不動産の物件情報は、どの不動産業者でも同じ情報を公開しているのでしょうか?もし、どの不動産業者でも同じ情報が公開されているなら、あちこちの不動産業者に足を運ぶ必要がなくなりますよね。また、不動産業者に直接出向く以外にどのような方法で不動産情報を収集することができるのか、囮(おとり)物件や未公開物件、レインズについても解説します。

不動産物件情報の検索方法とは?

不動産物件情報を入手できるのは、不動産業者だけではありません。不動産業者に問合せたり、いちいち出向いたりしなくても収集できる不動産物件情報の検索方法をいくつか紹介いたします。

ネットの不動産ポータルサイトから

インターネット上には、物件を気軽に検索できる不動産ポータルサイトがたくさんあります。金額、住みたいエリアや広さ、間取り、マンション、戸建て、などの条件から検索すれば、希望に近い物件をすぐに見つけることができます。

物件情報欄には、その物件を取り扱っている不動産業者名も書かれていますので、気になる物件が見つかったときは、不動産業者にコンタクトを取りましょう。ただ、ポータルサイト上に掲載されている物件は他の不動産会社で扱えることも。利用したい不動産会社がある場合は、その物件を扱えないかどうか尋ねてみましょう。

売買から賃貸まで総合的に掲載しているポータルサイト

不動産ポータルサイトの中には、売買から賃貸まで総合的に不動産を取り扱っているサイトもあります。不動産を借りるとき、買うときにチェックすべき項目やポイント、そして、リフォーム事例、住宅ローンなどの情報も公開されていますので、借りる前や買う前に、知りたい情報をサイト内で手軽に調べることができるでしょう。

「投資目的」である収益物件やマンションに特化した専門サイト

自分が住むための物件ではなく、投資目的とした収益物件に特化したサイトもあります。「給料以外に副収入を手に入れたい」、「投資にチャレンジしたい」など、不動産投資を検討している人は、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。

検索欄では、エリア、金額、利回り、物件種別(マンション1棟、1部屋、倉庫など)、などの条件を選択することができます。どのような不動産をどのように利用したいかが決まっている人は、目的に合う専門サイトを活用しましょう。

不動産業社の自社運営サイト

利用したい不動産業社が決まっている人は、それぞれの不動産業社の自社運営サイトを活用してみてはいかがでしょうか。また、不動産業社ごとの強みや特徴、メリットなどを知りたい人も、不動産業社のサイトで勉強し、情報収集することができるでしょう。

ポータルサイトの活用法

情報収集をするときには、さまざまな条件から希望する物件をカンタンに選ぶことができるポータルサイトが便利です。ポータルサイトによっては会員登録しないと利用できないものもありますが、個人情報を予め登録しておくことで、手早く効率的に希望する物件を探すこともできますので、使い勝手の良さそうな2~3つのサイトに登録しておきましょう。

不動産業者から直接入手する

不動産業者に出向くと、一般的な不動産ポータルサイトでは公開されていない情報を得られることがあります。また、物件の特徴を詳しく尋ねたり、気になる物件を実際に見に行ったりすることもできます。

銀行から不動産情報を紹介してもらう

普段取引がある銀行や住宅ローンを組もうと検討している銀行から、不動産情報を教えてもらうことができる場合も。銀行が紹介してくれる不動産なら、融資審査にも通りやすくなる可能性がありますね。一般的な不動産会社では扱っていない物件情報を教えてくれるときもあります。

囮(おとり)物件とは

不動産業者は、「囮物件」と呼ばれる物件で集客することがあります。囮物件を利用する理由と囮物件を見分けるポイントを紹介します。

不動産業者が囮物件を使う理由とは

星の数ほどある不動産業者。その中からどこか1つを選ぶなら、やはり条件の良い物件や格安の物件を持っている業者なのではないでしょうか。しかし、現代の情報化社会において、驚くようなお得な物件や他社では取り扱っていない好条件の物件はなかなか存在しません。

そこで、不動産業者が使うのが「囮物件」です。破格の値段やとんでもない好立地の物件を表に出して集客するのです。もちろん、破格の物件や特別に好条件の物件はそこまで多くはありません。お客さんが「この物件を見たいのですが」と切り出すと、「そこはさっき入居者が決まってしまいました」とか「実は、このようなデメリットがあるのです」と話しが進むことも珍しくないのです。

顧客を集めるために売る意思のない条件の良い物件を広告し、実際は他の物件を販売しようとするのが囮物件です。

囮物件の見分ける5つのポイント

本気で「この物件に住みたい!」と決め、勇気を出して不動産業者に出向いたにも関わらず、実際には住めない囮物件だとなってしまえば落胆してしまいますよね。囮物件に惑わされずに、本当に住める物件だけを選びたいものです。そこで、囮物件を見分けるカンタンなポイントを5つ紹介します。

①現地集合で内覧出来るか

土地勘のある場所の物件なら、おおよその住所を見れば大体どこにあるのか分かりますよね。「場所は分かりますので、現地集合で良いですか?」と不動産業者に聞いてみて、「はい。その方がこちらも助かります!」と答えるならば、その物件は囮物件ではない可能性が高いです。反対に、「一緒に行きますので、まずはこちらに来て下さい」と不動産業者が言うならば、物件が囮である可能性があります。実際に存在していない物件は、内覧することができないからですね。

②募集条件が良すぎる物件

不動産には一般的な相場があります。たとえば、駅徒歩10分、ワンルームサイズ10万円程度の相場の地域に「新築2LDK!駅から徒歩5分!家賃70,000円!」などと記載されているなら、かなりの高確率で囮物件と考えられるでしょう。もしくは、事故物件(曰く付き)物件の可能性も。

③詳細情報がきちんと掲載されているか

家賃や駅からの距離についての情報があるのに、肝心の家の広さや築年数、備えつけの機能が記載されていないときがあります。このような物件も、囮物件の可能性が高いです。不動産業者に出向いて話を聞いてみると、実は部屋が極端に狭かったり、使いづらかったり、何かしらのトラブル物件であることがあるのです。

④画像が複数枚掲載されているか

不動産ポータルサイトには、物件の外観画像だけでなく室内画像も複数枚掲載されていることもあれば、外観画像しか掲載されていないときや、一枚も画像が掲載されていない場合もあります。

物件価格が安いのですぐに不動産会社に問い合わせてみたら、室内のコンディションが悪いので、リフォームに1,000万円近く掛かりますけどいいですかと言われたり、あらかじめ室内がボロボロな状態であることを告げられぬまま内覧に行ったら、建物がかなり傷んでいたり汚れていてすぐに住める状態ではない物件だったとか。

外観や室内の画像があまり掲載されていないときは、あらかじめ建物のコンディションを確認したり、リフォーム費用がどのくらい掛かりそうか確認したりしてから物件を見に行きたいですね。

⑤定期借家契約の物件でお客を釣る

お部屋を借りるときの条件が一般的な契約条件(普通賃貸借契約)の物件は2年ごとに契約を更新します。しかし中には「定期借家契約」という期限付きの物件もあり、一定期間を超えると契約を更新することができなくなってしまいます。もし気に入った物件が「定期借家契約物件」だったなら、一定期間後は別の物件を探さなくてはなりませんし、また、新たに敷金や礼金・引っ越し費用・不動産仲介料などが発生しますよね。

そのため、好条件の囮物件を「定期借家契約物件」として表示していることが珍しくありません。お客さんが「この物件に入居したい」と言うと「実は定期借家契約ですので、2年を超えて住むことができないんですよ」と説明し、別の物件を紹介しようとするのです。

一般には知られていない不動産の厳しい広告規定

不動産の広告は宅地建物取引業法や不当景品類及び不当表示防止法といった法律で規定されています。当然のことですが、囮物件を紹介することは違法ですし、実際よりも良く紹介することや不都合な真実を隠していることも違法です。不動産業者の評判等もチェックして、違法な表示をしている不動産業者で契約を結ばないようにしてください。

不動産情報の活用を促進するレインズとは?

レインズ(REINS)とは不動産流通標準情報システム(指定流通機構)のことで、「Real Estate Information Network System」の略です。レインズで不動産業者が会員間で情報を交換し、お客さんに最新の情報を提供できるようになっています。

媒介契約の種類によって違うレインズの登録義務

媒介契約には3つの種類があります。

例えば、重ねて他の不動産業者に売却の依頼はできず、かつ不動産業者の探した相手とのみ契約を締結するタイプの媒介契約が「専属専任媒介契約」
専属専任媒介契約を締結したときは、不動産業者は5日以内(休業日を除く)にレインズに登録し、1週間に1回以上、業務の処理状況を依頼者に報告しなければいけません。

つぎに、重ねて他の不動産業者に売却の依頼はできないが、依頼者が自分で発見した相手との契約を成立させてよいのが、「専任媒介契約」
専任媒介契約を締結したときは、不動産業者は7日以内(休業日を除く)にレインズに登録し、2週間に1回以上、業務の処理状況を依頼者に報告しなければいけません。

そして、複数の不動産業者に売却の依頼ができるのが、「一般媒介契約」
一般媒介契約を締結したときは、不動産業者にレインズの登録と業務の処理状況の報告の義務はありません

なぜレインズだと売り手・買い手を幅広く探せるのか?

各不動産業者が情報をリアルタイムで共有することで、買い手は「気に入った物件なのに、すでに売れていた」といった状況を避けることができます。また、売り手もスピーディに正確な情報を買い手に公開できますので、お客さんが他の不動産業者に流れてしまうことを防ぐことができます。いずれにしても最新の物件情報を幅広く探して提供することが可能になりますので、両者ともにメリットを享受することができるのです。

レインズにも課題はある

とはいえ、レインズにも課題がないわけではありません。主な課題を2つ紹介します。

物件情報の囲い込みが起きる理由

レインズに登録されている各物件の情報は、不動産業者間で共有しなくてはならないのに、自社で売却したいがために他の不動産業者からの問い合わせをすべて断る不動産業者も存在します。売主及び買主の双方から仲介手数料を受領したいがために(いわゆる両手取引)、他の不動産仲介業者へ虚偽情報(契約予定があるなど)を流し、物件を自社だけで囲い込み、レインズが正しく活用されないことがあるのです。

※平成29年法改正に基づき、媒介業務の適正化を図るため、申込みについての報告義務を媒介業者に課した。

インターネット普及でポータルサイトとの差別化は?

不動産ポータルサイトでも、不動産情報が共有されています。レインズに登録されていない物件(専属専任媒介及び専任媒介契約締結済みでレインズへの登録期限前の物件やレインズに登録されていない一般媒介契約締結済みの物件)が公開されていることも事実です。

不動産会社の物件情報はどこも同じなのか?

レインズや不動産ポータルサイトによって、ほとんどの物件情報は共有されています。しかし、特定の不動産業者でしか取り扱いできない物件も一部存在しており、物件情報はどこも同じというわけでもないのです。

不動産売買の未公開物件情報とは

不動産には「未公開物件」と呼ばれる物件があります。未公開物件情報とはいったい何なのでしょうか。

未公開物件情報の定義

未公開物件とは、新聞の折り込み広告やインターネットでは公開していない物件のことを指すことが一般的です。実際に不動産業者に足を運んだ人や不動産業業者の見込み客だけが目にする物件を、未公開物件や非公開物件と呼びます。

不動産業者と一般客の未公開物件に対する認識のズレ

一般客は「未公開物件」と聞くと、「どこにも広告を出していない物件」と考えます。しかし、実際のところは広告(チラシなど)やネットでは公開していないだけで、その他の場所では広告を出していることもあるのです。そのため、未公開と言いつつも多くの人が物件について知っていることも珍しくないのです。

未公開物件情報が存在する理由とは?

近所の人に自宅を売却していることを知られたくない個人の売主が、レインズ以外での広告を嫌がるときや、これから売り出されようとしている個人や不動産会社が売主の物件、ある特定の不動産業者にしか販売を任されていない不動産会社が売主の物件、まだ未完成で広告ができない物件など、未公開物件といってもいろいろな物件があります。また、長期間売れ残っている物件の広告を一旦中断し、一定期間広告を行わない物件などさまざまです。いずれにしろ、良くも悪くも何らかの事情を抱えている物件が多いでしょう。

未公開物件情報を紹介してもらうには?

売り出されてもすぐに売れてしまうような人気マンションや、なかなか売り物件が現れないエリアの物件もありますが、特殊な事情から相場とかけ離れてお得な物件を敢えて未公開にしている物件もあります。できれば、そのようなお得な未公開物件を紹介してもらいたいですよね。

優秀な営業マンに紹介を依頼する

未公開物件の取り扱いは、不動産業者の中でも役職がある人や優秀な営業マンのみに限られていることもあります。優秀な不動産営業マンに未公開物件について尋ねてみましょう。なぜなら、優秀な営業マンはマーケット情報を入手するスピードが速く(横のつながりや、顧客からの信頼など)、情報通であるケースが多いからです。

不動産業者が自社運営しているホームページで会員登録する

多くの物件を網羅するポータルサイトではなく、不動産業者の自社サイトで会員登録をすると、未公開物件を紹介してくれることもあります。気になる業者のサイトに登録して、定期的に物件情報を入手しましょう。

最後に

世の中にある不動産の中で、それぞれの目的(居住、投資など)にあった良い不動産に出会うためには、常にアンテナを張り、どれだけ優れた情報をスピーディに入手するかがひじょうに重要なポイントとなります。囮物件に惑わされないように注意しつつ、複数のサイトに登録して本当に役立つ情報を手に入れていきましょう。

信頼できる営業担当者と不動産業者に出会えれば、きっと良い物件が見つかることでしょう。

監修:三上 隆太郎 (宅地建物取引士)