長い低金利時代を経て、株式投資や仮想通貨など様々な資産運用を自ら行う人々が増えてきました。さらに、サラリーマンの副業解禁が進み、投資手法の中に不動産投資を検討する人も増えています。不動産投資には、区分マンション、一棟アパートやマンション、テナントビルや駐車場など、いくつか種類があります。ここではサラリーマンが副業として参入しやすいと言われている区分マンションと一棟アパートの違いや、アパート経営のイロハについてみていきます。

アパート経営とは?

サラリーマンが参入しやすい不動産投資である区分マンションと一棟アパート。

区分マンションの場合は、マンションの1部屋を所有して家賃収入を得るのですが、一棟アパートの場合は、6部屋や10部屋程度の規模の木造アパートを一棟まるごと所有して家賃収入を得ます。

区分マンションの場合、自らが管理するのは1部屋だけであるため管理は比較的簡単ですが、退去されてしまうと家賃収入が0となり、ローン返済は自己資金で補わなければならなくなります。しかし、一棟アパートの場合は1部屋空室が出たとしても他の部屋の家賃収入があるため、自己資金で返済を補填するまでは至りません。

このようなメリットを持ち、サラリーマンでも始めることのできるアパート経営の魅力と潜むリスクについて、さらに詳しくみていきます。

アパート経営で利益を上げる方法

アパート経営で利益を得る方法として、インカムゲインとキャピタルゲインがあります。インカムゲインとは、月々の家賃収入の事で、キャピタルゲインとは、購入時と売却時の差で得る利益の事を言います。

インカムゲイン

不動産投資が株式投資など他の投資と大きく違うのは毎月の収入があることです。株式投資にも配当分配などがありますが、現物支給であったり企業の業績により無くなったりする事もあり、月々の収入には至りません。しかし、一棟アパート投資は、同時に一棟まるごと空室になることは考えにくいため、比較的安定して月々の家賃収入を得ることができるといえます。

キャピタルゲイン

売却益を出すためには、不動産市場の流れに上手く乗って、高く売れる時に売り抜く場合と、初めから建物の価値がゼロになっているような築古物件を土地値程度の安価で購入し、その後リノベーションして生まれ変わらせてから高値で売る場合などがあります。

アパート経営の魅力

アパート経営で収益を得る仕組みはお分かりいただけたでしょうか。その投資手法は株式投資などとは大きく異なります。投資にはリスクも伴いますが、それを超えるメリットも多いアパート経営の魅力をみていきます。

空室リスクを分散できる

部屋数を複数所有する形の一棟所有は、空室リスクを分散することができます。

所有する部屋数が多いほど空室リスクは低くなり、区分所有のように空室=収入ゼロとはなりません。例え空室が出た場合も、他の部屋の家賃収入でしのぐことができるのです。

資金効率が良い

不動産の購入には様々な手続きやそれに伴う手数料が発生します。ローン手数料や登記費用、不動産取得税、仲介手数料等は、区分所有でも一棟所有でも必要になります。購入価格によって初期費用は異なりますが、概ね購入金額の7〜10%程度と言われています。

一棟所有の場合は、家賃収入が大きいため、初期費用の回収スピードが速く、資金効率が良いと言われています。

リフォームしやすい

自分で1棟所有しているため、自由にリフォームすることができます。例えば、空室が出たタイミングで1部屋ずつリフォームし、それぞれの部屋のテイストやカラーを変えるなどして集客アップ対策に繋げることもできます。

節税効果が高い

木造は法定耐用年数が22年と決められています。そのため、一棟アパートを所有した場合、建物価格は22年で(新築の場合)減価償却することになります。つまり、建物価格が4400万円であれば、年間に200万円を経費計上することができるのです。経費計上が大きければ大きいほど黒字が圧縮され、税金が安くなり節税につながるのです。

例えば、所得税率30%、年間家賃収入500万、管理費や固定資産税などの経費を100万と仮定した場合、年間に収める税金はどのくらい違うのでしょうか。

減価償却がなければ、(500万-100万)×30%=120万

減価償却200万とすると、(500万-300万)×30%=60万

このように、納税額に大きな違いが出ることがわかります。一棟アパートの場合、年間の減価償却計上は高くなりますが、節税期間は22年と短くなります。この期間を超えるターニングポイントはデッドグロスといわれ、経営状況が大きく変わるため注意が必要です。

マンションに比べて利回りが高い

RCマンションに比べて建築費用が安く、建築期間も短いといったメリットがあります。また、エレベーターや貯水タンクなどの設備がないため、維持管理にコストがかからないなどのメリットもあります。

スケールメリットを活かせる一棟アパート経営は、一棟マンションや区分所有などの他の不動産投資に比べて利回りが高いことが特徴です。

土地所有の場合、更地よりも固定資産税や相続税が低くなる

土地を所有している場合、その使用用途によって税金が変わってきます。

更地の状態で所有していると商業用地とみなされ、アパートを建てるなどした場合の住宅用地に比べ、固定資産税及び都市計画税が3〜5倍ほど高くなります。

更に、所有する土地に融資を受けてアパートを建てれば、相続する際に、建物に受けた融資分は赤字として相続することができます。

また、建物の価値は法定耐用年数によって減価償却していくため、実際の価値よりも低くなる事があります。税金は実勢ではなくその評価額を元に計算されるため、相続税が低くなるのです。

アパート経営のリスク

投資手法の一つとして多くの魅力を持つアパート経営ですが、もちろんリスクもあります。リスクをしっかり踏まえた上で、そのリスクをどのように払拭できるかが不動産投資をする上でとても大切です。ここではアパート経営のリスクを考えていきます。

流動性が低い

数百万から購入できる区分マンション(地方の場合)と違い、一棟となるとどうしても金額が大きくなります。そのため流動性が低く、売り出したからといってすぐに売れるとは限りません。金銭的、時間的に余裕を持ち、不動産市場の波を見極めながら売買のタイミングをうかがわなければなりません。

戸数が多いと管理に手間がかかる

一棟所有していると、その規模や戸数に合わせて複数の賃借契約を結ばなければなりません。入退居の多い物件の場合、退居が重なったりすると入退居に伴う立会いや修繕、入居募集などの管理に手間がかかる事があります。

音や振動が伝わりやすい

木造アパートはRC造に比べて床や壁が薄く、振動や音が伝わりやすくなってしまいます。構造上どうしようもないことなのですが、騒音が原因で退居者が出てしまう場合もあります。

耐火性が低い

木造のため耐火性が低く、火災が起こりやすいため、火災保険が高いといったリスクがあります。しかしながら、3階建ての木造アパートなどは、建築基準法上、準耐火構造となっており、火災保険で優遇を受ける事ができます。

木材が腐食しやすい、シロアリなどの害虫被害にあいやすい

木造は法定耐用年数が最も短いことからも分かるように、鉄骨造などに比べて老朽化が早く、定期的なメンテナンスが必要となります。10年から15年に一度は大規模修繕工事を行う事が望ましいとされていますが、30年間メンテナンスしないままアパート経営をしている物件も多々あります。しかしそのような場合、不具合が生じた時に手遅れになることもあります。安全に長くアパート経営をしていくために、定期的なメンテナンスやシロアリ駆除塗布など、将来必要となる修繕費用を積み立てておくと良いでしょう。

節税期間がマンションに比べて短い

建物はその構造によって法定耐用年数という減価償却期間が決まっています。

木造の場合は22年(新築の場合)となりますが、その間は減価償却費を損金扱いする事ができます。例えば、2200万の建物であれば1年に100万、4400万の建物であれば1年に200万を家賃収入から差し引いて計上できるため、大きな節税効果が得られます。しかしながら、木造の場合は、22年と期間が短いため、この期間を超えた後、税金に圧迫されローン返済ができなくなってしまうような場合があります。これはデッドクロスと言われ、大きな転機となるので、事前にしっかりシュミレーションしておく必要があります。

借入金が多い分、金利上昇の影響を受けやすい

一棟アパートの購入には多額の資金が必要となります。少ない自己資金で融資を受けてアパート経営する事をレバレッジを効かせると言います。レバレッジの効いた投資は不動産投資の魅力の一つです。しかし、多額の融資を受けるという事は、金利に応じた利息を払わなければなりません。融資額が大きければ大きいほど金利上昇のリスクが高くなります。

こんなアパート経営は失敗する

アパート経営の魅力やリスクをみてきましたが、実際に成功と失敗の分かれ道はどこにあるのでしょうか。失敗のリスクが高い考え方や行動を知り、リスク管理する事でアパート経営を成功に導きましょう。

勝手に家賃が入ってくると勘違いしてしまう

どのようなエリアであっても、どれだけ築年数が古くても、しっかりと入居者が付いていればアパート経営は成功と言えます。ただ、一度満室になったから安心してはいけません。入居者の要望に応えられなければ、すぐに退去されてしまう場合もあります。また、周辺に同じような価格帯の競合物件ができて、入居者が流れてしまうこともあります。家賃が入って来るからと安心して放置するのではなく、入居者のニーズや時代の流れなどに関心を持ち、対応していく事が大切です。

表面利回りだけを見て投資してしまう

不動産投資をする際に、一番の指標となっていると言っても過言ではない「利回り」ですが、利回りは高いほどいいのでしょうか?

表示されている利回りは表面利回りである事を忘れないようにしましょう。単純に利回りが高い物件というのは、駅から離れた土地の安いエリアであったり、築年数がかなり経った物件であったりします。利回りは高くてもトラブル処理に時間を取られたり、修繕に大きな出費を伴ったりすれば意味がありません。例えば、建物購入後にシロアリ被害が見つかったなどという事がないように、修繕履歴や現状をしっかりとチェックする事が大切です。さらに、年間にかかる管理費や清掃費などの固定費や税金などといった必要経費を家賃収入から差し引いた実質利回りを重視するようにしましょう。

土地勘のない場所の物件を購入してしまう

アパート経営を行う上で立地はとても重要です。例え駅から近く好立地の物件でも、土地勘のないエリアで購入するのは危険です。

地方の場合、駅が近くても電車は1時間に1,2本で、利用者がほとんどいないなどという事が多々あります。また、大阪や東京などの都市部においては、駅が一つ離れるだけで一気に人気度が変わったり、治安が悪くて敬遠されるといったことが起こります。

土地勘のない土地で物件を探すと、地元の人なら絶対に手を出さないような物件に手を出してしまうリスクが高まります。逆に土地勘さえあれば、駅近くの地代の高いエリアでなくても、ニーズのあるエリアを探す事ができるでしょう。

管理を全くしない

修繕費用や清掃費用がもったいないからと、物件を放りっぱなしにするのは良くありません。長期投資型の不動産投資において、建物の状態をできるだけ良好に保つ事は資産価値を保つことにつながります。あまり手入れの行き届いていない物件は一目見ればわかるものです。入居者も集まりにくくなり、売り抜くのも難しくなるでしょう。

近隣であれば、自らが清掃すれば委託する清掃費用を節約する事ができます。また、管理の目が行き届いているというのは、住民に安心感も与えます。

節税目的でアパートを所有する

節税になるからと言われ、その意味や原理をきちんと理解しないまま購入してしまうのは絶対に良くありません。損益通算することにより給与所得で引かれていた税金が戻ってくるというのは、嘘ではありませんが、それはあくまで一時的なものであることを知っておく必要があります。不動産投資を始めるときは、必ず、1年2年先だけではなく、10年後15年後といった近未来をシュミレーションしておきましょう。しっかりと入居者が付いている物件であれば、2年目以降は黒字になるはずです。

アパート経営で成功するためには

様々な失敗のリスクが高い考え方や行動について見てきましたが、では具体的に、アパート経営を成功につなげていくためにはどうすれば良いのでしょうか。アパート経営成功のキーワードとも言える不動産会社・物件・融資の3つの重要性を紹介していきます。

パートナーとなる不動産会社選び

良い物件は競争率が高いことは言うまでもありません。多くの投資家が良い物件に巡り合うためにアンテナを張り巡らせています。

そんな中でいち早く物件情報を入手するためには、的確な情報を提供してくれる不動産会社選びは欠かせません。気になる物件情報を元に質問をしたり、自分の希望をしっかりと伝えたりしながら、信頼できる不動産会社を探し、強いコネクションを築いておけば、公開前の物件情報などを優先的に教えてくれるようになります。

また、迷った時に背中を押してくれたり、引き止めてくれたり、相談にのってくれたり、本当に信頼できる営業担当や不動産会社に出会えれば、とても心強いパートナーになってくれます。

物件選び

不動産投資においてなによりも重要なのが物件選びです。立地、築年数、稼働率、利回り、価格、建物の状態等を総合的に判断していかなければいけません。

不動産のプロである不動産会社の担当に話を聞いたり、自分で現地を歩いて街の雰囲気を感じたり、周辺の競合物件をリサーチしたり、自分なりの感覚とプロの意見を融合しながら判断していきましょう。

融資

不動産投資でレバレッジを効かせるためには、融資条件が大きなネックとなります。条件は個人の属性と物件の価値などを元に審査されて決まります。いい条件で融資を受ける事は不動産投資の成否に大きな影響を与えます。

例えば、利回り7%の物件を金利1%で融資を受けられれば、単純に利回りは6%となります。しかし、金利3%でしか融資が受けられなかったら利回りは4%になってしまうのです。そのため、融資は受けられるけど条件が悪いので断念するということが不動産売買にはよくあります。

また、不動産会社によっては、金融機関とパイプを持ち、良い融資条件を引き出してくれる場合もあります。金融機関から有利な条件で資金を調達する事は不動産投資のリスクを下げることにつながります。

最後に

安い買い物ではないため、時間をかけて良い物件との出会いを待ちながら、どのような物件が出て来たら購入を決断するか、自分の中でしっかりと決めておきましょう。

細かい条件を伝え、不動産会社と信頼を築き、素敵な物件と出会うタイミングが来た時は、迅速な決断力が必要となります。その時に向けて、アパート経営のメリットやデメリットを知り、不動産業界の情報を収集しておけば、サラリーマンをやりながら副業としてアパート経営を成功させることができるでしょう。