不動産を借りるときには、貸主との間で賃貸借契約を結ばなければなりません。しかし賃貸借契約書というのは、小さな文字で難しい言葉で書かれています。それゆえ、よく読みもせずに安易な気持ちでサインをしていませんか?不動産会社に言われるままにサインをしてしまうと、契約書の内容を認めることになります。

賃貸借契約書には特にチェックしておかなければならない特記事項や禁止事項が多く記載されています。あなたがよく読まずに署名捺印をしてしまうと、後で取り返しのつかないことが起きてしまうかもしれません。
今回は賃貸借契約書で、必ずチェックしておかなければならない項目をひとつずつあげて解説をいたします。

なお標準的な契約書は、国土交通省のホームページより賃貸住宅標準契約書(※)をダウンロードすることができますので参考にすると良いでしょう。

※国交省賃貸住宅標準契約書(改訂版)
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000019.html

賃貸借の目的物


まず記載されているのが、あなたが借りようと思っている住宅の情報です。賃貸借の目的物には大きく分けると建物の名称および所在地・住戸部分・付属施設があります。間違いがないか確認をしましょう。

建物の名称・所在地等

はじめにマンションやアパートの名前・住所が記載されていますので、借りようと思っている物件と間違いがないか確認をしましょう。

建て方・構造・戸数・工事完了年

次いで建て方や建物の構造・入居戸数・工事完了年などが記載されています。建て方は共同建か長屋建か一戸建か、建物の構造は、木造か非木造か等を確認します。また、工事の完了年及び大模修繕を行った年をチェックします。

住戸部分

住戸部分では住戸番号、間取り、居室とバルコニーの面積が何㎡かを確認します。また設備についてはトイレや浴室・シャワー・洗面台・洗濯機置き場等の有無についてチェックしましょう。エアコンやガスコンロ・給湯設備・備え付け証明器具などについても、備え付けであるかどうかを確認する必要があります。これらの設備は元々設置されている場合には、故障したときは貸主負担となりますので大事なチェック項目です。他には鍵の本数、地デジやインターネット対応がなされているか等のチェックをしておく必要があります。
なおライフラインについて、電気の使用容量は何アンペアか把握し、不足であれば貸主に交渉しなければなりません。ガスは都市ガスかプロパンガスかにより使えるガス器具も異なってきますので、どちらか確認しておく必要があります。上水道については水道本管からの直結か受水槽なのか、下水道については、公共下水道か浄化槽なのかな等も把握しておきましょう。

附属施設

住宅に付属する施設としては駐車場や自転車置き場・物置・専用庭等があります。駐車場や自転車置き場を借りられるのか、位置番号も確認しておきましょう。

契約期間

 マンションやアパートなどの契約期間は一般的には2年の場合が多いとされていますが、まれにはそうでないものもあります。また定期賃貸借契約では1年未満という場合もありますので、長い期間住みたいと思う人は気を付けなければなりません。

契約期間であっても、後ほど述べる特約事項や禁止事項に反する場合には契約解除をされる場合もあります。
借主からの中途解約については、特約で定めることができますが、退去予告は1ヶ月前とすることが多くなっています。特に転勤が多い会社では、急に転勤命令が降りてトラブルにならないためにもきちんと確認しておく必要があります。
なお貸主からの解約については、正当な事由がなければできません。正当な事由に該当するか否かは、貸主の事情を考慮に入れ、借り主と話し合いによることとなります。

賃料等


物件を借りる場合にもっとも大事なのは、家賃などの支払いについてです。次に賃料や共益費の支払いについてのチェックポイントを解説いたします。

賃料

賃料の支払いについては金額と支払期限・支払い方法が記載されています。一般的には月末に翌月分の賃料および共益費を支払います。支払い方法は振り込みなのか、銀行の自動引き落としなのか、貸主に直接支払うのか、不動産管理会社に支払うのかなどの確認をしておく必要があります。
また賃料が払えなかった場合の延滞利子についてもチェックしておきましょう。家賃の改訂については、後々トラブルが起きる可能性がありますので、きちんと取り決めをしておく必要があります。

共益費

マンションやアパートなどを借りる場合には、共益費を支払うことになります。共益費は共用部分の清掃代や電気代・水道代などに支払われるのが一般的ですが、どのような目的のために使われるのか確認をしておきましょう。

敷金、その他一時金

入居の際には一般的には、1ヵ月~2ヵ月の敷金及び礼金を支払います。近年は敷金・礼金無料という物件もありますので、支払金額をチェックしておきましょう。
礼金は一時金であり、退去の際に返還されることはありません。敷金は住宅を借りる際の保証金的な意味合いがあり、家賃の滞納が発生した場合には賃料に充当されることがあります。

また退去する際には原状回復の費用として使われますが、費用が余れば返還されるのが一般的です。しかし地域によって取引の慣習により、あるいは特約により返還しないと記載されている場合もありますので確かめておく必要があります。

付属施設使用料

付属施設使用料とは駐車場や物置・専用庭・自転車置き場などの利用料金を言います。これは利用する人とそうでない人とがいるため、賃料とは別途請求されますので、 使用料を確認をしておく必要があります。

貸主及び管理業者


契約書には貸主および管理業者の住所・社名・代表者・電話番号が記載されています。貸主と建物の所有者が異なるときには、建物のオーナーの情報も記載します。貸主及び管理会社の情報は、物件に何かあったときの連絡先として必要になります。なお賃貸契約の手続きの際には、貸主・借主および仲介した不動産が立ち会い契約書に署名捺印を行います。

借主及び同居人


入居をする人は本人および同居人・緊急連絡先などの情報を記載します。

借主

借主とは物件の契約をする人で、氏名と年齢・電話番号等の個人情報を記入します。

同居人

同居人とは契約した物件に一緒に住む人で、入居する人全員の氏名・年齢および人数を記載します。入居者の変更については届け出る必要があり、届け出ない場合には契約解除に値する場合もありますので気を付けなければなりません。

緊急連絡先

緊急連絡先は居住者の安否不明等、非常時の連絡先で、できれば親子・兄弟など三等親以内の人を記載します。

特約にも要注意


賃貸借契約でもっとも気を付けなければいけないのが、特約事項です。特約事項には借り手の不利益になることが往々にして記載されている場合があります。よく読みきちんと確認をしておかないと、後々のトラブルの原因になります。疑問な点や納得できない箇所があれば、貸し主と話し合い、場合によっては修正してもらわなければなりません。
また、借主が貸主に対して特別の要望をし、貸主が承諾したような場合も特約事項として記載をすることが良いでしょう。後々言った・言わないということで、トラブルとなるのはよくあることです。

敷金の返金に関すること

住宅を借りる際には敷金を支払うことが多いですが、退去するときには原状回復の費用に充てられ、余ったお金は返還されます。入居期間中の通常生活におけるのキズや汚れは、借主が負担をする必要はなく、貸主の負担となります。しかし通常ではできない汚れや傷は借主の責任となり、敷金と清算することになります。傷の有無や汚れについては、入居時に「物件の確認書」を作成し、日付入りの写真を撮っておくと良いでしょう。
退去する際のクリーニング代は、借主の負担とする等の特約条項が記載されている場合もありますので注意しなければなりません。
なお近年敷金なしの物件がありますが、敷金がない物件でも借り主の責任となる費用は負担する必要があります。敷金なしの場合には、退去の際に慌てないようあらかじめ予算を見積もっておきましょう。

禁止される行為

特約事項の中に禁止されている行為が記載されていますが、自分のライフスタイルに当てはまるようであれば貸主に確認しなければなりません。禁止事項を破って居住していた場合には、最悪の場合契約の解除も考えておかねばなりません。主な禁止事項としてはペットの飼育や楽器の演奏・ルームシェア・石油ストーブの使用などがあります。

契約の解除に関する条項

家賃を滞納した場合や転貸などの禁止事項に違反したときには、契約の解除ができる旨記載されています。契約に反する可能性のある事項がないか確認し、また入居後も禁止事項に該当しないよう気を付けましょう。
国交省の賃貸住宅標準契約書には、暴力団などの反社会的勢力の排除を目的とする条項が盛り込まれています。この条項に違反するときには、貸主は契約解除をすることができます。
また借主からの中途解約については、退去日の何日前までに通知したら良いのか等、具体的な手続きを確認しておく必要があります。

原状回復の負担について

退去するときに問題が起きやすいのが、原状回復についてです。国交省の指針によりますと、賃貸借人の故意や過失など、通常の方法を越える使い方による損耗は借主の負担としています。貸主の負担とすべきは、建物や設備の経年劣化および通常損耗があげられます。
具体的な内容ついては国交省の原状回復をめぐるトラブルとガイドラインに定められています。しかしどちらの責任になるか不明の場合もありますので、具体的に例をあげて契約書に盛り込むことが望まれます。

最後に


いかがでしたか?契約書を読むのは、手間がかかり大変な作業ですよね。しかし契約の内容をきちんと把握しておかなければ、これまで述べたようにさまざまなトラブルに巻き込まれる恐れがあります。
わからないことやおかしいと思うことがあれば契約するときに確認をするようにしましょう。さもないと入居してからいろいろな問題が起きたときに、泣き寝入りすることになるかもしれません。