宅を購入するための貸付には住宅ローンがありますが、投資用の物件を購入する場合には不動産投資ローンを利用します。しかし不動産投資ローンは融資条件が厳しいので、比較的審査が通りやすい住宅ローンを利用できないだろうかと考える方もいるのではないでしょうか。この記事では住宅ローンを利用して、投資用のアパートやマンションを購入できるのか、住宅ローンの不正利用が発覚した場合はどうなるのかなどの点について解説をいたします。この記事を参考にしていただき、間違いのない不動産投資を行っていただきたいと思います。

住宅ローンを使って不動産投資はできるのか


それでは自宅を購入するための住宅ローンで、投資用のアパートやマンションを購入できるのでしょうか。

基本的には投資用物件を住宅ローンで買うことはできない

不動産投資をする場合に全額現金で始める人は稀で、一般的にはローンを利用することになります。その場合に、金利が低く審査基準が比較的緩やかな住宅ローンを利用して不動産投資ができれば助かりますが、借り入れの目的が異なりますので審査基準も違い、住宅ローンを利用して投資物件を購入することはできません。アパートやマンションに投資しようと思う方は、不動産投資ローンを利用しなければなりません。

住宅ローンの目的は収益をだすためではない

住宅ローンの目的は自分が暮らす住まいの購入のためであり、金利も不動産投資ローンと比べて低く借りやすくなっています。一方不動産投資ローンは、不動産物件を購入しそこから利益を得ることが目的で、金利は住宅ローンと比べると高く、審査基準も厳しくなっています。

賃貸併用住宅であれば、住宅ローンで購入できる

投資用不動産を購入する場合には、不動産投資ローンを利用しなければなりませんが、物件が賃貸併用住宅であれば、住宅ローンを使うことができます。つまり、自分が住む住宅の一部をアパートなどの賃貸住宅に併用すれば、安い金利の住宅ローンを利用することができます。

賃貸併用住宅で住宅ローンを購入する時の条件

賃貸併用住宅で住宅ローンを利用する場合には、賃貸部分の床面積が50%未満であることが条件となります。また金融機関によってはローン完済時の年齢を満80歳未満とするなど、安定した収入があることが融資条件となる場合もあります。

賃貸併用住宅のメリットとデメリット

それでは賃貸併用住宅のメリットとデメリットにはどのようなものがあるでしょうか。

賃貸併用住宅のメリット

1.低い金利を利用できる
現在の相場ですと、不動産投資ローンの場合は、変動金利で1~2%程度、固定金利で3%前後です。一方、住宅ローンの場合には、変動金利で0.5~1.3%程度、固定金利で0.8%~1.5%程度で利用できる可能性があります。
2.家賃でローン返済が可能
毎月入ってくる家賃をローン返済に充てることができ、生活にゆとりができます。
3.審査が緩やかな住宅ローンを受けられる
不動産投資ローンと比べて、住宅ローンの方が一般的に審査が緩やかとなっています。
4.住宅ローン減税の対象となる
賃貸併用住宅であれば、住宅ローン減税の対象となります。確定申告をすることにより、年末のローン残高の1%の所得税及び住民税が還付されます。

賃貸併用住宅のデメリット

1.アパートの立地に適していない場合がある
アパートの持ち主が自宅として住むことを目的としていますので、賃貸に向いていない土地の場合があります。
2.入居者との人間関係に気を配る必要がある
同じ建物の中で生活をしますので、気遣いをしないとトラブルが起こることもあり得ます。

住宅ローンで不動産投資を始めてしまうとどうなるのか?


住宅ローンは個人が住むための住宅に設定されているローンであり、金利や融資基準面などで優遇されています。それゆえ安易に住宅ローンを不動産投資に悪用すると様々な問題が起こり得ます

金融機関によっては一括返済を求められる

住宅ローンの不正利用が発覚すると、金融機関からローンの一括返済を求められることがあります。一括返済を求められると、お金をすぐに用意しなければならず、最悪の場合はせっかく手に入れた物件を手放さなければならないことも起こり得ます。

ローンの借換えを迫られることも

一括返済を求められなくても、不動産投資ローンへの借り換えを迫られる場合もあります。借り換えにはローン取り扱い手数料や保証料・登録免許税・登記報酬料などの諸費用が40、50万円程度かかりますし、面倒な手続きを再度行わなければなりません。

住宅ローンがある状態で不動産投資を始められるのか


それでは住宅ローンの残高がある方が、不動産経営を行うために新たに不動産投資ローンを組むことはできるのでしょうか。

住宅ローンと不動産投資用ローンの審査基準は異なる

住宅ローン不動産投資用ローンは前述のように、目的が異なるので両者の審査基準は異なり、住宅ローンの残高があっても魅力的な物件であれば、新たに不動産投資ローンを組むことは可能です。

住宅ローンは勤め先や収入の安定性重視

住宅ローンは融資を申し込む方の勤務先や収入などの信用力を審査し、融資を行います。金融機関の審査項目としては、勤務先の信用度・勤続年数・年収・健康状態・ローン完済時年齢・雇用形態・資産などがありますが、不動産投資ローンと比べると審査は比較的緩やかと言えます。

投資用ローンは物件の評価額と個人の属性の両方を見る

一方、不動産投資ローンでは、個人の信用力だけで融資することは通常ありません。個人の資力のほかに、物件の担保力と収益力の3点について評価を行います。物件の担保力とは、ローン返済が不可能になったときに物件を売却することにより貸付金が完済できるかであり、収益力とはその物件が返済に当てられる利益を生み出すことができるかということです。従いまして住宅ローンの残債があっても、物件の価値が高ければ融資される場合もあります。

優良物件を探して融資を受けやすくする

不動産投資ローンでは、購入する物件についても審査されますので、優良物件を探すことが融資を受ける上での大きなポイントになります。例えば個人の資産がさほどなくとも、あるいは他にローンがあっても、物件の担保力や収益力がある場合には融資が受けやすくなります。金融機関は土地の評価を行う場合には公示地価や固定資産税評価額などを参考にし、これらが購入する土地の価格と比べ高ければ担保価値が高いと評価します。また、今後地価の上昇が予想されるような物件は高い評価を得ることができます。それゆえ不動産投資に適した優良な物件を探すことは、融資を受ける上で大切なことになります。

投資用ローンはどの程度まで融資を受けられる?

住宅ローンの場合は年収が一つの指標となり、通常5倍~7倍程度まで借りることができます。一方、不動産投資ローンの場合には物件の価値が大きな要素となりますので、一概に年収の何倍ということは言えません。物件から得られる収入を予想し、年収や個人の資産状況などを加味して融資額を設定することになります。一般的に不動産投資ローンは、住宅ローンより大きな金額を借りることができます。

住宅ローンがある状態での不動産投資のリスクと対策


不動産投資ローンは住宅ローンの残高があっても、物件の価値が高ければ融資を受けられる可能性がありますが、リスクはないのでしょうか。

債務超過に陥りやすいので、借入金を多くしない

不動産投資ローンでは、物件価格と同額程度の貸付を受けられるだけでなく、取得費や諸費用を含むすべての融資を受けられる場合もあります。しかし不動産投資においては、空室が多く発生したり、金利の上昇により返済ができなくなったりするリスクも考えておかなければなりません。自己資金を十分用意していれば良いですが、少ない場合には対応できず、せっかく手に入れた物件を売却せざるを得ない場合も出てきます。

投資用ローンは住宅ローンより金利が高い

一般的に不動産投資ローンは住宅ローンより金利が高いので、低金利で融資が受けられる金融機関を探しましょう。銀行により金利の差が2%程度ある場合もありますので、比較して金利の低いところから 借りるようにしましょう。

投資用ローンは返済期間が短いので金額が大きくなりやすい

不動産投資ローンの返済期間は、建物自体の耐用年数により異なり、中古の木造物件では15~22年程度の短い期間なのが普通です。また鉄筋コンクリート(RC)作りですと、耐用年数が長く返済期間も長く取れますので、このような物件を選ぶのも一つの方法です。

他のローンが利用しにくくなる

不動産投資ローンを借りた直後は、家賃以上の経費を差し引けることもありますので節税効果は高いと言えます。しかし確定申告の所得が赤字になっていると、住宅ローンや車のローンなど他のローンの利用が難しくなります。特に自宅を購入しようと考えている方は、先に住宅を手にいれておくべきで、そうしないと住宅ローンを借りられたとしても条件の良い金利で借りることが難しくなります。

返済の原資はそれぞれ別にしておこう

住宅ローン返済は、サラリーマンであれば毎月の給料が原資となります。一方不動産投資ローンでは、不動産物件から得られる家賃が返済の原資となります。サラリーマンの給料の変動はほとんどありませんので、よほどのことがない限り住宅ローンの返済は滞りなくできることでしょう。しかし、不動産投資は比較的安全といっても、空室など様々なリスクがあります。不動産投資の赤字を給料などで返済しようと考えると、無理が生じ自宅を手放さざるを得ないこともあります。それゆえ返済の原資はそれぞれ別に管理するようにしましょう。

最後に


住宅ローンを利用した不動産投資は、通常は賃貸併用住宅に限られます。多少金利などが高いなど不利な点はありますが、不動産経営には清々と不動産投資ローンで融資を受け、後々問題が起こらないようにしましょう。