現在は銀行に預け入れをしていても、利息は僅かしかつかない超低金利の時代です。このような時代において、老後の生活に不安を持っている方は多くおられるのではないでしょうか。老後の生活を安定させるために、株やFX・仮想通貨に投資するにはリスクが多く二の足を踏んでいる方もいるでしょう。不動産投資は現物への投資ですので、比較的リスクは低いといわれています。この記事では、安定的に利益を得たい方のために不動産投資ローンの特徴についてご解説をいたします。

不動産投資ローンの特徴・メリット・デメリット


不動産投資ローンを利用する場合に、どのような特徴があるのでしょうか。

不動産投資ローンと住宅ローンの違い

両者とも不動産を購入するときに利用するローンですが、次の2点で異なっています。
◎利用目的
住宅ローンはマイホームを購入する際に利用する融資方法で、アパートやマンションなどの不動産経営をする場合には不動産投資ローンを利用します。不動産投資には原則として、住宅ローンを利用することはできません。
◎審査基準
共に不動産を対象にしたローンですが、利用する目的が違いますので審査や融資の基準もおのずから異なってきます。住宅ローンの審査は主に年収や資産・勤続年数など個人の信用力を中心に審査を行います。一方不動産投資ローンでは個人の信用力のほかに、物件から得られる収益や売却した時の物件の価値についても審査を行います。

不動産投資ローンを利用するメリットとは?

不動産投資ローンは、不動産自体に価値があれば、自己資金が少なくてもその何倍もの貸し付けを受けることが可能です。自己資金を活かしてその何倍もの融資を受けることを、レバレッジを利かせるといい、これにより手元資金が十分でないサラリーマンでも不動産経営を行うことができます。大きな額の融資を受けても、物件から安定した家賃収入があれば、月々のローンの返済をすることができます。

不動産投資ローンのデメリットとは?

住宅ローンの残債があっても、物件に担保力と収益力があれば、不動産投資ローンの貸付を受けることは可能です。しかし逆に不動産投資ローンを限度いっぱい借りている方は、住宅ローンを組む際に借入枠が足りなくなる可能性があります。それゆえマイホームを手に入れたいと考えている方は、不動産投資ローンを組む前に住宅ローンを借りておいたほうが良いでしょう。

フルローンのメリットとデメリット

不動産投資ローンは、レバレッジを利かせた投資を行うことができますが、これが逆にデメリットとなる場合があります。フルローンとは、物件の購入金額全てをローンの貸付金で賄うことを言い、オーバーローンとは物件の取得費用だけでなく、諸費用までの融資を受けることを言います。家賃収入により返済が可能であると考えていても、金利が急に上昇したり、いくつも空室がでたりすると返済が難しくなってしまう場合もあります。

不動産投資会社の提携ローンとは?

不動産投資会社やハウスメーカーの提携ローンは、金融機関とタイアップして行うローンであり、これにより審査をスムーズに行うことができます。提携ローンは物件価格に近い額を借りられたり、審査が緩かったり、手続きが簡単だったりするメリットがあります。しかし手数料が必要である場合や提携ローンを提案する会社に縛られることもありますので注意が必要です。

不動産投資ローンと団体信用生命保険

住宅ローンと同様に、不動産投資ローンでも融資を受ける際には、団体信用生命保険に加入します。ローンの返済中に契約者本人が死亡したり、高度な障害状態になったような場合でも、ローン残高は生命保険会社が肩代わりして返済してくれますので、遺族や家族に負担が及ぶようなことがありません。団体信用生命保険の特徴はローン契約を結ぶ金融機関が生命保険会社と一括で申し込みを行いますので、保険料を安くできます。またな年齢かかわらず、おなじ保険料で加入できるのも大きなメリットです。これにより残された家族は、何の心配もなく物件を相続することが可能になります。

サラリーマンはどれくらい借りられるのか?

不動産投資ローンの審査基準は、物件の担保力と収益力および個人の信用力であることは前述しました。それではサラリーマンの信用力とはどのようなもので、金融機関からはどれほどの金額まで融資を受けることができるのでしょうか。サラリーマンが審査でチェックされるのは収入や勤務先・勤続年数・金融資産・持ち家か否か・借入金の有無・家族構成などの属性です。また金融機関の種類及びそれぞれの銀行(※)によって異なってきます。

【出典】
みずほ銀行:https://www.mizuhobank.co.jp/retail/products/loan/apart_yushi/index.html
横浜銀行:http://www.boy.co.jp/kojin/loan/apartment/setsumeisyo_apartment.html
セゾンファンデックス:
https://www.fundex.co.jp/lp/fudousan/course2.html?PHPSESSID=h5o1jatr0qahffr0pjecftqp37

住宅ローンを使って不動産投資をするリスク

住宅ローンは不動産投資ローンと比べると、審査基準が緩やかであり金利も一般的に低いので、住宅ローンで不動産経営ができないかと考える方もいます。しかし住宅ローンはマイホーム保有のために優遇されている融資商品であり、使途が異なります。それゆえ住宅ローンで不動産投資をしていることがバレると、一括返済させられたり住宅投資ローンに変更させられたりして思わぬ出費になる場合もあります。

賃貸併用住宅と住宅ローン

建物のうち賃貸部分の比率が50%未満の賃貸併用住宅であれば、住宅ローンの利用が可能となります。家賃収入で自宅部分を含むローンの返済ができ、相続対策にもなるなどのメリットがあります。しかし必ずしも賃貸住宅に向いているとは言えないような立地条件の場合がありますので、よく検討する必要があるでしょう。

不動産投資ローンの金利について


不動産投資ローンは変動金利または固定金利により融資を受けますが、銀行により金利が異なりますので選択により返済総額が大きく変わってきます。

変動金利型の特徴

現在は超低金利の時代ですので、変動金利を利用すれば利子を含む総返済総を低く抑えることができます。しかしいつまでの金利の時代が続くという保証はありません。大きな額を借り入れている場合に金利が上昇した局面では、返済額が大きく膨らんでローンの返済ができなくなる恐れがあります。

固定金利型の特徴

固定金利を利用すると毎月返済する金額に変動はありませんので、確かな返済計画を立てることができます。しかし現在のような低金利時代が続くとすれば、変動金利と比べて返済総額は大きくなります。

金利上昇のリスクを常に考えておくことが大切

変動金利を利用する場合には、常に金利の上昇リスクを考えておかねばなりません。金利の上昇が起きたような局面では、支払い総額が大幅に増えることがあります。そのような事態に備え、自己資金をできるだけ多く蓄えておく必要があります。

不動産投資ローンの審査通過のためのポイントまとめ

不動産投資ローンの審査が通るか否かのポイントは、金融機関にとって融資した金額が返済されるかどうかにかかってきます。

自己資金をいかに多く用意できるか

自己資金が十分でないと、空室が発生したり金利が上昇した場合にはローンの支払いが滞ってしまうことが予測されます。しかし貯金等が十分であれば、そのような時でもローンの返済ができますので、金融機関にとって評価ポイントとなります。

勤務先の属性が見られる

社会的に認められている会社や上場企業・公務員・省庁などは収入が安定しています。従いまして給料が滞るリスクも少ないので、審査に通りやすいと言えます。

年収が高ければ高いほど高評価

年収を多く得ている人であれば、返済能力も同様に高いと評価されますので融資が通りやすいと言えます。

持ち込む物件の実質利回り(収益性)が高いかどうか

自己資金や年収が少なくても、購入しようとする物件の収益性が高いと見込めれば、融資を受けらえる可能性は高くなります。毎月入ってくる家賃でローンの返済ができますので、金融機関からは高い評価を受けられます。

不動産投資ローンを取り扱う金融機関まとめ


それでは2018年7月現在の不動産投資ローンを扱う金融機関をご紹介いたします。

日本政策金融公庫の金利相場

日本政策金融公庫は、日本政府が全額出資する政府系の金融機関です。個人事業者や中小企業を支援するのが目的ですので、目的に合致していれば融資は比較的に受けやすいです。
①融資対象エリアについて:北海道~九州まで
②融資可能額:4,800万円~7,200万円まで
③融資期間の長さ10年~20年
④金利の種類と相場:固定金利のみ
担保が不要の場合:年2.06~2.55%
担保を提供する場合:1.16~1.25%
⑤融資審査の回答までの期間の目安:申し込んでから1ヶ月程度
⑥連帯保証人の有無:原則として保証人は不要

オリックス銀行

①融資対象エリアについて:首都圏(埼玉・千葉・東京・神奈川の各都県)・近畿圏(滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山の各府県)・名古屋市・福岡市首都圏、近畿圏、名古屋市、福岡市
②融資可能額:可能額1,000万円~2億円以内
③融資期間の長さ:1年以上最長35年
④金利の種類と相場
変動金金利型:3.675%
3年固定特約型:年3.300%
5年固定特約型:年3.500%
⑤融資審査の回答までの期間の目安:事前審査まで1週間、本審査は約2週間
⑥連帯保証人の有無:不要(借入れ不動産の共有者は連帯保証人になる必要あり)

住信SBIネット銀行

①融資対象エリアについて:北海道~九州までの主要な都道府県
②融資可能額:300万円以上1億円以下
③融資期間の長さ:1年以上25年以下
④金利の種類と相場
変動金利型:年2.95%~8.9%
固定金利型の取り扱いはなし
⑤融資審査の回答までの期間の目安:3週間~1ヶ月
⑥連帯保証人の有無: 不要

東京スター銀行

①融資対象エリアについて:全国
②融資可能額:100万円以上1億円以下
③融資期間の長さ:1年以上20年以下
④金利の種類と相場
変動金金利型:0.90%~8.40%
3年固定特約型:年0.800%
5年固定特約型:年0.850%
10年固定特約型:年0.950%
⑤融資審査の回答までの期間の目安:3週間~1ヶ月
⑥連帯保証人の有無: 不要

SMBC信託銀行

①融資対象エリアについて:首都圏のほか札幌・仙台・名古屋大阪福岡などに支店があります
②融資可能額:500万円以上1億円以下
③融資期間の長さ:1年以上30年以下
④金利の種類と相場変動金金利型:3.675%
固定金利型(1年型):年2.13%
固定金利型(3年型):年2.35%
固定金利型(5年型):年2.45%
変動金利型の取り扱いはなし
⑤融資審査の回答までの期間の目安:1~2ヶ月
⑥連帯保証人の有無: 不要

年収別!借入しやすい金融機関まとめ


次に年収別に融資を受けられやすい金融機関を下記にまとめてみました。

年収500万円以下の人が借入しやすい金融機関

年収500万円以下の人が融資を受け入れ安い銀行としては、日本政策金融公庫と商工中金・地銀・信金・ノンバンクなどがあげられます。

年収500万円~700万円未満の人が借入しやすい金融機関

上に記した年収500万円以下の人が借入しやすい金融機関に加えて、オリックス銀行・楽天銀行・関東の東京スター銀行・SBJ銀行・静岡銀行・関西の池田泉州銀行・関西アーバン銀行・みなと銀行・近畿大阪銀行などがあげられます。

年収700万円~1,000万円未満の人が借入しやすい金融機関

上に記した年収700万円~1,000万円未満の金融機関に加えて三菱UFJ銀行や三井住友銀行.みずほ銀行などのメガバンクがあげられます。

不動産投資ローン借入までの流れ


次に審査に必要な書類と審査の流れについてご説明を致します。

審査に必要な物件資料と書類の準備

金融機関に不動産投資ローンを申し込む際にはさまざまな書類を提出しなければなりません。必要書類はノンバンクの方が銀行よりも一般的に少ないですが、金融機関によっても異なります。

事前審査

◎物件についての書類
・購入予定物件の資料
・購入予定物件の収支が分かる資料
◎本人についての書類等
・事前審査打診表
・源泉徴収表または確定申告書
・住民税課税証明書
・納税証明書
・免許書等の本人確認書類

本審査

◎物件についての書類
・売買契約書
・賃貸借契約書
・重要事項説明書
・手付金の領収書
◎本人についての書類等
・源泉徴収表または確定申告書
・住民税課税証明書
・納税証明書
・住民票
・身分証明書
・実印

審査開始の開始と融資決定通知

融資の申し込みから決定の通知までの流れは次のようになります。

金融機関に融資申し込み

購入物件が見つかったら、物件の契約締結前に申し込みを行います。

事前審査

上記に記載した書類を揃えて申し込みを行いますが、本人の信用力と物件の収益性を中心に審査を行います。

本審査

事前審査に通るとさらに深く個人の信用力物件の担保力・収益力について審査し、団体信用生命に加入できるかなども審査を行います。

融資決定通知

融資の申し込みをしてから、メガバンクで1~2か月ほどで回答され、ノンバンクで数週間のうちに決定の通知がなされます。

抵当権設定、金消契約、融資実行

融資の通知がされると、金融機関は物件に抵当権を設定し金銭消費貸借契約を結び融資を行います。

最後に

不動産投資ローンは住宅ローンと比べて、提出書類も多く審査も厳しくなっています。不動産投資が成功するか否かは、優良物件を手にいれ収益性があるかどうかが大きなポイントになります。不動産投資ローンのメリットとデメリットをよく把握して、間違いのない不動産投資をしてください。

監修:小林 弘司(住宅ローンアドバイザー)