固定資産税は、複雑で税金の計算が難しく、実際どのくらい納税しなければいけないのかはっきりせず、納付期限や通知期限などについても良く分かっていないという方も少なくないでしょう。この記事では、固定資産税の基本的な税率や課税標準の特例、通知期限や納付期限などについて詳しくご紹介していきます。

固定資産税の対象と納税義務者

「そもそも、固定資産税ってどんな税金?どんな人が支払うの?」 まずは、固定資産税の基礎的な部分である固定資産税の対象と納税義務者について詳しくご紹介して行きます。

固定資産税の対象

まず、触れていきたいのが固定資産税の対象であり、固定資産税の対象を理解していないと、この資産は納税義務があるのか?ないのか?という判断ができません。そんな固定資産税には、大きく分けて「土地」「家屋」「償却資産」の3つが主な対象になり、これらの資産を保有している方は、納税する義務があるかもしれないので、しっかりとチェックしておきましょう。

土地

まず、初めにご紹介したい納税対象は「土地」です。土地は固定資産税の課税対象となり、通常畑や宅地などでは計算方法が異なります。 さらに宅地の場合は、固定資産税の計算上の2つの宅地の種類があります。

まず、一つが「小規模住宅用地」で、一戸あたりの土地の広さが200平方メートル以下である場合に適用され、固定資産税の納税額が6分の1になります。

もう一つが「一般用住宅地」であり、200平方メートル以上の土地を固定資産税の一般用住宅地と言い、一般用住宅地の場合は納税額が3分の1になります。

家屋

次にご紹介したい固定資産税の対象は、「一般の家屋」「新築の家屋」です。新築かどうかによって、税金の計算方法が異なります。一般の家屋の場合は、通常の税率ですが、新築の家屋の場合は三階建て以上の耐火構造・準耐火構造の家屋においては、床面積が50平方メートル~280平方メートルの場合は、120平方メートルの部分まで2分の1の税率になります。

償却資産

固定資産税と聞くと、通常家屋や土地がイメージしやすいですが、実は償却資産も固定資産税の対象となり、場合によっては納税する義務が生じます。ここで言う償却資産とは、土地や家屋を除く、業務に使用する償却資産の事で、10万円以上(※)の事業で使用する可能性のある資産については、納税が必要になります。(例えば、車やパソコンなど)

※10万円以上20万円未満の一括償却資産は償却資産税の対象外

納税義務者

固定資産税の納税義務者は、上記させて頂いた「償却資産」、「土地」、「建物」を所有する全ての人で、各お住いの自治体などに納税するという形になります。(※)ただ、もし所有者が亡くなってしまった場合は、課税対象となる資産を相続した人に納税義務が発生するので、固定資産税の対象となるような資産を相続した方は、しっかりと毎年いくら掛かってくるのか?という点についてチェックしておきましょう。

※償却資産税は本店所在地、土地や建物などの固定資産税は物件のある自治体が納付先となります。

非課税となるもの

非課税になる対象のものは主に「国・自治体」もしくは「学校法人、社会福祉法人」などが所有しているケースで、例外的に課税する必要はありません。

なので、例えば街なかにある公園や学校はもちろんですが、福祉施設なども非課税の対象となり、ポイントは「誰が所有しているのか?」という点によって、非課税になるのか?ならないのか?が異なりますが、一般の方が非課税になるケースはあまりないでしょう。

固定資産税の免税点

固定資産税には、免税点というものがあり、ある一定の条件をクリアすると、その部分において非課税になります。 その条件というのは課税標準額が「土地30万円」、「家屋20万円」、「償却資産150万円」を超えない場合となります。

例えば、土地が40万円、家屋15万円、償却資産100万円というケースの場合は、土地のみが課税標準額を超えているので、課税対象となり、家屋・償却資産の部分においては非課税という事になります。(ただし、各自治体の中の合計)

固定資産税の税率は?納税額はどうやって決まる?

先程、固定資産税の対象について詳しくご紹介させて頂きましたが、固定資産税の税率についてあまり詳しくご紹介していません。 これから「課税標準の決定時期」、「固定資産税の計算式」、「都市計画税の計算式」の3つに分けて、固定資産税の税率について詳しくご紹介していきます。

課税標準(固定資産課税台帳価格)の決定時期

課税標準というのは、納税する金額を計算する上で、必要になる課税対象の事で、固定資産税においての課税標準は「固定資産課税台帳価格」というものが用いられます。

固定資産課税台帳には「所有者の情報」、「固定資産税の対象の情報」、「固定資産税評価額」、「固定資産税額」などの情報が詰まっており、固定資産税評価額は、各都道府県によって異なりますが、通常市場価格の70%程度と言われています。

難しい言葉が並んだので、シンプルにまとめると「固定資産課税台帳」には、「固定資産税評価額」などが含まれるので、固定資産課税台帳をチェックすると、課税標準が分かるという事です。

ちなみに、固定資産課税台帳は、各自治体でチェックすることが可能で、お住まいの地域の役所等に問い合わせると、詳細な情報や案内を受けられます。 固定資産税評価額は3年に1回見直され、そのタイミングで変わる事があるので、課税標準の決定時期は、見直されるタイミングだと言えます。

固定資産税の計算式 課税標準×1.4%(標準税率)

固定資産税の計算方法は、課税標準×1.4%で算出することが可能です。
例えば、課税標準が300万円のケースは、「300万円×1.4%=4万2,000円」となり、300万円の課税標準の場合は、4万2,000円が納税額になります。

都市計画税の計算式 課税標準×0.3%(制限税率)

都市計画税というのは、市街化区域内に家屋や土地を所有している場合に掛かる税金で、固定資産税と共に支払う必要のある税金です。
例えば、300万円の課税標準なら「300万円×0.3%=9,000円」が都市計画税になります。

そのため、仮に市街化区域内に300万円(課税標準)の家屋や土地などを持っていたら「4万2000円+9,000円=5万1,000円」が固定資産税と都市計画税として必要になります。

課税標準の特例を活用しよう


先程、固定資産税の基本的な税率についてご紹介させて頂きましたが、一般的なサラリーマンが固定資産税を支払う機会は、主にご自宅の固定資産税だと言えます。 しかし、住宅の場合は通常の固定資産税よりもかなり安くなるので、住宅用地の特例についても詳しくご紹介していきます。

【土地】住宅用地の場合

住宅用地の場合はかなり税金が安くなりますが、安くなる額については大きさによって異なります。(土地の場合) これから大きさ別の固定資産税の違いについてしっかりとチェックしていきたいと思います。

小規模住宅用地(住宅1戸あたり200㎡以下の部分)

まずはじめに、ご紹介したいのは「小規模住宅用地」の場合の特例で、200平方メートル以下の場合、もしくはその部分に関しては課税標準が6分の1になります。 例として、課税標準100万円の場合は、「100万円×1/6=約16万円」になり、16万円で固定資産税を計算することになります。
〈一般住宅用地(住宅1戸あたり200㎡超の部分=住宅の床面積の10倍までの住宅用地)

200平方メートルよりも大きいケースは、200平方メートルまでが課税標準の1/6、200平方メートル超の部分が課税標準が1/3となります。

【建物】新築住宅の場合

次は土地ではなく、「建物」に対する固定資産税の特例です。(新築)

【120㎡(課税床面積)までの部分について固定資産税が1/2】

まず、初めに挙げられる特例は、120平方メートルまでは固定資産税が1/2になるという事で、300平方メートルある場合は、120平方メートルが1/2、残りの180平方メートルが通常の税率で計算することが可能です。

3階建以上の耐火構造・準耐火構造住宅は5年間

上記の半額になるというのは、三階建て以上の耐火構造・準耐火構造は五年間有効で、場合によっては、かなり固定資産税を安く抑える事が可能です。

上記以外の一般住宅は3年間

三階建て以上の耐火構造・準耐火構造住宅でない場合は、3年間固定資産税の半額の状態が続きます。 固定資産税というのは、一軒一軒調査して納税額を決めるわけではないので、固定資産税の過払いをしているケースが多々あります。

しっかりと、ご自宅の固定資産税の試算をし、固定資産税を適切な額納めているのか調べておきましょう。

要件

先程は、専用住宅(住むためだけの住宅)についての固定資産税についてご紹介させて頂きましたが、店舗併用住宅などの場合は、税率が異なってきます。 お得に税金を納めるためにも、店舗併用住宅にお住まいの方は、しっかりとチェックしておきましょう。

店舗併用住宅の場合、居住用部分が1/2以上であること。

店舗併用住宅の場合は、居住スペースが1/2以上で有ることで、特例を適用することが可能であり、1/2の場合の土地の50%が特例の対象となり、25%以上50%以下は土地の75%に特例が適用されます。25%以下になると、専用住宅の同じ条件で特例を受けることが可能になります。

〈居住部分の課税床面積が一戸につき50㎡以上280㎡以下であること(一戸建て以外の貸家住宅の場合は、一戸につき40㎡以上280㎡以下)〉

新築の一戸建てが軽減措置を受けるには、居住部分の課税面積が、50平方メートル以上・280平方メートル以下という条件があるので、通常の住宅なら問題ありませんが、極端に大きな住宅をお持ちの方は、注意した方がいいでしょう。

固定資産税の通知時期や納付期限はいつ?

固定資産税の通知時期や納付期限って一年に何回もあるので、実際のところ掴みにくいという方も多いのではないのでしょうか? 例えば、所得税等を納税する目的である確定申告では、1年に1回、2月~3月が確定申告の期間となり、1年に決まった日程で行なわれるので、わかりやすいですよね。

これから、なかなか分かりづらい確定申告の通知時期や納付期限についてご紹介したいと思います。

一括払いか年4回払いか、いずれかを選択

固定資産税の通知は、評価額などが算出された後、4~6月に送付され、納期は年4回あります。(一回でまとめて支払う事も可能)
下記が平成30年度東京23区の納期です。(※納期は市区町村により異なります)

第1期 平成30年6月1日から7月2日まで ※(納期限 7月2日)
第2期 平成30年9月1日から10月1日まで ※
(納期限 10月1日)
第3期 平成30年12月1日から12月27日まで(納期限 12月27日)
第4期 平成31年2月1日から2月28日まで(納期限 2月28日)

※本来6月末が納期限ですが、30日が土曜日のため7月2日。10月1日も同様。

このように年に4回も納付するチャンスがあり、面倒くさいという方は一気に納めるもよし、余裕がない方は、年4回に分けて納付することが可能です。

最後に

今回は、固定資産税の対象や税率、特例、納付の時期などについてご紹介させて頂きました。

固定資産税は、新築の場合だと役所の方が調査に来ることもありますが、ほとんどの場合は定められた税金を疑いもなく支払っていることが多いでしょう。本来は改築等で居住スペースが変わっていたりなど、もっと安くはずが高いまま固定資産税を支払いっているケースも少なくありません。

税金の過払いは誰にでも起こる事なので、他人事だと思わず、適切な固定資産税を支払えているか?という点について、ご紹介した算出方法などを用いてチェックしておきましょう。

監修者:添田裕美(税理士)