毎年4月頃になると、市町村より、固定資産税の納税通知書が届きます。一括納付の納期限や、分割納付の初回納期限は、市町村によって異なりますが、4~6月末日頃が多くなっています。納付が滞ると、延滞金が発生することがあり、延滞が長期化した場合、固定資産差し押さえの可能性もでてきます。そういったリスクを避けるため、固定資産税の納期限や便利な納付方法について、解説します。

固定資産税の基礎知識

固定資産税は、毎年支払っている方もいれば、納税通知書を見たことがない方もいます。

そもそも固定資産税って何の税金

土地や建物を所有していると、その資産の評価額に応じて、毎年、市町村(東京都23区は東京都)より、固定資産税が課税されます。

固定資産税は賦課課税制度

固定資産税は、課税する市町村が、土地や建物を調査して固定資産税額を決定し、固定資産の所有者に納税額の通知を行う、賦課課税制度を採っています。そのため、固定資産の所有者は、固定資産税について、特に申告などをする必要はありません。

なお、新築の建物に関しては、完成後しばらくすると、建物の評価額と、それをもとに固定資産税額を決めるために、各市町村の調査員による家屋調査があります。

家屋調査は、立ち入り調査を行ない、部材や設備などから建物の評価額を決定します。調査を拒否した場合、外観調査や、類似家屋にあてはめる等により評価されて、結果的に評価額が高くなることがありますので、ご注意ください。

基準日は毎年1月1日

固定資産税は、毎年1月1日時点での、土地や建物の所有者に課税されます。

固定資産税の納期と支払い方法

納期や支払い方法は、どのようになっているのでしょうか。

納期は年4回

固定資産税には、4期分割納付と、一括納付があります。市町村から送られてくる納税通知書には、分割納付のための4期分の納付書が綴られています。一括納付をする場合、納税通知書に一括納付用の納付書が綴ってあるケースと、市町村に申し込みをするケースがあります。

納期については、地方税法(第362条)に、以下のような定めがあります(※1)。

固定資産税の納期は、四月、七月、十二月及び二月中において、当該市町村の条例で定める。但し、特別の事情がある場合においては、これと異なる納期を定めることができる。

そのため、大阪市や京都市など、多くの自治体では、下記のような納期限になっています。

〔地方自治体(東京都23区以外)〕

  • 第1期分・・・平成30年4月末頃
  • 第2期分・・・平成30年7月末頃
  • 第3期分・・・平成30年12月末頃
  • 第4期分・・・平成31年2月末頃

ただし、条文の但し書きにあるように、自治体ごとの事情によって、時期が若干異なり、例えば、東京都では下記のような納付時期になっています。

〔東京都23区〕

  • 第1期分・・・平成30年6月末頃
  • 第2期分・・・平成30年9月末頃
  • 第3期分・・・平成30年12月末頃
  • 第4期分・・・平成31年2月末日頃

他の自治体でも、同様に若干時期の異なることがありますので、正確な納付時期を知りたい方は、納税通知書にてご確認いただくか、もしくは、各市町村窓口にてご確認ください。

※1 出典:e-Govウェブサイト(http://www.e-gov.go.jp

普通徴収

固定資産税は、納税通知書に綴られた納付書を使用して、納税者が市町村窓口や金融機関等で納付します。

なお、固定資産税のように納税者本人が直接納付する方法を普通徴収と言います。これに対して、納税者本人ではなく(納税者に給与や公的年金を支払う)事業者が、給与等から差し引いて本人の代わりに納付する方法を特別徴収と言います。

固定資産税を払い忘れたときの対処法

ここまで、固定資産税の納付時期や納付方法についてご紹介してきましたが、支払いが遅れてしまった時は、どうなるのでしょうか。

固定資産税払い忘れで「延滞金」にご注意

固定資産税の支払いが遅れると、本来の納税額に加えて、「延滞金」が発生します。延滞金は、延滞期間の長さに応じて増えていきますが、延滞金の率は、延滞期間の長さに加えて、年度によって変わってきます。

延滞金の率は、以下の二つの期間で変わります。

納期限の翌日から1か月経過するまで

この期間の延滞金の率は、以下のようになります(※2)。

延滞金の率 = 特例基準割合 + 1%

特例基準割合とは、「財務大臣が告示する割合(各年の前々年10月から前年9月までにおける国内銀行の新規の短期貸出約定平均金利の年平均の割合)」に、1%の割合を加算したものです。つまり、この期間の延滞金の率と「財務大臣が告示する割合」の関係は、下記のようになります。

特例基準割合 = 財務大臣が告示する割合 + 1%

延滞金の率 = 特例基準割合 + 1% = 財務大臣が告示する割合 + 2%

「財務大臣が告示する割合」は毎年変わり、平成30年の割合は0.6%です(※3:平成29年12月12日告示)。よって、延滞金の率は2.6%となります。なお、延滞金の率は毎年変わりますが、上限は7.3%となっています。

延滞金の率については市町村によって、ホームページに延滞金の率が直接載っている場合と、特例基準割合または「財務大臣が告示する割合」が載っている場合があります。後者の場合は、上式にあてはめて、計算してみましょう。

つづいて、延滞金の計算方法ですが、納期限の翌日から1か月経過するまでの日数を、日数Aとすると、延滞金の額は、下記のようになります。

延滞金 = 固定資産税額 × 日数A × 延滞金の率 ÷ 365日 …… ①

※2 出典:東京都主税局 税金の支払い(http://www.tax.metro.tokyo.jp/common/tozei_nouzei.html#L8
※3 出典:財務省 平成30年の財務大臣が告示する割合(https://www.mof.go.jp/about_mof/act/kokuji_tsuutatsu/kokuji/KO-20171212-0332.pdf

納期限の翌日から1か月経過した後

この期間の延滞金の率は、以下のようになります。

延滞金の率 = 特例基準割合 + 7.3% = 「財務大臣が告示する割合」+ 8.3%

特例基準割合や「財務大臣が告示する割合」については、先に述べたものと同様です。平成30年の当該期間の延滞金の率は、「財務大臣が告示する割合」が0.6%であることから8.9%となります。

この期間の延滞金の額は、納期限の翌日から1月を経過した日から納付日までの期間の日数を、日数Bとすると、下記のようになります。

延滞金 = ① + 固定資産税額 × 日数B × 延滞金の率 ÷ 365日 …… ②

ここで、①は先に説明した1か月経過するまでの期間(日数A)の延滞金の額であり、総延滞期間と日数A、日数Bの関係は下記のようになります。

総延滞期間 = 日数A + 日数B

次に、具体的な期間ごとの延滞金の率と延滞金の計算例をご紹介します。

平成28年12月31日までの延滞金の率と延滞金の計算例

「財務大臣が告示する割合」は0.7%(※4)であることから、1か月経過するまでの期間(日数A)の延滞金の率は、下記のようになります。

特例基準割合 = 「財務大臣が告示する割合」 + 1% = 1.7%

延滞金の率A = 特例基準割合 +1% = 2.7%

納期限の翌日から1か月経過した後の期間(日数B)の延滞金の率は、下記のようになります。

特例基準割合 = 「財務大臣が告示する割合」 + 7.3% = 8.0%

延滞金の率B = 特例基準割合 +1% = 9.0%

ここで、固定資産税の税額が10万円、納期限が平成29年2月28日、納付日が平成29年5月16日の場合の、延滞金を計算してみましょう。

日数A = 31日(月によって28~31日)

日数B = 総延滞期間 - 日数A = 77日 - 31日 = 46日

延滞金 ={(100,000円 × 31日 × 2.7%)÷ 365日}+{(100,000円 × 46日 ×9.0% ÷ 365日)} = 229円 + 1,134円 = 1,363円

100円未満の端数、または全額が1,000円未満の延滞金は切り捨てのため、この場合、延滞金は1,300円となります。

※4 出典:財務省 平成29年の財務大臣が告示する割合(https://www.mof.go.jp/about_mof/act/kokuji_tsuutatsu/kokuji/KO-20161212-0362.pdf

平成29年1月1日以降の延滞金の率と延滞金の計算例

「財務大臣が告示する割合」は0.6%(※3)であることから、1か月経過するまでの期間(日数A)の延滞金の率は、下記のようになります。

特例基準割合 = 「財務大臣が告示する割合」 + 1% = 1.6%

延滞金の率A = 特例基準割合 +1% = 2.6%

納期限の翌日から1か月経過した後の期間(日数B)の延滞金の率は、下記のようになります。

特例基準割合 = 「財務大臣が告示する割合」 + 7.3% = 7.9%

延滞金の率B = 特例基準割合 +1% = 8.9%

ここで、固定資産税の税額が10万円、納期限が平成30年2月28日、納付日が平成30年6月9日の場合の、延滞金を計算してみましょう。

日数A = 31日

日数B = 総延滞期間 - 日数A = 101日 - 31日 = 70日

延滞金 ={(100,000円 × 31日 × 2.6%)÷ 365日}+{(100,000円 × 70日 ×8.9% ÷ 365日)} = 220円 + 1,706円 = 1,926円

100円未満の端数を切り捨てると、延滞金は1,900円となります。

困ったときは固定資産税の徴収猶予

災害などで一時的に固定資産税の納付が難しい場合、原則1年ですが、支払いの猶予が認められることがあります。

猶予の条件としては、下記のようなものがあります(※5)。

  • 財産が災害(震災、風水害、火災など)を受けたり、盗難にあったとき
  • 納税者や生計を一にする親族が病気になったり、負傷したとき
  • 事業を廃止したり、休止したとき
  • 事業に著しい損失を受けたとき
  • 上記に類する事実があったとき
  • 法定納期限後1年を過ぎてから課税されたとき

上記のものは東京都23区のものですが、大阪市や京都市など、他の市町村でも同様の条件による納税の猶予制度があります(※6※7)。

なお、原則として、猶予金額に見合う担保が必要となりますが、下記のように、担保が不要な場合がありますので、猶予制度を利用する際は、各市町村にご確認ください。

  • 猶予金額が100万円以下である場合
  • 猶予の期間が3か月以内である場合
  • 担保を提供することができない特別の事情がある場合

※5 出典 東京都主税局 納税の猶予の制度(http://www.tax.metro.tokyo.jp/shitsumon/tozei/index_s.html#s3
※6 出典:大阪市 納税の猶予制度(http://www.city.osaka.lg.jp/zaisei/page/0000370594.html
※7 出典:京都市 納税の猶予(http://www.city.kyoto.lg.jp/gyozai/page/0000196207.html

固定資産税の減免が受けられる場合もある

自然災害や火災などで被害を受けた際は、被害の状況に応じて、土地や建物の固定資産税の免除を受けられる場合があります。免除の判定基準は、各市町村によって若干異なりますが、大阪市では、被害面積、または復旧費用に応じて、固定資産税の2割~全額の免除を受けることができます(※8)。

※8 出典:大阪市 固定資産税および都市計画税の減免について(http://www.city.osaka.lg.jp/zaisei/page/0000233867.html

支払延滞時の注意点

先ほど、固定資産税の延滞額について計算例を示しました。固定資産税の軽減制度が少ない非居住用の固定資産は別として、一般住宅の土地や建物の場合、1年間滞納したとしても、延滞金自体は数千円~数万円程度に収まるでしょう。ですが、固定資産税の滞納の真のリスクは、土地や建物、銀行口座、家財など、財産の差し押さえにあります。

地方税法(第371条)では、固定資産税を延滞すると、納期限から20日以内に、市町村の徴税吏員は督促を発送しなければならないと定められています(※1)。

さらに、地方税法(第373条)では、督促状を発送した日から10日経過した日までに、納税者が完納しない場合、滞納者の財産を「差し押さえなければならない」と定めています。つまり、原則的には、固定資産税の滞納後一定期間経過すると、滞納者の財産差し押さえは市町村の義務となるのです。

実際は、督促状を発送したのち、市町村の徴税吏員より、滞納者に何度か電話や書状での催告があり、すぐに差し押さえに至ることは稀ですが、徴税吏員が滞納者の協力が得られないと判断した場合は、土地や建物の差し押さえや、家財、銀行口座などの財産差し押さえがあり得ます。

もし滞納してしまった場合は、督促状や催告を無視せず、早めに市町村に相談しましょう。

固定資産税のクレジットカード支払いってできる?できない?

固定資産税の支払いを、クレジットカードで行うことができれば、クレジットカード特有の様々なメリットを享受できますが、この支払方法を選ぶことはできるのでしょうか。

固定資産税はクレジットカード払い可能

結論から言うと、市町村ごとに対応が異なり、東京都23区や大阪市、京都市などでは、クレジットカードの支払いに対応していますが、名古屋市や横浜市など、対応していない市町村も一定数あります。

なお、東京都の23区以外は、各市町村が納付先となります。小平市や立川市などのように、「Yahoo!公金支払い」経由でのクレジットカード支払いができる市も一部ありますが(※9)、平成30年度時点では、対応していない市町村が多いです。

徐々に対応する自治体は増えていますので、まずは納税先の自治体に問い合わせしてみてください。

なお、自治体によって、クレジットカードによる納付可能額に違いがありますので、ご注意ください。たとえば、納付書1枚当たりの納付金額が、東京都23区では、100万円までカードで支払い可能なのに対し、大阪市や京都市では、限度額が30万円までとなっています。

※9 出典:小平市 市税をクレジットカードで納付できますか(http://www.city.kodaira.tokyo.jp/faq/037/037469.html

クレジットカード納付手続きについて

納付手続きは、市町村によって異なり、自治体の支払い専用サイトにて支払う場合や、「Yahoo!公金支払い」経由で支払う場合があります。

また、大阪市では、納付書に記載のあるバーコードを、スマートフォンなどの端末で読み込んで手続きするのに対して、京都市は手入力で納付番号等を入力するなど、手続き方法も自治体によって異なりますので、各市町村のホームページで確認しましょう。

税金をクレジットカードで支払うメリット

固定資産税などの税金をクレジットカードで支払うメリットには、以下のようなものがあります。

自宅で納税が可能

自宅から、インターネットを利用して、24時間、自由なタイミングで納付可能です。

なお、市町村の窓口や、銀行、コンビニなどの店舗窓口での、クレジットカード納付は、平成30年度時点では、どこの自治体も対応していませんので、ご注意ください。

クレジットカードのポイントがつく

通常、クレジットカードを利用して買い物をすると、ポイントが付きますが、固定資産税のクレジットカード納付時も、同様にポイントが付きます。付与されるポイントは、カードごとに異なりますので、高いポイントが付くカードほど、お得になります。

なお、利用できるカードブランドは、自治体ごとに若干異なりますので、ご注意ください。大阪市や京都市などの多くの市町村では、下記のカードブランドが利用できます。

  • VISA
  • MasterCard
  • JCB
  • AmericanExpress
  • Diners Club

東京都23区では、上記に加えて、「TS CUBIC CARD」も利用可能です。

支払い時期を遅らせることができる

クレジットカードを利用すると、支払い日を翌月のカードの口座引き落とし日まで、遅らせることができます。

税金をクレジットカードで支払うデメリット

便利なクレジットカード納付ですが、デメリットはあるのでしょうか。

手数料がかかる

カードを利用した納付方法の場合、各市町村で定めるシステム利用料金がかかります。たとえば東京都23区と大阪市では、下記のような決済手数料・システム利用料がかかります。

領収書が発行されないポイントでお得に納付したいという方は、上記の手数料・利用料を上回るポイントがたまるクレジットカードを利用して支払うと良いでしょう。

クレジットカードでの納付を選んだ場合、領収書が発行されません。必要な方は、別の納付方法を選びましょう。

固定資産税のその他4つの支払い方法

ここまで、固定資産税のクレジットカード納付について説明してきましたが、他にはどのような納付方法があるでしょうか。

役所や銀行の窓口で現金支払い

固定資産税の基本的な支払い方法となります。納付書を持参して、窓口にて支払います。

銀行の口座振替で支払い

口座振替により、支払いなどの手間なく、自動払い込みで支払う方法です。納付忘れがなく、手数料もかからないため便利ですが、最初に銀行窓口にて口座振替の申込をする必要があります。また、申込が遅すぎると、口座振替の手続きが引き落とし日に間に合わないことがありますので、余裕を持って申込をしましょう。

ペイジーで支払い

ペイジー(Pay-easy)による電子納付に対応している市町村の場合、インターネットバンキングやATMなどでの納付ができます。

メリットとしては、ATMで支払いが可能なほか、インターネットバンキングを利用する場合、24時間、好きなタイミングでの支払いが可能です。クレジットカードでの支払いと異なり、手数料がかからないのも利点です。

ただし、クレジットカードでの支払いと同様、対応している市町村と、そうでない市町村があり、また、金融機関も利用の可否があるため、市町村への確認が必要となります。市町村が対応しているかどうかは、納付書にあるペイジーマークの有無で、判別することもできます。よく分からないという方は、窓口に問い合わせてみましょう。

なお、この支払方法を選んだ場合、クレジットカードでの支払いと同様、領収書が発行されませんので注意しましょう。

コンビニで支払い

身近で利用しやすいコンビニでの納付も可能です。多くのコンビニは24時間営業しているため、店舗に行く手間はかかりますが、時間を選ばず納付できます。

また、一部のコンビニでは、現金だけでなく、電子マネーによる支払いも可能です。セブンイレブンでは「nanaco」カード、ミニストップでは「WAON」カードによる支払いです。カードに電子マネーをチャージする際に、ポイントが貯まり、かつ手数料もかかりませんので、オススメの支払い方法です。

なお、納付書1枚当たりの納税額が30万円までの納付書のみコンビニで支払いできます。あまりないケースとは思いますが、お支払いの際はご注意ください。

最後に

以上、固定資産税の納期や、延滞した際のデメリットを中心に解説してきましたが、いかがだったでしょうか。

延滞金の計算例をご紹介した際にも述べましたが、事業用はともかく、一般住宅の固定資産税の延滞の場合、延滞金の額自体はそれほど大きいものではありません。ただし、問題となるのは、延滞に対する督促と、その後に待ち受ける土地や建物、銀行口座や家財などの差し押さえです。

支払いが困難な時は、各自治体の担当窓口に相談するなど、早めに支払いの意志を示すことが大事です。相応の理由がある場合、分納など、無理のない返済方法にしてもらえることがあります。

また、先に述べたように、災害などで支払いが難しい場合は、納税の猶予や減免の制度もあります。まずは電話でも良いので、担当窓口に相談してみましょう。