アパートやマンションなどの集合住宅の物件を、1部屋ではなく1棟丸ごと所有している場合の運用方法として、サブリース契約があります。サブリース契約は、業者が物件を一括で借り上げし、家賃収入から手数料を差し引いた金額を大家に保障する、というサービスです。サブリース契約は、仮に空室があっても一定の収入を保障する、という制度になっているのが大きな特徴です。その反面、多くのサブリース契約においては、様々なリスクが存在しているケースが多くなっています。ここでは、サブリース契約の特徴とデメリットについてご紹介します。

サブリース契約とは

サブリース契約の全体像を把握するために、仕組み、メリット、デメリットの3つを見ていきます。

サブリース契約の仕組みとは

サブリース契約では、業者がアパートやマンションを一括して借り上げたうえで、オーナーに毎月一定の金額が支払われます。業者から大家に支払われる金額は、家賃から手数料を差し引いた額なので、物件を普通に貸し出した場合よりも、得られる収入は低くなるのが一般的です。業者は一括して借り上げた物件を通常の家賃で貸し出して、手数料として利益を受け取る、という仕組みです。

サブリース契約のメリットとは

オーナーにとってのサブリース契約のメリットは、物件に空室があっても業者から一定の収入を確保できることです。サブリース契約にしない場合よりも全体の家賃収入は減りますが、空室のリスクを回避できるというメリットがあります。

例えば、1部屋の家賃が10万円で、合計20部屋のマンションのケースを見てみます。全部屋を手数料1割で業者が一括借り上げし、全部屋に借り手がついた場合、1月にオーナー(大家)が得られる収入は180万円で、業者が得られる収入は20万円になります。

サブリース契約にしない場合の収入である200万円よりは少なくなりますが、半分の10部屋しか借り手がつかなかった場合の100万円の収入に比べて、80万円の利益を確保することができます。

サブリース契約のデメリットとは

空室リスクを回避して毎月の収入を得られることは、大きなメリットのように思えます。その一方で、サブリース契約には複数のデメリットも存在します。例えば、契約の更新ごとに保証額が変わる、契約を解除するには違約金がかかる、などです。サブリース契約のデメリットやリスクについては、後で項目ごとに詳しく説明します。

見落としがちなサブリース契約の落とし穴

サブリース契約は空室リスクの回避という魅力がある反面、見落としがちな落とし穴もあります。リスクを認識した上で効果的な運用を検討するために、トラブルの原因となる事例を見ていきます。

トラブルの一番の原因!保証家賃の見直し

サブリース契約においてトラブルの原因になりやすいのが、家賃収入保証額の見直しについてです。全契約期間中、固定の金額が保障される訳ではなく、2年に1度程度の頻度で保証料が見直されるのが一般的です。最初は十分な保証額が提示されていても、通常は築年数の経過によって保証額は下がっていきます。サブリース契約を検討する場合には、家賃保証についての上記の傾向を把握しておくことが非常に重要です。

サブリース契約解除の違約金について

家賃保証に不満があるなど、サブリース契約を解約したくなる場合があります。注意点は、オーナー側からサブリース契約を解約するには、違約金が発生するケースが多いということです。解約の通知期間を守らなかった場合に、数ヶ月分の家賃を違約金として支払わなければならない旨の規定が、契約に盛り込まれていることが多くなっています。

自分の物件なのに入居者の情報が分からない

サブリース契約では、業者が入居者とやり取りするため、オーナーには入居者の情報が伝わらないケースが多くなっています。家賃の振込先が変更になった場合など、入居者との連絡が必要な場合に不便を感じることもあります。サブリース契約を結ぶ際は、入居者の情報を共有することを業者に依頼することが大切です。情報の提供を渋る業者には要注意です。

サブリース契約を結んでいる不動産会社倒産のリスク

空室の場合でも収入を保証するというサブリース契約の仕組みは、オーナーにとってはメリットになる反面、収入を保障する業者には大きな負担になります。契約を獲得するために無理に高い保証額を支払い続けた結果、思うように入居者を確保できずに業者が倒産してしまう場合もあります。業者が倒産してしまった場合は、その後の収入の保障がなくなるだけでなく、入居者の苦情などにオーナー自身が対応しなければならないなどの負担が生じます。

サブリース契約時の注意点

サブリース契約を結ぶ場合には、契約に盛り込まれている項目をきちんと確認することが大切です。

サブリース契約で注意すべき契約事項とは

サブリース契約においては、注意すべき契約事項が複数存在します。以下、注意すべき項目ごとに見ていきます。

【家賃保証の見直し期間を必ず確認する】

家賃保証はサブリース契約の大きな魅力ですが、保証料には見直しの期間が設定されています。対象となる建物の築年数が経過するにつれて、保証料の減額は大きくなっていく傾向があるため、見直しの期間は必ず確認することが大切です。

【サブリース契約解約時の違約金の有無の確認】

何らかの理由でサブリース契約を解約したいと思っても、契約において定められた手続きや期間以外には違約金が発生する場合があります。契約を締結する段階で、解約に関する定めと違約金の有無について、きちんと確認することが大切です。

【解約予告期間はいつまでなのかを確認】

サブリース契約においては、オーナー側から契約を解除する場合に、事前の解約予告期間が定められているのが一般的です。

例えば、大家は解約の6ヶ月前に業者に予め通知しなければならない、などです。予告期間を満たさずに大家が解約をする場合には、違約金が発生するケースが多くなっています。そのため、サブリース契約を締結する場合は、解約予告期間をきちんと確認することが重要です。

【更新手数料の有無と金額の確認】

業者によっては、サブリース契約を更新する際に手数料が発生する場合もあります。月々の保証金が高くても、更新の度に多額の手数料がかかるような場合には、実質的な利益が低くなってしまいます。更新手数料の有無と金額については、重要なチェックポイントになります。

【入居者から預かった敷金の取扱いについて確認】

サブリース契約においては、業者が入居者と直接取り引きをすることになるため、入居者の敷金は業者が預かる場合が多くなっています。敷金の取扱いについての規定がない場合は、更新や解約の際にトラブルの原因になることがあります。そのため、敷金の取り扱いについては、契約にきちんと盛り込まれていることが重要です。

サブリース物件のリフォームの落とし穴

サブリース契約によっては、リフォームする場合には指定業者にしなければならないなど、物件のリフォーム方法について規定されていることがあります。そうしたケースにおいては、実際はもっと安く済むはずのリフォーム費用が高くなってしまったり、指定された会社の施行が十分でない場合があります。

相続税対策!!という言葉を安易に信じない

相続税対策として、アパートなどの集合住宅の建設と、サブリース契約の締結をセットで勧誘される場合があります。確かに、アパートなどを建設することで、相続税における土地の評価額を下げることができるケースはありますが、あくまでもオーナー自身がきちんと収益を計算していることを前提とするものです。相続税対策というセールストークを鵜呑みにすることなく、冷静に必要性を判断することが大切です。

最後に

サブリース契約は、空室がある場合にも家賃収入が保証されることが魅力ですが、全額が保障される訳ではなく、業者の手数料の分だけ収入は減少します。また、保証料は数年ごとに見直されるため、築年数の経過によって保証される金額は減少していく傾向があります。 その他、解約時の違約金、解約期間の定め、更新手数料など、契約を結ぶ前にチェックしておくべき事柄があります。サブリース契約を検討する場合には、契約の性質やリスクをきちんと把握しておくことが大切です。

監修:小林 弘司(不動産投資コンサルタント)