不動産を購入する際は、不動産会社などに仲介を依頼してマンションや戸建を購入するのが一般的な方法になります。しかし、市場価格よりも安く購入するチャンスがあるという事で、競売にかけられている競売物件が注目されています。今回は不動産競売とは何か？競売物件のメリット・デメリットをまとめていきます。
不動産をお得に購入したいけど競売物件ってどういうもの？
まずは競売物件とはどういった物件なのかを確認していきましょう。
差し押さえをされた物件や土地などの事
競売物件として売約される不動産はマンション、戸建て、土地や事務所、地上権などの権利など、その種類は多種多様になります。主な競売物件は、住宅ローンが支払えなくなってしまい、債権者が債務を回収する為、裁判所が競売手続きを行い現金化される事になった不動産になります。つまり、競売物件とは売り方や売主が違うというだけで、不動産自体は一般的な不動産と変わらないのです。
債務を払えず債権者が土地建物を売ってお金に換える物件
不動産が競売物件になってしまう理由は、お金を支払う義務のある債務者が、その返済義務を果たさない、もしくは果たすことが不可能になってしまったからです。その後、債権者が債務者の保有している不動産を差し押さえて、現金化するように裁判所に依頼をする事によって競売物件になります。所謂、差し押さえによって債務者は自分の自由に不動産を処分する事ができなくなってしまいます。
不動産の競売物件がお買い得だと言われる理由とは？
それでは、なぜ競売物件が一般の不動産よりもお得だと言われているのかを理由を見ていきましょう。
土地のみ建物のみ地上権を格安で手に入れる事ができるから
競売物件の中には、一般の住宅販売サイトではあまり目にできない不動産を目にする機会が多くあります。通常は土地と建物がセットになった所有権の掲載が主になります。しかし、競売物件の場合、土地のみ、建物のみ、地上権の権利のみといった物件もあります。さらには山間部の道路に接道していない建物や、地形が不自然な変形地など、珍しい不動産を割安で取得する事も可能になります。
バラエティに富んだ物件を安く手に入れる事ができるから
競売物件において、不動産を管理しているのは裁判所になります。通常、不動産業者を経由して購入する不動産は、市場価値のある整形地の土地や、居住に適した建物などをメインに取り扱います。しかし、裁判所はエリアや流通性などに関係なく手続きをしていくので、バラエティに富んだ不動産を発見する機会も多いのです。
離島や山間部の不動産も取り扱われる事がありますので、特殊な不動産を取得したい方にとっては、競売物件を定期的にチェックするのも良い手段です。
一般の不動産価格より安く手に入れられる場合もある
後ほど詳しく説明しますが、通常の売買と比べて競売物件には、物件に瑕疵があった際の保障がないなどのデメリットもあります。しかし、通常の不動産売買をする消費者に比べて、手厚く法律によって守られていない分、一般的な方法で購入するよりも安く手に入れることができるのです。
値段が安いからといって安易に競売物件に手を出すのではなく、きちんとデメリットも理解した上で検討する必要があります。
不動産の競売物件ってどこで購入するの？
続いて、競売物件を購入する方法をまとめていきましょう。
一般の不動産会社では入手する事ができないのが競売物件
競売物件は裁判所が取り扱う不動産になりますので、一般の不動産会社のサイトや窓口などでは情報を取得する事も、購入する事もできません。競売物件の入札を代行する業者などを利用します。
官公庁の競売物件を紹介するサイトで探す
裁判所が出している競売物件の所在地や価格、物件の広さなどの情報を閲覧・検索することができます。不動産競売物件情報サイト、別名はBIT（Broadcast Information of Tri-set system）といいます。
このサイトからは3点セットと呼ばれる、裁判所が作成している競売物件の情報 を得る事ができます。3点セットとは物件明細書、評価書、現況調査報告書の事です。
・物件明細書：対象となる不動産の権利関係が記載されている
・評価書：裁判所から選出された不動産鑑定士が物件の適正価格を評価したもの
・現況調査報告書：執行官が調査結果を記載したもの
まずはBITから気になる物件の3点セットをダウンロードして目を通してみると良いでしょう。
競売物件情報サイトで物件を見る事ができる
不動産競売物件情報サイトでは、入札がスタートしている競売物件を見る事ができます。探している地域から検索することもできますし、管轄の裁判所から検索、事件番号からの検索など、競売物件ならではの検索方法もあります。
気になるエリアの物件一覧を見て、市場価格と比べてどのくらいの金額で掲載されているのかを確認してみるものいいでしょう。
裁判所の閲覧室などで競売物件の紹介がされている
少し手間にはなりますが、直接裁判所に足を運ぶことによって、競売物件を調べる事も可能です。裁判所の閲覧室には競売物件の紹介がされていますので、近くの裁判所に出向き売物件を探す事ができます。
新聞・情報誌などで競売物件を調べることができる
新聞や情報誌でも競売物件を調べることができます。もし、ネットは苦手という方は、こうした媒体から情報を集めてみても良いと思います。
不動産の競売物件を購入を検討するときのメリット
競売物件のメリットを確認していきましょう。
新築や中古を購入するより安く手に入れられる
競売物件の一番のメリットは市場価格よりも安く手に入れられるという事があげられます。物件にもよりますが、市場価格の60％から70％ほどで購入できる場合が多いです。これだけ聞くと、競売物件がお得だなと感じます。逆に、なぜこんなに安く買えるの？と不安になる方もいらっしゃるかと思います。安く手に入れらる理由は大きく2つあります。まず、1つ目として、債権者がすぐに現金にしたい為、早く売却できる価格で売りに出しているという事があります。そして2つ目として、一般的な売買に比べるとリスクが多いという事が理由としてあげられます。競売物件のリスクについては、後の競売物件のデメリットにて詳しく説明していきます。
築浅物件でも安く手に入れられる場合がある
一般的な不動産売買において、築浅物件の場合、抵当権が残っている事が多いため、残債以上の値段をつけないと売ることができないという状況が多く、高額で売りに出されることが多くあります。一方、競売物件の場合は、抵当権以上の金額で売る必要がなく、早期に債務を回収するというスピードを重視して値段をつける為、築浅の新しい物件でも安く購入できるチャンスがあります。
不動産の競売物件の購入する時のデメリット
競売物件のデメリットを確認していきましょう。
物件にまだ人が住んでいる事があるので退去手続きをする事も！
競売物件の場合、鍵の引渡し手続きなどはありません。登記簿謄本上での、所有権が移転するだけなので、債務者が住んでいる場合があります。その場合、所有権は移転されているので、立ち退きさせる権利はありますが、すぐに立ち退きに応じてもらえるとは限りません。その場合、法的手段の手続きが必要になります。裁判所に申し立てを行い、決定後、強制執行にて立ち退きしてもらう必要があります。
内見ができないため中の様子がわからない
一般的な不動産売買においては、建物の中を確認した上で、不具合等理解して購入する事ができますが、競売物件の場合は購入前に内見をする事ができません。購入して入居してみたら壁が穴だらけ、雨漏りがひどい等の瑕疵が見つかった場合は、購入者自身で修理、リフォームをする必要があります。
意外とリフォームにお金がかかる事がある
購入してから室内設備のエアコンやキッチンに不具合が見つかる事もありますし、引渡し後すぐにリフォームが必要になるケースもあります。競売物件自体を安く購入できても、リフォームによって思わぬ出費がかさんでしまう事もあるので、費用には余裕をもって競売物件を取得するのが良いでしょう。
物件の事は全て自分で調べる必要がある
不動産業者に紹介されて不動産を購入する場合は、不動産業者が土地・建物の調査をしてくれますし、契約前に重要事項説明書という不動産に関しての重要な項目をまとめて説明をしてくれます。
しかし、競売物件においてはそういった制度がないので、全て自分で調べる必要があります。せっかく土地を購入したのに、建物を建築する事ができなくて困ってしまったとしても自己責任になるので、事前によく調査をする必要があります。
専門家(建築基準法に詳しい建築士)やその地域を管轄する役所の建築課などに建築の可否や制限について相談するなどしていくのが良いでしょう。
住宅に欠陥がある場合がある
中古の建物などには欠陥がある場合があります。当然、中古の為、欠陥がでてくる事はやむを得ないのですが、問題は保証をしてくれる売主や、事前に詳しく説明してくれる不動産業者がいないという事です。一般的な不動産売買では、売主に瑕疵担保責任がありますし、不動産業者には説明義務がありますが、競売物件には売主も仲介業者もいません。裁判所が売主ではなく、あくまでも管理しているだけで保証などはしてくれません。競売物件に重大な問題があったとしても、購入後であれば、全て購入者が対応しなくてはなりません。そういったリスクも考慮する必要があります。
必ずしも落札できるとは限らない
時間とお金をかけて競売物件の調査をしたとしても、入札制の為、必ずしも落札して購入できるとは限りません。他にもっと高い値段で買いたいという人がいれば、購入することはできません。かといって、過度に高い値段で入札してしまえば、落札することはできるかもしれませんが、市場価格に比べてのお得感は減ってしまうでしょう。
物件によっては滞納金の支払いを命じられる事もある
競売物件の場合、お金の支払いが滞る事によって差し押さえられている物件なので、債務者が滞納しているお金がある場合、支払いを命じられる事があります。マンションの管理費・修繕費など、中には滞納している事によって遅延損害金も上乗せされている場合もあるでしょう。購入を検討する際には、所有権を取得した後に支払いが必要な滞納金がないか確認しておく事が重要です。
不動産の競売のまとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、競売物件のメリット、デメリットをまとめてきました。市場価格よりも安く購入できるというメリットはありますが、一般的な不動産売買に比べると手厚い保障がなく、気をつけなくてはならないリスクも多くあります。実際に競売物件を検討する場合は、しっかりとリスクを理解した上で、専門家に相談するなどしていくのが良いでしょう。
監修：栄田 元信（不動産コンサルタント）