欲しい住宅が見つかっても、全額を現金で支払えないときは住宅ローンを利用しなくてはいけません。しかし、住宅ローンは数千万円単位で融資を受けるローンですので、審査に通らない事も珍しくないのです。何に注目して住宅ローンの審査が実施されるのか、そして、審査に落ちたときは何をすべきかについて解説します。

住宅ローンの審査では返済能力が見られる

住宅ローンとは、住宅購入のための資金として銀行などの金融機関から数千万円の融資を受けることを意味しています。金融機関にとっては、返済してもらえないということが一番避けたい事柄ですので、申込者の返済能力について厳しくチェックします。

住宅ローンの審査に落ちることは当たり前にある

住宅ローンの審査に落ちることは珍しくありません。3~5ほどの金融機関に申し込んで、ようやく1社から融資を取り付けるということも頻繁にあるのです。すべての金融機関のローン審査に落ちて、住宅購入を諦める人もたくさんいます。

審査に落ちる理由は教えてもらえない

審査に落ちると、「なぜ落ちたんだろう」と疑問に思いますよね。何社ものローンに落ちるならば、なおさら落ちた理由が気になります。落ちた理由がはっきりするならば、改善できる部分を改善して次回の審査を有利に運ぶこともできるでしょう。

しかし、金融機関に問い合わせても、住宅ローン審査に落ちた理由は教えてくれません。「総合的に判断して、ご融資できないと判断いたしました」と漠然とした答えが返ってくるだけなのです。

基本的には本人の年収や勤務先が見られる

一般的には、住宅ローンに申し込んだ人は、給料を使ってローンを返済します。つまり、給料を毎月定期的に受け取ること、そして、給料の額がローン返済額に対して充分であることが大切なポイントになってくるのです。

現時点の年収だけでなく将来的な年収も評価される

年収が高ければ、当然のことですがローン返済は滞りにくくなります。しかし、勤務先が零細企業や業績に波がありすぎる業種なら、審査時点での年収が高くても、近い将来、大幅に年収がダウンしてしまうことも想定されます。

そのため、現時点での年収が高いことも大切なポイントですが、安定した年収が見込める企業に勤務していること、そして、企業全体の平均年収が高いことや勤続年数に応じて高年収になることが予想されることなども重視されるのです。

収入があっても派遣や契約社員は審査に落ちやすい

申込者の収入と住宅ローンの金額のバランスがとれていたとしても、それだけで住宅ローンの審査に通るわけではありません。申込者の年収が将来的には現在よりも下がる可能性があると金融機関が判断すると、審査に通ることは難しくなるでしょう。

例えば派遣社員や契約社員の場合、契約期間が過ぎると雇用契約が更新されない可能性もあります。契約が更新されずに失職したり、現在よりも低収入の仕事に転職したりすることは、金融機関にとっては貸し倒れになるリスクです。リスクを少しでも軽減させるためにも、派遣社員や契約社員は審査に通りにくくなってしまうのです。

公務員など職場の安定性があり“確実”な返済が見込める職業が有利

申込者が正社員であったとしても、勤務先が倒産したり業務整理をしたりするならば、安定した収入を得ることはできなくなってしまいます。一方、公務員や学校職員などは、一般的な企業と比べると倒産リスクや業務縮小リスクが少なく、安定した収入が見込みやすいために返済の確実性も高いと判断できるでしょう。そのため、公務員などの安定性が高い職場に勤務している人は、同じ年収で同程度のローンを借りようとしている人と比べると、審査に通りやすくなります。

年収が低い人は借入れできる金額も少なくなる

職場が安定しており、正規社員として勤務している人でも、現時点での年収があまりにも低い場合は借入れできる金額も少なくなってしまいます。一般的な住宅ローンの限度額の目安としては、年収の7~8倍と言われています。職場や雇用形態の安定性を加味しても、年収の10倍が限度となることが多いです。そのため、現時点での年収が低い場合は、年収が高い人と比べると借り入れられる金額が少なくなってしまうでしょう。

住宅ローン審査の具体的なチェックポイント

では、住宅ローン審査において、具体的にどのようなポイントがチェックされるのか見ていきましょう。

年収

先程も説明しましたが、年収の高さは、住宅ローンの限度額を決定する重要な要素となります。年収が低いと住宅ローンを絶対に組めないというわけではありませんが、高年収の人と比べると、融資限度額や借入期間に大きな制約を受けます。

勤務先

勤務先が安定していると、収入も安定している可能性が高いとみなされますので、住宅ローン審査に通りやすくなります。公務員(契約社員や非正規雇用は除く)がもっとも審査に有利となり、次いで業界内のトップ10に入るような大手企業、上場大手企業、上場中小企業、非上場企業、自営業の順で通りにくくなってしまいます。

勤務年数

勤務年数が長いということは、申込者本人が長期的に仕事を継続できる人間だということを意味しています。根気のある性格とも評価することができますし、勤務先からもある程度高い評価を得ているとも考えられます。

借入時、完済時の年齢

安定した職場に長期にわたって勤務していたとしても、申込者の年齢があまりにも高い場合は、審査が厳しくなってしまいます。例えば、借入時に50歳ならば、勤務先によっては早期退職という選択肢も出てくるでしょう。

また、完済時に70歳ならば、年金収入だけで返済することになる人がほとんどですので、生活を維持しつつ住宅ローンを返済できるのかについても疑問が生じます。遅くとも借入時の年齢が40代、完済時の年齢は60代が、審査に通りやすいと言えるでしょう。

物件の担保能力

申込者がローンを支払えなくなった時は、金融業者が物件を買い取りローン返済に充当します。つまり、物件に担保能力(年月が経っても相応の価値を有する力)がないと、金融業者としても貸し倒れになるリスクが高くなってしまうのです。物件が金額相応の価値のあるもの、年数が経っても価値が著しく落ちないものであることも、住宅ローンの審査の重要なポイントになるのです。

ローン返済負担率

ローンの年間返済額が年収に占める割合を、「返済負担率」と言います。年収500万円の人が住宅ローンとして年間100万円を返済するならば、返済負担率は20%と計算できます。しかし、住宅ローン以外にローンを抱えている場合は、このように単純に計算することができません。すべてのローン返済額を合計し、年収に対してどの程度の割合を占めているか求めます。

一般的にローン返済負担率は30~35%以下になることが望ましいとされています。返済負担率が40%を超えると、審査に通過する確率が非常に低くなってしまうのです。

借り入れする金額

年収が低いとローン審査に通りにくくなりますが、借り入れる金額が少ないなら年収が低くても審査に通る可能性はあります。あくまでも年収と借入額のバランスが大切ですので、年収が低い人は借入額をなるべく少なくするように工夫しましょう。

信用情報に問題がない

ローンやクレジットカード、割賦販売などで過去にトラブルを起こしたことがあると、信用情報に傷がつくことがあります。個人の信用情報は「信用情報機関」と呼ばれる機関に登録され、一定期間保管されていますが、新たにローンに申し込んだときは、金融業者はかならず過去の信用情報を信用情報機関に照会しますので、数年内に信用情報に傷がつくようなことが起こっていると、ローンに落ちる可能性が高くなってしまうのです。

過去に消費者金融で返済遅れや滞納がないこと

今までに消費者金融やクレジットカードの返済が遅れたことがないのなら、何の問題もありません。しかし、返済遅れがあったり、未納のまま放置していたりすると、信用情報機関にネガティブな情報が登録され、住宅ローンの審査が不利になってしまいます。また、携帯電話やスマートフォンを月賦で購入している場合も、返済遅れや未納のまま放置していると、信用情報に傷がつき、住宅ローンの審査に落ちる原因になることがあります。

現在消費者金融での借入がないこと

消費者金融で融資を受けること自体は、悪いことではありません。しかし、住宅ローンを利用するタイミングで消費者金融も利用していると、返済負担率が高くなってしまい、住宅ローンの審査に不利になってしまいます。

住宅ローン審査を通過するためのセルフチェック

住宅ローン審査に通過するために、次の項目をセルフチェックしてみて下さい。ローンとの付き合い方やローンの組み方を変えるだけで、住宅ローン審査に通りやすくなりますよ。

借入金額を少なくする、自己資金を増やす

借入金額が少なければ少ないほど、審査に通過しやすくなります。また、自己資金を増やすことでも審査通過率を高めることができます。

返済期間を短くする

返済期間が長くなればなるほど、金融機関にとっては貸し倒れの大きなリスクを抱えることになります。なるべく短期間に完済できるようにプランを立てましょう。また、返済期間が短くなると返済総額が少なくなりますので、申込者にとっても大きなメリットになります。

夫婦二人でのローンにする

夫婦二人でローンを返済することにすると、失業や給与減のリスクが分散されますので、金融機関は融資をしやすくなります。共働きの場合は、なるべく夫婦二人のローンにするようにしてください。

車のローンや他の借り入れを完済する

住宅ローン以外に借入があると、返済負担率が高くなってしまいますので、審査に通りにくくなってしまいます。できれば自動車ローンやカードローン、クレジットカードのキャッシングなどを清算してから、住宅ローンに申し込むようにしてください。

勤務年数が経過してから再度申し込む

勤務年数が3年未満の場合は、大抵の金融機関において審査が通りにくくなってしまいます。できれば勤務年数が3年を超えてから、住宅ローンに申し込むようにしてください。ただし、最近では転職することが以前よりも否定的に捉えられていませんので、同業種間の転職なら勤務年数を足しても良いという金融機関もあります。勤続年数が気になる人は、転職について寛容な金融機関を探してみるのも良いでしょう。

収入が上がってから再検討する

収入が低いと融資限度額も低くなってしまいます。審査に通らないときは、収入が増えてから再度審査を受けてみてはいかがでしょうか。

融資を受けるには審査を申し込む金融機関を変えてみる

申込者自身は変わらなくても、金融機関が変わると審査結果も変わることがあります。住宅ローンに申し込む前に、次の事柄も理解しておきましょう。

金融機関ごとに住宅ローンの審査基準は違う

金融機関ごとに住宅ローンの審査基準が異なります。現在の年収を重視する金融機関もありますが、勤務先の将来性や職種の将来性を重視する金融機関もあります。ご自身のアピールポイントを評価してくれる金融機関を選びましょう。

ゆるい金融機関が無いわけではない

審査が通常以上に甘くなる金融機関がないわけではありません。例えば普段から取引がある金融機関や地元密着型の金融機関などは、他の金融機関の審査に落ちても融資してくれることがあります。

タイミングによって融資が通りやすいときもある

同じ金融機関なら、いつでも審査難度は同じというわけではありません。数字を上げなくてはいけない決算期などは、通常以上に審査に通りやすくなることがあるのです。

フラット35は独自性の高い審査基準を持つ

住宅金融支援機構のフラット35は、勤続年数3年以上でないと審査に通らない金融機関が多い中、勤続年数1年以上でも審査に通りやすくなっているなど、独自性の高い審査基準を持っています。勤続年数が少ない人や自営業の人など、一般的に審査に通りにくい人は、フラット35を検討してみてはいかがでしょうか。

フラット35は購入する住宅の性能を満たせば借り入れができることが多い

フラット35は、購入する住宅が一定以上の基準を満たせば融資OKになることが多いです。長期優良住宅を購入するときも、フラット35を検討してみることができるでしょう。

最後に

先立つ資産がない場合、理想的な住宅を見つけたとしても、住宅ローン審査に通らないと住宅を手に入れることができません。ローン審査に通りやすくなるようにセルフチェックし、審査に通らないときは別の金融機関の審査も検討してみましょう。

監修:小林 弘司(住宅ローンアドバイザー)