将来、土地や家などの不動産を相続することって誰にでも起こりうることですよね。いざ相続した時にどうすればいいのか慌てないように、前もって相続した時にかかる税金について、計算の仕方や申告の手順など知っておくと安心です。

今回は、相続した財産を不動産に絞って、次の3つの疑問にお答えします。

(1)相続した時の税金には何があるの?
(2)税金はいくらかかるの?
(3)手続きはどうすればいいの?

不動産相続時にかかる税金の計算方法を知ろう

まず、「不動産を相続した時の税金には何があるの?」「いくらかかるの?」の2つの疑問にお答えします。
相続したのだから「相続税」でしょと思った方、それだけではないんです。不動産を相続したら、「相続税」のほかに「登録免許税」という税金もかかります。

登録免許税と相続税

「登録免許税」とは、登記申請をする場合にかかる税金です。財産を相続した時には、所有権が移転したことを登記しなければならないので、これも相続時にかかる税金ということになります。
登録免許税は、原則として次のように計算します。

登録免許税額 = (課税標準) × (税率)

この計算式にある「課税標準」とは、相続を原因とする所有権の移転を登記する場合、固定資産税評価額のことを指します。これは、市区町村役場で管理している固定資産課税台帳に載っている価格です。

「税率」については、相続の場合1000分の4(0.4%)です。
「相続税」とは、亡くなった親や配偶者からお金や土地などの財産を受け継いだ場合にかかる税金です。

相続税は、次のように計算します。
(1)相続した財産の額から借金や葬式費用を差し引いく(課税価格の合計額)
(2)課税価格の合計額から基礎控除額を差し引く(課税遺産総額)
(3)課税遺産総額を法定相続分で分割したと想定して、相続税の総額を計算する
(4)相続税の総額を実際に相続した割合で按分し、各種控除があればその額を差し引く

登録免許税について

登記申請する時にかかる登録免許税ですが、計算上基礎となる固定資産税評価額と納税方法について解説します。

固定資産税評価額の計算方法を理解しよう

固定資産税評価額は、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて市区町村が決定します。原則として、3年に一度見直し(評価替え)を行います。

納税方法を知ろう

登録免許税の納付は、原則として現金で行います。登録免許税額に相当する金額を銀行などに納付し、その領収証書を登記の申請書に貼り付けて登記所に提出するという方法です。
税額が3万円以下などの場合は、領収証書の代わりに税額に相当する金額の収入印紙を貼り付けて提出することでも納付できます。
また、オンライン申請の場合には、電子納付することも可能です。

相続税について

相続税は、財産を受け継いだ場合にかかる税金なのですが、財産を相続した時に必ずかかるというわけではありません。なぜなら「基礎控除額」があるからです。相続税がかかるのは、相続した財産の額から、借金や葬式費用を差し引いたあとの金額が、この基礎控除額を上回るときだけです。

具体例で相続税を計算しながら、計算に必要な用語と不動産の評価方法について解説します。

基礎控除の金額を知ろう

基礎控除額は、一定の決まった金額ではなく、計算式によって算出される金額です。
次のように計算します。

3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

例えば、相続人が「妻と子2人」の場合、法定相続人の人数は3人です。

3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円

基礎控除額は4,800万円となり、相続した財産の額から、借金や葬式費用を差し引いた金額が4,800万円以下であれば、相続税はかかりません。

では、基礎控除額について知ったところで、相続税を計算してみましょう。次の例で、手順を追ってみていきます。

例)課税価格の合計額:相続した財産の額 - 借金や葬式費用 = 1億円
相続人:「妻と子2人」の3人

この例の場合、基礎控除額と課税遺産総額は次の通りです。

基礎控除額
3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円

課税遺産総額
1億円 - 4,800万円 = 5,200万円

まず、民法に定められた「法定相続分」により遺産が分割されたと仮定して、相続税の総額を計算します。

相続人が「妻と子2人」の場合の法定相続分は、妻2分の1、子(長男)4分の1、子(長女)4分の1なので、それぞれが相続する額は、

妻 :5,200万円 × 1/2 = 2,600万円
長男:5,200万円 × 1/4 = 1,300万円
長女:5,200万円 × 1/4 = 1,300万円

となります。各相続人の相続税の額は、「相続税の速算表」から算出します。

相続税の速算表【平成27年1月1日以後の場合】

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

妻 :2,600万円 × 15%(税率) - 50万円(控除額) = 340万円
長男:1,300万円 × 15% - 50万円 = 145万円
長女:1,300万円 × 15% - 50万円 = 145万円

相続税の総額は、次の通りです。
340万円 + 145万円 + 145万円 = 630万円

この相続税の総額を、実際に相続した割合で按分し、各相続人の相続税を計算します。

妻70%、長男20%、長女10%で相続した場合の相続税
妻 :630万円 × 0.7 = 315万円 ⇒ 配偶者の税額軽減により0万円
長男:630万円 × 0.2 = 126万円
長女:630万円 × 0.1 = 63万円

このとき、妻には「配偶者の税額軽減:配偶者の法定相続分又は1億6千万円のいずれか大きい金額に対応する税額を控除」が適用され、0万円になります。

法定相続人について理解しよう

法定相続人とは、民法により定められている相続人のことです。範囲と順位が決められています。

(1)死亡した人の配偶者は、常に相続人となります。
(2)配偶者以外の人は、次の順序で相続人となります。
【第1順位】亡くなった人の子ども
※すでに子どもが亡くなっている場合には孫(直系卑属)

【第2順位】亡くなった人の父母
※すでに父母が亡くなっている場合には祖父母(直系尊属)

【第3順位】亡くなった人の兄弟姉妹
※すでに兄弟姉妹が亡くなっている場合には、その子ども

順位の高い人から配偶者と共に相続人になります。第2順位と第3順位の人は、上の順位の人がいないときにだけ相続人になれます。なお、相続を放棄した人は、初めから相続人ではなかったものとされます。内縁関係の人は相続人にはなれません。

土地の評価方法を知ろう

土地の評価方法には「路線価方式」と「倍率方式」の2種類があります。

*路線価方式

路線価方式は、路線価が定められている地域の評価方法です。
路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地1平方メートル当たりの価額のことです。実際の土地は形状がさまざまなので、条件に応じて決められた補正率を掛けて路線価を補正したあとに、その土地の面積を掛けて計算します。

補正率には、宅地の奥行に応じた「奥行価格補正率」や、宅地の道路への接し方による「側方路線影響加算率」「二方路線影響加算率」、土地の形状による「不整形地補正率」などいくつかあり、該当する補正率を使って計算します。

*倍率方式

倍率方式は、路線価が定められていない地域の評価方法です。
その土地の固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて計算します。

建物の評価方法を知ろう

建物の評価額は、固定資産税評価額に1.0倍して評価するので、固定資産税評価額と同じです。ただし、建築途中の建物や賃貸されている建物の場合は、少し違ってきます。

建築途中の建物には、固定資産税評価額が付けられていません。そのため、費用原価の70%が建築途中の家屋の評価額になります。賃貸されている建物については、固定資産税評価額に借家権割合と賃貸割合を掛けた価額を控除して評価します。

*固定資産税評価額

固定資産税評価額を知りたい場合は、次の3つの方法で確認できます。

(1)市区町村の役所から届く固定資産税の「納税通知書」で確認する
(2)市区町村の役所で固定資産評価証明書を交付してもらう
(3)市区町村の役所で固定資産課税台帳を閲覧する

相続税の申告と納付

ここからは、「手続きはどうすればいいの?」の疑問にお答えします。

相続税の納付が必要な場合(相続した財産の額から、借金や葬式費用を差し引いたあとの金額が、基礎控除額を上回るとき)、相続税の申告をする必要があります。相続税がかからない場合は、申告の必要はありません。相続税は、金銭で一時に納めることが原則ですが、納付が難しい場合には条件により延納や物納をすることもできます。

相続税の申告と納付期限

申告が必要な人は、申告書を提出し、納税する必要があります。

申告場所:被相続人の住所地を管轄する税務署
納付期限:被相続人が亡くなった日の翌日から10ヵ月以内

納付期限に遅れると、加算税や延滞税がかかる場合があるので気を付けましょう。

延納制度

国税庁公式サイトによると、次の要件をすべて満たす場合に、延納申請をすることができます。

(1)相続税額が10万円を超えること。
(2)金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金  額の範囲内であること。
(3)延納税額及び利子税の額に相当する担保を提供すること。
ただし、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には  担保を提供する必要はありません。
(4)延納申請に係る相続税の納期限又は納付すべき日(延納申請期限)までに、延  納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること。

出典:国税庁公式サイト(No.4211 相続税の延納)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4211.htm

物納制度

延納によっても納付が難しい場合、一定の相続財産による物納が認められています。ただし、こちらも細かく要件が決められています。利用したい人は、自分が要件に当てはまるのかどうか、申告の際に詳しく聞いてみてください。

最後に

今回は、不動産を相続した時の税金と計算の手順について解説しました。法律や税金については、難しい言葉が多く複雑で理解するのが大変ですよね。簡単なマニュアルとしてみなさんのお役に立ててもらえたら幸いです。

監修者:添田裕美(税理士)