不動産投資と株式投資は、キャピタルゲインとインカムゲインの両方が得られる投資方法です。それぞれの投資の仕組みと課税制度、メリット、デメリットについてまとめました。

キャピタルゲインとインカムゲインについて

投資による利益は、キャピタルゲインとインカムゲインの2つに分けることができます。キャピタルゲインとインカムゲインとは何なのか、また、投資を成功させるために両者をどのように捉えることが重要なのかについて探っていきましょう。

キャピタルゲインとは

キャピタルゲインとは、投資商品を売却することで得られる利益を指します。例えば、1億円で購入した土地を1億2,000万円で売却するなら、税金や手数料を考慮に入れないとすると、単純にキャピタルゲインは2,000万円と計算できます。

キャピタルゲインは売却益ですので、投資商品を売却するときの1回のみしか利益を得られません。利益を最大化するためにも、しっかりと売却タイミングを見極める必要があります。

インカムゲインとは

インカムゲインとは、投資商品を保有することで得られる利益を指します。例えば、1,000万円を定期預金として銀行に預けているとすると、年利0.05%の定期預金なら、1年間に5,000円(税引き前)のインカムゲインが得られます。

定期預金や普通預金の利息、株式や債券の配当金、投資信託の分配金は、いずれもインカムゲインです。インカムゲインはキャピタルゲインと比べると少額のことが多いものの、安定しておりなおかつ反復性があることが多いというメリットもあります。

トータルリターンを考えることの重要性について

投資を成功させるためには、キャピタルゲインとインカムゲインのトータルリターンで考えることが大切です。

インカムゲインは安定しているというメリットはありますが、大きな利益は期待しづらいです。反対にキャピタルゲインは利益が大きくなる可能性があるというメリットはありますが、反復性がなく損失を被ることもあるというデメリットがあります。いずれの利益が重要かということではなく、トータルで利益が出るように考慮していきましょう。

キャピタルゲイン狙い?インカムゲイン狙い?投資における3つのスタンス

トータルリターンが重要ではありますが、キャピタルゲインかインカムゲインのいずれかをメインターゲットにすることで、投資のスタンスが明確になることがあります。

キャピタルゲインを狙った投資手法

売却益をメインターゲットにした投資手法としては、金への実物投資やFX、仮想通貨等を挙げることができます。いずれも価格が上がったタイミングで売却し、差額を利益として計上します。

ただし、価格の変動を見極めることは重要ですが、「価格がもっとも上がったタイミングで売却しよう」という考えはリスクがあります。売却を控えている間に価格の下降局面に突入してしまうこともあります。例えば、「1米ドル=102円になったら売却しよう」というようにに目安を決めて、目標額になったらそれ以上の値上がりを待たずに売却しましょう。

インカムゲインを狙った投資手法

インカムゲインをメインターゲットにした投資手法としては、銀行預金や債券投資を挙げることができます。いずれも定期的に利益が支払われる仕組みになっていますので、積極的に売買などの投資活動をしなくても利益を得ることが可能です。

キャピタルゲインとインカムゲインの両方を狙った投資手法

キャピタルゲインとインカムゲインの両方を狙う投資手法もあります。その中でも特に株式投資と不動産投資は、実施している方も多く、メジャーな投資手法と言えます。

株式投資におけるキャピタルゲインとインカムゲイン

キャピタルゲインとインカムゲインの両方が狙える株式投資。銘柄の選び方と信用取引の注意点について探っていきましょう。

キャピタルゲイン狙い向けの株の特徴

銘柄によって、キャピタルゲイン狙いの株式とインカムゲイン狙いの株式があります。定期的な配当金ではなく、短期的な売却益(=キャピタルゲイン)狙いで株式投資をするならば、稼いだ利益を配当に回さず、自社の新たな投資に使う企業を選びましょう。

利益を配当ではなく企業成長に回しているということは、その分、企業がハイスピードで成長しやすくなるということでもあります。想定通りに成長した場合、株価も上昇しやすくなりますので、多額の売却益を期待できるのです。

インカムゲイン狙い向け

長期的に保有して配当金(=インカムゲイン)による利益を期待する場合は、業績が安定しており、配当金の割合が毎年増えている企業を選びましょう。5年、10年の長期的なスパンで見ると、緩やかに株価が上昇していることもインカムゲイン狙いの企業を見分けるポイントです。

信用取引のキャピタルゲインとインカムゲイン

現金や株式を担保として証券会社からお金を借りて株式を購入する“信用取引”。保有資産以上の株式を購入したいときや、買い注文ではなく売り注文から株式投資を始めたい(これから株価が下落しそうな株式で利益を得るため)ときに、有効的な投資手法です。

予想通りに株価が下落したときに売却すればキャピタルゲインが得られますし、配当金の権利確定日までに購入すればインカムゲインを得ることができます。ただし空売りの場合、未決済のまま配当金の権利確定日を迎えてしまうと、配当相当額を支払わなければならなくなり、インカムロス(保有損失)になりますのでご注意ください。

不動産投資におけるキャピタルゲインとインカムゲイン

不動産投資も、キャピタルゲインとインカムゲインの両方が期待できる投資手法です。ただし、リスクも少なくありませんので、充分に物件を吟味してから投資を始めましょう。

キャピタルゲイン狙いのみの不動産投資のリスク

売却益狙いで不動産を購入すると、不動産が値下がりすると損失がどんどん増えてしまいます。また、不動産価格が変化しない場合でも、固定資産税や不動産取得のためのローン利息などで損失を被ることになります。

つまり、キャピタルゲインだけを狙うと、固定資産税額やローンの利息、不動産購入時にかかった各種手数料、建物がある場合は建物の維持管理費などをすべて上回る価格まで上昇しない限り、利益を得られないことになってしまうのです。

不動産のインカムゲイン投資の安定性の高さ

一方、不動産のインカムゲインは安定しています。不動産そのものの価格に関係なく、借り手がついたら毎月家賃収入を得られますし、営業や管理を専門業者に任せてしまえば、手間や時間がかかることもありません。魅力的な立地の魅力的な物件さえ購入すれば、大抵の場合において安定したインカムゲインが入って来るのです。

キャピタルゲイン+インカムゲインの両方狙えるのが不動産投資の強み

不動産投資の強みは、キャピタルゲインとインカムゲインの両方が狙えることです。インカムゲインで月々の収入を得て、不動産価格が充分に上昇したら売却してキャピタルゲインを得ましょう。

また、株式や為替とは異なり、不動産価格はある程度安定していることも魅力です。株式や為替は数秒・数分タイミングが変わるだけで価格が大きく変化してしまいますが、不動産価格は数ヶ月~数年単位で変動していきますので、売り時を逃してしまうことは滅多にありません。

資産別キャピタルゲイン・インカムゲインに課税される税金について

キャピタルゲインやインカムゲインも、“収入”の一種です。収入に対しては相応の税金が課せられます。資産別の税金をまとめましたので、投資を開始する前にチェックしておきましょう。

不動産のキャピタルゲイン・インカムゲインへの課税

不動産のキャピタルゲイン(売却益)は、“譲渡所得”に分類されます。売却代金から不動産取得費用と売却にかかった手数料を差し引いて、譲渡所得を計算します。また、不動産のインカムゲイン(家賃収入)は、必要経費を差し引いて“不動産所得(雑所得)”として分類します。所得額に応じて5~45%の税率がかけられます。

【出典】:国税庁「所得税の税率」

キャピタルゲインの長期譲渡所得と短期譲渡所得について

譲渡所得の税率は、「不動産をどの程度の期間所有していたか」によって変わります。譲渡する年の1月1日時点で5年以上不動産を所得していた場合は“長期譲渡所得”となり、譲渡所得に対して15%の所得税と5%の市民税が課せられます。一方、譲渡する年の1月1日時点で5年未満不動産を取得していた場合は“短期譲渡所得”となり、譲渡所得に対して30%の所得税と9%の市民税が課せられます。

例えば、2014年の4月に不動産を取得したとします。その不動産を2019年の5月に売却するならば、2019年の1月1日の時点ではまだ不動産を取得してから5年が経っていませんので、“短期譲渡所得”となり、譲渡所得に対して30%の所得税と9%の市民税が課せられます。急激に不動産価格が上昇したときはタイミングを逃さずに売却することが大切ですが、ある程度安定しているときは、“長期譲渡所得”が適用される時期に売却する方が良いでしょう。

※2013年~2031年の間は、復興特別消費税として所得税額の2.1%が加算されて支払います。

【出典】:国税庁「土地や建物を売ったとき」

株式投資のキャピタルゲイン・インカムゲインへの課税

株式投資はキャピタルゲインには譲渡所得としての税金(復興特別消費税込みで20.315%)が、インカムゲインにも同率の税金(復興特別消費税込みで20.315%)が課せられます。

【出典】:国税庁「株式等を譲渡したときの課税」
国税庁「株式・配当・利子と税」

FX投資のキャピタルゲインへの課税

FXによる利益に対しては、先物取引にかかる雑所得等に分類され、復興特別消費税込みで20.315%が課せられます。

【出典】:国税庁「外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」

銀行預金への課税はあるのか?

預金も、利息などで利益を得たときは復興特別消費税込みで20.315%の税金が課せられます。また、外貨預金の元本に対しては課税されませんが、差益を得たらキャピタルゲインとして20.315%の税率で課税されます。

【出典】:国税庁「外貨建預金の貯入及び払出に係る為替差損益の取扱い」

最後に

各自の投資スタンスに合った投資手法を選ぶことが大切です。税金やリスクも念頭に入れ、手堅く利益を上げていきましょう。