不動産をうまく売却するには、様々なことを行う必要があります。不動産会社を探す、物件の売却額の査定を依頼する、不動産会社に仲介を依頼する、買い主と売買契約を締結する、物件を引き渡す、などです。それぞれのタイミングには成功させるためのポイントと失敗しないための注意点があります。

ここでは、不動産売却の流れについて見ていきながら、成功のポイントと失敗を防止する注意点についてご紹介します。

不動産会社を選ぶ時のポイント

不動産を売却する場合は、不動産会社に仲介を依頼することになりますが、正しい不動産会社の選び方にはコツがあります。ここではそのポイントについて見ていきます。

不動産売却の流れ

不動産を売却する場合の基本的な流れは、売却額を算出する、物件を売り出す、買主と交渉する、契約を締結する、物件を引き渡す、という順番になります。こうした一連の流れ全てを素人が十分に行うことは難しく、手続きにも時間がかかります。そのため、不動産の売却を希望する場合は、不動産会社に依頼することが一般的です。

宅地建物取引業とは

不動産会社を選ぶ際のポイントの1つは、宅地建物取引業の免許を受けていることです。土地や建物等の売買や賃貸の仲介、分譲住宅の販売の代理などを専門に行う業者です。

宅地建物取引業の特徴は、「宅地建物取引業法が規定する免許を有していること」「同法に基づく規制を受けていること」「専門家である宅地建物取引士が一定数所属していること」、の3点です。

不動産業者の中でも、実績と信頼性の高いエキスパートといった存在です。

中古一戸建てや住宅用土地の仲介を依頼するのに適した業者

中古一戸建てやマンション、住宅用土地といった不動産は、不動産業者に買い取ってもらうことも可能ですが、よほど急いでいるのでない限り、市場で売り出し買い主を見つけるのが高値での売却につながります。

その場合、物件周辺地域の地元の不動産会社に依頼するのがオススメです。地元の業者であれば、現地の情報やコネクションなどに圧倒的なアドバンテージがあるため、買主を見つけやすいからです。流動性が高くない地方の物件の場合は、特にその傾向が強くなります。

マンション用地、分譲用地など大きな土地の仲介・売却に適した業者

マンション建設用地や分譲用地など、広い土地を売却したい場合は、一般の業者では買を見つけることが難しいことから、売却に時間が掛かる場合も。のような場合、広い土地取り扱を得意としている専門の業者に依頼すると有効です。そうした業者は個人ではなく法人を取引先としていることから、買を見つけやすくなっています。また、業者によっては直接買い取ってくれる場合もあります。マンションの建設や、区画割して複数の人に売却する見込みがあるためです。

.相続などが絡んでいる物件の仲介に適した業者

多額の相続税を支払う可能性が高いなど、相続についての問題が絡む物件については、一般的な不動産会社では対応しきれずに、せっかく売却できても高額な税金を支払わなければならない可能性があります。そうした場合には、相続が絡む物件を専門に取り扱う不動産会社に相談すると便利です。そうした業者は相続税を節税するための制度などの情報に詳しいため、効果的な不動産売却を行うことができます。

物件の囲い込みには注意する

不動産の売却を業者に依頼する場合には、良心的でない不動産会社によって、物件の囲い込みをされないように注意する必要があります。物件の囲い込みとは、不動産会社が売却の依頼を受けた物件について、自分の会社以外が取り扱えないようにすることです。物件の囲い込みには様々な方法があります。以下、それぞれの方法について見ていきます。

*レインズに登録しない、または勝手に削除していた

売却物件について専任媒介契約を締結した不動産会社は、一定期間内にその物件をレインズという業者間ネットワークシステムに登録しなければならないことになっています。(レインズの詳細については後述します)義務が課される理由は、売却物件をレインズに登録することで他の業者も物件を紹介できるようにすることで、幅広く買主を探索できるようにし専任媒介契約を締結した不動産会社にきちんと営業活動を行わせるためです。

一方、悪徳業者の場合は、専任媒介契約を結んだ後もレインズに登録しない場合があります。レインズは不動産会社だけが閲覧できるシステムなので、登録しなくても顧客には分かりにくい特徴があるためです。さらに悪質な場合は、一旦登録しておいてすぐに削除するケースもあります。

対策としては、レインズに登録した際に発行される証明書を確実に受け取るだけでなく、売主向けの画面で状況を定期的に確認することが重要です。

*他社の広告掲載を不可にする

不動産を早く売却したい場合は、できるだけ多くの不動産会社のホームページなどに、物件についての広告を掲載してもらうのがオススメです。ところが、良心的でない業者の場合は、他社が物件についての広告を掲載することを勝手に断ってしまうことがあります。物件の情報を独占し、自分の手で仲介を成立させ、売主と買主の双方から手数料を受領できる両手取引に持ち込みたいことが理由ですが、売にとっては迷惑な行為になります。

*勝手に商談中にして問合せを受けつけない

物件について問い合わせがあった場合に、悪質な不動産会社の場合は、実際には商談に入っていなくても、その物件は商談中であると虚偽の回答をすることがあります。

無理矢理商談中にする理由は、その物件をどうしても自社の仲介で取引きしたいからです。不動産会社は仲介をするだけなので、物件がすぐに売れなくてもあまり困りません。勝手に商談中にすることは、時間をかけてでも自社で買い手を見つけることで、自分の利益を増やしたいという欲求が現れたものです。

不動産の売却査定を依頼する時の注意点

不動産を売却する場合には、その不動産がいくらぐらいで売れるのか、売却価格の査定を業者に依頼することになります。業者に売却査定を依頼する際に注意しておくべきポイントを見ていきます。

査定は必ず複数業者に依頼する

不動産の売却額の相場を知りたい場合は、不動産業者に価格の査定を依頼することになります。査定を依頼する場合には、必ず複数の業者に依頼することが重要です。不動産業者も千差万別のため、同じ物件であっても、業者によって査定額にはかなりの違いがあります。担当者の手腕、売却時期、業者の得意分野、などの条件によって査定額に差が出てきます。査定は基本的に無料の場合がほとんどなので、できる限り複数の不動産会社に依頼するのが理想的です

査定価格=売却価格ではない

査定価格について重要なポイントがあります。それは、査定価格は必ず売却できる価格とは限らないということです。査定価格とは、あくまでもその価格で「売れるかもしれない」という想定になります。自分に仲介を申し込んでもらうために、実際の査定価格よりも意図的に高い価格をつける不動産会社もあります。他の業者と比較して明らかに高い査定価格が出た場合は、それだけですぐに依頼するのではなく、必ずその価格の根拠を聞いていから判断するようにすると安心です。

早く売る事と高く売る事の両立は難しい

不動産を売却したい場合は、できるだけ早く高い価格で売りたくなりますが、早さと高さを両立することは難しくなっています。買主からすると、不動産は決して安い買い物ではないため、ある程度の時間をかけてじっくりと吟味するのが通常だからです。どうしても高値で売りたい場合は、そうした買主の心情を把握しつつ、気長に待つだけの余裕が必要になってきます。

レインズとは

不動産を効率よく売却したい場合は、レインズという業者間ネットワークシステムに物件を登録してもらうと便利です。レインズとは、Real Estate Information Network Systemの略称で、不動産会社が不動産物件について情報交換や共有を行うためのネットワークシステムです。不動産の流通性を高めるために現在の国土交通省が企画したもので、1990年に作られました。

レインズを閲覧することができるのは不動産会社だけですが、不動産会社はレインズを閲覧して顧客に物件を提案するので、売りたい物件をレインズに登録することは非常に重要な作業になります。

出典:レインズ(http://www.contract.reins.or.jp/search/displayAreaConditionBLogic.do

不動産売却相場の調べ方

不動産の売却相場を手軽に知りたい場合は、インターネットの物件情報サイトを利用して、売りたい物件に似たスペックの物件の値段を調べると便利です。物件の広さ、間取り、築年数、最寄り駅、駅からの距離などが検索の手がかりになります。また、国道交通省による土地総合情報システムを利用すると、実際の成約価格の情報を入手することもできます。

仲介と買取の違いとは

物件を売却する方法としては、仲介と買取の2種類の方法があります。仲介は、不動産業者に買主を探してもらう方法です。物件を市場に出して広範囲に買主を探すため、高い価格で売却しやすくなります。一方、買主探しから始めるため、売却までに時間がかかります。買取は、不動産業者が物件を直接購入します。買主を探す必要がないため、スピーディーに売却することができます。他方、売却価格は仲介の場合に比べて下がってしまいます。

媒介契約締結時の注意点

物件の売却の仲介を不動産会社に依頼する場合は、媒介契約を締結することになります。媒介契約は3種類あり、それぞれの特徴があります。不動産会社に支払う仲介手数料の概略も含めて、3種類の媒介契約について見ていきます。

仲介手数料について

仲介手数料とは、物件の売却を仲介してもらった不動産業者に報酬として支払う手数料のことです。仲介手数料は、宅地建物取引業法によって上限額が定められています。仲介手数料が発生するのは、不動産の売買契約が成立した場合のみです。売買契約においては、売主と買主それぞれが、仲介した不動産会社に手数料を支払います。

一般媒介契約とは

一般媒介契約とは、複数の不動産業者に依頼することができる媒介契約です。業者を限定する必要がないことに加えて、売主自らが買主を探して契約を結ぶことも可能です。レインズへの登録や状況の報告などの義務がなく、業者が契約後に比較的自由に活動できるのが特徴です。

専任媒介契約とは

専任媒介契約とは、売主が1社の不動産業者に限定して依頼する方式の媒介契約です。契約を締結した場合、他の業者に仲介を依頼することはできませんが、自分で買主を探して取り引きすることは可能です。

専任媒介契約では、レインズへの登録と状況の報告の義務が業者に課されます。その物件について他の業者に横取りされる心配がなくなるため、業者によるより積極的な活動が期待できるようになります。

専属専任媒介契約とは

専属専任媒介契約とは、売り主が1社の不動産業者のみに限定して依頼するもので、かつ、契約を締結した業者による仲介以外の方式では取り引きできない媒介契約です。

物件の取り引きについて業者に全面的に任せる形になるため、3種類の媒介契約の中では、売主の制限は最も大きくなります。その分、業者による積極的な努力が最も期待できる契約といえます。

売買契約締結時の注意点

不動産についての売買契約を締結する場合は、契約を解除した場合のペナルティや、不動産に欠陥があった場合の処理方法などについて把握しておくことが重要です。

契約を解除した場合のペナルティは?

不動産の売買契約が成立した後は、契約をきちんと履行する法的な義務が、売主と買主の双方に課されることになります。自分が契約の履行に着手した後に相手が契約を解除した場合や、手付解除期日を過ぎた後に契約を解除するときは、そのペナルティとして、相手に対して損害賠償契約の解除を請求することができます。損害賠償の額については、あらかじめ契約書に規定されるのが一般的です。売買代金の1割から2割程度一般的です。

ローン特約について

不動産を売買する場合、売買代金は一般的にかなり高額になるため、資金を調達するために住宅ローンを組むケースが多くなります。ローン特約とは、買主が不動産を購入するための住宅ローンの融資を受けられなかった場合に、違約金などのペナルティ無しで契約を解除することができる特約のことです。

ローン特約の条項を契約に盛り込むことで、不動産を購入する前提として住宅ローンを組む必要がある買主の利益を保護することが可能になります。

瑕疵担保責任とは

瑕疵担保責任とは、売買の目的物に隠れた瑕疵(欠陥)があった場合に、売主が買主に対して負う法的な責任のことです。瑕疵担保責任については民法に規定されています。瑕疵の例としては、雨漏り、シロアリによる被害、地中障害物、などがあります。隠れた瑕疵によって損害を受けた買主は、売主に対して損害賠償や契約の解除を請求することができます。瑕疵担保責任の範囲や期間については、契約に特約を設けて設定することが可能です。

手付金とは

手付金とは、不動産などの売買契約を締結する場合に、買主が売主に対して支払う金銭のことです。手付金には、契約が成立したことを明確にするという役割があります。一般に売買代金の520%程度の額が設定されます。相手が契約の履行に着手するまでは、売主は支払った手付金を放棄することで、買主は手付金の2倍の額を支払うことで、締結した契約を解除できるように定めるのが一般的です。

売買契約書で確認すべきポイントは?

不動産を売買する際に契約書を交わすことになりますが、契約書に署名捺印をする前に、あらかじめ契約書の内容をきちんと確認しておくことが重要です。確認すべきポイントとしては、契約当事者の情報、代金の額・支払い時期・方法、手付金の額とルール、瑕疵担保責任の内容と範囲、契約の解除と損害賠償についての定め、特約の種類と内容、などが重要になります。

物件引き渡し時の注意点

売主と買主のそれぞれについて、物件を引き渡す際に注意するポイントがあります。売主が注意すべきポイントは、引き渡す期日の確認や物件の瑕疵のチェックなどです。買主が注意すべきポイントとしては、支払うべき残代金、住民票などの必要書類、登記費用などの諸経費、などがあります。

不動産売却時に注意すべきポイント

せっかく契約を締結した後にトラブルにならないように、不動産を売却する際には、いくつか注意しておくべきポイントがあります。

ローン残債のある不動産を売却するには?

売却したい物件について住宅ローンが残っている状態では、その物件を購入してくれる買主を見つけることは非常に困難になります。住宅ローンによって物件に抵当権が設定されていることで、せっかく取得しても物件が処分されてしまう恐れがあるからです。ただ、住宅ローンの残債がある物件を売却するには、売却して得た代金でローンを全額返済するという方法があります。

相続した不動産の売却で注意すべき事とは?

相続した物件を売却するためには、相続した物件について登記を行う必要があります。登記をするためには様々な書類が必要になります。登記は自分でも行うことができますが、様々な書類を提出する必要があり、書式も複雑なことから、司法書士などの専門家に依頼するのが一般的です。

賃貸中の物件の売買で気を付けるべき点とは?

賃貸中の物件を売却する場合、居住目的で購入を希望する場合が多いことから、借りている人(賃貸人)に退去してもらわなければ、買主を見つけることは難しくなります。退去を要さずに売却できるケースは、賃料によって利益を得るための投資目的で、不動産の購入を希望する場合(オーナーチェンジ)です。

賃貸中の物件を売却する場合、賃借人から売却の同意を得る必要はありませんが、新しい家主(賃貸人)についての引継ぎをきちんと済ませておくことが、トラブルの防止につながります。

登記内容と物件の現況が異なる事もある

登記簿に表記されている土地の大きさ、地目などについて、物件の実際の現況と異なる場合があります。増築されている建物場合は、増築部分が登記に反映されているかもポイントになります。登記内容と現況に差異がある場合、確認をせずに売買してしまうとトラブルにつながる可能性があります。不安がある場合は、土地家屋調査士などの専門家に依頼することも可能です。

現況のままでは売れないケースもある

土地の上に非常に古い建物が建っている場合など、現況のままではなかなか買主見つからずに売れないケースもあります。その場合は、建物をリフォームしたり解体して更地にすると、スムーズに買主が見つかる可能性が高くなる場合ももっとも、リフォームや解体には費用がかかる反面、必ず買主が見つかるとは限りません。初期費用を抑えて売却したい場合は、値引きしたりリフォーム費用の一部を負担するなどの工夫をすることも有効です。

最後に

不動産を売却する際に押さえておくべきポイントについてご紹介しました。不動産業者の選び方、物件の査定を申し込む場合のポイント、不動産業者との仲介契約の種類、売買契約を締結する際の注意点、売却する際の注意点、などを見てきました。全体的なポイントとしては、売却したい物件の特徴にあわせて得意な業者を選ぶ、査定は複数の業者に依頼する、契約書の条項をきちんと読み込む、売却前に物件の登記と現況を確認する、などが重要です。不動産を売却する場合の流れに沿ってポイントを確認していくことで、トラブルを防止しながら物件を高額で売却できる可能性が高まります。

監修:三上 隆太郎(不動産コンサルタント)