何らかの事情で競売になった不動産を取り扱う資格“競売不動産取扱主任者”の難易度や合格率、取得費用、取得方法についてまとめました。また、競売不動産取扱主任者の資格を持っているとどのような業務ができるのか、どのような活躍を期待する人に適した資格なのかについても紹介します。

競売不動産取扱主任者って一体どんな資格なの?

宅地建物取引士や不動産鑑定士などの資格と比べると、あまり耳にする機会も少ない“競売不動産取扱主任者”。資格を取得することで可能になることと資格が作られることになった経緯について見ていきましょう。

競売物件や競売に関するアドバイスを行う事ができる資格

競売不動産取扱主任者の資格は、競売物件や競売に関するアドバイスを行うための資格です。不動産と一口に言っても、売買の仲介や賃貸住宅の管理業務、不動産投資、登記、相続など、さまざまな業務やトラブルが発生します。競売不動産取扱主任者は、不動産の中でも“競売”と“競売物件”だけに焦点を当て、アドバイスが必要な方に、深い知識に基づいた適切な助言を実施します。

国家資格ではなく民間の資格

競売不動産取扱主任者の資格は、国家資格ではありません。一般社団法人不動産競売流通協会が実施する民間の資格です。しかし、競売不動産取扱主任者の資格は、法務大臣が認証する裁判外紛争解決機関である“日本不動産仲裁機構”の調停人候補者の基礎資格に認定されていることからも、重要度の高い資格と言えます。

裁判外紛争解決の調停人になると、競売物件の引き渡し時の交渉業務ができるだけでなく、競売物件のリフォームの依頼を受けたり、占有者の引っ越し先の斡旋を任されたりする機会も増えます。不動産業に関わる方にとっては、競売不動産取扱主任者の資格を取得することが活躍の場を広げることにも繋がるのです。

競売取引でのトラブルを回避するためにできた資格

競売物件や競売に関する専門の資格はありません。不動産を取り扱うことができる有資格者なら、誰でも競売物件の販売や仲介に携わることができます。また、競売物件を購入する人へのアドバイスや代行業務なら、宅地建物取引士などの不動産関連の国家資格を有していなくても、誰でも実施することができます。競売代行業を開業する場合においてさえ、特別な資格が求められないのが現状なのです。

通常の不動産物件よりもトラブルを抱えやすい競売物件において、現在のように無資格者でも業務に関わることができるという状態は非常に危険と言わざるを得ません。また、通常の不動産業務に通じている専門家であっても、競売物件を扱った経験が少ない人ならば、誤った情報に流されて行動してしまう可能性があります。

競売物件や競売に関しての専門家が必要だという現状から生まれた資格が、“競売不動産取扱主任者”です。競売に関しての深い知識を有する人のみ取得が可能な資格ですので、競売に関わる人も競売物件の売買を希望する人も安心して業務を依頼することができるのです。

競売不動産取扱主任者を取得するのに向いている人はどんな人なのか

競売不動産取扱主任者は、主に現在、不動産業務に携わっている人もしくは今後、不動産業務や競売事業に携わろうと考えている方、一般投資家の方や、金融機関従事者の方に関連のある資格です。その中でも次のいずれかに関心があるなら、競売不動産取扱主任者の資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。

競売物件の専門家として活躍したい人

数ある不動産業務の中でも、不動産競売の専門家として活躍したい人は、競売不動産取扱主任者の資格を取得してみてはいかがでしょうか。競売不動産取扱主任者の資格を有しているなら、トラブルが起こりやすい競売物件に対して、自信を持って担当できるようになります。

不動産業の方で競売の取り扱いをしたい人

現在は競売物件を取り扱っていない場合でも、今後、競売物件を積極的に取り扱っていこうと考えているのなら、前もって競売に対する知識を深めるためにも競売不動産取扱主任者の資格を取得しておくことができます。

競売不動産取扱主任者の試験に受験するためには、特別な資格は求められていません。不動産に関する資格をまったく持っていない人でも、競売不動産取扱主任者の試験を受けることができます。

競売不動産取扱主任者の資格の難易度と合格率は?

競売不動産取扱主任者の資格試験の難易度はどの程度なのでしょうか。また、合確率はどの程度なのでしょうか。

基本は誰でも受験する事が可能な資格

先程も触れましたが、競売不動産取扱主任者の試験を受験するためには、特別な資格や経験は一切定められていません。年齢の規定もありませんので、「競売不動産取扱主任者の資格を取得したい」という気持ちさえあれば、誰でも受験することができます。

難易度は宅建士よりも取得しやすい

誰でも受験することができる資格とは言え、試験内容が簡単だというわけではありません。宅地建物取引士の資格を有している人、あるいは、宅地建物取引士の資格勉強をしたことがある人なら、さらに20~25時間程度の勉強が必要になります。しかし、難易度自体は宅地建物取引士よりも低くなっていいます。

不動産業などの実務経験がなくても受験ができる

競売不動産取扱主任者の資格は、保有する資格や経験に関わらず受験できますので、今まで一度も不動産業務に携わったことがない方でも試験を受けることができます。今までに一度も競売業務に携わったことがない方でも受験することが可能ですので、競売業務に興味のある方は受験してみましょう。

競売不動産に関する基本的な知識が必要

当然ですが、競売不動産取扱主任者の試験では、競売不動産に関する知識が問われます。しかし、実務がなくてもしっかりと勉強すれば理解できる範囲しか問われませんので、競売不動産に関する基本的な知識があればOKです。

試験範囲

競売不動産取扱主任者の試験では、不動産競売手続きに関する基本的な知識と民事執行法の概要、裁判所で交付される資料の理解、民事執行法以外の競売に関連する法律、競売不動産の移転や取得に関する税金について問われます。試験は50問で、いずれも4択で答えます。

気になる合格率は40%前後と意外と低め

競売不動産取扱主任者の合格率は、2015年度は1,922名が受験して736名が合格しましたので、38.3%でした。2016年度は1,985名が受験して759名が合格し、合格率は38.2%、2017年度は受験者総数が2,201名、合格者は890名で合格率は40.4%でした。毎年2,000名程度が受験し、合格率は約40%であることから、非常に難易度の高い資格ではないものの、あまりにも簡単な資格でもないことが分かります。

なお、合格基準は年度によって異なります。2015年と2016年は50問中30問に正解していれば合格しましたが、2017年は50問中32問に正解している必要がありました。試験勉強をするときは、点数だけにこだわるのではなく、どの程度理解しているかを客観的に評価しながら学んでいくようにしてください。

競売不動産取扱主任者を効率よく取得する勉強法は?

競売不動産取扱主任者の資格は、宅地建物取引士の勉強をしたことがある方なら20~25時間で学べる程度の内容です。しかし、宅建士の勉強をしたことがない方にとっては、さまざまな分野の勉強を一から始めなくてはなりませんので、特別に難易度が高い資格試験ではありませんが、学ぶべき分野が広く、分野の広さに応じて勉強時間も長くなってしまいます。効率よく勉強する方法を3つ紹介しますので、ぜひ短期間での資格取得を目指して下さい。

実務の勉強も必要、さらに法律の勉強が重要なポイント

不動産実務をしたことがない人でも取得できる資格ですが、競売手続きなどの実務についての問題が多数出題されます。また、民事執行法や民法、借地借家法、不動産登記法などの関連法律についての出題も多いですので、しっかりとマスターしておきましょう。

セミナーや講習を受けることも効率的にポイント理解できる

学習テキストも販売されていますが、競売の実務を経験したことがない方なら、どこが試験のポイントなのかがつかみにくいかもしれません。セミナーや講習を1度は受け、試験に出るポイントを効率よく抑えていきましょう。

予想問題集で対策

テキストを漠然と読んでいるだけでは、本番で力を発揮することができません。競売不動産取扱主任者試験の過去問題集は販売されていませんので、演習問題集を何度か解いて本番に備えましょう。

参考:競売不動産取扱主任者 問題集

競売不動産取扱主任者の取得の流れ

競売不動産取扱主任者の資格を取得するためには、以下の流れに沿って手続きをしなくてはいけません。年度によって締め切り期日が異なることもありますので、公式サイトを確認して、期日に遅れることがないようにしましょう。

受験案内の配布が行われるのでダウンロードする

受験案内は公式サイトからダウンロードできます。試験の流れを書面で確認しておきましょう。

参考:競売不動産取扱主任者 試験スケジュール

郵送で出願届を締切期日までに提出する

受験は、インターネットでも郵送でも申し込めます。なお、インターネット経由で申し込むと、申し込みが受理されてから、受験料(税込み9,500円)の振込先がメールで案内されます。

受験票が送付される

締め切り期日の約2週間後に、受験票が送付されます。郵便事情によっては数日かかることもあります。

試験会場に行き試験を受ける

試験会場で試験を受けます。なお、2019年度の試験会場は、全国で12ヶ所です。

ホームページで合格発表

公式サイトで合格が発表されます。合格は受験番号で発表されますので、かならず受験票を残しておきましょう。また、合格後、競売不動産取扱主任者の登録・主任者証を交付してもらうためには、宅建士の登録、または合格証が必要となります。

競売不動産取扱主任者のまとめ

競売不動産を扱う業務に従事している人も、仕事の幅を広げたい人も、競売不動産取扱主任者を目指してみてはいかがでしょうか。実務に関する問題も多く出題されますので、不動産業務に関わっている人は比較的容易に取得できるでしょう。