10~35年ほどに渡って支払い続ける住宅ローン。支払い期間が長いため、「病気やけがをして働けなくなったらどうしよう」という健康上の不安や、「火事や地震で建物が壊れてしまったらどうしよう」という不慮の災難に関する不安がつきまといます。

住宅ローン支払い中の不安に応えてくれるのが、生命保険や火災保険などの保険商品です。住宅ローン利用中に活用できる保険商品の種類と保障内容、選ぶ上での注意点についてまとめました。

団体信用生命保険の仕組みと役割

ほとんどの金融機関では、住宅ローンを利用する条件として「団体信用生命保険(団信)の審査に通過すること」と「団体信用生命保険に加入すること」の2つが課せられます。住宅ローンを利用する上で非常に重要なポイントともなる“団体信用生命保険”とは何なのか、どのような方が利用できるのかについて探っていきましょう。

団体信用生命保険の目的

団体信用生命保険とは、住宅ローン専用の生命保険です。住宅ローン返済期間中に住宅ローン契約者が死亡もしくは高度障害の状態になった場合、団体信用生命保険に加入しているならば以後の返済が全額免除され、なおかつ、住宅の権利は契約者や契約者の相続人のものになります。

団体信用生命保険の特徴

死亡や高度障害で働けなくなったときのために加入する団体信用生命保険。万が一に備えて、ぜひとも加入しておきたい生命保険です。団体信用生命保険には、次の2つの特徴があります。

債務額に応じた特約料負担で万一に備える保障を確保

団体信用生命保険の保険料は、住宅ローンの借入額(債務額)によって決まります。「債務額×2%」と設定されていることや「適用金利+0.1%」などと住宅ローンの金利に上乗せされて設定されていることが多いです。金融機関によっては、すべての住宅ローン契約者は団体信用生命保険に加入することが前提となっているため、既に金利に含まれている場合もあります。

万一の際は、残債務が弁済され、家族等に負担が生じない

住宅ローンの返済期間中に契約者が死亡あるいは高度障害状態になると、団体信用生命保険から住宅ローンの残債がすべて弁済されるため、遺された家族に金銭的な負担が生じないようになっています。もちろん、残債が免除されても、住宅の権利は残ります。遺された家族が住む場所を失うということもありません。

加入資格

団体信用生命保険に加入するためには、団体信用生命保険で要求される審査に通過しなければなりません。団体信用生命保険は、健康上の問題が生じたときに保証が提供される保険ですので、「健康上の問題がないこと」が審査においてもっとも重視されます。特に糖尿病や心疾患、脳疾患のように根治が難しく、将来的に高度障害になる可能性が低くはない持病がある方は、団体信用生命保険の加入が難しくなることがあります。

ただし、団体信用生命保険の審査に通過しなかったとしても、必ずしも住宅ローンを利用できないわけではありません。金融機関によっては団体信用生命保険加入不要の住宅ローンを提供していることもありますし、そもそも団体信用生命保険の審査基準は保険会社によって異なりますので、他行の住宅ローンと提携している団体信用生命保険になら加入できることもあるのです。

団体信用生命保険の種類と保障内容

団体信用生命保険には、大きく分けて3つの種類があります。それぞれの保障内容の違いについて探っていきましょう。

通常の団体信用生命保険

特約が付かない通常の団体信用生命保険に加入すると、死亡したときと高度障害になったときのみ、保険が適用されて、残債免除と住宅の権利確定が実行されます。特約付きの団体信用生命保険と比べると保険料が安く、少ない負担で保証を受けられることが魅力です。

三大疾病特約付団体信用生命保険

死亡したときと高度障害になったときだけでなく、悪性新生物(ガン)と脳卒中、急性心筋梗塞の三大疾病に罹患し、各保険会社が定める状態になったときも保険が適用される団体信用生命保険が、“三大疾病特約付団体信用生命保険”です。

保険会社によって多少の差はありますが、悪性新生物に対しては「生検で皮膚ガン以外のガンと診断されること」、脳卒中と急性心筋梗塞に対しては「診断が確定してから、60日間以上の労働制限を受けること。あるいは、脳卒中もしくは急性心筋梗塞の治療のための手術を受けたこと」が保険適用の条件となっていることが多いです。保険料は、通常の団体信用生命保険と比べると、若干高めになっていることが多くなっています。

八大疾病特約付団体信用生命保険

“八大疾病特約付団体信用生命保険”とは、悪性新生物と脳卒中、急性心筋梗塞の三大疾病に加え、糖尿病、慢性腎不全、高血圧性疾患、肝硬変、慢性膵炎の5つの疾病に対しても、特定の状態になると保証が適用される保険です。保険会社によっては、慢性膵炎を除く7つの疾病に罹患し、特定の状態になったときに適用される“七大疾病特約付き団体信用生命保険”を提供していることもあります。

保険料は、通常の団体信用生命保険や三大疾病付き団体信用生命保険と比べると高くなっていることが多いです。そのため、通常の団体信用生命保険は無料(実際は、最初に提示される金利に、すでに保険料が上乗せされている)で提供されている住宅ローンでも、八大疾病付き団体信用生命保険への加入を希望すると、さらに0.3%程度の金利が上乗せされることが多いのです。

団体信用生命保険の注意点

団体信用生命保険は無条件に加入すれば良いというわけではありません。団体信用生命保険に加入する前に、必ず次の2点をチェックしてください。

団体信用生命保険の保障内容を把握

団体信用生命保険の保障内容は、保険商品によって異なります。保険が適用される疾病や心身の状態が異なることもありますし、疾病の種類や心身の状態によっては住宅ローンの残債すべてが免除されず、一部の支払いが残ることもあるのです。保障内容を熟読し、リスクや保険でカバーできない点について事前にしっかりと把握しておきましょう。理解が難しい部分や気になる点については、かならず加入前に融資担当者に尋ねておいてください。

加入済み生命保険との重複を確認

すでに団体信用生命保険以外の生命保険に加入している方は、現在加入中の保険と新たに加入しようとする団体信用生命保険の保障内容が重複している可能性もあります。保険商品によっては、重複しているときは保証が受けられない(適用する保険を1つのみ選択しなくてはならない)ものもありますので、既加入の保険の解約も視野に入れて検討してみましょう。

住宅ローンを組むときの火災保険選び

住宅を購入し、住宅ローンを組む際には、火災や地震などに備えて火災保険に加入します。しかし、火災保険も団体信用生命保険と同じく、保険商品によって補償内容や適用条件が異なりますので、しっかりと吟味して選ばなけばなりません。

火災保険の主な補償対象

火災保険は、建物か家財、もしくは建物と家財の両方にかけることができる保険です。基本的には、火事になったときだけでなく、落雷や爆発、破裂による被害に対しても補償が適用されます。

火災保険は大きく2種類

火災保険は、保障が適用される災害の種類によって、次の2つに分類することができます。

住宅火災保険

火事と落雷、爆発、破裂、風災、雪災、雹災による被害だけ適用される保険が、住宅火災保険です。もっともシンプルな火災保険ですので、保険料も低く設定されています。

住宅総合保険

洪水や床上浸水、水漏れ、落下、衝突、暴動による被害など、幅広い状況における損害に対して総合的に適用される保険を“住宅総合保険”と言います。適用範囲が広がる分、保険料は高くなります。

地震は対象外、火災保険の特約として加入

火災保険の地震特約を付けていないときは、地震による被害や地震によって火災が発生したときに補償を受けることができません。地震に対する被害に備えるためにも、地震特約に加入しておきましょう。

補償内容と保険料で複数の火災保険を比較検討

火災保険の補償内容と保険料は、保険商品によって異なります。住宅ローンを契約するときに融資担当者に紹介されたものに決めてしまうのではなく、いくつかの保険を比較検討してから決定するようにしてください。

まとめ

住宅ローンに加入するときは、手続きが多く、審査も多いために、何かと忙しくなりがちです。そのため、内容を詳しくチェックせずに保険に加入してしまう方も少なくありません。しかし、補償内容が充実していないものや保険適用の条件が厳しすぎるものは、いざというときに必要な補償を受けることができません。どんなに面倒でも補償内容と適用条件はしっかりと確認するようにしてください。