住宅を購入したいと思ったとき、ついて回るのが住宅ローンのお話です。
「住宅を買う」というのは人生の中でも大きなイベントの一つです。内見を繰り返し「これだ!」と思ったとき、住宅ローンが通らないのではショックが大きいと思います。

今回は住宅ローンを申し込む際、ポイントとなる点を確認していきましょう。

住宅ローンは2段階の審査になっている

 

住宅ローンは事前審査と本審査の二段階に分かれています。
それぞれについてみていきましょう。

住宅ローンの審査と融資実行までの流れ

住宅ローンのフローとしては、下記の様になります。

事前審査 → 本審査 → 承認 → 契約  実行

それぞれに時間が掛かるので、引越ししたいタイミングなどを考えて、しっかりと計画を練った方が良いでしょう。

事前審査

物件の購入申し込みをするタイミングで、住宅ローンの事前審査を申し込むことができます。もちろん、本審査だけでも問題はないですが、万が一、審査が通らなかった場合などを考えると、契約前に、仮にでも確認しておきたいですよね。銀行にもよりますが申込書のほかに、本人確認書類や健康保険証、源泉徴収票などのコピーが必要になる場合が多いです。

事前審査の場合は、物件の販促資料(チラシやパンフレットなど)でも事前審査を掛けられます。
不動産売買契約を結ぶ前に、借りられるかどうかの打診が出来るのはありがたいですね。

本審査

事前審査を無事に通過し物件の売買契約に至った場合は、いよいよ住宅ローンも正式な申し込みとなります。
印鑑証明や住民票の写しなど、必要な書類が多いので、金融機関に事前に確認の上、不備で仕切り直しということがないよう、準備して挑みましょう。

事前審査と本審査の審査内容の違い

「事前審査」は、住宅ローンに正式に申し込む前に、申込者の返済能力などを最小限の情報から短期間に判断する審査です。
物件の売買契約等を結ぶ前に申し込めるので、「住宅ローンが借りられそうか」を契約前に確認することができます。早ければ1日、長くても1週間程で結果がでます。

「本審査」は金融機関と信用保証会社が行い、提出した書類に基づいて詳しく審査され、担保物件や健康状態(団体信用生命保険加入のため)なども確認されます。審査期間は金融機関によって異なりますが、1~2週間程度が一般的です。本審査に通ったら、住宅ローンの契約手続きを行い、物件の引き渡しと同時に借り入れという流れになります。

事前審査では何を審査している?

事前審査ではいったいどのような項目を調べているのでしょうか。具体的にみていきましょう。

返済比率

返済比率とは、一年間の元利金等返済額の年収における割合の事を言います。返済比率は住宅ローンの審査で重要な項目となります。
審査のポイントとしては、年齢、勤続年数、年収、団体信用生命保険の加入、担保物件の評価額、返済比率、他の借入の有無などがあります。
式で表すと以下のようになります。

返済比率(%)=1年間の元利金等返済額÷年収(税込み)×100

一般的にどこの銀行でも、返済比率はおおよそ35%~40%が上限に設定されています。
1年間の元利金等返済額とは、今後借入予定の住宅ローンと現在の他の借入(マイカーローンなど)の返済額も含みます。返済比率が40%よりも高いと厳しいですが、そこは銀行により異なります。

完済時の年齢

一般的なサラリーマンの場合、60~65歳で定年退職することになります。退職までに住宅ローンの支払いを終え、退職金は老後資金に回せることが理想的ですよね。
仮に退職年齢を65歳とした場合、35年ローンを組むとしたら30歳の時点で組むのが望ましいということになります。繰り上げ返済で借入期間をもっと少なくすることも可能ですし、完済してしまえば、その時点での貯蓄やその先の収入はすべて老後資産にあてることができます。

名目上は完済時年齢を80歳として審査を行う金融機関でも、65歳時点で完済できるかどうかがポイントになるケースもあります。住宅ローンを年金で返していくというのは非常に大変です。住宅ローンは出来るだけ定年前に完済することがおすすめです。

他に借り入れがないか

マイカーローンやカードローンなど、他に借り入れがないかも非常に重要なポイントです。上記に記した返済比率を下げる為にも、住宅を買う前の借り入れは計画的に行いましょう。

本人の信用度

住宅ローンの審査では、個人信用情報調査の他、勤務先や勤続年数も大きなポイントになります。

規定上、勤続年数3年未満ではそもそも土台に乗らない銀行もあります。また、勤務先についても注意が必要です。
例えば、スタントマンのような恒常的に危険にさらされるとされる業種の場合、審査が厳しくなる傾向にあります。
逆に、上場企業や公務員などは優遇されるケースが多く、審査の通りやすさはもちろん、金利の優遇が行われる金融機関も少なくありません。

物件の担保評価

住宅ローンの申し込みをして融資が実行されると、融資を受ける代わりに、対象物件に抵当権が設定されます。抵当権を設定された場合、何らかの理由でローンの支払いが不能になった場合、金融機関や保証会社により物件の売却が行われ、ローンの返済に充当されることになります。そういった事態を想定して、物件の担保評価より借入額が大きい場合は審査に不利になります。逆に、借入額よりも物件の担保評価が大きい場合は、審査に有利になります。返済が行われなくても、金融機関に損はないからです。

物件の担保評価額が、借入希望金額よりも低い場合は、その他の属性で有利である必要があります。ただし、新築物件の場合には、購入金額が担保評価としてみなされることもありますので、過剰に心配することはありません。周辺相場と比べて、同等の価格設定でしたら大丈夫です。現在は、物件の担保評価よりも属性を重視する傾向が強い金融機関も多いので、勤続年数や年収に問題がない場合には、住宅ローン審査は承認になります。

しかし、中古マンション・中古戸建ての購入や借り換えには注意が必要です。物件の担保評価が大幅に低下してしまった物件については、住宅ローンの審査が通りにくい場合もあります。

事前審査で否認されてしまう原因

残念ながら事前審査の段階で否認されてしまうケースも存在します。
どういった事で否認されてしまうのか、確認していきましょう。

個人信用情報に問題がある

事前審査で否認される原因として、個人信用情報で問題がある事が挙げられます。
クレジットカードや他の借入等に返済の遅れがある、消費者金融からの借り入れがある、恒常的なカードローンの利用歴があるなど、問題とされるものは多岐に渡ります。
また、リボ払いやカードローンなどは完済したと思っていても少額が残っており、それが原因で個人情報の問題とされるケースがありますので、十分注意しましょう。

消費者金融に借り入れの残高がある

消費者金融を利用している方が必ずしも住宅ローンが組めない、ということはありません。
しかし、見方が厳しくなるのは間違いありません。
また、完済していても、過去に借り入れしたことがある履歴がある場合は個人信用情報に乗ってきますので、不利に働く可能性はあります。
しかしながら、「現在借りている」と「完済している」では大きな違いがありますので、消費者金融の借入は極力なくしておきましょう。

カードキャッシングの枠が返済枠を圧迫している

クレジットカードのキャッシング枠を利用している場合、仮に枠が50万で現在10万の利用があるとしても、枠そのものである50万が競合負債とみなされるケースがあります。
クレジットカードを多数所持し、キャッシング枠を設定している場合には、十分確認してから事前審査に挑みましょう。

返済比率ギリギリもしくはオーバーの申し込み

返済比率がギリギリ、もしくはオーバーの場合は注意が必要です。
個人情報や勤務先、物件の担保評価でプラスの条件を出していかないと、そのまま否認になるケースもあります。

他の借り入れがある

上記に書いたように、リボ払いやマイカーローンは住宅ローンを組むうえで競合負債とみなされます。
住宅を買う時期が決まっているようであれば、しっかりと計画立てて借り入れをしていく必要があります。

勤続年数が短い(転職したて)

勤続年数が短いことも、審査ではマイナス要因とみなされます。
基本的には勤続年数3年以上をバーにしている銀行が多く、転職1年目での住宅ローンの借り入れは非常にハードルが高いです。
ただし、必ずしも無理というわけではなく、転職したてでも、毎月の給与明細から年収を算出するケースもあります。

契約社員・派遣社員・パートなどの雇用形態

一般的には難しく考えられがちではありますが、契約社員・派遣社員・パートなどの雇用形態でも必ずしも無理ではありません。
金融機関にもよりますが、契約社員であれば1年以上、派遣社員であれば3年以上の雇用が認められれば、一般的な正社員と同等の条件を提示する銀行も少なくありません。
フラット35などはパート・アルバイトといった雇用形態を問わず申し込みすることもできます。

給与が安定していない

住宅ローンの審査の場合、給与が安定していないことも懸念材料の一つになります。
基本的には源泉徴収等、給与の把握が出来るものの3年分を平均し、返済原資となる年収を算出します。
「今年はインセンティブで大きな金額を得たから、大きなローンが組める!」というわけではありませんので注意が必要です。

年収基準を満たしていない

金融機関では、一般的に年収基準を設けています。
民間の金融機関の場合、最低年収基準として200万円~400万円程度が年収審査としての一つの目安とされています。 フラット35の場合、マイカーローンや教育ローン、クレジットカードによるキャッシング等のすべての借り入れに関して、年収に占める年間合計返済額の割合(総返済負担率)の基準がありますので、基準を下回る場合は、非常に厳しいでしょう。

≪物件の担保評価が金融機関の基準に達していない≫
銀行が設定する担保評価を下回る場合、融資額の減額をされるケースが考えられます。
新築物件であれば、購入価格がそのまま担保評価とみなされる場合がほとんどですが、中古物件の場合は注意が必要です。
特に、公道に面していない物件や、建築基準法に違反している物件などは担保価値ゼロとみなされる可能性がありますので、十分注意しましょう。

金融機関が危険視する要因

金融機関には特に危険視をするいくつかの項目があります。
どんなものがあるか見ていきましょう。

同族企業の社員

父親が経営している会社に所属しているなど、同族企業に勤めている場合には、その会社の決算書を求められるケースがあります。
給与が安定して支払われるか、という点で見方が厳しくなるようです。なので、審査に要する時間も上場企業の社員と比較すれば長期化する恐れがあります。

税金等の滞納

税金の滞納は基本的にNGです。
これは銀行の抵当より、国からの差し押さえの方が法的威力が強いため、担保が保全されない為です。
住宅ローンの申し込み前にはしっかりチェックしてから挑みましょう。

奥様単独名義での申し込み

ご主人に収入があるのに、奥様の単独申込みが怪しまれるケースも。
ご主人になにか個人信用情報の問題があるのではないか?夫が反社会的勢力の人間なのではないかという懸念を持つ場合があります。
奥様単独名義で申し込む場合は、合理的に説明できる根拠をしっかりと銀行担当者に伝える必要があるでしょう。

最後に

いかがでしたでしょうか?
細かい条件は各金融機関によって異なりますが、ほとんどの金融機関がチェックする項目を挙げてみました。
欲しい家を欲しいタイミングで買うためにも、しっかりと計画を立て、金融機関がチェックするポイントを押さえて審査を進めてみましょう。

 

監修:三上 隆太郎 (宅地建物取引士)