不動産に関わる税制。今年(2018年)も変更ポイントがたくさんありました。特に2018年3月31日で期限を迎える特例はどうなったのか、気になる方も多いのではないでしょうか? ここでしっかりと不動産関連の税制についてチェックしておきましょう。

■新設
・土地の相続登記に対する登録免許税免税
■延長
・新築住宅、固定資産税の減税措置延長
・リフォームした場合の固定資産税の減税措置延長
・長期優良住宅普及促進のための特例延長
・マイホーム買替特例(譲渡損失の損益通算と繰越控除)延長
・不動産取得税の軽減措置延長
・印紙税の特例延長
・特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除
・小規模住宅地の特例の改正
■税制ではないけれど注目の法律
・中古住宅へのインスペクション導入(改正宅建業法)
■今後税制変更予定の要注意ポイント
・生産緑地指定解除2022年問題

新設

土地の相続登記に対する登録免許税免税

平成30年(2018年)の税制改正によって、相続による土地の所有権の移転の登記について、登録免許税の免税措置が設けられました。

これは、個人が相続(相続人に対する遺贈を含む)により土地の所有権を取得した場合に、「当該個人が相続による土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡した時は、当該個人を土地所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さない」というものです。簡単に言うと、死んだおじいちゃんの土地を亡き息子に移転するには登録免許税が免除されますが、おじいちゃんの土地を元気な孫に移転する時には登録免許税が発生します。この免税措置は土地のみに適用されるのも注意です。

土地の価額に対して0.4%の税金が免税となります。適用期間は2018年4月1日から2021年3月31日までの間です。

【参考】法務局:http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000017.html

延長

新築住宅の固定資産税の減税措置延長

新築住宅向けの固定資産税の減額措置は2年間延長されます。具体的には、新築住宅の建物分の固定資産税について、一戸建ては3年間で(120㎡までの部分の税額に対して)2分の1減額マンションは5年間で(120㎡までの部分の税額に対して)2分の1減額されるのです。この措置は2020年3月31日までに延長されるので、これから家を建てる人にとっては、初期負担が減るメリットがあります。

リフォームした場合の固定資産税の減税措置延長

リフォームを行った場合にも固定資産税の特例措置がありますが、こちらも2年間延長です。バリアフリー改修や省エネ改修の場合は3分の1、耐震改修の場合は2分の1、長期優良住宅化改修(認定長期優良住宅に該当する時)の場合は3分の2が、それぞれ工事の翌年度の固定資産税から減額になります。これは2020年3月31日まで延長されます。国内には既存住宅がたくさんありますが、その活用を目的とした措置です。

【参考】国土交通省:http://www.mlit.go.jp/common/001214507.pdf

長期優良住宅普及促進のための特例延長

長期優良住宅とは、良質な住宅を長期にわたって良好な状態で住み続けるために、耐久性や耐震性、維持管理のしやすさなどの基準を満たす住宅を認定する制度。これに認定されると、購入時の登録免許税が一般住宅特例より引き下げられます(所有権保存登記は0.15%から0.1%へ、所有権移転登記は0.3%から一戸建て0.2%、マンション0.1%へ)。不動産取得税は、課税標準から1,300万円控除(一般住宅特例よりも100万円増額(つまり減税))。固定資産税も一般住宅特例(2分の1減額)の適用期間が延長(一戸建ては5年、マンションは7年)になるのです。この特例措置の期限も2020年3月31日まで延長されます。

【参考】国税庁:
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0018003-081-02.pdf

マイホーム買替特例(譲渡損失の損益通算と繰越控除)延長

不動産を売って売却益が出た場合、所得税や住民税が掛かってしまいますが、自宅を買い替えた場合は特例を受けられます。売却益が無かったものとして次に買い替えるまで課税を繰り延べられる「買替え特例」や、売却損が出た場合に最長4年間の所得から繰り越して相殺できる「譲渡損失の繰越控除」があるのです。この特例は2019年12月31日まで延長されます。住宅ローン控除との併用もできますが、譲渡損失との相殺で所得がゼロになった年は住宅ローン控除が適用になりません。

【参考】国税庁:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3355.htm

不動産取得税の軽減措置延長

不動産取得税は、不動産を取得した全ての個人・法人に課される税金です。この軽減措置では、宅地を取得した場合の課税標準を2分の1にしたり、住宅・土地の取得に掛かる税率を本則の4%から3%に軽減したりする特別措置が取られています。長期優良住宅の場合は、課税標準からの控除額が一般住宅特例より増額(つまり減税)されているほか、この特例の期限は2021年3月31日までとなっている点に注意です。

不動産取得税の詳細についてはこちらから
攻略!不動産取得税 税額の計算方法・非課税・軽減措置まとめ

印紙税の特例延長

不動産を買うときには売買契約書や工事請負契約書に収入印紙を貼ると思います。この印紙税は現在軽減措置が取られていますが、この特例の期限も2020年3月31日まで延長されています。具体的な軽減後の税率については、国税庁「『不動産譲渡契約書』及び『建設工事請負契約書』の印紙税の軽減措置の延長について」をご確認ください。

特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除

特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除とは、以下のようなものを指します。

平成27年12月31日までに住宅ローンのあるマイホームを住宅ローンの残高を下回る価額で売却して損失(譲渡損失)が生じたときは、一定の要件を満たすものに限り、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。さらに損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。
これらの特例を、特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例といいます。なお、これらの特例は、新たなマイホーム(買換資産)を取得しない場合であっても適用することができます。

【出典】国税庁:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2015/taxanswer/joto/3390.htm

こちらも2019年12月31日まで延長になっています。

小規模住宅地の特例の改正

小規模住宅地の特例とは、①自宅のない相続人が被相続人の住んでいた家を相続したり、②相続人が被相続人の経営していた店舗・工場などを引き継いだり、③相続人が被相続人の所有していた賃貸不動産を引き継いだりする場合、相続した土地の評価が一部減額され、相続税負担が軽減されるというものです。一定の要件を満たすことで最大80%の減額が認められる場合もありました。しかし、不動産の名義を工夫して無理やり特例を使う動きがあったため、2018年4月1日以降、この特例のための要件が厳格化されるようになっています。

具体的には、次のような者が除外されるようになりました。

・相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別の関係のある法人が所有する国内にある家屋に居住したことがある者

・相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者

【出典】財務省:https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2018/30taikou_02.htm

税制ではないけれど注目の法律

中古住宅へのインスペクション導入(改正宅建業法)

インスペクションとは、建物状況調査のこと。建物の構造耐力上の重要な部分の状況を専門家が調査することで、その結果を不動産取引において、きちんと示すことができます。

住宅の量が充足していることを背景に、政府は新築住宅の供給から中古住宅の質の向上へとシフトしています。消費者が中古住宅に抱く不安を払拭し、安心して売買ができるようにするためには住居の質の情報提供が必要ですが、売主がそれを行うのは難しいため、専門家が建物の状態を調査するというわけです。

国土交通省では、売買時点の住宅の状況を把握できるインスペクションについて、どの検査事業者が行っても同様の結果が得られるように、「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を策定しています。インスペクションでは確認できない重大な欠陥が発覚した場合に、その補修費用を保険金でまかなえる「既存住宅瑕疵保険」に加入できれば、購入後のトラブル防止にもつながるのです。なお、瑕疵保険への加入時は保険会社の求める品質基準を満たす必要があります。

ちなみに、この法律はインスペクションの実施そのものを宅建業者などに義務付ける法律ではないということです。インスペクションの説明を行い、希望する場合には業者の斡旋をする、もし実施予定 or 実施済みであれば、重要事項説明時に「結果を説明する義務」が課されるというものであり、インスペクションをしない選択肢もあることに注意が必要です。

今後税制変更予定の要注意ポイント

生産緑地の指定解除(2022年問題)

生産緑地とは、「都市部に残る緑地を守る狙いで1974年に制定された生産緑地法に基づき、市町村から指定を受けた農地」(2008年2月18日「朝日新聞」)のこと。生産緑地法全体の8割程度が1992年に指定を受けているため、30年経過した2022年に多くの土地の営農義務期限が切れ、マンションや一戸建てなどの住宅用地として順次放出されると予想されます。

生産緑地の指定が解除されると、固定資産の優遇措置が受けられなくなってしまいます。さらに、過去に相続税の納税猶予を受けていた場合は、その相続税+利子税を追納しなければならなくなるのです。自治体が土地を買ってくれるのも難しいものと見られているので、今のうちから相続税の対策を練っておくことが肝要になります。

まとめ

不動産に関わる税制に関して、2018年は基本的には延長となっていますが、インスペクションの導入や、生産緑地の指定解除問題など、注目ポイントも増えています。今のうちから専門家に相談するなど、事前に勉強しておくのが良いかもしれません。

(参考記事)
相続登記の登録免許税の免税措置について:法務局
平成30年度税制改正要望に対する結果概要について
2018年度の税制改正、ポイントを解説 住宅購入に関わる減税措置や特例の延長など _ スーモジャーナル – 住まい・暮らしのニュース・コラムサイト
固定資産税の特例・都市計画税の特例 _ 住建ハウジング
平成30年度税制改正について 【不動産・税金相談室】
小規模宅地等の特例│初めてでもわかりやすい用語集│SMBC日興証券
宅建業法改正でインスペクション導入がすすむ!_ その目的とは? _ スーモジャーナル – 住まい・暮らしのニュース・コラムサイト
譲渡損失の繰越控除 _ 制度編お金・制度編マニュアル _ SUUMO
譲渡損失の繰越控除 _ 住建ハウジング
2018年の税制改正 不動産ではどうなる? _ AGAホールディングス
小規模宅地の特例が改正されます|相続レポート|福岡相続サポートセンター
2018年4月から施行される「インスペクションの活用」ってなに? _ スーモジャーナル – 住まい・暮らしのニュース・コラムサイト
インスペクション法案が2018年4月から施行!中古物件の売買を安心に _ 資産価値のある家を買う。マイホーム購入はミトミ
「2022年までに準備しておきたい生産緑地の対応法」セミナーレポート _ 【マイナビ賃貸】 住まいと暮らしのヒント
生産緑地の2022年問題、税負担急増と地価下落のダブルパンチ _ 相続税理士相談Cafe
生産緑地の指定解除 _ ありがとう相続.com

(安齋慎平)

【記事筆者】

安齋 慎平
安齋 慎平
1985年福島県生まれ。福島県立福島高校、東北大学経済学部卒。ライフハッカー[日本版]などのWebメディアや、企業オウンドメディアなどで執筆中。内閣府広報『Highlighting Japan』など、官公庁から依頼された記事も担当している。得意分野は「日本史(幕末~平成期)」「お笑い」など。