不動産に関する情報を表す「不動産登記簿」をご覧になったことはありますでしょうか?今回は、不動産登記簿を確認したいという方向けに、まず不動産登記簿の請求の仕方、並びにその取得方法を説明しています。最後に、不動産登記簿に記載されている情報をどのように理解すれば良いのか、分かりやすくまとめていますので是非ご覧下さい。

不動産登記簿謄本の取得方法は?

不動産登記簿謄本は、取得方法によって手続きが異なります。

以下の情報から費用や時間を考慮して、どの手続きを取るべきか参考にしてみて下さい。

不動産の登記簿謄本について

「不動産登記簿謄本」とは、媒体の資料である不動産登記簿の全部の事項を写したものです。これと似たような言葉で、「不動産登記簿抄本」がありますが、これは紙媒体の資料である不動産登記簿の一部の事項を写したものです。つまり、謄本か抄本かは、全部の写しか一部の写しかという違いになります。しかしながら現在では、コンピュータ化され、「登記事項証明書」という名称で取得することになりますので覚えておきましょう。

管轄登記所または最寄りの登記所での窓口で交付請求

管轄の登記所または最寄りの登記所に直接訪問して、登記事項証明書(不動産登記簿謄本)を取得するケースです。

請求の流れ

最寄りの登記所の窓口に行き、「登記事項証明書の交付申請書」に必要事項を記載の上、窓口で申請します。

手数料

1通あたり、600円分の収入印紙が必要です。収入印紙は、登記所内にある売り場にて購入することが出来ます。

必要事項・書類

申請者の住所・氏名、請求の対象となる不動産の種別、不動産の地番(又は家屋番号)が分かる情報を交付申請書に記載することが必要です。

郵送による交付請求

直接登記所に出向かなくても、郵送で登記事項証明書(不動産登記簿謄本)を取得するケースです。

請求の流れ

登記事項証明書の交付申請書を法務局のホームページよりダウンロードし、必要事項を記載の上、郵送で申請します。

【出典】法務局ホームページ
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/category_00002.html

手数料

1通あたり、600円分の収入印紙が必要です。収入印紙は、郵便局でも購入することが出来ます。(また、これに郵送の実費がかかります)

必要事項・書類

先述の登記所の窓口で申請する場合と同じ内容です。

オンラインによる交付請求

続いて、オンラインによる交付のケースを見てみましょう。

請求の流れ

オンラインで登記事項証明書(不動産登記簿謄本)を取得するために、「登記・供託オンライン申請システムホームページ」を利用して証明書の交付の請求を行うことができます。オンラインで請求された登記事項証明書は,指定された登記所で受け取る方法、または、指定した送付先へ送付する方法のいずれかを選ぶことができます。

手数料

1通当たりの手数料をインターネットバンキング、モバイルバンキング、またはATMを利用することにより電子納付を行うことができます。(窓口で受け取る場合は480円、送付の場合は500円)

必要事項・書類

オンライン上で、請求の対象となる不動産の種別、不動産の地番(又は家屋番号)を入力します。申請者の住所・氏名は既にオンラインシステムで登録済みの場合は不要です。
※窓口での申請と同様に、地番・家屋番号は実際の住所と異なる点に注意しましょう。
【出典】法務局ホームページ
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001215529.pdf

【参考】「登記・供託オンライン申請システム」
http://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/index.html

不動産登記簿謄本の閲覧について

紙の閲覧に代わって「登記事項要約書」を交付

現在閲覧出来る登記簿は、ほとんどコンピュータ化されています。従前の紙媒体での帳簿の閲覧の代わりとなるデータ形式の登記事項の要約が、管轄区域の登記所に限って交付を受けることが出来ます。

記載事項の注意点

登記事項要約書によって提供される情報は、主に現在効力のある事項の情報のみです。つまり、誰が誰と売買したかなどの以前の登記記録に関する情報は、登記事項要約書には記載されていないので、万が一、これらの情報が必要な場合には、登記事項証明書(不動産登記簿謄本)を取得しなければなりません。

例えば、現在の所有者は山田太郎さん(仮名)ということは分かりますが、山田太郎さん以前の所有者の情報については不明ということになります。

交付に必要な費用

1通あたり、450円分の収入印紙が必要です。収入印紙は、登記所内にある売り場にて購入することが出来ます。

 オンラインで閲覧

登記所にわざわざ出向かなくても、不動産の登記情報をオンライン上で閲覧することが出来ます。

登記情報提供サービスの概要

登記情報提供サービスとは、登記所が保有する不動産、並びに法人等の登記に関する情報について、インターネットを使用して利用者のコンピュータから確認することができる有料サービスのことを言います。

提供される登記情報

・不動産登記情報(全部事項)

・不動産登記情報(所有者事項)

・地図情報(公図)

・図面情報(土地所在図/地積測量図、地役権図面及び建物図面/各階図面)

・商業、法人登記情報

・動産譲渡登記事項概要ファイル情報及び債権譲渡登記事項概要ファイル情報

利用時間

平日8時30分から午後9時まで(土曜日、日曜日、国民の職実及び休日、年末年始は休止します)

料金

・全部事項(不動産登記情報):335円

・所有者事項(不動産登記情報):145円

・地図(不動産登記情報):365円

・土地所在図/地積測量図:365円

・地役権図面(不動産登記情報):365円

・建物図面/各階平面図:365円

・全部事項(商業・法人登記情報):365円

・現在事項、閉鎖事項(動産譲渡登記事項概要ファイル情報):145円

・現在事項、閉鎖事項(債権譲渡登記事項概要ファイル情報):145円

※登記情報提供サービス利用の際には登録費用(個人の場合300円)が必要となります。

【参考】登記情報提供サービス
http://www1.touki.or.jp/gateway.html

不動産登記簿謄本に記載されている情報の見方


不動産登記簿謄本(登記事項証明書)に記載されている情報は、専門的で一見して読み取りづらい内容が書いてあります。そのため、知識がない方が見ても、どこに何の情報が書いてあるのか分かりにくくなっています。そこで、登記簿の記載事項を分解して、それぞれどのような内容が書いてあるのか説明します。

登記簿を構成する4つの事項

不動産登記簿謄本の情報は、(1)表題部、(2)権利部(甲区)、(3)権利部(乙区)、(4)共同担保目録の4つによって構成されています。それでは一体、それぞれどのような情報が記載されているのでしょうか。詳しく内容について見ていきます。

表題部

不動産登記簿の表題部は、登記時点の不動産の物理的現況を示しています。

土地であれば、(1)地番、(2)地目、(3)地積、(4)原因及びその日付という項目が一行に並んで記載されています。それぞれ、(1)土地を識別するための番号、(2)宅地などの土地の名目、(3)土地の面積、(4)当該土地に関する物理的現況に変動が生じた原因とその原因が発生した日付が記載されています。

建物であれば、(1)種類、(2)構造、(3)床面積、(4)原因及びその日付、という項目が一行に並んで記載されています。それぞれ、(1)居宅などの建物の種類の名称、(2)木造や鉄筋コンクリートなどの建物の構造、(3)建物の階層別の床面積、(4)当該建物に関する物理的現況に変動が生じた原因とその原因が発生した日付が記載されます。

権利部(甲区)所有権に関する事項

権利部(甲区)には、不動産の所有権に関する情報が記載されています。この不動産の権利部(甲区)の情報を確認すると、その不動産の所有者は誰であるかを読み取ることが出来ます。不動産は売買がされると、登記簿上の名義が買主に移ることになります。何度も不動産売買がなされている場合には、単純に考えると、権利部(甲区)の最後の行に記載されている者が現在の所有者ということになります。

権利部(乙区)所有権以外の権利に関する事項

権利部(乙区)には、先述した権利部(甲区)に付されていた制限について記載されています。この制限には、「抵当権」、「地上権」、「地役権」などがあります。例えば、銀行からローンを借りる際には、資金の提供を受ける対価として、不動産を担保として抵当権が登記されることが多いです。この権利部(乙区)の制限があることによって、不動産の所有者は自由に不動産を処分することが出来なくなります。今回の例で言えば、不動産の所有者が銀行に対してローンを返すことが出来なければ、抵当権が実行されて、不動産は銀行のものとなってしまいます。

 共同担保目録

共同担保目録は、先述しました権利部(乙区)の抵当権とセットになりやすい 事項です。先述の例で考えますと、ローンの資金と不動産の価値を見て、不動産の価値が釣り合わなかった場合には、銀行は、他の不動産も併せて担保として確保しなければいけないことになるでしょう。しかしながら、どの不動産が他の不動産と共に担保となっているのかを時間をかけて調べるのは手間がかかってしまいます。そこで、共同担保目録という項目を用意して、ここを見さえすれば、どの不動産が抵当権の範囲となっているのかがすぐに分かるようになっています。

最後に


不動産登記情報について、少しでもご理解頂けましたでしょうか。公的な証明が必要な場合は、不動産登記簿謄本(登記事項証明書)を取得する手続きが必要となります。一方で、単に不動産の登記記録を閲覧するだけであれば、登記情報提供サービスを用いて、格安で閲覧する方法がお勧めです。登記簿の情報で分からない点が出てきたら、本記事を再度見返して頂き、何について書いてあるのか逐一確認しながら読み進めてみましょう。

監修:小林 弘司(不動産コンサルタント)