NISAは数年前に「税金がかからない」と話題になった制度です。また最近ではiDeCoも登場し、これまでただ預金するだけだったけれど投資信託を始めてみたという方もたくさんいますね。つみたてNISAは、2018年に登場したNISAの新バージョンです。これまでも子どもNISAなど弟分を発表してきたNISAの最新版は、どう違っているのでしょうか。

つみたてNISAの基礎をしっかりと頭に入れる!

つみたてNISAで資産をよりよく運用したいなら、まずつみたてNISAの基礎についてしっかりマスターしなければなりません。つみたてNISAはどんな制度なのか詳しくご紹介しましょう。

つみたてNISAとは新たな小額投資非課税制度

つみたてNISAは基本的にはNISAと同じ非課税制度の投資制度のひとつです。NISAは数年前に登場し、多くの人が活用しているためよく知られる制度になりました。NISAの基本といえば「非課税」という点です。運用時利益には通常税金がかかりますが、つみたてNISAもNISAも税金がかかりません。

2018年1月からスタートした制度

2018年の1月から始まった新しい制度なので「普通のNISAとどう違うの?」「NISAやiDeCoと一緒に利用することはできるの?」など、疑問に感じることも多いかもしれません。NISA・iDeCo・積立NISAの違いがわからないので、資産運用が始めたくても始められないという方もいるかもしれません。そこで、つみたてNISAの特徴について詳しくご説明します。

つみたてNISAの特徴

つみたてNISAの特徴を知ることで、NISAやiDeCo、一般的な資産運用や預貯金とはどう違い、どうお得なのかを知ることができます。また組み合わせを考えて、より運用利回りをアップさせたり、リスクを減らすことができます。

つみたてNISAは積立オンリーのNISA

つみたてNISAの最大の特徴は、積み立て型の投資のみに限定されている点です。定期的・継続的な積み立てしか投資ができません。つまり積立に特化したNISAなのです。

 非課税となる期間が最長20年間

つみたてNISAとNISAの大きな違いのひとつは、期間が非常に長いことです。NISAは10年間しか非課税になりませんが、つみたてNISAは長期の投資を考えて20年も非課税になる期間を設けています。

非課税投資枠は年間40万円まで

非課税投資枠は年間40万円までと決められています。40万円までの投資額に対する運用益は税金がかかりません。NISAは年間120万円までなので「え、ちょっと少なすぎるんじゃないの?」と感じるかもしれません。しかしつみたてNISAはなんと20年間も非課税期間が続きます。長期の投資に向いているため、長いスパンで投資信託への投資を考えている方に最適です。

一定の条件を満たす投資信託などに使える

つみたてNISAはすべての投資商品が利用できるわけではありません。金融庁ではつみたてNISA用に厳しい基準を設けており、それにクリアした投資信託およびETFなどが利用できます。ETFとは東証一部のような市場や、日経平均のような指標に対して投資する商品で、いろいろな銘柄の株に一度に投資するものです。

逆に個別の株式投資などはできません。ハイリスクハイリターンな取引を求める方にはものたりないかもしれませんが、つみたてNISAは長期的な投資を目的としています。初めてなので安全に投資したいという方や、長期的に運用したいという方にはぴったりです。

現行NISAとの違いは4点

これまでに利用されてきたNISAと今回新たに登場したつみたてNISAには4つの違いがあります。これまでのNISAとの違いがわからないので不安という方のために、違いがよくわかる4つのポイントについてご紹介します。

非課税投資枠

先ほどご紹介したように、一般のNISAとつみたてNISAには非課税投資枠に違いがあります。
○一般のNISAでは非課税投資枠が年間120万円
⇒非課税期間
の上限は最大10年なので、それ以降は課税対象になる

○つみたてNISAでは非課税投資枠が年間40万円
非課税期間の上限は最大20年なので、その期間は課税対象にならない

年間の投資可能額は低く抑えられていますが、20年間課税対象になりません。40万×20年なので、もし運用利益がゼロだとしても、800万円の貯金が可能になります。もちろん運用利益が出れば、もっと大きな金額の資産になるということになります。

では、一般のNISAとつみたてNISAで同じポイントも挙げておきましょう。

○ひとりにつき1本
○投資額の上限を超えないかぎり
投資利益に税金はかからない
○一度上限額に達してしまうと、たとえ売却して非課税投資額を下回ったとしても一年分の利用額は増えない

口座開設期間

つみたてNISAや一般的なNISAを始めるにあたっては、銀行や証券会社などの金融機関でNISA専用の口座を開設しなければなりません。いつも使っている銀行や証券会社で、すでに総合口座や投資信託口座を持っている方であれば手続きも簡単です。
しかし、NISAやつみたてNISAのために初めて利用する金融機関の場合、まず総合口座を開設し、さらにつみたてNISAやNISA専用の口座、銀行の場合は投資信託口座も開設しなければなりません。

口座の開設においては、マイナンバーカードか通知カードに加え、運転免許証などの本人確認書類が必要になります。これらの証明書類をそろえて口座を開設しに窓口へ行っても、webで申し込んだ場合も、だいたい口座開設までに1ヶ月はかかります。今日からすぐに投資がスタートできるわけではないので、その点には注意してください。

保有商品の移行・ロールオーバーの可否

NISAでは最大で5年間の非課税期間が決められています。しかし、先ほど「最大10年」とご紹介しました。これは、5年間保有したら6年目にあたる翌年の買い付け可能枠を活用して商品を移し替えることで、非課税期間をまた5年間引き伸ばすことができるということなのです。これを「ロールオーバー」と呼んでいます。NISAのロールオーバーでは、非課税期間満了まで保有していた場合、NISAの年間上限額である120万をこえてもそのままロールオーバーできます。しかしつみたてNISAは20年で積み立て終了です。そのため非課税期間が終了した後の積み立て枠は設定されていません。したがって、現行の税制ではロールオーバーは不可能とされています。

投資できる金融商品

NISAとつみたてNISAでは、投資できる金融商品にも違いがあります。

○NISA…株式投資・ETF・REIT(不動産投資信託)・公募株式投資信託
○金融庁が承認した129本(2018年6月10日現在)

つみたてNISAの場合は全6000前後もある投資信託の中から、金融庁が投資初心者や長期・積み立て投資や分散投資に向いているものを選び抜いて商品を決めています。より初めての方に優しいシステムと言えます。

つみたてNISAに向いている人はどんな人?

つみたてNISAは、年の上限金額が40万に定められています。NISAの場合は一気に上限まで投資しても構いませんが、つみたてNISAは年数回に分けて定期的・継続的に積み立てていかなければなりません。たとえば毎月1万円とか、隔月2万円といった方法になります。そのため、コツコツと長期間にわたって貯蓄ができるタイプの方に合っていると言えます。今一般口座でコツコツ貯蓄をしている方で、投資信託にトライするかどうか悩んでいる方は、はじめの一歩としてつみたてNISAを選ぶと安心して始められるのではないでしょうか。

逆にコツコツと長期間にわたっての貯蓄は苦手で、どうも使ってしまいがちという方にもおすすめしたい制度です。一般口座に入っているとどうしてもすぐに引き出せてしまいますが、つみたてNISAにすれば、簡単に引き出しはできないので自然と貯蓄する習慣が身につくかもしれません。

つみたてNISAのメリット

それでは、つみたてNISAのメリットについてご紹介します。なぜつみたてNISAはおすすめの制度なのでしょうか。

一ヶ月に3.3万円までの少額で積み立てができる事

つみたてNISAは、一ヶ月3.3万円まで(年40万円÷12ヶ月の場合)という少額からつみたてができます。一ヶ月に10万、20万と貯蓄をするのは大変なことですし、まして投資信託大きな金額を投資するのは不安ですよね。でもつみたてNISAなら、少額からトライすることができるので、多少なりともリスクのある投資信託をするには非常に入りやすいコースと言えるでしょう。

購入手数料が0円で低コストである事

つみたてNISAは購入手数料や口座開設手数料・口座管理手数料などはいっさいかかりません。また最低金額の設定もありません。そのため、専業主婦の方でも「毎月の食費のあまりを無理のない金額から始めてみようかしら」といった方法でスタートできます。長期にわたる投資なので、低コストであることはとても重要ですよね。またスタートできるのは二十歳からとなっており、年齢の上限はないので、誰でも気軽に始めることができるのです。

つみたてNISAのデメリット

つみたてNISAにもある角度から見ればメリットに見える点でも、人によっては、また場合によってはデメリットになるポイントがあります。その点をしっかりチェックしておきましょう。

1人に対して1つの口座しか開設できない事

つみたてNISAは1人につき1つしか口座を開設することができません。NISAのように毎年新たに口座を持てるわけではなく、すべての金融機関を通じてひとり1口座しか持つことができないのです。金融機関変更についてもできないわけではありません、変更するときは手間と時間がかかり、かなり面倒な手続きになります。そのため、最初に金融機関や投資銘柄を選ぶとき非常に慎重に選ぶ必要があるのです。

損益通算・繰越控除ができない事

つみたてNISAでは一般の投資で行われる損益通算と繰越控除ができません。

○損益通算…複数の証券口座を利用している時、それぞれの口座の利益と損失を合算し損益計算をするため、課税対象になるのは差額のみになります。しかしつみたてNISAではほかの証券口座との損益通算はできません。つみたてNISAでマイナス損益が出て他の口座で大きくプラスになったときでも、マイナスを合算して税金を抑えることができないのです。

○繰越控除…損益通算をしてマイナスが残った場合、3年間にわたって翌年以降の利益と合算し、相殺することが許されています。しかし損益通算ができないつみたてNISAでは繰越控除もできません。

非課税期間が期間限定である事

つみたてNISAは非課税の制度ですが20年という期間限定です。20年経過しても売却しない場合はつみたてNISA口座から普通の投資で使用する課税口座へ金融商品が移行します。仮にその後価格が上昇し売却した場合、値上がり分が利益となって課税対象になってしま約20%の所得税等がかかるため、その点注意しておいてください

対象商品が限定的である事

さまざまな投資商品に少額ずつ投資したいという方にはつみたてNISAは向きません。銘柄がごく限られているためです。金融庁が厳選した銘柄ですが、自分のスタイルに合わなければそれまでになってしまいます。また投資には必ずリスクがついてくるので、金融庁のお墨付きであっても完全に大丈夫であるとは断言できません。

非課税枠の持越しができない事

非課税枠は余ったとしても翌年には持ち越せません。例えば今年は30万円しか投資できなかったとしても、来年はプラス10万で50万にはできません。非課税枠の持越しはできないので無理にならない、でも無駄にならない投資方法を考えてください

また、30万円分の投資商品を購入したけれど、その年のうちに全て売却してしまった場合、再び40万の上限まで投資できるわけではありません。その年の非課税投資枠の残りは40万から30万を差し引いた10万円です。年間に投資に使用できる金額が通し40万ということです。

さらに投資には分配金を受け取るタイプと再投資するタイプが選べます。しかし分配金で再投資をすると新規の買い付けとみなされてしまうため、再投資タイプを選ぶと最後に買い付けられない分が出てしまうことがありこの点にも注意が必要です。

つみたてNISAはiDeCoと相性抜群!

つみたてNISAは途中で売却して引き出すことができます。普通預金のように気軽に引き出せるわけではありませんが、用立てるべきお金ができた時などはいつでも売却できる安心感があります。しかしつみたてNISAとNISAは併用ができません。ただ、個人型確定拠出年金「iDeCo」とは併用できます。しかもiDeCoとつみたてNISAは相性抜群なのです。iDeCoは60歳まで引き出し不可ですがつみたてNISAはいつでもOKです。またiDeCoは手数料や管理料がかかりますがつみたてNISAには一切かかりません。iDeCoは5,000円からですがつみたてNISAはいくらからでもできます。

さらにiDeCo掛け金は所得税等の所得控除が適用されます。つまり、それぞれの弱点を補いながら今から20年後を目指し、さらにその先を目指して貯蓄ができるのです。例えば、月1万円を投資に回したいのであれば5,000円はiDeCoに、残りをつみたてNISAにという形も取れます。20歳でつみたてNISAを始めた方なら、自動車や家を買う時の頭金に、30歳でつみたてNISAを始めた方なら子どもの大学進学に、40歳でつみたてNISAを始めた方なら、iDeCoに大きなプラスアルファができますね。

つみたてNISA、iDeCoどちらの長所も短所もしっかり押さえておくことで、限りのある資金を上手に将来に残すことができます。両方のメリットを学び、将来に備えましょう。

修者:大間武(ファイナンシャルプランナー)