そもそも財形貯蓄ってなんでしょうか?簡単にいうと財形貯蓄制度とは、毎月受け取る給与から一定金額を天引きして積み立てていく貯蓄制度です。財形貯蓄には積み立てる目的別に種類がありますが、どのような目的の種類のものがあるのでしょうか?また誰でも利用ができるのでしょうか?財形貯蓄を引き出す際の取り扱いや、退職、転職、海外勤務の際の取り扱いについても気になるところです。今回は財形貯蓄制度について詳しく解説していきます。

財形貯蓄の種類

財形貯蓄は勤務先で取り扱いがあれば利用することができます。
そして財形貯蓄は積立目的ごとに一般財形貯蓄、財形住宅貯蓄、財形年金貯蓄の3つの種類があります。
ここでは種類別に解説していきます。

一般財形貯蓄

一般財形貯蓄の積み立て目的は自由です。
そのため旅行へ行くため、車を購入するため、結婚資金準備のため、教育資金準備のためなど様々な目的のため、または使用目的がなくても積み立てて行くことが可能な財形貯蓄制度です。積立方法は毎月の給料や賞与などからの天引きとなります。

一般財形貯蓄は、原則3年以上の期間、定期的に積み立てます。貯蓄商品として預貯金や投資信託、生命保険など様々な商品から選択することが可能です。また貯蓄開始から1年経過後は、自由に払い出しが可能ですが、その反面、一般財形貯蓄には利子等の非課税の優遇措置がないとことが注意点となります。

財形住宅貯蓄

財形住宅貯蓄では、夢のマイホームの建設・購入・リフォームなど住まいの資金づくりを目的として積み立てていきます。申し込みできる人は、年齢が満55歳未満の勤労者で、一般財形貯蓄、財形年金貯蓄以外で他の財形住宅貯蓄をしていない人です。

積立目的は住宅の取得であれば新築、中古、一戸建て、マンションなど種類を問いません。
ただし、財形住宅貯蓄を非課税で払い出す際などは以下の通り、マイホームの床面積などの要件が定められております。

建物・購入・リフォームするマイホームの要件

・ 床面積が50㎡以上のもの
・ 中古住宅の場合は、20年(耐火構造は25年)以内に建設されたもの。または、一定の耐震基準を満たすもの。
・ 建設・購入する住宅に勤労者自身が住むこと。単身赴任の場合は、家族の住む家が生活の本拠地となりますので、対象となります。
・ リフォームの場合、工事後の住宅の床面積が50㎡以上であること。
・ リフォームの場合、当該工事費用の総額が75万円を超えること。

などの要件が定められています。なお積立方法は毎月の給料と賞与からの天引きになり、積立期間は5年以上となっています。

出典:独立行政法人 勤労者退職金共済機構HP
http://www.zaikei.taisyokukin.go.jp/service/save/house.php

財形年金貯蓄

財形年金貯蓄は、豊かな老後の生活のため60歳以降に年金として受け取るための老後の資金づくりを目的としています。申し込みできる人は、年齢が満55歳未満の勤労者で、一般財形貯蓄、財形住宅貯蓄以外で他に財形年金貯蓄をしていない人です。財形年金貯蓄の受取期間は満60歳以降に5年以上20年以内となっていて、保険商品の場合は終身受け取りも可能となっています。

また財形年金貯蓄の受け取りまでに据置期間を設定することも可能で、積み立て終了から財形年金貯蓄の受け取り開始まで、5年以内の据え置き期間を設定することができます。積立方法は、毎月の給料や賞与からの天引きになり、積立期間は5年以上となっています。

財形貯蓄のメリット

ここでは財形貯蓄制度に非課税枠があるメリットと、マイホーム購入に役立つ財形住宅融資について解説していきます。

550万までは非課税になる!

財形貯蓄制度には財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄を合わせて(保険などの商品で、払込額385万円までが非課税となる場合もあります)550万円までは利子等が非課税となるメリットがあります。
利子等の非課税の限度額は以下の通りとなっています。

・ 預貯金などの金融商品 元本(預入額+元本に加えられる利息)550万円までの利子等が非課税

・ 保険などの金融商品  払込額385万円までの利子差益非課税

なお積立目的が自由である一般財形貯蓄は、利子非課税の取り扱いはありません。

マイホーム購入にも役立つ!

財形貯蓄を継続していて次の要件を満たすとマイホーム購入に役立つ財形住宅融資を受けることが可能となります。

次の全ての要件に当てはまる方
・自分で所有及び居住するための住宅を建設または購入する方
・次の全てに当てはまる方
(ア) 一般財形貯蓄・財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄のいずれかを1年以上継続して行っている方
(イ) 申込日前2年以内に財形貯蓄の預け入れを行っている方
(ウ) 申込日における財形貯蓄残高が50万円以上ある方
・勤務先から住宅について援助(負担軽減措置)を受けられる方
・ 独立行政法人勤労者退職金共済機構の財形転貸融資または共済組合等の財形住宅融資を受けられない方

出典:住宅金融支援機構HP
https://www.jhf.go.jp/loan/yushi/info/zaikei2.html

財形住宅融資は返済開始から終了までの期間、5年ごとに金利を見直す5年間固定金利となります。
なお融資限度額は一般財形貯蓄、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄の残高の10倍までの金額で最高4,000万円まで、住宅取得価額の90%までの金額です。

融資を受けることができる住宅や土地にも次の要件があります。

新築住宅建設の要件
次の全てに当てはまる住宅
・ 住宅部分の床面積が70㎡以上280㎡以下の住宅
・ 機構の定める技術基準に適合する住宅

次に当てはまる土地
・ 申込年度の2年前の年の4月1日以降に取得した土地または取得予定の土地

新築住宅購入の要件
次の全てに当てはまる住宅
・ 申込日前2年以内に完成または工事中の住宅(未着工のものを含めます。)
・ 機構の定める技術基準に適合する住宅
・ 一戸あたりの住宅部分の床面積が次の面積である住宅
共同建て(専有面積):40㎡以上280㎡以下
一戸建て、連続建て、重ね建て:70㎡以上280㎡以下
・ 申込日前に売主から申込本人または第三者に所有権の登記がされていないもので、申込後に申込本人の所有になる住宅(土地を含みます。)
・ まだ人が住んだことのない住宅
・ 敷地の権利が所有権または借地権(地上権で登記されているものまたは賃借権)である住宅

出典:住宅金融支援機構HP
https://www.jhf.go.jp/loan/yushi/info/zaikei2.html

誰もが思う財形貯蓄の疑問

財形貯蓄の申し込みに関して色々な疑問点もあるかと思います。
ここでは財形貯蓄の申し込みについての疑問点を解説していきます。

誰でも申し込みできるわけではない?

財形貯蓄は誰でも申し込みできる制度ではありません。
財形貯蓄を申し込みできるのは勤労者、つまり事業を行う事業主に雇用される人のすべてをいいます。

アルバイト・パートタイマー・派遣社員の人も条件に応じて含まれます。
ただし法人の役員の人は原則として利用できません。
また財形貯蓄制度は所属する企業・団体が財形貯蓄制度を導入していなければ利用できません。

お金は自由に引き出せる?

一般財形貯蓄については、1年経過後であれば自由に引き出せますが、非課税の取扱いはありません。
財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄は、それぞれ住宅資金や年金のための貯蓄であることを明らかにする代わりに利子等が非課税となる特典が受けられることになっています。

しかし財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄は目的以外で払い戻す場合は、非課税の取り扱いではなく課税扱いになってしまうデメリットがあります。目的以外の引き出しでは、財形住宅貯蓄を払い戻す場合は、要件外払い出しによる解約となってしまうので、利子等に対して税金が課税されてしまうとともに5年間さかのぼって非課税の取り扱いで支払われた利子等が課税扱いとなってしまいます。

また同様に財形年金貯蓄についても年金以外の引き出しをすると要件違反となってしまい非課税措置がなくなってしまいます。
預貯金などの金融商品は過去5年間にさかのぼって利子に課税されてしまい、保険などの金融商品については差益が一時所得の扱いとなり課税されます。
このように目的外の引き出しは税金の優遇が受けられなくなってしまうので、引き出しの条件(適格払い出し)を守る必要があるのです。

退職/転職/海外転勤のときにはどうなる?

退職、転職の場合は、退職から2年以内に新勤務先に再就職し、継続の手続きをとることで引き続いて非課税の取り扱いで積み立てていくことが可能です。
しかし新勤務先で財形貯蓄制度が実施されていることや、転職継続の手続きの期限までに財形貯蓄制度が導入されていることが前提です。

また海外転勤となった場合、一般財形貯蓄は国内払いの賃金があれば、そこからの天引きによって積立を継続することができます。財形年金貯蓄と、財形住宅貯蓄は、転勤によって海外に1年以上居住することとなる場合は、出国中、非課税での積立を継続することはできません。この場合、出国する日までに所定の手続を行うことで、最大7年間、非課税措置を受けたまま積立を中断することができます。帰国後は、帰国の日から2ヶ月以内に所定の手続を行うことで、非課税での積立を再開できます。

出典:財形貯蓄制度 |厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000106564.html

最後に

ここまで財形貯蓄について解説してきましたがいかがでしょうか?
財形貯蓄制度は誰でも申し込みできる制度ではありませんが、もし申し込みできる場合は上手に利用して資金形成に役立てていただければと思います。
少しでも参考になれば幸いです。

監修:杉浦 詔子(ファイナンシャルプランナー)