不動産投資には、一棟アパートや一棟マンション、戸建てや駐車場、テナントビルなど様々な種類があります。ここでは、その中のひとつである区分マンション投資とも言われるワンルーム投資についてその特徴などをみていきます。

ワンルーム投資とは?

ワンルーム投資とは、1R物件の賃貸により収益を得る不動産投資手法のことを言います。単身者向けや学生向けの鉄筋コンクリート造のワンルーム物件で、エレベーターやオートロックなどの設備が付いたものが人気です。

サラリーマンでも始める人が増えている

ワンルーム投資の場合、購入するのは一室なので、規模や立地にもよりますが、都内の場合には、二千万円前後で購入可能です。1棟アパート等と比較すると安価なことや、 多額の税金がかかるほど大きな収入にはならないことなどから、サラリーマンでも始める人が増えています。

利回りが他の投資に比べて高い

ワンルーム投資は2005年以来、最低水準でも株式や債券などの他の投資に比べて、高い利回りを維持しています。東証一部の単純平均利回りが1%前半から後半を推移しているのに比べ、 日本不動産研究所の第36回不動産投資家調査によると、ここ10年のワンルーム投資における表利回りの水準は、都内駅近のワンルーム投資は4.5~6%程度、地方都市においては5%以上となっています。

【参考】日本取引所グループ 統計資料(http://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/misc/03.html

なぜワンルーム投資が人気なのか

様々な投資手法がある中でワンルーム投資はなぜ人気があるのでしょうか。投資につきものであるリスクという観点を踏まえながらみていきましょう。

不動産投資の中でも物件価格が安くて始めやすい

不動産というと、どうしても高額なイメージがあります。しかし、ワンルーム物件を区分で購入する場合、1千万円台から購入が可能なのです。戸建てや一棟アパートは、そんなに安価では購入できませんが、ワンルーム投資は現金購入が可能であったり、少額融資で始められたり、自己資金が少なくて済むなどといったメリットがあります。

他の不動産投資に比べてリスクが低い

一棟アパートやマンション、戸建てやテナントビルなどの不動産投資に比べて、ワンルーム投資は比較的リスクが低いと言われるのはなぜでしょう。

まず、物件の流動性が高く売却しやすいことがあげられます。比較的物件価格が安く求めやすいと言いましたが、これはつまり購入する人が多いということになります。不動産投資の中でも最も売買されているのがワンルーム物件です。そのため、流動性が高く、売却しやすいのです。出口戦略の難しい不動産投資において、売却しやすいというのはとても大きなメリットです。

また、入退居に伴う賃貸管理の手間があまりかからないため、本業の忙しい人にも負担になりません。

人気なのはわかったけど・・・ワンルーム投資って儲かるの?

不動産投資の中でも比較的簡単なイメージのワンルーム投資。まずはワンルーム投資から始めてみようかと考える人も多いと思います。簡単といえども投資であることを忘れてはいけません。失敗しないためのポイントを見ていきましょう。

利回りだけで判断すると儲からない

ワンルーム物件の利回りは比較的高いと言いましたが、これは年間の家賃収入を物件価格で割った表利回りであることを念頭に入れておきましょう。家賃収入からは建物管理費用、修繕積立金、固定資産税、賃貸管理費用など、様々な経費がかかります。これらを家賃収入から差し引いた実質の利回りを計算しましょう。現金購入かローンでの購入かなど、状況によって手残りとなるキャッシュフローが大きく変わってきます。

他の不動産投資に比べて簡単だと思って始めると儲からない

不動産投資は決して簡単なものではありません。立地や建物の状態が良く、客付け力の高い信頼できる不動産会社がない限り、放っておいて上手くいくなんてことはほぼありません。比較的簡単に始めやすいワンルーム投資といえども、不動産投資としての難易度は他の不動産投資と同じであることを念頭においておきましょう。

ワンルーム投資の失敗事例

ここでは実際に起こったワンルーム投資の失敗事例を紹介していきます。失敗の原因や理由を知ることでリスク回避に役立てましょう。

節税効果を狙ったけれど・・・効果があったのは初年度のみ

「不動産投資で節税」というフレーズをよく耳にします。ここで言う節税とは本業の所得と不動産投資の赤字を損益通算することで、払い過ぎていた税金が戻ってくるというものです。不動産投資で本当に赤字を出してしまえば、多少税金が戻ったとしても投資の醍醐味が失われてしまいます。

通常は収益性の高そうな物件に投資をするわけですから、毎年赤字が続くということはあまり考えられません。そのため、所得と損益通算して税金の還付が受けられるのは初年度のみというのが現状です。初年度は不動産取得税や仲介手数料などの売買に要する費用が多額に発生するため赤字となるのです。その後は本業の所得税に加えて、不動産での収入にも不動産所得税がかかることになります。

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入居者が決まらず家賃を下げることに・・・利回りの低下

不動産を購入する際、利回りを重視する方も多いでしょう。この利回りは年間の家賃収入を物件価格で割ったもので示されているため、家賃収入が下がるということは利回り低下、もしくは、物件価値の低下をもたらします。安易に家賃を下げず、利回りを維持することは売却の際の物件価格に大きな影響を与えます。

しかし、どうしても入居が決まらない場合は家賃を下げてでも入居付けを優先せざるをえません。築年数に応じた想定内の家賃下落であればいいのですが、想定外の家賃下落で投資が失敗してしまう例も多数あります。

流動性が高いと聞いていたのに・・・なかなか売れない

区分マンションは一棟物件などのほかの不動産投資に比べて流動性が高いといわれています。確かに物件数も多く、取引しやすい価格帯のため、他の不動産に比べると売買は頻繁に行われているといえます。

そのため、あまり出口戦略を考えずに購入してしまう方が多くいらっしゃいます。そして、いざ売却しようと思ったとき、希望価格ですんなりとは売れないことに気付くのです。購入時は出口戦略を考え、立地や入居ターゲット、建物の状態などを細かくチェックするようにしましょう。

家賃収入があるのに赤字に・・・修繕費用が別途発生?!

安定した家賃収入があるにもかかわらず赤字になることは多々あります。思った以上に入退居のサイクルが早いと、清掃や入居募集などが続き、空室期間がほとんどなくても赤字になってしまいます。

また、区分マンションの場合、毎月修繕積立金を払っていますが、水道管の破裂など想定外の不具合が起きた時などは、臨時で修繕費を徴収されることがあります。どのような修理でどの程度費用がかかるかなどは管理会社と住民の話し合いによって決まるため自分で判断することはできません。決定した追加修繕費を支払うことで大きく赤字になることもあります。

家賃が安くなっていく?!・・・サブリース契約条件の悪化

サブリース契約を結べば家賃を保証してもらえるから大丈夫と考える人も多いでしょう。確かに空室リスクを考慮せずに安定した家賃収入を得ることができるというメリットは大きいのですが、サブリース契約をする際はその内容を細かくチェックする必要があります。

サブリース契約は数年ごとに契約を更新していきますが、その都度家賃設定が下がってしまうことが多いのです。個人で管理して入れば家賃設定は自分で決められますが、サブリースの場合は契約先の不動産会社の判断に委ねられます。最初の契約で設定された家賃が10年も20年も入ってくると計算していると大きな誤算となってしまいます。

ワンルーム投資を勧めてくる業者の営業手法

ワンルーム投資で失敗しないためには、営業マンの言葉を全て鵜呑みにしてしまわないことが大切です。また、説明の途中でわからないことは質問することも大切です。面倒な顔をせず噛み砕いて丁寧に説明してくれるか、メリットばかりではなくデメリットについても話してくれるかなど、信頼できる営業マンかどうかご自身で見極めましょう。

営業トークを鵜呑みにしてだまされないよう、代表的な営業トークをいくつかあげ、その言葉の示す本質(メリットとデメリット)を読み解いていきます。

老後の年金の代わり・足しになる

退職から年金受給まで数年あるため、老後に不安を覚える人も少なくないでしょう。不動産投資は株式投資などと違い、売買に伴うキャピタルゲインだけではなく、月々の家賃収入としてのインカムゲインを得ることができます。そのため年金がわりに老後の足しになるというのです。年金の足しになる毎月の収入はありがたいのですが、入退去に伴う費用や数年に一度は大規模なメンテナンスが必要になる事などを考慮しておかなければいけません。

資産形成に役立つ

不動産投資は5年10年20年といった長期的なスパンで運用してこそ資産形成につながります。長期的に運用していくためには、入退居に伴うメンテナンスや外壁や屋根などの大規模なメンテナンスなど、費用も必要になることを忘れてはいけません。築年数の浅いうちはうまく資産形成できていたにもかかわらず、雨漏りなどの急なトラブルに対応できるだけの修繕費用を手元に残していないことで、物件を手放さざるを得ないなどということのないようにしましょう。

節税効果が得られる

サラリーマンの方はそれぞれの所得に応じた税率で所得税と住民税を払っています。不動産を所有すると、給与収入と不動産収入を合算したものに所得税と住民税がかかることになります。不動産を購入すると、不動産取得税や仲介手数料など様々な費用が発生します。そのため、不動産投資で生じたそれらの費用を赤字として、給与収入と損益通算する事で、払い過ぎていた税金が戻ってくるのです。赤字の場合は節税につながりますが、黒字の場合は逆のことが起こるのも念頭に入れておきましょう。

例えば、、給与収入が1,600万の場合、税率は33%ですが、更に不動産収入が300万あった場合、総所得1900万となり税率は40%になってしまうのです。(控除額は計算に入れていません)

家賃がもらえない心配がない

不動産会社が物件を借り上げてから他者にまた貸しするシステムをサブリースと言います。オーナーは入居者ではなく、不動産会社と賃貸契約を結びます。そのため、空室であっても家賃は保証されるのです。

しかし、このサブリース契約には細かい条件が沢山あります。例えば、通常の家賃収入の8〜9割程度の収入になり、契約更新ごとの家賃設定見直しにより、家賃は更新ごとに下がっていきます。また、入居付けに困る物件の場合は、契約更新してもらえない場合などもあります。そのため、永久に家賃が保証されるとはいえないのです。

買取保証もあるので安心

買取保証はサブリース契約のオプションのひとつです。急に現金化が必要となり、物件を売りたい場合に不動産会社が買い取ってくれるという保証です。しかし、物件によっては買い取ってもらえない場合もあることを覚えておきましょう。

人気のエリアなので物件価格、家賃価格の向上が見込める

物件探しで一番気になるのが立地です。そのため、このエリアは人気です!とか、周辺開発が行われるので家賃が上がる見込みがあります!などと言われると、なんとなく安心してしまいます。しかし、先の事など誰にもわかりません。予測不能だからこそ投資なのです。エリア情報は自分で周辺を歩いてみたり、ハザードマップを確認したりして、自分でも判断できるようにしましょう。

ワンルーム投資で成功するためには

ワンルーム投資は不動産投資のなかの一手法である事を念頭に、不動産投資全般に関する理解を深めることが大切です。更に、他の不動産投資にもいえる事ですが、立地を考慮した物件選びが重要となってきます。不動産投資が株式投資などと大きく違うのは、入居者である顧客とオーナーが賃貸契約を結ぶため、投資の向こう側に顧客がいるという点です。その顧客に好まれる物件、飽きさせない間取り、利便性に見合った家賃など、経営者としての手腕も問われるのです。

まとめ

ワンルーム投資をする際は、営業マンの言葉を全て信じて人任せにするのではなく、安定した家賃収入を得られるよう、不動産経営を行うオーナーの目線を磨くようにしましょう。

監修者:小林 弘司(不動産投資コンサルタント)