良い「不動産」との出会いは、良い「不動産屋」と出会えるかで決まります。しかし、不動産屋は非常に多く、どの不動産屋が良いのか見分けることは至難の業です。良い不動産屋の選び方、そして、良い不動産屋と良好な関係を築く方法についてまとめました。

不動産屋の取扱業務で分類する

良い不動産屋を見分ける前に、不動産屋の種類を知っておきましょう。不動産屋は取扱業務によって次の3つに分類することができます。

売買仲介メイン

売買物件の仲介をメイン業務としている不動産屋があります。通常は、居宅用・投資用に関わらず幅広い物件を取り扱っていますが、中には居宅用物件に力を入れている業者や反対に投資用物件を専門的に扱っている業者もありますので、物件の購入目的に合わせて不動産屋を選ぶようにしましょう。

賃貸仲介のみ

賃貸物件の仲介のみを行っている不動産屋も少なくありません。営業エリア内の賃貸物件のみを扱っている業者もありますが、自社賃貸物件のみを扱っている業者もあります。昨今は、大手住宅メーカーなどが全国規模で賃貸物件をチェーン展開していますので、メーカーを指定して物件を探すこともできます。

売買・賃貸仲介ともに取り扱い

売買物件、賃貸物件どちらにも力を入れている不動産屋もたくさんあります。地域を限定して物件を探している人にとっては、もっとも頼りになる不動産屋だと言えるでしょう。特定の地域で不動産売買を行いたい人は売買・賃貸仲介ともに手広く取り扱っている不動産屋に出かけてみましょう。

不動産屋の規模で分類する

賃貸か売買かではなく、業者の規模で不動産屋を分類することもできます。大きく次の2つに分類することができます。

大手不動産会社

全国規模で事業を展開している大手不動産会社の支店や営業所は、事業規模としてはもっとも大きい不動産屋だと言えます。大手不動産会社の支店・営業所では地元の物件を探すこともできますが、遠く離れた物件を紹介してもらうこともできます。そのため、転勤先が決まっているときなど、居住先に何度も出かけずに物件を選びたいケースにおいても便利でしょう。

地域密着の街の不動産屋

本支店を構えず地域に密着した営業を実施している街の不動産屋もあります。また、ごく限られたエリア内に数店舗を構える地域密着型の不動産屋もあります。住宅メーカーにこだわらずに“掘り出しもの”の物件を探したい人には、大手不動産会社よりも地域密着型の不動産屋を選ぶ方が良いでしょう。

不動産屋の主な業務内容

不動産屋の仕事は、物件の照会だけではありません。営業規模に関わらず、不動産屋では次の3つの業務を行っています。

売買、賃貸の仲介

物件の売買や賃貸の仲介業務を行います。売主と買主、貸主と借主が正しく契約を結べるように、宅地建物取引主任者などの資格を持った人が仲介業務を担当します。

物件管理

仲介業だけを行う不動産屋もありますが、自社物件や自社管理物件を保有する不動産屋は、物件管理業も行います。物件を直接見まわり、トラブルが発生していないかを確認するだけでなく、貸借後・売却後のトラブル対応を行うこともあります。

貸主としての賃貸業務

不動産屋自らが所有する賃貸物件に対しては、貸主としての賃貸業務も行います。居住中のトラブルに対応するだけでなく、外部に家賃回収業務を委託していない場合は家賃回収も実施します。

不動産の取引態様の違い

不動産屋には、仲介・代理・貸主・売主としての顔があります。それぞれの立場において、次の業務を行います。

仲介

不動産屋自身が保有しない委託物件に関しては、仲介業務を実施します。貸主と借主の双方、売主と買主の双方が公平な立場で契約を締結できるように取り計らいます。尚、仲介契約には、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。「媒介」という言葉は宅建業法などの法律用語では「仲介」と同じ意味で使用されます。

*一般媒介契約

複数の不動産業者が扱っている物件を仲介することを、一般媒介契約と言います。不動産物件の情報は他の不動産業者とも共有しなくてはいけません。

*専任媒介契約

専任媒介契約とは、売主もしくは貸主が特定の不動産屋と専属で契約を結ぶことです。そのため、売主や貸主自身が自分で見つけた買主や借主とも取引を実施するときは、売主や買主は専任媒介契約を結んだ不動産屋に営業経費を支払わなくてはなりません。

*専属専任媒介契約

専属専任媒介契約も、売主や貸主が特定の不動産屋と専属で契約を結ぶことです。しかし、専任媒介契約よりも制限が厳しく、売主もしくは貸主が自分で見つけた購入者や貸借者と契約を結ぶときは、特定の不動産屋に対して違約金を支払わなくてはなりません。

代理

不動産業者が売主や貸主の代理として売買・賃貸契約を結ぶことがあります。代理として契約を結ぶときは、不動産業者は売主もしくは貸主からのみ手数料を受け取ります。尚、仲介業者として不動産業者が契約を締結するときは、売主もしくは貸主だけでなく、買主もしくは借主からも手数料を受け取ります。

貸主

不動産屋自身が、貸主となることもあります。不動産屋が所有している物件を直接貸主に貸すのです。貸主と借主の間に仲介業者が入りませんので、不動産屋も借主も手数料を節約することができます。

売主

不動産屋が保有する物件や土地を売却するときは、不動産業者は売主となります。不動産屋自身が所有する物件を買主に売りますので、不動産屋も買主も手数料分を節約することができます。

仲介・代理の特徴

仲介業務と代理業務は、類似している部分も多くあります。不動産屋が仲介して契約を結ぶときと不動産屋が代理として契約を結ぶときは、主に次の3つの特徴があります。

法の適用、行政による監督

不動産屋が仲介あるいは代理として契約する場合は、宅地建物取引業法の適用を受けます。

重要事項説明の有無

不動産屋には、契約に関わる当事者に重要事項説明を行う義務が課せられます。

仲介手数料

不動産屋が仲介する場合は、借主や買主だけでなく貸主や売主からも仲介手数料を受け取ることができます。ただし、貸主や売主からの依頼があったときは、借主や買主からのみ仲介手数料を受け取ることも可能です。一方、不動産屋が代理として契約するときは、貸主や売主からのみ仲介手数料を受け取ります。

貸主の特徴

不動産屋が貸主として賃貸契約を結ぶときは、法の適用や手数料は以下の通りとなります。

法の適用、行政による監督

不動産屋が貸主ということは不動産屋と借主の直接取引となりますので、宅地建物取引業法の適用を受けませんし、行政による監督も対象外となります。

重要事項説明の有無

宅地建物取引業法の適用を受けないと言うことは、不動産屋は契約時に重要事項を説明する義務もないということになります。しかし、確認事項があるときは、貸主は借主へ説明をする必要があります。

仲介手数料

不動産屋と借主との直接取引ですので、仲介手数料は発生しません。

売主の特徴

不動産屋が売主として売買契約を行うときは、法の適用や仲介手数料は以下のようになります。

法の適用、行政による監督

不動産屋と買主の直接取引となりますが、売買の場合は宅地建物取引業法の適用を受けます。また、行政による監督も適用となります。

重要事項説明の有無

宅地建物取引業法の適用を受けるため不動産屋には重要事項を説明する義務が課せられます。

仲介手数料

不動産屋と買主との間に仲介業者は入りませんので、仲介手数料は発生しません。

良い不動産屋を見分けるポイント

良い不動産屋を見分けるポイントを紹介します。賃貸でも売買でも不動産取引には大きなお金が動きますので、しっかりとご自身の目で良い業者を見分けて下さい。

基本情報のチェック

良い不動産屋かどうかを見分ける前に、不動産屋自体が信頼できる会社なのかを把握する必要があります。中には正規に登録していない業者もありますので、次の3点をかならずチェックするようにしてください。

*免許番号

不動産物件の売買や賃貸の仲介業を行う場合は、かならず国土交通大臣か都道府県知事から宅地建物業者としての免許を受けていなくてはなりません。免許番号が不動産屋の店舗内に掲げられているのか、あるいは不動産屋のスタッフの名刺に記載されているのか確認して下さい。

尚、国土交通大臣から免許を受けている不動産屋は、2つ以上の都道府県にまたがって営業している業者です。そのため、小規模経営の不動産屋は、都道府県知事による認定番号が公布されています。

*業界団体へ加入しているか

宅地建物業者としての免許番号があれば、不動産屋として営業を行うことができます。しかし、不動産屋で納得できる対応を受けられないときやトラブルが起こったときなどは、その不動産屋が加盟している団体の相談窓口に報告してトラブルの解決を促すことができますので、不動産屋が不動産団体に加盟している方が安心です。不動産業者が加入できる団体には次の5つがあります。

  • ・全国宅地建物取引業協会連合会
  • ・都道府県の宅地建物取引業協会連合会
  • ・不動産流通経営協会
  • ・全日本不動産協会
  • ・全国住宅産業協会

尚、大手不動産業者の営業所やチェーン展開をしている不動産業者は、これらの団体に加入していないことも少なくありません。しかし、大手不動産業者やチェーン展開をしている業者は社内に相談窓口が設置されていることが多いですので、団体に加盟していないとしても不安なく取引を行うことが可能です。

*宅地建物取引業者名簿

不動産屋に国土交通省もしくは都道府県の登録番号が記載されていても、宅地建物取引業者の名簿に名前が載っているかどうかは別問題です。悪質にも適当な番号をでっちあげて店舗内に掲示している可能性もあるからです。国土交通省のホームページでは宅地建物取引業者の検索ツールが公開されていますので、「怪しいな」と思うときは本当に宅地建物取引業者として登録されているのか確認してみましょう。

出典:国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」http://etsuran.mlit.go.jp/TAKKEN/takkenInit.do

店舗の外観・貼り出された広告をチェック

不動産屋自体は正規の業者であっても、店舗の在り方や広告に問題がある業者である可能性もあります。店舗の外観や貼り出された広告もかならずチェックしてみて下さい。

*用語の使用基準を満たした広告かどうか

不動産屋の広告で使用して良い用語は、不動産の表示に関する公正競争規約で定められています。例えば「完全」や「完璧」、「絶対」などのまったく手落ちがないことを表現する言葉や「日本一」、「日本初」、「当社だけ」といった他の業者の有意に立つ言葉を使うときは、その言葉を証明する事実を併せて公表しなくてはいけません。

出典:不動産公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約」http://www.rftc.jp/kiyak/hyouji_kiyak.html

*路上看板の広告内容をチェック

路上看板の広告も、チェックすべき項目です。「完売」や「破格」などの極端な表現を使うときは、その事実を証明する事実を併せて公表しなくてはいけません。

営業マンの接客態度をチェック

いくら法的に正しい契約でも、営業マンの接客態度が悪いなら、良い取引を期待することができません。にこやかで礼儀正しいことは当然のこととして、次の4つのポイントを抑えているかも確認しましょう。

*物件のデメリットを正直に教えてくれるか

メリットばかりに思える物件でも、いくつかデメリットが潜んでいる可能性があります。物件のメリットだけでなくデメリットも正直に教えてくれるかチェックしましょう。

*こちらの要望をきちんとヒアリングしてくれるか

物件のアピールは熱心にするのに、顧客の要望については興味を示さない営業マンもいます。こちらの要望をきちんとヒアリングしてくれるのかも重要なポイントです。

*一部の内覧を拒否して物件の選択肢を狭められないか

広告に出している物件なのに、「見せて欲しい」と頼むと色々と言い訳をして内覧させてくれないこともあります。また、物件を見に行っても、「裏から見ても良いですか?」「押し入れの中を開けても良いですか?」と聞くと、「今はちょっと…」と拒否されることもあります。

*契約を急がせたり無理強いしたりしないか

「すでに3件もお問い合わせいただいているんですよ」「今、ご入金いただかないと、なくなってしまうかもしれませんよ」などと、契約を急かせたり無理強いしたりすることがあります。本当に人気物件である可能性もありますが、契約させるための「嘘」である可能性もあります。

不動産屋選びのQ&A

不動産屋を選ぶ際にさまざまな疑問が湧くこともあるでしょう。よくある疑問2つに対する答えを紹介いたします。

*仲介手数料が半額や無料の不動産屋は安全?

仲介手数料が半額もしくは無料と宣伝している不動産屋もあります。仲介手数料は仲介業者が自由に決めても問題ありませんので、半額や無料の業者は危険とは言えません。しかし、不動産屋自身が貸主の場合はそもそも仲介手数料は不要ですから、不動産が貸主のときに「仲介手数料不要」と謳っている場合は、信用できない業者だと判断することができます。

*広告の物件数No.1ってホント?

広告で「物件数No.1」と書いてある場合は、不動産の表示に関する公正競争規約を順守している業者であれば、本当に物件数がNo.1であるはずです。広告のいずれかにどのような基準でNo.1と謳っているのかの根拠が書かれているはずですので、隅々までチェックしてみましょう。しかし、根拠が記載されていない場合は、No.1でない可能性も高まります。気になる場合は不動産屋の担当者に尋ねてみましょう。

不動産屋と上手に付き合うポイントは?

満足できる取引を実現するためには、良い不動産業者と知り合うことも大切ですが、顧客自身の姿勢も問われます。ポイントを抑えて、不動産屋と上手に付き合っていきましょう。

こちらの希望条件をしっかり伝える

顧客自身がしっかりと言葉で表現しないと、どのような物件を希望しているのか不動産屋には伝わりません。こちら側の希望条件を正確に伝えましょう。

売買仲介手数料の3%+6万円は固定ではない

売買物件の場合は、仲介手数料は物件価格の3%に6万円を加えた額が上限となります。これは上限値ですので、本来は不動産屋と顧客との話し合いで決めるものです。不動産屋が仲介手数料について押しつけるような言い方をするときは、少し考え直す方が良いかもしれません。

売買仲介での確認ポイント

不動産業者に売買契約の仲介を依頼するときは、次の2点をかならず確認するようにしてください。

*仲介業務の内容や範囲を確認する

不動産屋がどのような仲介業務を行うのか、また、どの範囲まで責任を持つのか、かならず書類と口頭で説明を受けるようにしましょう。

*仲介手数料がいくらになるのか確認する

先程も触れましたが、仲介手数料は本来、話し合いで決めるべきものです。納得できる説明があるのか、また、実際にはいくら支払う必要があるのか、詳細に判断するようにしてください。

賃貸仲介で注意すべきポイント

賃貸契約の仲介を不動産屋に依頼するときは、次の2点をかならず確認して下さい。

*締結を義務付けされていない賃貸仲介の媒介契約書

不動産屋が売買仲介を行うときは宅地建物取引業法で媒介契約書の締結が義務付けられていますが、賃貸仲介を行うときには媒介契約書の締結が義務付けられておらず、不動産業者が任意で行うこととなっています。しかし、トラブルを回避するためにも、きちんと契約書を締結するようにしてください。

*契約書には希望条件を正確に記載する

契約書には希望した条件が正しく記載されているのかも確認して下さい。口約束だけでは効力を発揮しませんので、かならず書面に記載されているのかチェックしましょう。

最後に

良い不動産屋を選ぶことは、良い物件を選ぶこと、そして良い契約をすることにもつながります。依頼者側も積極に情報を入手するなどの努力が必要です。