「自己資金ゼロで年間家賃収入1000万超え!」などというフレーズとはほど遠い、地道な不動産投資を始めて2年の新米大家「naanan」です。

専業主婦歴は20年ほどの大ベテランです。
ここでは、主婦業しかやったことのない私が不動産投資を始め、法人を立ち上げて事業家になるまでの道のりを振り返っていきたいと思います。

前回のお話の続き、「融資条件の調整」からです。

第2章をまだご覧になっていない方はこちらから

融資条件の問い合わせ

不動産投資セミナーなどに行くと、「とにかく長い期間、貸してくれるだけ借りた方がレバレッジの効いた投資ができる!」と言われました。

しかし、長くたくさん借りるということは、その分利息は増えますし、残債の減りが遅くなります。5年後の残債、10年後の残債を出していくとよくわかりました。

売りたいと思った時に残債が大きいとそれ以上で売るのが難しくなるのではと不安になりました。

売却時に損切りするつもりで、キャッシュフローを貯めておくという方法もあります。しかし、初心者の私はその部分がどうしても納得がいきませんでした。

色々と考えても具体的な融資条件が分からないとシミュレーションのしようもないと思い、実際にどれだけ借りられるのか、どのような条件で借りられるのか、銀行に問い合わせてみることにしました。

メインバンクは都銀ですが、近隣に支店がなかったため、とりあえず近くの地方銀行に飛び込みで行ってみました。2つ行きましたが、その対応は全く違うものでした。

1つ目の銀行は、

「不動産投資ローンは個人属性よりも建物の価値が大きな判断基準になるため、物件情報を持って来てくれないと何も言えない」
「頭金を2割程度入れてもらわないと厳しい」

などと言って、ほとんど取り合ってくれませんでした。

2つ目の銀行は、

主人の属性(年収や勤続年数、会社の規模、個人資産など)を見て、「融資は可能だと思います。細かい条件はやはり物件情報と合わせなければ何とも言えませんが」と言い、非常に前向きに検討してくれる感じでした。

「仮のものでも良いので物件情報を提示してくれれば粗方の融資条件も出せると思います」と言ってくれたので、少し気になっていた物件の詳細資料を取り寄せて融資条件を出してもらいました。

おおよその期間と金利の提示と、どのような物件であれば期間が延ばせるとか、自己資金は最低どのくらいあれば良いなど、具体的な数字で説明してくれました。

大体の融資条件が分かったところで、本格的な物件探しの始動です。

▶ポイント1:融資条件は金融機関ごとに異なるため、複数検討してみることが重要

 

事業計画書から学ぶこと

銀行の出してくれた融資条件を信頼できる不動産会社に伝えると、かなりの好条件だと言ってくれました。そして、気になる物件があればすぐにその条件を適用して事業計画を立ててくれました。

当然ですが、事業計画では税引き前のキャッシュフローしか出ません。税金はキャッシュフローに対して税率分引かれるのではなく、家賃収入から経費や減価償却費を引いた金額に対してかかります。

現金で購入していれば問題ないのですが、借り入れをしている場合は注意が必要です。

キャッシュフローは100万でも確定申告上の黒字が300万であれば税金は300万×税率となるのです。この辺の細かいことは誰も教えてくれないので独学で勉強しました。

でも、ここは最も重要で見落としてはならないポイントです。税率が30%であれば90万の税金となり、キャッシュフローは10万になってしまいます。これを計算に入れておらず数年で赤字転換してしまう素人投資家が多くいるようなので注意しましょう。

我が家の場合、主人の所得税率がかなり高かったので、その税率で引かれるとキャッシュフローが微々たるものになる事がわかり、新たに大きな壁にぶつかってしまいました。

▶ポイント2:税引き前キャッシュフローでなく、税引き後キャッシュフローで考える

 

法人立ち上げを検討

税引き後のキャッシュフローを知る事で、「法人を立ち上げる」という新たな選択肢が生まれました。

中小法人税は20%程度なので主人の個人所得税率よりも随分と低くなります。これはいいかもと思い、早速税理士相談に行きました。色々な意見が聞きたかったので2つ行きました。

法人化すると税金は確かに安くなりますが、専業主婦である私が扶養から外れると社会保険料など、かなりの支出が増える事がわかりました。

確か、年間に40万弱くらいだったと記憶します。更に、住んでいる地域によって多少誤差はありますが、年間に8万円程の法人事業税も払わなければなりません。しかも、これは事業収入が赤字であっても払わなければならないのです。

法人化すれば、所得分散などにより法人税を下げることはできますが、それ以外のランニングコストがかなりかかる事が分かったのです。

八方塞がり気分で訪れた2件目の税理士さんに状況を説明すると、扶養を外れずに法人の代表をする方法があると言われました。会社から給料を貰わなければ扶養から外れることも、社会保険料を払う必要もないと言うのです。

我が家の場合、投資の目的は寝かせていた貯金の有効活用と、老後の年金代わりであるため、今すぐ現金が欲しいわけではありませんでした。

そのため不動産収入は貯蓄として会社の口座にストックし、自由に使えなくても困らないと考えたのです。

もちろん、収支が黒字になり安定した経営ができるようになれば、相応の役員報酬を得て社会保障費や税金を納めなければなりません。

役員報酬ゼロにこだわりすぎると経営状態が悪いとみなされ、銀行に与える印象が悪くなってしまいます。

それにより追加融資などが受けられなくなれば結果的に本末転倒になってしまうこともあります。

こうして、法人化のメリット・デメリットを理解した上で、自分たちの場合は法人化した方がいいだろうという結論に至ったのです。

不動産投資と法人化は一部でセットのように扱われていることがありますが、誰もが法人化した方が良いわけではありません。

法人化すれば申告などが複雑になり、税理士さんにお願いする事になります。個人の所得税率と法人税率の違いだけでなく、法人住民税や法人事業税(市町村によって有無や金額に差異あり)などの事業者が納めなければならない税金、税理士費用といった支出がある事も考慮しなければいけません。

サラリーマン+専業主婦=奥様社長の法人

これを勧めてくる業者さんがいますが、自分たちの状況や不動産投資に対する目的などによって、その方が良い場合と悪い場合がある事を知っておいてください。

▶ポイント3:不動産投資において法人化は万能ではない

 

気になる物件発見!綿密なシミュレーション

色々な方面から自分たちの向かいたい方向や目的、そのために最善と思われる手段などが見えて来るようになり、物事が具体的に進んで行くようになって来ました。

準備は整ったので、あとは運命の物件に出会うのを待つばかりです。とはいえ、待っていてもいい物件は降ってこないので、とにかく積極的に動き回って情報をかき集めました。

この頃になると、投資物件を探すと言う感覚が身について来ました。自分が住む家ではない物件の見方。

恐怖心を持ちながら、初めて不動産投資を始める人は誰もがぶつかる壁かと思います。並べられた数字だけをみて単なる投資と判断する人にはぶつからないであろう壁ですが、大家さんとして長い目で不動産投資を堅実に進めていきたいと考える人にとってはとても重要なポイントです。

物件を探す際は、駅から徒歩何分、築年数、間取り、家賃など数字で判断できる材料だけでなく、エリアの治安や生活環境の充実度、道路付けや土地の形など、こだわりだすときりがないほどの項目があります。

もちろん、全ての条件を満たすに越したことはないのですが、条件を求めてばかりではいつまでたっても気にいる物件には出会えません。そこで、優先順位をつけ、妥協点を見つけると言う作業が必要となるのです。

「理想を追い求めて妥協点が見つけられずに踏み出せない方が沢山いる」と、とある不動産会社の方が言われていました。

しっかりと自分なりの優先順位をつけておかなければ、例えいい物件が出てきても決断する事ができず、チャンスを逸してしまいます。

ポイント4:良い物件との出会いには、優先順位づけと妥協点と決断力が必要

第4章へ続く

【記事筆者】

naanan
naanan
アンバランスな3つの顔を持つ女「naanan」です。
・3人の子供を持つ専業主婦
・大学で学んだマーケティングや経営の知識、ゴルフや英会話などの趣味を生かした執筆活動を行うフリーランス
・不動産賃貸業を営む会社社長
遊びも仕事も全力で頑張り、実体験を生かした記事をお届けしたいと思います。