良い物件が見つかれば、その住宅に住めるというわけではありません。充分な資金がある人以外は、その物件を購入するための“住宅ローン審査”に通らなくてはいけないのです。「物件は見つかったのに、住宅ローンに通らない」という悲しい状況を回避するために、住宅ローン審査で否決される原因を明らかにし、具体的な対策を紹介します。

住宅ローンは何を審査している?

住宅ローン審査に通るために、まずは、住宅ローン審査では何をチェックしているのかについて深く理解しておく必要があります。住宅ローン審査では、何よりもまず「貸したお金をきちんと返済できる能力を持っているのか」についてチェックされます。

収入

収入が安定していることは、重要度の高いチェックポイントです。例えば収入のほとんどが「歩合制」「インセンティブ」などの出来高報酬のときは、今後も安定して同額以上の収入を得られるとは見込めません。基本給が高く、安定しているのかチェックしてみて下さい。

もちろん、収入が高いことも審査に通りやすくなるポイントの1つです。しかし、ただ単に高収入が良いというわけではなく、借入金額に対して充分な収入なのかがチェックされます。

返済比率(負担率)

返済比率も重要なポイントです。例えば、住宅ローン以外に借入金がない場合で、返済比率を計算してみましょう。住宅ローンで返済する金額が年間100万円で年収が500万円なら、返済比率は100万円÷500万円=20%です。返済比率が30%以下なら、住宅ローン審査に通りやすいといえます。

勤務先と勤続年数

「勤務先が安定しているか」についてもチェックされます。公務員のように倒産がほぼあり得ない勤務先に勤めている人や社員数が多い上場企業などに勤務している人も、勤務先が安定していると考えられますので、審査に有利になるでしょう。

また、「勤続年数」についてもチェックされます。安定した職場に勤めている場合であっても、ローン申込者本人が何度も転職を繰り返しているなら、安定した収入が見込めるとは判断し難くなるでしょう。

勤務形態

倒産がほぼないと考えられる公共機関や大手企業に勤務している場合であっても、勤務形態が正社員・正職員でないときは、将来的にも安定して収入が得られるとは考えづらいです。そのため、アルバイトやパート、派遣社員などの非正規雇用の人は、住宅ローン審査に通りにくくなってしまいます。

年齢

住宅ローンは長期ローンです。今は収入が安定してローン返済が可能でも、定年退職を迎えると収入は激減し、毎月返済し続けることが困難になるかもしれません。定年退職するまでにローンを完済できるのか、年齢についてもチェックされます。また、定年退職後も住宅ローンを支払い続ける場合は、定年退職後にどのような収入があるのかについて尋ねられることもあるでしょう。

年齢が高いということは、再就職しづらいということでもあります。急にリストラされたり転職を思い立ったりしても、若いときならそこまで苦労をしなくても再就職先を見つけることができるでしょう。しかし、40代、50代となると再就職先を見つけることは決して容易なことではありません。そのため、住宅ローン審査も、40代、50代と年齢が進むにつれて通りにくくなってしまうことがあるのです。

健康状態

健康状態に問題があるときは、収入が安定しない可能性もあるため、ローン審査に通りにくくなります。また、ほとんどの住宅ローンにおいて「団体信用生命保険」に加入することが審査の条件となりますが、健康状態に問題がある場合は団体信用生命保険に加入できず、自動的に住宅ローンの審査にも落ちてしまうことになります。

他の借り入れ状況

すでにローンをいくつか抱えている人は、住宅ローンの年間返済額に現在の年間ローン返済額を加えて返済比率を計算しなくてはなりません。そのため、ローンを利用していない人と比べると、住宅ローン審査に通りにくくなってしまいます。

例えば、現在のローン返済額が年間100万円で住宅ローンの年間返済額が100万円の場合は、実際の年間ローン返済額は200万円になります。年収が500万円なら返済比率は40%となり、住宅ローン審査に通ることは容易ではないでしょう。

過去の借り入れの返済状況

今までにローンに対してどのように付き合ってきたかという点も、住宅ローンの審査において重要なポイントとなります。返済に遅れたり、滞納したまま放置したりしたことがある方は、住宅ローン審査が厳しくなってしまうでしょう。

納税の状況

税金をしっかりと納めていることも住宅ローン審査において重要なポイントです。税金を滞納して口座が差し押さえられた経験がある方は、住宅ローン審査に通らない可能性があります。

国籍

国籍が日本以外の人は、保証人を立てることを要請されることがあります。もちろん、これは日本人以外に対して審査が厳しくなっているというわけではなく、契約者が返済をしないで帰国してしまうというリスクに備えることが目的です。

物件の担保

住宅ローンは不動産を担保として借りるローンです。万が一、契約者がローンを返済し続けることが困難になったときは、金融機関は土地や建物を売却することで融資した資金を回収しなくてはいけません。しかし、担保とする土地や建物に資金を回収するほどの価値がないなら、金融機関側は損失を被ってしまいます。融資額に見合った土地と建物なのかについても、厳しくチェックされるのです。

住宅ローン審査で通らない原因と対策

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住宅ローン審査に通らないときは、先程紹介した11のチェックポイントのいずれか問題がある可能性が高いと考えられます。問題が見つかったときの対処法について探っていきましょう。

収入に対しての借入希望額が大きい

収入に対して借入希望額が大きすぎるときは、審査に通らない可能性が高くなってしまいます。返済期間を長くするか頭金を出して借入額を減らすか、いずれかの方法を検討してみましょう。また、夫婦のどちらかの収入で住宅ローン審査を受けている人は、ダブルインカムにして年収を上げるという方法も検討できます。

転職して間もない

勤続年数は3年以上であることが、住宅ローン審査に通りやすくなる目安です。しかし、近年は以前と比べると転職することでステップアップする人も増えてきましたので、勤続年数が3年以下でも審査に不利にならない金融機関もあります。

派遣社員や契約社員の場合

非正規社員は、正社員と比べると収入の安定性というポイントが劣ると判断されてしまいます。正社員の配偶者とのペアローンや収入合算を検討してみてはいかがでしょうか。

完済時年齢が80歳を超えてしまう

完済時の年齢が定年退職の年齢を超えても審査に通る住宅ローンはありますが、完済時の年齢が80歳を超えてしまうと、ほとんどの住宅ローンは通りにくくなってしまいます。月々の返済額を増やして、借入期間を短くすることを検討してみて下さい。

持病があり団信に加入できない

持病があり団体信用生命保険(団信)に加入できないときは、団信が必要ない住宅ローンを選択することで解決することができます。例えばフラット35では団信の加入は任意ですので、団信に加入せずに住宅ローンを利用することが可能です。

カードローンやリボ払いの残高がある

住宅ローン以外に借入金がある方は、まずは現在の借入金を完済してから住宅ローン審査を再度受けて見て下さい。借入金が多すぎて短期間で完済することが難しい方は、物件を再検討し、借入希望額も減らすことをおすすめします。

税金の未納や滞納

税金の未納や滞納がある方は、すぐに未納分・滞納分を解消し、再度審査を受けましょう。

日本国籍もしくは永住権を持っていない

日本国籍の配偶者がいれば審査が可能な住宅ローンは多いです。夫婦共に日本国籍も永住権も持っていない場合は、保証人を立てて審査を受けることが可能か、融資担当者に相談してみましょう。

物件の担保が金融機関の基準に達していない

建築基準法違反やその他法令に違反している場合は、物件を変更するか改修が必要です。安心して住み続けるためにも、基準に合致した物件を選びましょう。

ほぼ確実に審査に落ちる原因

ここまで紹介した原因は「もしかしたら住宅ローン審査に不利になることがある」という原因ばかりです。しかし、これから紹介する原因は、ほぼ確実に審査に落ちてしまう原因です。すぐに解決できる方法もありませんので、おとなしく時間が過ぎるのを待ちましょう。

過去に金融事故を起こしている

今までローンやクレジットカードの返済を滞納し、強制的に解約されているときは、ほぼ確実に住宅ローン審査に落ちます。CIC(指定信用情報機関)で信用情報を開示してもらい、「異動」が記載されていないかチェックして下さい。

【出典】CIC:https://www.cic.co.jp/

自己破産をしている

今までに自己破産などの「債務整理」をしたことがある方も、ほぼ確実に審査に落ちます。なお、金融事故や債務整理の記録はすべて指定信用情報機関に保管されますが、5~10年ほどで消去されます。記録が消えてから住宅ローン審査を受けるためにも、何度か信用情報を開示してもらい、過去の金融事故や債務整理の記録が消えているのか確認しておきましょう。

消費者金融の借入残高が残っている

消費者金融の利用は、住宅ローン審査には不利な条件となってしまいます。できれば完済し解約しておきましょう。

自営業で経営状態が危ない

自営業で経営状態が危ないときはローン審査には不利に働きます。経営状態を立てなおしてから再度審査を受けましょう。

納税義務を怠っている

納税は国民の義務です。万が一、義務を怠っている方は、住宅ローン審査にも通らない可能性が非常に高くなります。

虚偽の申告をしている

住宅ローン申込書に記入した事柄に虚偽がある場合は、信用を受けられず、ローン審査にも落ちてしまいます。例え不利な情報であっても、勤続年数や収入などを正直に記入するようにしましょう。

最後に

審査落ちの原因を金融機関ははっきりとは教えてくれません。心当たりがなくても原因1つずつ自分で確認してみることが大切です。また、同じ条件でも金融機関を変えればローンがすんなり通ることもありますので、通らない原因が思い当たらない人は、金融機関の変更も検討してみましょう。