食料品や洋服などといった買い物とは異なり、不動産を購入する機会は一生の間に数えるほどしかないものです。数千万円~数億円もの買い物となりますので、「どういう風に買えば良いのだろうか」と悩んでしまう人も多いのではないでしょうか。不動産を購入する手順を詳細に解説しますので、実際に購入するときに役立てて下さい。
不動産の購入先
不動産を個人間で売買することもありますが、通常は、不動産業者から購入します。不動産業者で取り扱われている物件は、“分譲物件(新築)”と“仲介物件(中古)”の2つに大別することができます。
分譲物件(新築)概要
不動産業者が保有している物件を“分譲物件”と言います。保有者である不動産業者から直接購入することになりますので、仲介業者が入らず、仲介手数料が発生しません。ただし、建物の代金に対しては消費税が発生します。また、購入時に登録免許税や不動産取得税などの税金も発生します。
分譲物件(新築)購入の流れ
分譲物件は、次の流れに沿って購入します。
①購入申し込み
マンションや建売の戸建住宅などの分譲物件は、購入開始日から先着順で申し込みを受け付けることが一般的です。モデルルームなどを見て、購入する意思が決まったら正式に申し込み手続きを実施しましょう。
なお、立地の良いマンションやタワーマンションなどの一部の人気物件については、先着順に申し込みを行うのではなく、一定の登録期間の間に希望を出した購入希望者同士で抽選を実施して購入者を決定します。抽選に当たった場合は、正式に購入を申し込むことができます。
②申し込み証拠金を支払う
一部の分譲物件は、申し込む際に“申し込み証拠金”を支払わなくてはなりません。とはいえ、申し込み証拠金は購入の意思を証明するために支払うお金ですので、正式に購入に進めば購入代金の一部として充当されますし、購入を取り止めた場合は全額返金(業者や物件によってルールが異なることもあります)されることが一般的です。
③売買契約
申し込みから一定期間内に、不動産業者と正式に売買契約を結びます。住宅ローンを利用して購入する場合は、ローン審査(事前審査、仮審査とも言います)をこの段階で受けます。
なお、売買契約の際に、物件価格の5~10%程度に充当する手付金を支払いますが、この手付金は正式な契約後に支払うお金ですので、購入を取り止めた場合でも返金されません。ただし、ローンの事前審査に通ったにも関わらず、売買契約後のローン本審査に落ちた場合は、不可抗力で購入を取り止めることになりますから、手付金が返金されることもあります。ローン審査に落ちたときの返金については契約書に記載されていますので、かならず確認して下さい。
④入居に関する手続き
購入代金から手付金を差し引いた残額を支払う方法と引き渡し日を取り決めます。また、不動産登記の説明や管理会社(マンションなどの集合住宅の場合)の説明、火災保険の説明なども受けます。
仲介物件(中古)概要
不動産業者が物件の持ち主から依頼を受けて販売している物件を“仲介物件”と言います。物件の持ち主と買い主の間に不動産業者という仲介が入りますので、仲介手数料が発生します。分譲物件は他の購入者との公平性を保つために値引き交渉に応じてくれることはあまりない(最後の一戸やモデルルームとして利用した一室などは値引きされることがあります)のですが、仲介物件はまったく同じ条件の物件はほぼありませんので、値引き交渉が可能なこともあります。
仲介物件(中古)購入の流れ
仲介物件は、以下の流れに沿って購入します。
①購入申し込み
分譲物件(新築)とは異なり、いつ、どのような物件が販売されるかは予告されませんので、こまめに不動産業者に足を運び、納得できる物件を探さなくてはいけません。購入したい物件が決まったら、申し込み証拠金を支払って正式に申し込みます。
②売買契約
ローンを利用して購入する場合は、ローン審査(事前審査、仮審査)を受けます。仮審査に通過したら、手付金を支払って正式に売買契約を交わします。売買契約後にローンの本審査を受け、残金を支払い、引き渡し日を決定します。
希望の物件を探す
不動産を購入するためには、何よりもまず「希望の物件を見つけること」が大切です。後悔しないためにも、次の手順で納得できる物件を探して下さい。
予算を決める
理想だけを追い求めていると、予算がいくらあっても足りません。手に届く範囲の物件を探すようにして下さい。どの程度の物件が手に届くのか分からないときは、次の手順で予算を決めましょう。
①毎月支払える金額を明らかにする
大抵の人は、ローンを組んで不動産を購入するでしょう。ご自身がいくら借りられるのかを知るためにも、まずは毎月いくらなら無理なく支払えるのかを考えてみて下さい。現在、家賃を支払っているなら、家賃額を目安にしても良いでしょう。しかし、不動産を購入するとなると固定資産税などの税金の支払いが増えますので、無理なく支払うためには、現在の家賃よりも少し低い額を毎月の返済額として設定することをオススメします。
以下に紹介するフラット35のサイトでは、毎月の返済額と返済年数、適用金利、返済方法からローン可能な金額を計算することができます。融資金利が分からないときは、融資金利の欄の下の「最新の金利情報」をクリックして、該当する金利を入力して下さい。
②頭金とローン借入額から不動産購入費を求める
月々の返済額から計算した借入額に、頭金として支払える金額を足して下さい。例えば、算出した借入額が3,000万円、頭金が500万円なら、3,500万円を“不動産購入費”として使えることになります。
③不動産購入費から諸費用を差し引いて物件費用を求める
“不動産購入費”はあくまでも不動産購入に使えるお金ですので、全額を物件費用に充当することはできません。不動産を購入する際には物件費用だけではなく不動産取得税や手数料などの“諸費用”がかかりますので、不動産購入費から諸費用を差し引いて物件費用を求めましょう。
諸費用は、物件の金額の10%程度となることが多いです。物件購入に当たって家具や家電を購入する予定がある場合は、諸費用に家具家電代を加えて物件の金額の15%ほどと見積もっておきましょう。不動産購入費を3,500万円と見積もるなら、物件費用は3,100万円前後が妥当でしょう。
希望条件を書き出す
物件の予算を決めたら、次は希望条件を決めます。間取りや広さ、駅からの距離など、できるだけ具体的に書き出していきましょう。仲介物件(中古)も視野に入れるときは、物件の築年数も決めておく方が良いでしょう。物件によっては、入居前にリフォームが必要な物件であれば、物件費用に充当できる金額はリフォーム不要の物件と比べると少なくなってしまいます。
住環境を調べる
学校からの近さやスーパーまでの距離、駅やバス停までの距離など、住環境は住宅を決定するための大切な要素です。周辺施設や立地、日当たりなどについて、不動産業者にしっかりと尋ねておきましょう。
現地見学
物件のスペックだけを見ても、実際のところは現地に行かなくては分かりません。新築マンションはモデルルームが実際の場所とは異なる場所に設置されていることが多いですので、かならず現地を見てから物件購入を決めて下さい。
相場の把握
納得いく不動産が見つかったとしても、相場よりも高額な物件を購入するのは、なるべく避けたいですよね。相場を把握して、損のない取引を実施していきましょう。
部屋の広さの価格調査
マンションの場合、部屋の広さによっておおよその相場が決まっています。ただし、日当たり(物件の窓の向き)によっても値段が大きく左右されますので、同じような日当たりの条件の物件で比較するようにしてください。
物件の場所の価格調査
利用駅と駅からの距離によっても、おおよその相場が決まっています。購入を検討している物件の近くの物件の価格を調べ、相場から大きく外れていないのか確認してみましょう。
希望物件の周辺物件価格の調査
築年数が同じくらいの周辺物件と価格を比較してみて下さい。価格に大きな差があるときは、不動産業者に理由を尋ねてみましょう。
購入先の会社選び
どの不動産業者から購入するかという点も、大切なポイントです。
不動産会社調査
気になる物件がある場合、まずは売主である不動産会社をチェックしてみて下さい。インターネットなどで口コミを調べ、問題のある業者ではないのか確認しましょう。
不動産会社へ仲介依頼
不動産業者の仲介物件を購入するときは、物件自体の建設業者や販売業者についても調べて見ましょう。その上で、売買契約を取り交わす不動産業者が信頼できる業者なのか、チェックしてみて下さい。
借入先選び
住宅ローンを組んで不動産を購入する場合は、借入先もしっかりと吟味して選ばなくてはいけません。
住宅ローン調査
住宅ローンを組むときには、さまざまな手数料がかかります。手数料は金融機関ごとに異なりますので、2つ以上の金融機関に返済シミュレーションや費用見積り等を作成してもらって比較するようにしましょう。
住宅ローンの選び方
金利が低いローンを選ぶことは当然ですが、次のポイントもチェックしてみて下さい。
- 繰り上げ返済に手数料がかからないか。
- 固定金利か変動金利か。期間限定の固定金利の場合は、一定期間終了後はどのような金利が適用されるのか。
- 通常の団体信用生命保険以外に特約付き団信も選択できるか。
住宅ローン控除の把握
住宅ローンを組むと、最大10年間(400万円まで)控除を受けることができます。その他にも、地域によっては減税に繋がる制度を実施していることがありますので、不動産業者や金融機関に節税や減税制度についても尋ねておきましょう。
最後に
不動産は、決して安くはない買い物です。後悔しないためにも、物件と不動産業者、融資業者を厳しく見極めるようにしてください。また、減税制度も賢く利用するようにしましょう。