希望通りの家に住みたいなら、やはり建売住宅ではなく注文住宅がベストです。しかし、予算が無限大にあるわけではない限り、注文住宅なら希望通りの家が建てられるというわけではありません。注文住宅を注文する前に知っておきたい全国的な相場と価格帯ごとの特徴、価格の内訳、選び方についてまとめました。

注文住宅の相場と価格帯ごとの特徴

実際に注文住宅は、どの程度の物件がどの程度の価格で建てられているのでしょうか。全国平均床面積と建築費、価格ごとの特徴について探っていきましょう。

全国平均床面積と建築費

住宅金融支援機構の調査によりますと、2017年度のフラット35の利用者の中ですでに保有している土地で注文住宅を購入した方は全体の17.5%でした。土地付き注文住宅を購入した方(31.9%)と合わせると、自分で間取りや外観を決める注文住宅を購入した方は、全体の50.4%にもなります。

注文住宅の全国平均床面積は128.2㎡で、2016年度の調査結果(129.4㎡)と比べると若干狭くなっています。また、すでに保有している土地に注文住宅を建てた場合の平均建築費は約3,359万円で、土地付き注文住宅を建てた場合は土地代も含めて約4,039万円でした。なお、いずれの価格もここ5年以上は右肩上がりに増えています。

※出典元:住宅金融支援機構「2017年度 フラット35利用者調査」

1,000万円台の注文住宅の特徴

平均建築費は3,000万円以上ですが、条件によっては1,000万円台で注文住宅が建てられないわけではありません。建築費は家の形に大きく左右されるため、凹凸の少ない長方形や正方形のシンプルな外観の家になることが多いです。また、壁や外構がシンプルに単一素材になるだけでなく、内装もシンプルかつもっともリーズナブルな素材で統一されるでしょう。

2,000万円台の注文住宅の特徴

希望の全てを叶えることは難しいかもしれませんが、1,000万円台と比べると予算に余裕があるため、より希望に近い住宅にすることが可能です。しかし、床面積がある程度広い家の場合は、2,000万円以上の予算をかけても極力シンプルな構造かつ内装になってしまいます。

3,000万円台の注文住宅の特徴

3,000万円台のお金をかけることができれば、全国の平均的な注文住宅の価格帯ということもあり、比較的希望している条件を満たすことができます。外観を少しこだわることや内装を少し複雑にすることも可能です。しかし、床面積が広い場合や敷地が広く外構にお金がかかる場合は、3,000万円台では思うような住宅が作れない可能性があります。

4,000万円台の注文住宅の特徴

4,000万円台のお金をかけると、床面積や敷地面積にもよりますが、大抵の場合で家の形や外観、使用している素材の質など、細部まで妥協せずに住宅を造ることが可能です。もちろん、使用する素材によっては、価格は天井知らずに増えていきますので、予算に合わせて適切な選択をするようにしましょう。

注文住宅で支払う費用の内訳

注文住宅といっても、単純に住宅にかかるお金だけを出せば購入できるわけではありません。注文住宅購入の際には、次の費用がかかります。

土地の購入代金

家を建てるための土地を所有していない場合は、土地購入代金も必要です。ただし、土地ならどこでも良いというわけではありません。住宅には不向きな土地もありますし、建築制限が厳しく、希望通りの住宅を建てられない可能性もあります。また、建築制限が厳しくなくても、整地や水はけ問題の処理に費用がかかってしまう土地もあります。

不動産業者によっては注文住宅を建てるため専用の土地を販売していることもありますので、土地に時間や手間をかけたくないひとは、土地付き注文住宅を検討してみましょう。

家の建築費

建築材料費や施工代だけでなく、設計料や地盤調査費用もかかります。注文住宅の建設予定地に住宅が建っている場合には、解体工事費やゴミ・廃材の処分費用も請求されます。

なお、ハウスメーカーに注文住宅を依頼する場合は、ハウスメーカーの社員が設計を担当しますので、“設計料”として別途請求されないケースが多いです。しかし、その分、他の費用が高めに設定されていることも多く、設計料がないからといってお得になっているわけではありません。一方、工務店や建築事務所に依頼する場合は、“設計料”が別途請求されます。しかし、建築資材費や施工費ごとに交渉の余地があることも多いので、トータルで見るとハウスメーカーを利用する場合と費用に大きな差はありません。

諸費用

注文住宅の費用は、土地代と住宅代だけではありません。建売住宅を購入するときも同じですが、土地も合わせて取得する場合は“登録免許税”がかかりますし、また、すでにある土地に住宅を建てる場合でも住宅ローンを利用するなら、抵当権を設定するために“登録免許税”がかかります。

抵当権の設定業務は有資格者でなくてもできますが、間違いがあってはいけませんので、大抵、金融機関側が紹介してくれる司法書士に手続きを依頼します。その際、数万円~20万円ほどの“司法書士報酬”が発生します。

さらに、支払いは翌年以降となりますが、“固定資産税”と“都市計画税”も請求されます。その他、不動産会社の仲介で不動産を購入した場合は“仲介手数料”もかかりますし、“火災保険料”や“ローン保証料”、“引っ越し費用”、購入後の初年度は不動産取得税、現在住んでいる土地に住宅を建て替える場合は“仮住居の家賃”もかかります。

自分にピッタリな一戸建てを選ぶ方法

どのような住宅が良いかは、人によって異なります。また、個人にとって“良い住宅”であっても、予算や家族の希望などと考え合わせると、“適した住宅”ではない可能性もあります。

まずは、ご自身の中で“立地”と“内外装”、“値段”のいずれを重視するのか決定して下さい。重視するポイントが決まったら、以下の方法で自分にピッタリと合う注文住宅を見つけましょう。

立地にこだわりがある場合

良い立地とは、大抵の場合、土地代が高いものです。立地にこだわる場合は、注文住宅費に占める土地購入費が大きくなりがちですので、建築費はある程度抑えなくてはいけません。平均的な土地付き注文住宅の費用である4,000万円ほどで住宅を建てたいなら、建築費は1,000~2,000万円程度に抑える必要があるでしょう。

建築費を1,000~2,000万円にすると、当然のことですが、設備や間取りはシンプルになります。立地にも間取りや設備にもこだわりたい方は、頭金を増やすかローン期間を長くするなどの方法で、予算を少し増やせないか検討してみて下さい。

内外装の希望をなるべく叶えたい場合

立地よりも家そのものを重視している方は、建築費に少なくとも3,000万円はかかってしまいます。ただし、その分、立地にはあまり手をかけられませんので、学区や駅からの距離などの満足度が低くなる可能性があります。

また、床面積や敷地面積が広い場合には、3,000万円では希望通りの外装や内装を実現できない可能性もあります。建築業者としっかりと話し合い、予算内で希望に近付けていく工夫をしましょう。

とにかく安く抑えたい場合

「立地にも内外装にもこだわらない!とにかく安く住宅を建てたい」という方は、敷地面積があまりにも広い場合を除き、1,000万円台の建築費用で家を立てることになります。また、土地も購入しなくてはならない場合は、さらに予算が厳しくなってしまうこともあるでしょう。

しかし、どんなに安く抑える場合でも、登記費用や手数料、税金などもかかりますので、最低限1,000万円の資金は用意しておかなくてはなりません。住宅ローンを利用して注文住宅費用を準備する場合でも、初期費用に数百万円はかかりますので、資金がまったくない状態で住宅を購入するのは無謀と言わざるを得ません。

初期費用はなるべく自力で準備しておこう

初期費用もすべてローンに頼るという方法がないわけではありませんが、「頭金がない」だけでなく「初期費用も借りたい」という状況は、住宅ローンの審査に不利に働きますので、希望する金額全額を借りることは困難になります。注文住宅を建てるということは一生に何度も経験することではありませんから、なるべく理想を叶えるためにも、せめて初期費用程度は準備しておくようにしましょう。

まとめ

理想通りの注文住宅を建てるためには、予算を組むことや理想を叶える工務店やハウスメーカーを探すことも大切ですが、立地や内外装、価格のいずれをより重視するのか決定しておくことも大切です。ご家族と充分に話し合って重視するポイントを1つに絞り、ご家族みんなが納得できる住宅を作っていきましょう。

監修者:小川 和哉(ファイナンシャルプランナー)