マンションや土地・建物などマイホームを取得する際、私たちは住宅ローンを借ります。そのとき必要になるのが住宅ローンの「諸費用」です。住宅ローンの「諸費用」について聞いたことがある方、また聞いたことがあるけれど何を以て「諸費用」というのか、さっぱりわからない方もいるでしょう。ローンを借り入れして利息を支払うのに、更に支払うことになる「諸費用」とは一体何なのか。順を追って解説していきます。

金融機関に支払う費用

住宅ローンの「諸費用」は、大きく分けると金融機関に支払う費用、登記関係で必要になる費用、そしてその他の費用に大別できます。

ここではまず、金融機関に支払う費用について解説します。

保証料

住宅ローンは原則的に保証人を取らなくとも、個人に対して多額の資金を貸し付けて、20年から35年などの長期にわたる融資を行っています。これを可能にしているのが保証料です(ただし、所得を合算する家族、担保提供者あるいは共有者の方は保証人となる必要があります)。

各金融機関には所定の保証会社があります。そこに保証料を納めることで、利用者は第三者の保証人を付けなくても住宅融資が受けられるのです。そのため保証料は「諸費用」のなかでも金額のウェイトが高い傾向にあります。

保証料の料率は35年返済で2%強、30年返済で2%弱というところですから、3,000万円借りた場合は保証料が50万円後半から60万円少々、2,500万円借りた場合は50万円少々かかります。
およそ50万円もかかるのですから、保証料は「諸費用」の中でもまとまった大きな金額です。
※ネット銀行や一部金融機関では保証料がかからない場合もあります。

【一括払い方式】

借入れ時に保証料を全額支払うことを、「一括払い方式」、あるいは外枠方式とよびます。

【金利上乗せ方式】

また保証料には「一括払い方式」以外にも、融資金利に0.2%程度金利を上乗せする方法も選択できる金融機関もあります。これを「金利上乗せ方式」または内枠方式とよんでいます。

【「外枠方式」と「内枠方式」ではどちらがおトク?】

「金利上乗せ方式」は「一括払い方式」に比べて、初期負担が軽く済むという点で一時注目されました。しかし最終的にどちらがトクになるかは住宅ローンの返済の仕方に委ねられています。たしかにトータルでみると「一括払い方式」のほうが費用は安くなりますが、繰り上げ返済等で返済期間を短縮したり、短期間で借り換えを行う場合には、「金利上乗せ方式」のほうがお得になる場合があります。また「一括払い方式」は繰り上げ返済しても、保証料の返戻分はそれほど期待できません。とくに現在は金利がまだ低下傾向にありますので、金利上乗せ型の内枠方式を選択する方が増えているのが現状です。

団体信用生命保険料

団体信用生命保険は通称「団信」ともいわれ、文字どおり一種の生命保険です。団体信用生命保険と正確にはいえなくても、「団信」なら聞いたことがあるという方は多いでしょう。

団体信用生命保険とは、ローン契約者が住宅ローンを償還中に不幸にも亡くなられた際、または高度障害に陥った際に保険金が下り、住宅ローンに充当されます。そのため、契約者やその家族はその後のローンの返済義務を一切負わなくても良くなるというものです。

そのため金融機関の多くは団体信用生命保険を必須加入とし、保険料は金利に含まれています(つまり実質0円ということ)。
なお、融資金利に0.2~0.3%程度金利を上乗せすることにより団信にがんや成人病特約を付けることもできます。

フラット35の機構団信について

例外的に、平成29年9月末日以前に申し込んだフラット35に関しては、団信がついておらず、希望する場合は保険料を年払いで別途負担しなければなりませんでした。

しかし、同年10月1日以降の申し込み分から、フラット35も他の金融機関と同じように保険料を金利に含めるようになりました。そのため新しいフラット35でも「諸費用」として団信保険料が掛からなくなっています。

融資手数料(事務手数料)

住宅ローンを金融機関から借りる時に支払う手数料を、融資手数料、あるいは事務手数料と呼びます。

融資手数料は「定率型」と「定額型」の2パターンあります。「定率型」は、借入額に対して一定の割合を最初に融資手数料として負担するもので、最低取扱手数料があります。定率型は一括払い方式に似ています。また「定額型」は融資手数料として一定額を負担しますが、借入金利に0.2%上乗せがあり、こちらは保証料の金利上乗せ方式に似ています。

融資手数料(事務手数料)の費用は、3万円程度~です。

ただしペアローンやミックスローンの場合、ローンが2本になるため費用は単純に2倍かかります。融資手数料自体それほど大きな額ではありませんが、ペアローンやミックスローンを使う際は注意が必要です。なおネット銀行を中心に、融資手数料を保証料相当額とするところも出てきています。これについては次項にて説明します。

保証料が低くても、手数料が高い場合がある

保証料を取らない代わりに融資手数料を高く設定する金融機関もあります。保証料を0円とするのはネット銀行に多く見られます。融資金額の2%(+税)としている所も多くとなっています。つまり融資手数料自体を保証料相当額としているようです。メガバンクといわれる都市銀行の保証料率は2%程度、融資手数料は32,400円ですから、保証料0円のネット銀行と比較した場合、金額の多寡には大きな違いがないことがわかります。

フラット35は保証料ゼロ!

また保証料がゼロで有名なのは、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供しているフラット35も同様です。ただ、フラット35は展開している金融機関によって融資手数料も変わります。そのためどの金融機関のフラット35が一番安いかは、融資手数料もさることながら、融資金利も同時に見る必要があります。

たとえば某金融機関のフラット35の融資手数料をみると、融資金額の2.16%となっています。つまり通常の保証料並みということです。
ところがフラット35によっては、融資金利が他のフラット35より安く、トータルでみた場合によりお得な金融機関もあります。「保証型」のフラット35で知られる「ARUHI(アルヒ)」がこのパターンです。

しかも「ARUHI」は、頭金を20%以上用意すると金利が更に下がり、他社と差をつけています。たとえ保証料が0円でも融資手数料が高くなってしまっては、結局は同じです。ただフラット35の場合は、取扱金融機関によっても金利に違いがあり、色々な角度からどちらがお得か比較できます。

住宅ローンとしては固定金利型の商品ですが、通常の銀行にはないユニークなところがフラット35の良さです。

【出典】ARUHI:https://www.aruhi-corp.co.jp

登記関係でかかる費用や税金

住宅ローンの「諸費用」について、金融機関にかかる費用につづいて知っておかなければならないものが登記関係にかかる費用や税金です。どんなものがあるか見ていきましょう。

登録免許税

登録免許税とは様々な登記を行う上で、法律で定められた納付するべき税金のことです。ここでは住宅ローンの「諸費用」ということで、抵当権という登録免許税を扱います。抵当権とは、金融機関が住宅ローンの対象となる土地・建物に担保設定し、債務者が住宅ローンの返済が滞った際に、優先的に担保不動産から弁済を受けるための権利です。

抵当権設定登記の登録免許税は債権額の0.4%が本則ですが、平成32年3月31日までは軽減措置により0.1%です。土地建物の債権額が3,000万円なら登録免許税は3万円ということです。

【出典】登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ(税務署):
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/torokumenkyo29.pdf

司法書士手数料(報酬)

登記費用は登録免許税のほかにも、司法書士手数料(報酬)が発生します。

司法書士手数料は地域や事務所によって異なります。登録免許税のように一律に定まった額ではありませんが、おおよその金額は3万円から10万円程度というところが一般的です。

印紙代

印紙代は金融機関と住宅ローンの契約を締結する際に(これを「金銭消費貸借契約」といいます)発生する税金のことで、印紙を購入し貼付することで税金を収めます。なお借入額が1,000万円超、5,000万円以下なら印紙税額は20,000円です。

通常印紙代は20,000円ではなく、20,400円と「諸費用」の計算書に記載されてあると思います。この端数の400円(200円 × 2枚)は、自動引落に関する同意書等に使っているものです。なお、融資手数料(事務手数料)同様、ペアローンやミックスローンを使う場合は、ローンが2本になるため印紙代の費用も2倍になります。ご注意ください。

その他の費用

3番目に「その他の費用」ということであげていきます。まず2015年に改正された火災保険から見ていきましょう。

火災保険料

以前は住宅ローンに付帯する火災保険は、返済期間分を一括で加入しなければなりませんでした(最長36年)。ところが2015年の10月から損保会社の制度が改正され、住宅ローンでは長くとも最長10年更新型の火災保険を付帯するようになりました。

これまで保険料率が高い地域だと、35年返済一括の火災保険料で100万近く負担しなければならないケースもありました。とくに火災保険の料率が高い地域の方は、今回の改正で「諸費用」の初期負担が大幅に減ったことは大きな違いとなったことでしょう。

火災保険は金融機関が勧める保険会社を使わなくても良い

火災保険での変更点はかならずしも金融機関が定めた保険会社を使わなくても良くなった点です。実は改正以前も、銀行が勧める火災保険を使わなくても良かったのです。ただ当時はやはり風潮として、金融機関が勧める損保会社を使うことが多かったといえます。

しかし改正以降は共済や民間の保険会社の商品なら、どの保険会社の火災保険も検討してよいというふうに変わりました。今では火災保険を銀行の「諸費用」に含まないケースさえ増えています。

ただ注意したいことは、現在も火災保険に質権を設定する金融機関があるということです。火災保険に質権を設定すると、保険証券は金融機関が預かり、契約者は原本の写しを持つことになります。金融機関が火災保険に質権を設定すると、住宅が災害に見舞われた際、保険金は金融機関に入り、住宅ローンの返済手段として優先的に使われます。このことは覚えておきましょう。

適合証明発行手数料

フラット35を利用する場合に限られますが、フラット35のユーザーは適合証明書を発行する手数料を負担しなければなりません。そしてこれも「諸費用」として計算されます。フラット35の適合証明は、当該住宅が住宅金融支援機構の定める技術基準に適合しているかを証明する書類で、通常は建築確認申請を行う機関やその技術者が検査を行います。費用は物件や要件により変わります。

【参考】株式会社日本確認検査センター:
http://www.nikkaku.jp/fee/fee2.html

注文住宅の場合

注文住宅には住宅ローンの「諸費用」に記載する項目がほかにもありますが、ここではつなぎ融資の手数料について触れておきます。

つなぎ融資の手数料・金利

つなぎ融資とは注文住宅を建てる際の着工時金や中間金といった資金を、一時的に銀行融資によって「つなぐ(用立てる)」ことをいいます。つなぎ融資が必要になるのはフラット35を利用する場合です。フラット35の融資が実行されるのは、住宅が完成した時点だからです。

住宅ローンが実行されるとつなぎ融資は返済されますが、つなぎ融資にかかる利息(金利)は負担しなければなりません。その分を「諸費用」でみておきます。金額的には数万円程度見ておけば良いでしょう。

なお、つなぎ融資はどんな場合でも必要ではなく、自己資金に余裕がある計画の方や、融資が完成前に実行される銀行の住宅ローンでは必要はありません。

「諸費用」を抑える方法

最後に少しでも「諸費用」を抑える方法を考えてみましょう。
取り急ぎ、3つの方法を考えてみましたので紹介しておきます。

保証料を金利に上乗せにする

まず考えられるのは、保証料を「金利上乗せ方式(内枠方式)」にすることです。保証料を一括払い方式(外枠方式)にすると保証料自体は割安にはなりますが、繰り上げ返済を見込める方にとってはムダになる年数が発生します。繰り上げ返済をおこなった場合、保証料の返戻がありますが、ある程度年数が経過するとほとんど戻ってきません。極端な例ですが、10年で無事住宅ローンが返済出来た場合でも、残りの20年や25年分の保証料がそっくり戻るわけではないのです。それなら金利上乗せ方式にして、「諸費用」の初期負担を軽くしたほうが却って合理的です。

保証料なしの住宅ローンを利用する

2番目に考えられるのは、保証料がゼロ円の住宅ローンを選ぶということです。ただし融資手数料に保証料が含まれている場合がありますから(そしてほとんどの場合がそうです)、総合的に勘案して金融機関を選ぶことが大切です。

「諸費用」分も借り入れる

3つ目は「諸費用」分も借りるということです。ただこれには注意が必要です。たとえ金融機関が「諸費用」分もローンが使えるとした場合でも、すべての人にこれが適用できる訳ではありません。金融機関が「諸費用」分もローンで貸したいと思っているのは、実は十分な自己資金があり、多額の融資に見合う年収が見込める方です。はじめから自己資金がない方に、銀行は物件の9割も貸してくれません。

なお住宅ローンで「諸費用」分のローンを提供していなくても、変動金利型の諸費用ローンが別の商品としてあります。しかしそれを借りた場合は、あらたな「諸費用」が更にかかってきます。3つ目の方法はあまり期待できません。

まとめ

今回は住宅ローンの「諸費用」について解説しましたが、「諸費用」はローンの借入れ金額によって変わります。さらにご自分で契約するのが新築で販売元が不動産会社なら、手付金や所有権移転登記の費用や固定資産税の日割り分などが経費としてかかります。また注文住宅を建てるのであれば、ハウスメーカーや工務店に支払う諸官庁手数料等が必要です。今回の住宅ローンの「諸費用」で、すべての必要経費を押さえたわけではありませんが、マイホーム購入の際には、これらの経費を考慮した予算設定が必要ですので、参考にしてみてください。

監修:小林 弘司(住宅ローンアドバイザー)