「いつかは自分の家を建てて住みたい」と考えている方は多いでしょう。しかし、本当に戸建て住宅を建てることはお得と言えるでしょうか。賃貸住宅で暮らしていくことと戸建て住宅を購入することはどちらがお得なのか、徹底的に検証します。

戸建ての賃貸と購入とでは毎月の支払いはどちらがお得なのか

自己資金一括で住宅を購入できれば良いのですが、ほとんどの方は住宅ローンを組んで住宅を購入します。そのため、賃貸住宅を借りる場合も戸建て住宅を購入する場合も、どちらも月々の支払いが発生します。月々の支払いはどちらがお得なのでしょうか。

最終的にはどちらもあまり差が出ない

住宅を購入する場合、頭金をどの程度出すか、また、ローン期間はどの程度にするかによって、毎月の支払い金額が変わります。しかし、頭金がほとんどない状態で20~35年の長期ローンを組む場合、同じ条件の物件で比較すると、大抵賃貸の方が月々の支払いが高くなります。

では、賃貸の方が月々の負担が大きいのかというと、そうでもありません。住宅を購入すると“修繕費”や“固定資産税”などのまとまった支払いが発生しますので、それらの支払いを月払いに分割したとすると、毎月の負担は賃貸も購入もほぼ変わらなくなります。

購入後も支払い続ける費用がある

戸建て住宅を購入した後、住宅メーカーによっては定期メンテナンスを無料で受けられることもありますが、そうでない場合は自費でメンテナンスを実施しなくてはなりません。また、特に修繕する必要がない場合でも、庭や屋根、太陽光発電などの設備等に、毎年お金がかかります。

賃貸は物件によって住居費を変えられる

一方、賃貸住宅では、管理会社や大家さんが大規模な修繕費を負担します。経年劣化が激しく、しかも大家さんが修繕を実施しないときは、別の賃貸住宅に引っ越すこともできます。

新築物件や新築に近い物件を選べば、修繕費をかけずにキレイな住宅に住み続けることが可能です。住宅を手に入れると修繕費が数百万円、場合によっては1,000万円を超えるリフォーム代がかかってくることもありますが、賃貸ならこのような維持費がかからないというメリットがあるのです。

長期的には戸建ての購入、短期的には賃貸がお得になる

毎月や年間の負担額は、同程度の物件を選ぶなら購入も賃貸もほぼ同額です。しかし、住宅ローンはいつかは完済しますので、長期的に見ると購入する方がお得ではあります。また、戸建て住宅を購入するときには、登記費用や手数料などさまざまな初期費用が数百万円単位で発生しますので、短期的に見ると賃貸住宅の方がお得と言えるでしょう。

とはいえ、先程も触れましたが、住宅は毎日劣化し、毎年何かしらのトラブルが発生しますので、メンテナンスにお金がかかります。住宅ローンを完済してようやく自分のものになった家は、すでにメンテナンスが必要で、美しいとは言い難い物件になってしまっている可能性があるのです。建て替えたり新しい住宅を購入したりすることまで考えるなら、長期的に見ても購入と賃貸のお得さは変わらないと言えるでしょう。

戸建ての購入と賃貸とでは初期費用に大きな差が生まれる

では、初期費用は、戸建ての購入と賃貸とどちらがお得なのでしょうか。賃貸であれば初回の家賃以外にも敷金や礼金、仲介手数料などがかかりますので、目安として家賃の4ヶ月〜6ヶ月程度が必要になります。家賃が15万円なら初期費用は60~90万円ほどがかかることになります。

一方、戸建て住宅を購入するときは、数百万単位で費用がかかります。初期費用だけを比べるなら、お得なのは断然賃貸住宅と言えるでしょう。

戸建ての賃貸は購入するよりも、老後に負担が多くなる

戸建て住宅を賃貸する場合は、購入するときのように“完済”がありませんので、いつまで家賃を支払い続けても自分のものになるわけではありません。そのため、定年退職をした後など、収入が著しく減ったときでも、家賃は変わらずにかかってきます。収入が減った後も同じ賃貸住宅に住み続けることは、経済的には大きな負担になるでしょう。

若いうちは賃貸、老後を考えると戸建ての購入が安心

一度、戸建てを購入すると、ローンの支払いが終われば毎月の負担が少ない状態(修繕費と固定資産税程度)で家を所有することが可能です。定年退職後や何らかの事情で働けなくなった後のことを考えるなら、戸建て賃貸に暮らすよりも、戸建て住宅を購入する方が安心でしょう。

しかし、あまりにも早く戸建て住宅を購入すると、老後に高額の修繕費やリフォーム代がかかったり、建て替えの必要性が生じたりする可能性があります。また、年齢が若いうちは転勤や転職、進学などで引っ越しをする機会もありますので、せっかく戸建て住宅を購入しても、定位置に暮らすことが困難になることがあります。若いうちは賃貸住宅に暮らして、ある程度の頭金を貯めてから、住宅購入を本格的に検討してみてはいかがでしょうか。

戸建ての賃貸か購入かを決める2つのポイント

戸建て住宅を賃貸するか購入するかを決定する要素は、年齢だけではありません。次の2つのポイントも熟慮してみて下さい。

どんなライフスタイルを歩みたいのか

人によって理想とするライフスタイルは異なります。さまざまな住宅や地域を経験してみたい方は、賃貸住宅を選ぶ方が良いでしょう。また、仕事の関係や子どもの進学に合わせて将来的に引っ越しもあり得る場合も、戸建て住宅を購入して人生の早い時点で居住地を定めてしまうよりは、賃貸住宅に暮らしてフットワークの軽い生き方をする方が合っています。

一方、家庭の事情や家族の希望によって、特定の場所に住み続けることが決まっている方もいるでしょう。特定の場所に住み続けることが決まっている場合は、早めに住宅を購入して、住宅にかけるお金がすべてローン返済に結びつくようにする方がおすすめです。

住宅購入のベストタイミングとは?

いずれは住宅を購入しようと考えている方にとっては、賃貸住宅の家賃を支払うことは無駄な支出に他なりません。賃貸住宅の家賃をいくら支払っても住宅そのものが手に入るわけではないのですから、家賃を支払う期間が長引けば長引くほど、無駄な住宅費は増えてしまいます。できれば、早いうちに住宅購入を決定し、住宅費を住宅ローンの返済に充当させるようにしましょう。

しかし、あまりにも早い時点で住宅購入を決定してしまうと、老後に大規模な修繕費や建て替え費が必要になる可能性があります。また、若いうちは収入も少ないことが多いですから、住宅ローンとして融資を受けられる金額もあまり多くはありません。一生住み続けることができる住宅を購入できるほどの融資を受けられるように、収入が増えた時点で、住宅購入を決定してみてはいかがでしょうか。

返済によるお金のリスクに備えること

住宅ローンを返済している途中に、病気にかかって入院したり、会社をリストラされて収入が一時的に途絶えたりする可能性があります。不測の事態が起こったときも住宅ローンを支払い続けることができるのかを吟味し、月々の返済額は、無理なく支払える金額に設定しておくようにしてください。

住宅ローンを組むときは、つい、借入可能額の上限いっぱいで借りようと考えがちです。しかし、借入上限額で借りるということは、客観的に見ても、「現在の収入で返済できるぎりぎり上限の金額」で住宅ローンを組むということですから、病気やリストラ、あるいはちょっとした減給でも、月々の返済が困難になってしまう可能性があります。無理なく返済できる金額を借りるのはもちろん、利息総額が高くなっても、あえて住宅ローンを長期で組むことで、毎月の返済額に余裕を持たせることも重要です。

あらゆるリスクを想定して毎月の住居費を決定しよう

また、賃貸住宅で暮らす場合も同様です。他の支出を節約すればどうにか支払える程度の家賃の物件を借りると、少しでも収入が下がってしまったり、自動車の修理代や子どもの入学費などの臨時支出があったりするだけで、月々の支払いが困難になってしまいます。

いつでも引っ越せるのが賃貸住宅のメリットでもありますが、引っ越す際には引っ越し代や新たな敷金礼金、不動産仲介料などがかかりますので、お金に困ったからといって安易に引っ越せるわけではありません。賃貸住宅であってもしっかりと家賃を吟味し、毎月無理なく支払える程度の住宅に住むようにしましょう。

まとめ

賃貸住宅が良いか戸建て住宅が良いかは、経済状況や年齢、ライフスタイルによって異なりますので一概に判断することはできません。しかし、家賃や返済額などの住宅費は、どのような場合であっても「無理なく支払える金額」におさえておく必要があります。万が一のことがあった場合を想定して、適切な住宅費で暮らせる住宅を選ぶようにしましょう。