不動産を取得するときには、様々な費用が発生するのをご存知でしょうか?今回は、その中でも不動産登記の場面に焦点を当てて、どのような費用がかかるのか、登録免許税はどのように算出されて、どの程度発生するのかみていきます。また、不動産登記をする上で押さえておくべき、減税のパターンについてと、最後に、ケース別に、不動産登記の登録免許税の算出方法及び専門家に支払うおよその報酬額についても解説していきます。

不動産登記にかかる費用とは?

不動産登記にはどれほどの費用がかかるのでしょうか。一生のうちに、不動産の登記をする機会はなかなかありませんから、見当がつきにくいものですが、大まかな金額は把握しておきたいものです。

実費と専門家に頼んだ場合の報酬

不動産登記にかかる費用は、実費と専門家に依頼した場合の報酬額の合計額になります。このうち、実費としては、登録免許税・不動産登記簿謄本取得費、交通費が含まれます。実費としてかかる費用は、自分で登記の手続きを行ったとしても変わらない費用と言えるでしょう。

また、不動産登記の手続きを専門家に依頼した場合には、専門家に対する報酬を支払わなければいけません。この専門家に対する報酬は、各専門家によって報酬額を定めていますので、費用面を考慮して依頼することが出来ます。

登記にかかる主な費用は登録免許税

不動産登記には、様々な名目で費用が発生してしまいますが、このうち専門家に頼んだ場合の報酬を除くと、登録免許税が主な費用として発生することになります。具体的な登録免許税の計算については、以下を参照して下さい。

登録免許税の算出方法は?


登録免許税は、どのようにして算出されるのでしょうか。その算出式を確認すると共に、不動産を移転する場合の登録免許税の税率についてみていきます。

課税標準に税率をかけて算出

登録免許税は、以下のような計算式で算出されます。

登録免許税=(課税標準)×(税率)

 

ここで、「課税標準」に当たる金額は、登録免許税を算出する対象が不動産の価額を基準として考えます。また、担保を設定する際の登記では、債権の金額を課税標準金額とします。一方で、既存の登記を抹消する場合には、不動産の個数又は権利の件数を課税標準として計算されます。

 

不動産の価額は、市区町村役場で交付されます「固定資産評価証明書」により確認することが出来ます。また、毎年6月頃に送付されます「固定資産税納税通知書」からも確認することが出来ます。

 

ただし、この課税標準の金額が1,000円未満の端数が生じる場合には、その端数は切り捨てて計算するようにして下さい。また、この課税標準としての金額が1,000円未満になる場合には、課税標準を1,000円として計算することになりますので覚えておきましょう。

課税対象は不動産の価額

今回のテーマのように、「不動産を取得したとき」の計算の場合には、「不動産の価額」を課税標準として算出することになります。それでは、具体的に登録免許税の税率をみていきましょう。

登録免許税の税率

不動産を取得したときにかかる登録免許税の税率は、不動産の種類及び登記の目的によって変動することになります。今回は、土地及び建物の所有権登記のケースを取り上げて検討してみましょう。

土地の所有権の移転登記

土地の所有権の移転登記の登録免許税の算出の仕方としては、相続・売買などの不動産を移転させる原因によって税率が変わります。以下の移転の原因における登録免許税の税率について、見ていきましょう。

 

(1)相続又は法人の合併を原因として所有権を移転する場合: 4 / 1,000

(2)共有物の分割を原因として所有権を移転する場合: 4 / 1,000

(3)その他(売買・贈与など(1)、(2)以外の原因)により所有権を移転する場合: 20 / 1,000

 

具体的には、以下の『ケース別、不動産登記費用の算出方法と内訳』をご覧頂き、該当するケースの登録免許税の計算方法を確認しましょう。

建物の所有権移転登記

建物の所有権登記にかかる税率は、『土地の所有権の移転登記』にかかる税率と同様です。したがって、上記(1)~(3)の移転の原因が同じであれば、土地も建物も同じ税率で計算されることとなります。

登録免許税の特別措置について


先程見てきた登録免許税の税率については、特別に軽減措置がなされることがあります。どういった場合に、どれほど税率が軽減されるのか確認してみましょう。

住宅用家屋は特別措置として税率が軽減される

住宅用家屋の場合には、以下の条件に合わせて、それぞれ所定の税率に軽減されることになります。

①住宅用家屋の所有権の保存登記

1.5 / 1,000に軽減されます。

②特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等

1 / 1,000に軽減されます。

③認定低炭素住宅の所有権の保存登記等

1 / 1,000に軽減されます。

④住宅用家屋の所有権の移転登記

3 / 1,000に軽減されます。

⑤特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記

1 / 1,000に軽減されます。

⑥住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記

1 / 1,000に軽減されます。

軽減税率を受けるための主な要件

上記軽減税率が適用されるためには、以下のような要件を備えておかなければいけません。

新築住宅の所有権保存登記における主な要件

(1)自己居住用の住宅であること、(2)新築又は取得後1年以内に登記されたものであること、(3)登記簿上の床面積が50平方メートル以上であること

中古住宅の所有権移転登記における主な要件

(1)自己居住用の住宅であること、(2)取得後1年以内に登記されたものであること、(3)マンション等耐火建築物以外は20年以内に建築されたものであること(ただし、20年を経過している場合には、その住宅が新耐震基準に適合していることについて証明されたもの、又は既存住宅売買瑕疵保険に加入している一定のものであること)、(4)登記簿上の床面積が50平方メートル以上であること

出典:国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm

ケース別、不動産登記費用の算出方法と内訳


実際に不動産登記にかかる費用(ここでは、登録免許税のみ考慮することとします)及び報酬を計算してみます。

 

算出方法については、以下の条件に従うものとします。

(1)課税標準の金額に当たる不動産の固定資産評価額は、1,000万円とすること

(2)登録免許税の軽減税率については、今回は考慮しないものとすること

(3)専門家に依頼した場合の報酬金額は、以下の【出典】に記載の日本司法書士会連合会の「報酬アンケート結果(2018年(平成30年)1月実施)」の例における「関東地区の全体の平均値」を参考として使用すること

(4) (3)により、参照とする日本司法書士会連合会の報酬欄において、不動産登記を行う原因が「売買1」、「売買2」のように、複数の場合の記載があるものについては、一番初めのものを参照とすること。この場合、「売買2」ではなく、「売買1」の報酬額を参照するものとします。

(5) 以下の不動産登記費用の算出方法のケースにおいて、【出典】に記載の日本司法書士会連合会の「報酬アンケート結果(2018年(平成30年)1月実施)」に該当する例がない場合には、以下の【参考】に記載の専門家の事務所の最低報酬額を参照すること

(6)その他の条件については、【出典】に記載の日本司法書士会連合会の「報酬アンケート結果(2018年(平成30年)1月実施)」の前提条件に従うこと

不動産を購入した場合の売買登記費用は?

不動産を「購入」した場合は、上記『登録免許税の税率』 における(1)にも(2)にも当てはまらないため、(3)その他の税率である20 / 1,000をかけることになります。

費用: 1,000万円 × 20 / 1,000 = 20万円

報酬: 51,909円

不動産を相続した場合の相続登記費用は?

不動産を「相続」した場合には、上記『登録免許税の税率』 における(1)に該当するため、4 / 1,000をかけることになります。
費用: 1,000万円 × 4 / 1,000 = 4万円

報酬: 65,800円

不動産を財産分与する場合の財産分与登記費用は?

不動産を「財産分与」する場合には、上記『登録免許税の税率』 における(1)にも(2)にも当てはまらないため、(3)その他の税率である20 / 1,000をかけることになります。

費用: 1,000万円 × 20 / 1,000 = 20万円

報酬: 25,000円

不動産を抵当権に設定した場合の抵当権設定の登記費用は?

『登録免許税の算出方法は?』における『課税標準に税率をかけて算出』で記載しましたように、抵当権等の担保を設定する登記では、債権の金額を課税標準金額としています。よって、今回は【出典】に記載の日本司法書士会連合会の「報酬アンケート結果(2018年(平成30年)1月実施)」の例に従って、債権金額を1,000万円として計算することになります。

費用: 1,000万円 × 4 / 1,000 = 4万円

報酬: 39,267円

不動産を贈与する場合の贈与登記費用は?

不動産を「贈与」により取得する場合には、上記『登録免許税の税率』における(1)にも(2)にも当てはまらないため、(3)その他の税率である20 / 1,000をかけることになります。
費用: 1,000万円 × 20 / 1,000 = 20万円

報酬: 47,806円

抵当権を抹消する場合の抵当権抹消登記の費用は?

『登録免許税の算出方法は?』における『課税標準に税率をかけて算出』で記載しましたように、既存の登記を抹消する登記をする場合には、「不動産の個数又は権利の件数」を課税標準として計算します。よって、抵当権抹消登記の登録免許税は不動産1個につき、1,000円加算されることになります。この場合、抵当権を抹消する不動産が1個であると仮定して、以下の通り計算してあります。

費用: 1,000円

報酬: 15,613円

【出典】:日本司法書士会連合会 http://www.shiho-shoshi.or.jp/consulting/remuneration.html
国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
【参考】:高山勝男司法書士事務所 http://www.katuo-office.jp/category/1158040.html

最後に

不動産登記の費用を計算することは、普段から慣れていないとなかなか複雑ですが、本記事を丁寧に読み進めて頂けますと、なんとか基本的な算出方法は理解できるはずです。専門家に依頼する場合でも、ご自身で事前に不動産登記の費用のシミュレーションをしておき、ある程度発生する費用を準備しておくようにすると安心出来ます。

監修:小林 弘司(不動産コンサルタント)