な疑問や悩みがあることと思います。毎年納める税金ですから、気持ち良く納税するため、疑問や悩みの解決に役立ちましたら幸いです。

監修者:添田 裕美(税理士)