不動産会社と言われてイメージするのは、テレビCMや駅前店舗などでよく目にする会社ではないでしょうか。それらの会社は主に賃貸物件の紹介を行なっているので、一度はお世話になったことがある方も多いでしょう。

不動産会社には上記のような賃貸業務に強い会社や、管理業務や売買の仲介に強い会社など、様々なタイプがあるのです。しかしながら、一般の人にとって売買や管理を行う不動産会社とはあまり馴染みがないのが現状です。不動産投資を行う場合は不動産会社の強みとも言える特徴を把握して進めていく必要があります。

ここでは、不動産会社の特徴を知り、信頼できるパートナーシップを結ぶための不動産会社の選び方をご紹介していきます。

不動産会社とは?チェックすべきポイントは?

不動産会社は業務形態によって大きく3つに分けることができます。それぞれの業務内容と強みを知り、ビジネスパートナーとして状況に応じて不動産会社を選べるようにしましょう。

不動産会社の立場や業務を知る

不動産業務には賃貸・仲介・管理の3つがあります。3つの業務全てを行う不動産会社も多々ありますが、不動産会社の中でも賃貸業務を行う会社が最も多くなっています。

賃貸業務(貸主)

不動産賃貸業ともいわれる賃貸業務。これはビルやアパート、駐車場などの物件を、持ち主であるオーナー自らが貸主となり、賃貸します。入居募集などの管理を管理会社に委託したとしても、入居者との賃貸契約は持ち主であるオーナーが直接結ぶことになります。仲介業務を行わずに不動産賃貸業のみを行う場合には、宅地建物取引業法の免許は不要となります。

仲介業務(売買)

建設会社が建てた新築物件やオーナーが売りに出した中古物件などを、購入希望者に売ることを売買仲介業務といいます。物件の売買契約をとることで、売主側や買主側から手数料を得ることで不動産取引業が成立します。

仲介業務(賃貸)

オーナーやデベロッパーといった物件の貸主と、入居者となる借主を繋ぐことが主な業務となります。アパートやマンションだけでなく、駐車場やオフィスなども対象となります。以前は膨大な数の物件情報の中から入居者のニーズに近い物件を探して紹介していましたが、近年は来客者がインターネットで検索して物件を特定してくる事が増えています。

管理業務

一棟アパートや分譲マンションなどの管理を行います。具体的には入退去時の立会いや入居者の募集、家賃回収といった賃貸管理、共用部の清掃や電球の交換といった建物管理があります。

不動産取引の取引態様とは?

不動産の賃貸や売買などの取引には仲介(媒介)・代理・売主といった3つの態様があります。(ここでは売買についてのみ説明します)この取引態様は不動産取引における広告に明示の義務が課せられています。さらに、宅地建物取引業法の適用や仲介手数料の有無などが変わってくるため、きちんとチェックしておく必要があります。

媒介・仲介

一般的には仲介と言われることが多く、宅地建物取引業法において媒介と表される態様は、仲介業者となる不動産会社が、売主と買主の間にたち売買契約締結のための業務を行います。売主側の不動産会社と買主側の不動産会社は同じ場合(両手取引)もあれば、違う場合(片手取引)もあります。売主、買主はそれぞれの不動産会社に仲介手数料を払います。不動産会社が同じ場合は、買主からも売主からも仲介手数料をもらうことができます。

所有する物件を売りに出したい時は、媒介の中にも3つの契約形態があります。

一社の不動産会社にのみ物件の売却依頼をする専属専任媒介と、一社の不動産会社と売主自身が買主を探すことができる専任媒介、複数の不動産会社に売却依頼ができる一般媒介です。

専属専任媒介や専任媒介は、不動産会社に業務報告などの義務づけがあるため、しっかりと販売に向けた営業を行ってくれますが、一般媒介にはそれらの義務がないため、力の入れ具合が変わるかもしれません。それぞれの特徴を知ることでご自身にあった媒介契約を結びましょう。

代理

不動産会社が、売主であるオーナーに委託されて行う取引で、売主=不動産会社となり、売主が不動産会社にひとつの取引における報酬限度額まで手数料を払うこともあり、買主は仲介手数料を支払わない場合も。

売主

不動産会社が所有する物件や建築した物件を自らが売却するもので、不動産会社との直接契約になるため仲介手数料は発生しません。

不動産会社の見るべきポイント

不動産の売買や仲介を行う業者は宅地建物取引業の免許を持たなければ営業することができません。しかし、不動産会社が自ら所有する物件の賃貸だけ行う場合は、その免許は不要です。(賃貸以外に、仲介業務を行う場合には必要)ほとんどの不動産会社は宅地建物取引業者ですが、大きな金額の動く取引先ですので、免許の有無や、不動産会社の基本情報などは確認しておいた方がいいでしょう。

以下に、確認すべき3つのポイントをあげます。

免許番号

宅地建物取引業者には、ふたつ以上の都道府県の区域内に事務所を設ける不動産会社の場合は国土交通大臣、ひとつの都道府県の区域内にのみ事務所を設ける不動産会社の場合は都道府県知事の免許が交付されます。この免許は5年ごと(平成8年以前は3年ごと)に更新されるため、更新回数をみればその不動産会社の営業歴を知ることができます。

宅地建物取引業者名簿

宅地建物取引業者名簿には、不動産会社の概要がより詳細に記載されています。役員の氏名や本支店の所在地、事業内容や過去に行政処分を受けていた場合の履歴などが記載されたこの名簿は、行政機関で閲覧することが可能です。

宅建業者の業界団体へ加入しているか

宅地建物取引業者の業界には4つの団体があり、いずれかの団体に所属している場合、不動産広告に加入団体名も記載されています。各団体では人材育成や業務支援、相談窓口などを行なっています。(不動産流通4団体)、(社)全国宅地建物取引業協会連合会、(社)全日本不動産協会、(社)不動産流通経営協会、(社)日本住宅建設産業協会

不動産会社への初回訪問時に気をつけること

物件探しのポイントはいかに早く情報を入手するかにあります。そのためには色々な不動産会社とコネクションを作っておくことが大切です。

取引のない不動産会社を初めて訪問するときのポイントをおさえておきましよう。

事前予約をしてから訪問する

日頃目にすることの多い駅前の不動産会社などは賃貸をメインに行なっている事が多いため、売買の営業マンが不在の場合もあります。また、春の引越しシーズンなどは営業マンが手薄になることも多いので、事前にしっかり予約してから訪問することをオススメします。

自分の希望・要望を紙に書いてまとめておく

投資物件を探す際は、あまり細かい条件にこだわりすぎるとなかなか見合う物件に出会うことができません。しかし、ある程度条件をつけないと不動産会社としても探しようがないうえに、的外れなものまで紹介されてしまいます。駅徒歩○分以内、築○年以内、シングル物件、ファミリー物件、予算、木造、RC、利回り○%以上など、優先順位をしっかりとつけて伝えられるようにしておきましょう。

見たい物件があれば伝える

ネット上に気になる物件などを見つけた場合は、その物件が見たいということを伝えておけば、訪問した際に内見に連れて行ってくれます。内見しながら営業マンと話すことで、希望がダイレクトに伝わります。

信頼出来る不動産会社と営業マンの見分け方

納得のいく不動産の購入には、日々流動する不動産情報をいち早くキャッチする事が重要です。そのためには、不動産会社もしくは営業マンの協力が不可欠です。そんな重要なポストを担う不動産会社や営業マンが信頼できるかどうか、どのようにして見極めていけばいいのでしょうか。

話をしっかり聞いてくれる

まずは、こちらの希望だけでなく、不安要素などもしっかりと聞いてくれることが大切です。買主にあまり知識がないとわかると、専門用語でたたみ掛けてくるような場合もあります。しかし、良心的な業者は、わからないことの不安などもきちんと聞いて安心させてくれます。

知識や経験が豊富

買主が書籍やインターネットで不動産についてどんなに勉強しても、実際にはどうしてもわからないことや疑問に思うことが多々でてきます。そんな疑問にすぐに的確に答えられるだけの知識や経験を豊富に持つ業者もしくは営業マンにあたれば、話をスムーズに進めていくことができます。

こちらの理解度に合わせて分かりやすく説明できる

どんなに知識を持っていたとしてもそれを上手く説明してくれなければ意味がありません。わからないことをわからないと言いやすい雰囲気で説明してくれているか、専門用語の羅列で押し切ろうとしてないか、しっかりと見極めましょう。

物件の長所と短所を明確に説明してくれる

不動産投資には必ずメリットとデメリットがあります。自社の物件を売りたいばかりに良いことしか伝えない場合があります。粗探しをしていてはなかなか物件購入に至りませんが、良い面だけでなく、悪い面や気になる点なども率直に説明してくれる良心的な業者を見つけましょう。

質問やお願いごとに対するレスポンスが早い

不動産会社とは綿密に何度もやり取りを重ねる必要があります。そのやり取りの中でも買付に入る前の段階では人気物件は早い者勝ちになるため、レスポンスの早さはとても重要です。やり取りにモタモタしているうちに買い手がついてしまったなどということがないよう、迅速で的確な対応をしてくれる業者を選びましょう。

不動産会社の営業マンとの付き合い方

信頼できる営業マンを獲得するためには、まずこちらがやらなければならない事があります。営業マンとうまく付き合い、良好な関係を築くためのポイントをみてみましょう。

自分の情報についてウソをつかない

年収や債務状況など、様々な情報の提供は、業者側が的確な判断をする上でとても大切です。ここに嘘があれば、大事な局面で融資が下りないなどということにもなりかねません。物件探しの本気度を見せる上でも、できるだけ細かく情報提供するように心がけましょう。

希望条件をしっかり伝える

物件の希望条件は優先順位を付けながらしっかりと伝えましょう。条件は広すぎても狭すぎてもいけません。はじめのうちは条件が狭すぎて物件が見つからない場合が多いのですが、広げていく場合にどの条件を妥協していくかは、営業マンと色々な話をするうちに自然と決まっていくでしょう。

分からないことはその場で聞く

不動産業界に携わっていない限り、わからないことだらけなのは当たり前です。気になったことはどんなに細かくてもその場で聞いて解決しましょう。信頼できる営業マンは、細かい質問にも根気よく答えてくれます。

質問に曖昧な回答をしない

営業マンも買主のニーズをより具体的にイメージしようと必死です。その中で質問されることがありますが、できるだけ曖昧な回答をせずきちんと答えるようにしましょう。

無茶な駆け引きをしない

不動産の買付には指値という値引き交渉があります。売りに出してから時間が経つと少しずつ値引きされたりもしますが、あまりに強引な値引き交渉などは印象を悪くするので控えましょう。

仲介を依頼したら業務内容と範囲を確認する

買付を入れてから実際に契約に至るまでにはしばらく時間を要します。その間に依頼した業者の業務内容をきちんと確認しましょう。例えば、購入後の物件の管理委託契約やその内容、契約解除のペナルティなど、収支に大きく影響を及ぼすことが沢山あります。

仲介手数料、支払い時期、引渡し時期をしっかり確認する

契約に至るまでの間に必要となる頭金や、契約日に必要となる手付金、支払いと引渡し(名義変更)は同日に行えるかなど具体的な日にちや金額をしっかりと確認しておきましょう。特に土地を購入し建物を新築する際は、「土地購入→つなぎ融資→建物購入・引渡し」といった流れになることも多く、融資の形態が変わってくるので確認が必要です。

最後に

日頃は馴染みの薄い不動産の世界。その業界を知るために、信頼できるパートナー的存在となってくれる不動産会社や営業マンを見つけることが大切なのは言うまでもありません。新築物件はその物件を建設した会社の顧客にまず情報がいくため、様々な不動産会社とのコネクションを持つことが大切です。

中古物件は取引態様により少しタイムラグがありますが、基本的には全ての不動産会社が共有しています。そのため、いい物件情報はスピード感がなければ手に入れることさえ困難です。

そのような不動産業界の中で希望の物件に出会うために、迅速丁寧な対応と的確なアドバイスをしてくれる不動産会社もしくは営業マンを探せるよう精力的に行動していきましょう。

監修:三上 隆太郎(不動産コンサルタント)