家を購入する時に、全額現金で支払う方は少ないと思います。ほとんどの方が住宅ローンを利用することになり、毎月の収入から返済していかなければなりませんしかし住宅ローンを借り入れて住宅を取得した方は「確定申告」をすることで金利負担の軽減を図るための制度が利用でき、住宅ローン控除という税金の控除を受けることができます。この記事では確定申告の必要性や申告方法などについて解説をいたします。

なぜ確定申告が必要なのか


それではまず確定申告がなぜ必要なのか、申告をする時期や提出先などについてご説明をいたします。

抑えておきたい確定申告とは

確定申告は所得税を支払うための制度です

所得を得た人が、税金を納めることは国民の義務です。税金は、税務署にその年の所得を申告し税金を納めます。これを「確定申告」と言います。給与所得者については会社が給与から税金を天引きして、国に税金を納めていますので、原則的には確定申告をする必要はありません。給与所得者の税金の過不足については、会社が行う「年末調整」により再計算することになります。

払い過ぎた税金を取り戻すこともできます

住宅ローンを利用して住宅を購入した方は、要件を満たせば納めすぎた税金を取り戻すことができます。住宅を取得した最初の年は会社による年末調整では住宅ローン控除が行えませんので、確定申告により還付を請求(還付申告と言います)することになります。
1年間の住宅ローンの控除額については、次に記した一番低い金額が適用になります。

・1年間で最大控除額40万円、10年間で400万円
(長期優良住宅・低炭素住宅の場合は1年間で最大控除50万円、10年間で500万円)
・年末時における住宅ローン残高の1%
・所得税額+住民税額を限度とし前年所得の7%または13.65万円かのどちらか低い額

住宅ローン控除によって最大で年間40万円、10年間で400万円も戻ってくるのは、家計にとって大きなメリットになります。
(2018年5月末現在)

いつ確定申告をするの?

確定申告は前年の1月から12月末日までの1年間に所得を得た人が、翌年の2月16日~3月15日までに申告を行うことが原則です。しかし還付申告については、確定申告期間に行う必要はなく、対象期間の翌年1月1日から5年間の間に提出することができます。
【出典】国税庁:還付申告とは
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm

住宅購入初年度は確定申告が必要

住宅ローン控除をうけるためには、住宅購入した年は確定申告をしなければなりません。2年目以降は会社の年末調整で、住宅ローンの控除手続きを完了することができます。

控除を受けるための必要な書類関係


住宅ローン控除を受けるためには、必要な書類を添えて手続きをしなければなりません。次に確定申告を受ける際に必要な書類についてご説明をいたします

確定申告書が必要

確定申告を行うためには確定申告書が必要ですが、その方法は税務署や確定申告相談会場・郵送などでもらう方法があります。また、国税庁のホームページからダウンロードすることも可能です。必要な書類は下記のとおりです。
•住宅借入金等特別控除額の計算明細書
•確定申告書A様式
【出典】国税庁確定申告ダウンロード:
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/yoshiki.htm

源泉徴収票が必要

勤務している会社から、住宅を購入した年の源泉徴収票を入手します。年末の給与明細書と一緒に交付する企業が一般的に多いようです。源泉徴収票には支払金額や、所得控除額・源泉徴収税額などが記載されています。

住民票が必要

購入した住宅の住所地の住民票が必要であり、住民票は市町村区役所から入手します。出張所や行政サービスコーナーなどからも手に入れることができます。なお代理人が請求する場合には委任状と代理人の本人確認書類が必要になります。またコンビニエンスストアでは、マイナンバーカードを利用したコンビニ交付サービスて取得することができますので便利です。

住宅ローンの残高証明書が必要

住宅ローンの残高証明書は、住宅ローンを設定した金融機関から10月以降に送られてきます。なお住宅ローンを借りた時期が9月以降の場合には、翌年の1月に送られてきます。住宅ローンが複数ある時には、すべての借入先の残高証明書を用意しなければなりません。

登記事項証明書が必要

登記事項証明書は登記簿謄本とも言いますが、購入した住宅を管轄する法務局に必要事項を記入し請求します。登記事項証明書は委任状や身分証明書の必要はなく、だれでも請求することができます。

売買契約書が必要

住宅を購入した際の売買契約書が必要になります。また土地を購入して家を建てる場合には、土地の売買契約書と建物の工事請負契約書の写しを用意しなければなりません。

その他必要書類

「認定長期優良住宅」及び「認定低炭素住宅」については、5,000万円まで住宅ローン限度額が引き上げられます。それゆえ5,000万円の1%を控除することができ、最大控除額は10年間で500万円となります。このメリットを享受するためには、認定証明書の写しを不動産会社から入手し添付しなければなりません。
※認定長期優良住宅…「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」の規定に基づく劣化対策や省エネルギー性の基準を満たし地方自治体の認定を受けた住宅を言います。
※長期優良住宅…「都市の低炭素化の促進に関する法律」の規定により、低炭素住宅の基準を満たした住宅を言います。

住宅ローン控除を受ける為に確定申告の申請方法


必要な書類をそろえたら、次は確定申告の申請方法です。必要書類を添付して管轄の税務署に書類を提出しなければなりません。

最近の確定申告は便利・インターネットで申請

一般的な申告の方法は税務署より申請書を入手して記入し、必要な書類を添付して提出します。直接税務署に持参する方法、確定申告会場で渡す方法、郵送による方法などがあります近年はインターネットを利用して提出するe-Taxによる方法が便利です。以前はe-Taxでの申告は、登記事項証明書などは別途郵送での提出が必要でした。

平成29年からはPDFによるデータ送信で手続きを完了することができるようになりました。e-Taxを利用すれば日曜祭日・時間を問わず申告できますので、忙しい人には大変便利です。しかしe-Taxで申告するためには、予め役所でマイナンバーカードを入手しなければなりません。またICカードを読み取るためのICカードリーダー・ライターを購入しておかなければなりません。

申請方法がわかるHPのURL

国税庁のホームページに、確定申告の方法について丁寧に記載されています。
確定申告の手続き:http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/hajimete.htm
動画で見る確定申告:http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/tvcm.htm

2年目以降は年末調節から

サラリーマンなどの給与所得者についは、住宅を購入した翌年以降の住宅ローン控除は確定申告をせず年末調整で手続きをすることができます。確定申告を行った年の10月頃に税務署より2年目~10年目までの9年分の「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書兼年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」(以下「年末調整のための住宅借入金等控除証明書」)が送付されます。また、金融機関からは「残高証明書」が送付されます。これらを年末調整時に会社に提出することにより、住宅ローン控除を受けることができます。

自営業者については1年目と同様に、「年末調整のための住宅借入金等控除証明書」と「残高証明書」を添付し確定申告をしなければなりません。
なお「年末調整のための住宅借入金等控除証明書」については、毎年送られることはなく残りの控除対象期間の9年分もまとめて送付されますので、きちんと保管しておかねばなりません。

みんなの質問-住宅ローンの確定申告-


次に皆さんが確定申告について疑問に思っていることについて、下記のとおりQ&Aでまとめてみました。

①今年住宅を購入したのですが来年も確定申告に行く必要があるってことでしょうか?

今年住宅を購入した方は初年度の確定申告はしなければなりませんが、2年目以降について給与所得者は会社の年末調整で住宅ローン控除を行うことができます。年末調整ができなかった方や、自営業者については1年目同様に2年目以降も確定申告をしなければなりません。

②住宅ローン控除一年目は自分で確定申告するしかないの?

給与所得者で確定申告を行った方は少なく、負担に思う方も多いでしょう。申告書の作成は、原則的には本人が作成・押印しなければなりません。税理士に依頼することもできますが、税理士の資格がない方が確定申告の書類を作成すると、税理士法違反に問われることになります。
なお書類の提出については、妻などの代理人が委任状をつけることなく行うことができます。

③確定申告した後の還付金はいつ返ってくるのですか?

還付申告については確定申告期間に関係なく、住宅を購入した年の翌年1月1日から5年間行うことができます。還付金は書類を揃えて提出するよりも、e-Taxによる申請の方が一般的には早く受け取れます。e-Taxによる場合には3週間程度、書類による提出の場合には1ヶ月から1ヶ月半程度かかります。

④確定申告をする際は源泉徴収票は必ず必要ですか?

源泉徴収票とは給与などを支払う経営者が、従業員に交付する給与及び差し引いた税金額を記載したものです。源泉徴収票には確定申告をするときに必要な情報が多く記載されており、給与所得者は必ず添付しなければなりません。アルバイトの方でも会社に源泉徴収票を請求し提出しなければなりません。源泉徴収票を紛失した場合には会社に再発行を依頼すれば、再交付してくれます。
どうしても源泉徴収票が手に入らない場合には、確定申告をする1月から12月までの給与明細票を用意し、税務署で「源泉徴収票不交付の届出」の手続を行わなければなりません。

⑤申告をした際にマイナンバーは必要なのですか?

申告をする際には本人確認が必要ですが、マイナンバーカードを持っている方はそれだけで本人確認を済ますことができます。マイナンバーカードを持っていない方は、マイナンバーを確認できる通知カードなどの書類に加えて、運転免許所などの身元確認書類が必要になります。
なおe-Taxを利用する場合には、マイナンバーに書き込まれている電子証明書を読み取るICカードリーダー・ライターを用意しなければなりません。

⑥二年目以降は何もしなくても大丈夫なのでしょうか?

住宅ローン控除を受けるためには、住宅を購入した翌年は確定申告をしなければなりませんが、2年目以降は勤務先の年末調整で行うことができます。初年度の確定申告をした年の10月頃に税務署から送られてくる「年末調整のための住宅借入金等控除証明書に、毎年10月頃に金融機関から送られてくる「住宅ローンの年末残高証明書」を添えて申告書を提出すればよいだけです。

最後に

いかがでしたか?
住宅を購入した初年度は、住宅ローン控除を受けるためには確定申告をしなければなりませんが、2年目からは年末調整で済ますことができます。初年度は手続きが大変ですが、払い過ぎた税金を取り戻せますので頑張って申告するようにしましょう。

監修者:杉浦 詔子(ファイナンシャルプランナー)