投資会社を個人で設立するとなると、とんでもなくハードルが高いような印象を与えるかもしれません。しかし、近年、個人投資会社を設立する方は増えてきており、大きな節税効果をもたらしていることも多いのです。投資会社を設立するメリットとデメリット、そして設立の流れについてまとめました。

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自分で投資会社を作ると何が違うの?

個人で投資会社を設立すると、今まで個人として支払っていた税金を、法人として支払うことになります。最高45%の所得税ではなく最高23.4%(事業年度が2018年4月1日以降の開始の場合は最高23.2%)の法人税として納めますので、金額によっては個人で税金を納めているよりも低い税率が適用されることもあるのです。

投資会社を作るメリット

投資会社を設立するメリットは、課税所得の金額によっては所得税率よりも低いこともある法人税率が適用されることだけではありません。主なメリットとして、以下の4つを挙げることができます。

損失の繰り越しができる

株式投資や不動産投資で損失が出たときは、個人として税金を納めている場合は3年に限り損失を繰り越すことができます。翌年以降に利益が出たら、その利益と損失を相殺できますので、翌年以降の税金額を減らすことができるのです。

一方、法人として税金を納めている場合も、損失を繰り越すことが可能です。しかも、繰り越せる年数は最大9年(事業年度が2018年4月1日以降に開始したときは10年)ですので、個人のときよりも長期間にわたって税金を減らすことができます。大きな赤字が出たときや、なかなか黒字会計にならないときも、法人なら節税というメリットに転換することができるのです。

諸経費を費用計上できる

個人と比べると、法人は経費として認められる支出の範囲が広いです。交通費や交際費、書籍代などの多くは経費扱いになりますので、課税所得を減らすことにもつながります。

国内株式の配当金の20%を益金不算入にできる

個人で国内株式を保有している場合も、所得税に対して5%~10%、住民税に対して1.4~2.8%の“配当控除”を受けることができます。しかし、法人で国内株式を保有している場合は、配当金に対して20%の配当控除が適用され、残りの80%のみを益金として扱います。配当金による収入が多い方は、法人化することで大きく節税することができるのです。

収益の額によっては、税金や社会保険料額を減らすことができる

先程も触れましたが、個人の所得税は累進課税ですので、所得が増えれば増えるほど高い税率が適用され、所得が1,800万円を超えると40%、4,000万円を超えると45%の高税率が適用されます。しかし、法人税ならば最高でも23.4%(事業年度が2018年4月1日以降は23.2%)ですので、収入が大きければ大きいほど法人化による節税効果が大きくなります。

また、今まで国民年金と国民健康保険を支払っていた場合は、収益の金額によっては、法人化して厚生年金と社会保険に切り替えることで、保険料の減額と将来的に受け取れる年金の増加が見込めます。現在のお金を節約するだけでなく、将来的な収入を増やすためにも、投資会社の設立を検討すべきと言えるでしょう。

投資会社を設立するデメリット

個人投資会社を設立することで、大きな節税効果だけでなく、年金や健康保険にもプラスの影響が生じることがあると述べました。しかし、デメリットがないわけではありません。投資会社を作るデメリットとしては、次の2つを挙げることができます。

決算手続きが複雑

法人化すると、決算手続きは個人と比べて複雑になります。決算期ごとに適切な処理と書類作成が必要になりますので、慣れないうちは苦労をするかもしれません。とはいえ、すべてを手作業でする必要はありません。法人としての利益が少ないうちは決算アプリなどを活用することができますし、利益が増えてきたときは税理士などの専門家に依頼することで作業を簡便化することも可能です。

法人税や所得税、住民税の合計が増える

すべての所得を法人として受け取っている場合は、法人税と法人事業税、法人住民税を納めることになります。しかし、自分で経営している投資会社以外の企業に会社員として勤めている場合は、所得税や住民税なども納めなくてはなりません。そのため、支払う税金の種類が増え、見掛け上の税額も多くなってしまう可能性があります。

それに加え、社員が少ない場合には、給与に対して社会保険料が割高になってしまうこともあります。1つ1つの税金や保険料で個人と法人を比べるのではなく、トータルでどちらがお得なのかを見極めるようにしてください。

法人化の流れ

事業収入が増えてくると、法人化することによる節税効果も高くなります。各自で法人設立のタイミングを見極め、賢く節税していきましょう。個人投資会社は以下の流れで設立します。

(1)会社基本事項の決定

会社の名称(商号)や所在地、電話番号などの基本的な事項を決定します。

(2)類似商号がないか調査

会社には「商号」が必要です。法務局に出かけ、類似商号がないか調査をします。オンライン検索も可能です。

【出典】法務省:オンライン登記情報検索サービス

(3)法人印作成

融資を受けるときや各種届出をするときには、法人印が必要です。会社にふさわしい印鑑を作成しましょう。

(4)定款の作成

会社の設立目的や利益配分など、会社の根幹を記した定款を作成します。文体などある程度フォーマット化されていますので、会社設立を専門としている法律事務所に依頼するとスピーディに作成してもらえます。最近は、オンラインで約款作成も可能です。

【参考】freee

(5)定款の認証

公証人役場に出かけて、作成した定款を認証してもらいます。定款に不備がないかを確認するために、数日かかることもあります。

(6)出資金等の払込

出資金など、投資会社設立に必要な資金を金融機関に払い込みます。法人口座を開設していない場合は、法人の資金管理のためのメイン口座を開設します。

(7)登記申請書類の作成

法人として法務局で登記するための登記申請書類を作成します。登記書類には決まりごとが多数ありますので、定款を作成するときと同様、会社設立専門の法律事務所に依頼する方が良いでしょう。こちらも同様にオンラインで作成することも可能です。

(8)設立登記

登記書類を作成したら、法務局に出かけて登記を実施します。個人で登記書類を作成した場合は、何度か法務局で手直し等の指導を受けることもあるでしょう。登記もオンラインからの申請が可能となっております。

【出典】登記・供託オンライン申請システム

(9)諸官庁への届け

事業内容によって、関連官庁への届出を行います。例えば、設立する法人で不動産投資顧問業を行う場合は、国土交通省に登録しなくてはなりません。

投資会社を設立する時の注意点

投資会社を設立することで、大きな節税効果を生むことがあります。投資会社を設立する前に知っておくべきことをまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

資本金はいくら必要?

かつては株式会社を設立するときは最低1,000万円の資本金が必要でしたが、2006年5月の法改正以降、資本金1円でも会社を設立できるようになりました。しかし、資本金は少なければ良いというものではありません。次の基準で適切な資本金額を決定して下さい。

会社運営に必要な資金を計算する

会社を運営していくためには、ある程度の資金が必要になります。資金が必要になる度に、個人からの貸付という形を取ると、経理上の処理が複雑になってしまいます。少なくとも最初の利益が出るまでに必要な資金や支払うべき税金額の合計額以上は、会社の資本金としてプールしておく必要があるでしょう。

初期投資が必要な場合は資本金に投資額を含めておく

不動産や株式などの投資対象となる資産をこれから購入する場合や製造業などの設備が必要な場合は、初期投資として必要な金額も、資本金に含めておく必要があります。資本金が大きいと金融機関で融資を受けやすくなりますので、融資を受けて初期投資を行う場合も、ある程度まとまった資本金を準備する必要があると言えるのです。

許認可や届け出が必要か確認しておく

許認可や届け出が必要な場合は、確認しておく必要があります。事業の業種によって必要な届出が異なりますので、かならず専門家に尋ねて適切な手続きを行いましょう。

「前各号に付帯関連する一切の事業」を記載する意味

事業を行っていく上で、別の事業に参入することもあるでしょう。しかし、その別事業に関して定款で触れていない場合は、法律上問題が生じる可能性があるのです。

法的トラブルを回避するために、登記書類の事業内容と事業目的の最後に「前各号に付帯関連する一切の事業」を書きくわえておくようにしましょう。この一文を加えるだけで、途中で新たな事業を始めるとしても事業目的に反すること等を指摘されることがなくなります。

最後に

収益が少ないうちは投資会社を設立しても、節税効果を生まないこともあります。しかし、ある程度収益が大きくなってくると、法人化することによるメリットも大きくなります。また、損益が大きい場合も、法人化することで損益通算できる年数を増やせます。現在、個人で投資を行っている人は、投資会社の設立も視野に入れてはいかがでしょうか。

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