住宅ローンの金利は、単に数字だけでは判断できません。変動金利2.5%のA行よりも変動金利2.7%のB行の方が、実質の金利が低いこともあるのです。住宅ローンの金利とは何なのか、また、適用金利はどのように決まるのか、そして、金利タイプ別の返済計画の立て方について解説します。

住宅ローンの金利とは?

そもそも住宅ローンの金利とは何なのでしょうか?住宅ローンを選ぶときに金利が重要視されるのは何故なのでしょうか。

住宅ローンの金利とは借りた金額に対する利子のこと

住宅ローンの金利とは、住宅ローンで借り入れた金額に対して発生する利子です。金融業者はお金を貸すだけでは利益になりませんから、金利を設定して、融資金額に応じた利息を利益として確保します。

金利が0.1%違うだけでもこんなに支払額が違う!

金利は低ければ低いほど利息が少なくなりますので、融資を受ける人にとってはお得になります。10万円を借りるだけなら、金利が0.1%違っても1年間で利息は100円しか変わりませんが、住宅ローンで3,000万円を借りるなら、金利が0.1%違うだけでも1年間で利息が3万円も変わります。住宅ローンは長期にわたって組むことが多いですので、35年ローン(元利均等返済方式)なら60万円以上も変わってきます。

参考:SBIホールディングス「住宅ローン 返済額シミュレーション」

住宅ローンの金利の種類

住宅ローンの金利は、住宅ローンの種類によっては最初に適用される金利が返済期間中ずっと続くとは限りません。金利の変化によって、“固定金利”と“変動金利”、“固定金利期間選択型”の3つの種類に分けることができます。

固定金利

最初に適用される金利が完済時まで続くタイプを“固定金利”と言います。金利が変化しませんので、返済計画が立てやすいというメリットがあります。また、住宅ローンの金利相場は変化していますので、相場が高くなると割安になるというメリットもあります。しかしながら、金利相場は高くなるとは限りません。相場が低くなると、固定金利で適用された金利が割高になってしまうというデメリットがあるのです。

変動金利

金利相場に合わせて変動するタイプを“変動金利”と言います。支払い時点の相場に合わせた金利で支払います(通常、1年に2回、金利の見直しが実施されます)ので、相場に比べて割高になることや割安になることは少ないです。しかし、契約時には金利の動きは読めないため、精密な返済契約が立てられないというデメリットがあります。

固定金利期間選択型

最初の数年間だけは固定金利で、借入開始からの一定期間(3年、5年、10年など)が過ぎてから変動金利になったり一定期間の固定期間を選択し直したりするタイプを“固定金利期間選択型”と言います。

固定金利は将来の金利変動を見据えて設定されていますから、今後景気が良くなるという見方であれば固定金利は高く設定され、景気が悪くなるという見方であれば変動金利より低い金利になる事があります。比較的短期間の先行きを推測しやすい短期の固定金利期間選択型では変動金利より低い金利が設定される事もあります。

固定金利期間選択型を選択すると一定期間で借入当初の金利が終了し、期間満了時の金利で返済額を再計算しますので、金利が上昇した場合には負担が増えてしまうというデメリットもあります

住宅ローン金利の内訳とは

住宅ローンの金利は、金融機関の店頭で提示されている金利が適用されるとは限りません。店頭で提示されている金利をベースに、いくつかの操作が実施され、適用金利が決定するのです。住宅ローン金利を正確に理解する上で必ず知っておきたい5つのポイントを紹介します。

店頭金利

“店頭金利”とは、市場金利を元に金融機関ごとに設定している住宅ローンの金利です。基準となる金利ですので、“基準金利”と呼ぶこともあります。通常は、店頭金利からさまざまな割引が適用されますので、店頭金利が住宅ローン金利の上限値とも言えます。

金利引き下げ幅

金融機関によっては条件をクリアしていれば、店頭金利から幾分引き下げられた金利が適用されます。引き下げ可能な金利の幅を、“金利引き下げ幅”と言います。引き下げ可能な金利の数値だけを記すこともあります。例えば店頭金利が年2.5%のとき、金利引き下げ幅として年0.7%と表示してあるならば、審査によっては住宅ローンの金利が最低年1.8%になることもあることを示します。

適用金利

実際に適用される金利を、“適用金利”と言います。毎月の返済額や総利息額を計算するときは、この適用金利を用いて求めます。

特約期間終了後の金利引き下げ幅(優遇金利の下げ幅縮小)

“固定金利期間選択型”を選択した場合、固定金利が適用される期間を“特約期間”と呼びます。特約期間が終了すると、その時点の店頭金利によって適用される金利が決まりますが、契約時に金利優遇で適用金利が優遇されていた場合などは、期間満了で優遇金利が終了する為、優遇金利の適用が無くなったり、引き下げ幅が縮小されたりする事も多いです。

金利引き下げ(金利優遇)は基本的には平等に決められています。それ以上の金利優遇に対して、金融機関によって借入人の属性により優遇を受けられる可能性がある程度です。

金利はどうやって決まる?

では、大元となる“店頭金利”はどのように決まるのでしょうか。

基準割引率および基準貸付利率の影響が大きい

変動金利の店頭金利は日銀が公表する基準割引率および基準貸付利率に影響を受けます。その中でも特に短期プライムレートに影響を受けます。短期プライムレートとは、優良企業に1年未満の短期で貸し付ける際の金利で、この金利を元に約1%程度上乗せして変動金利の金利を決定します。

一方、固定金利の店頭金利は、日銀が発表する長期プライムレートや10年物の国債利回りに影響を受けます。これらの金利を元に、各金融機関がある程度の金利を上乗せして固定金利の店頭金利を決定するのです。

景気の動向にも左右される

短期プライムレートや長期プライムレートにどの程度の金利を上乗せするのかは、その時点での景気の動向にも左右されます。好景気が続くときには金利がある程度高くても住宅ローンを利用したいという方が増えますので、強気の金利設定を行う金融機関も増えます(インフレを気にするところは日銀なので銀行は少しでも利益を出そうと金利の上乗せを行うだけです)

一方、景気が低迷しているときは、住宅ローンを利用して住宅を購入しようと言う方も少なくなりがちです。そのため、金融機関側も、短期プライムレートや長期プライムレートに上乗せする金利を極力減らし、住宅ローン借入希望者が利用しやすい金利で住宅ローンを提供するように金利設定をすることが多くなります。(こちらも日銀の考え方)

金利水準の推移は?

民間金融機関は日銀の短期プライムレートや長期プライムレートを元に店頭金利を決定していますので、金融機関によって店頭金利が大きく変わることはありません。民間金融機関の店頭金利(変動金利)の平均を見てみると、1991年には年8.0%を超えることもありましたが、徐々に下降し、2009年以降は年2.475%で安定しています。

また、固定金利期間選択型も、ばらつきはあるものの3年固定だと年2.95%、10年固定だと年3.35%前後で安定しています。いずれも1990年代とは比較にならないほどの低金利ですので、現在は住宅ローン申し込みに適した時期と言えるでしょう。

参考:フラット35「民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等」

今は空前の低金利で借りるにはお得!

1990年代の後半から、日銀が発表する基準割引率および基準貸付率は空前の低率となっています。1995年には商業手形割引率や国債等を担保とする貸付利率は年1%を切り、その後も1%未満の利率で推移しています。金融機関による金利がほぼゼロに近いという意味を込めて、昨今の状況を「ゼロ金利時代」と呼ぶこともあります。

参考:日本銀行「基準割引率および基準貸付利率の推移公表データ一覧」

金利が低い金融機関はどこ?

すべての金融機関は日銀が発表する基準割引率および基準貸付利率を基準に店頭金利を決定しますので、店頭金利自体にそこまで大きな差はありません(店頭金利は大差がないがフラット35の場合は、低い金利で借り入れる事が出来る)。しかし、先程も解説しましたが、住宅ローンは借入額が大きいですので、年0.1%違うだけでも総返済額に大きな差が出てしまいます。少しでも、金利が低い金融機関を見つけて利用したいものです。

一般的に、人件費と店舗維持費を極力まで削減している“ネット銀行”は、店頭金利が低い傾向にあります。また、5年固定や35年固定の固定金利期間選択型よりも10年固定が低金利に設定されていることが多いですので、10年固定の固定金利期間選択型を検討してみてもいいと思います。

金利のタイプで先々の返済計画も変わる!

どの金利タイプを選ぶかによって、先々の返済計画も変わります。途中で繰り上げ返済を実施するのか、ローン完済までに定年を迎えるのかを吟味してから、最適な金利タイプを選びましょう。

固定金利は見通しが立てやすい

固定金利の最大のメリットは、完済時までの見通しが立てやすいという点です。計画的に返済していきたいと考えている方には、最適な金利タイプとなるでしょう。

変動金利は固定金利よりも金利が低い

変動金利の最大のメリットは、契約時の金利が固定金利よりも低い点です。今後、金利の見直しによって高金利が適用される可能性もありますが、現状が続くなら固定金利よりもお得に返済できるでしょう。

固定金利期間選択型は初期の支払額を抑えられる

固定金利期間選択型は、返済開始時の融資元本が多い時期に低金利が適用されますので、総返済額を低く抑えることが可能です。また、全期間固定金利よりも低金利に設定されていることも多いため、固定期間次第では固定期間中に繰り上げ返済を実施して、お得に完済することも可能です。

最後に

住宅ローンの金利は、過去に類を見ないほどの低金利時代が続いています。金利の負担を少なくされ住宅を購入したい方には、ベストのタイミングと言えるでしょう。金利タイプを吟味して、最適なローンを完成させましょう。

監修:吉野 裕一(ファイナンシャルプランナー)