ローンを組むとき、多くの人が注目する金利。金利はローン支払い額に直結するので、最重視する人が多いのも頷けます。そんな金利には種類があり、ローンにも色々なタイプがあることをご存知でしょうか。今回は、ローンを組むときに知っておくべき金利種類や金利タイプ、そして金利変動の要因などを解説します。

金利の基礎について「金利の別と3つのタイプ」

金利は、大きく分けて変動金利と固定金利の2つ種類があり、この2つをベースに金利のタイプは3つに分かれています。

固定金利とは

そもそも、金利は色々な要素によって変動していくものです。金利変動の要因は後述しますが、金利が上がれば支払額も上がり、金利が下がれば支払額は下がります。

そんな性質を持つ金利ですが、固定金利とは金利が変わらないタイプの金利です。つまり、金利変動のリスクがなく、ローン支払い金額が一定ということです。また、固定金利は将来の物価予測等による需給関係で変動する新発10年国債の金利に連動します。

変動金利とは

次に、変動金利とは固定金利の逆で、借入期間中に金利の変動があります。そのため、ローンの支払い額が変動するリスクがあります。

また、変動金利はプライムレートと連動するので、固定金利とは基準が異なります。プライムレートとは、金融機関が優良企業に貸し出すときの金利です。長期と短期があります。この変動金利と固定金利のどちらかをまず選び、次に述べる具体的な金利タイプを選択するという流れます。

3つに別れる金利のタイプ

(1)変動金利型

上述した変動金利を採用しているタイプです。主な特徴は以下になります。
・基本的には最も低い金利
・金利は半年ごとに見直し
・返済額は5年ごとに見直し
・返済額には1.25倍ルールがある

また、金利は半年ごとに見直されますが、それがローン支払い額に反映されるのは5年ごと(最初は借入をして5年目の指定日)となります。つまり、金利が上がったとしても、実際にローン支払い額が上がるのは5年後です。さらに、いくら金利が上がったとしても、前回の支払額から1.25倍を超える支払額になることはありません。そのかわり、急に金利が上がった時は、利息の割合が多くなるため、返済しても元本が減らないことがあります。

(2)固定金利選択型

固定金利をベースに、たとえば「5年固定」や「10年固定」などを選ぶことができる金利タイプです。仮に、5年固定を選べば、5年間は金利が固定され、5年経過後に再度金利タイプを選択します。

基本的に、金利は変動金利よりは高いですが、次項の全期間固定金利よりは低くなります。仮に、10年間で積極的に繰り上げ返済していく予定などのときは、10年固定などを選んだ方が支払い変動のリスクも小さいので良いでしょう。しかし、固定期間経過後に金利が上昇していた場合は、金利変動幅や返済額についての上限が設定されていないため、金利上昇リスクがあるといえます。

(3)全期間固定金利型

全期間固定金利は、借入全期間で金利が固定されるタイプです。代表的な商品にフラット35がありますが、フラット35は借り入れてからずっと金利は変わりません。そのため、支払いが変動するリスクはないですが、金利は3つのタイプの中で最も高くなります。

また、当初の金利をできるだけ低く抑えたい場合には、段階金利(2段階固定金利型」:当初設定期間の金利が低い)などを取り扱っている銀行もあります。

6つの金利変動要因

 

さて、前項のように金利は変動金利と固定金利の2つがあり、それをベースに3つの金利タイプがあることがわかりました。次に、金利が変動する要因となる6つを解説していきます。

(1)国内景気による金利変動

金利は景気によって変わります。一般的に景気が悪いときは世の中にお金が出回っていないので、金利を下げることで企業や個人がお金を借りやすくします。借りたお金を消費してもらい、世の中にお金をまわすということです。景気が良いときはその逆を行います。

2)国内物価による金利変動

物価による金利変動も、考え方は前項と同じです。デフレの状態は、お金の価値が上がり、物件が下がっている状態です。そのため、世の中にお金をたくさん出し、お金の価値を下げ物価を上げます。つまり、お金をたくさん回らせるために金利を下げるということです。インフレはその逆になります。

(3)為替相場による金利変動

仮に、円安状態になるということは、今まで100円で輸入できたものが120円になるということです。そのため、輸入業者は120円で輸入しても利益ができるように、国内で販売するときは値上げします。つまり、インフレになるということです。

そのため、前項で解説したように、インフレ状態ではお金の出回りを防ぐために、金利を引き上げます。円高の状態はこれと逆のことが起こります。

(4)海外金利による金利変動

たとえば、アメリカの金利が上がります。その場合、日本の債券などに投資するより、アメリカで投資した方が利益を得られます。そのため、円をドルに換えアメリカで投資をする人が増えるのです。

そうなると、円が売られることで「円安」要因になるので、前項のように金利が上がる可能性があります。アメリカの金利ではなく日本の金利が上がると、この逆の現象が起こります。

(5)金融政策による金利変動

金融政策は、上述した景気や物価に連動します。つまり、金利を下げたいときには、日本銀行が金融緩和策として金利を下げることで、各金融機関も連動して金利を下げ、お金を借りやすい状態にします。金融政策ありきというよりは、景気の物価に状況をみて、日本銀行が金融政策を打ち出すという流れです。

(6)株価の影響による金利変動

株価が下がった時ときは、一般的に金利は下がる傾向にあります。なぜなら、株価が下がったときは、一般的には以下の要因が考えられるからです。
・ほかの投資商品の方が魅力的(例えば安全資産として債券に資産を移す)
・景気が悪くなる

前者の場合は債券などの購入が増えることで、債券価格が上がり金利は下がります。また、後者のときもお金を世の中に出回らせるために金利は下がります。

これまでの金利の推移

 

さて、金利のタイプや金利の変動要因が分かったところで、次は実際の金利推移を解説します。また、金利推移と合わせて、金利に大きな影響を及ぼしているマイナス金利についても触れていきます。

過去の金利の推移

1984年(昭和59年)~2018年(平成30年)までの金利変動は以下の通りです。

<民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等)>

<民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等)>

このように、バブル期が異常な水準であり、その後はある程度落ち着いていることが分かると思います。では、以下より詳しく解説します。

出典:フラット35(http://www.flat35.com/loan/atoz/06.html

平成21年以来、変動型金利は9年間も変わっていない

まず、2009年(平成21年)以来、変動金利は9年間変わっておらず、年2.475%で推移しています。しかし、実際の変動金利は2.475%ではなく、もっと低い水準になります。

なぜなら、2.475%はあくまで「基準となる金利」であり、そこから各金融機関が設定した「優遇金利」をマイナスするからです。そのため、2.475%になっていながらも実際の金利はもっと低く、さらに金融機関によって金利は異なるのです。

変動金利が変わっていないのは、短期プライムレートが変わっていないから

変動金利が変わっていないのは、短期プライムレートが1.475%から変わっていないことが大きく影響しています。つまり、優良企業への貸し出し、もしくは銀行間でお金を貸しあうときの金利が一定ということになります。変動金利は過去9年間ずっと2.475%を推移していますが、もちろんこの短期プライムレートが変われば変動します。

マイナス金利政策とは

一時期よく話題に上がったマイナス金利政策とは何でしょうか。マイナス金利政策とは、2016年1月29日、日本銀行が発表した金融政策で、民間銀行の日銀当座預金にあるお金に対して-0.1%の金利を設定するという政策です。

マイナス金利政策を導入した理由

そもそも、なぜマイナス金利が導入されたのでしょうか。民間の金融機関は日本銀行にお金を預けても、金利がマイナスなのでお金がどんどん減ってしまいます。その代わりに、民間企業や個人に貸し出すようにすることで、世の中にもっとお金が出回るようにしたのです。

また、日本銀行は、今まで量的緩和政策やゼロ金利政策などで、お金を世の中に出回るようにする政策を実施してきました。その成果もあり実際に株価は上がり、企業業績も改善しましたが、物価だけは低いままでした。

しかし、物価が上がらないと売り上げ・利益が増えていかず、継続的な賃金上昇などにはつながりません。そのため、ゼロ金利政策よりも更にお金を世の中に出回らせ、つまりインフレを誘導するために「マイナス金利政策」を導入したというわけです。

現在の金利とこれからの金利予想

最後にローンを組むときに気になる「これからの金利はどうなるか?」という点を解説します。まずは、現在の金利を紹介した後、今後の金利を予測していきます。

現在の住宅ローン金利

現在の住宅ローン金利を、金利タイプごとに比較的金利が低いとされる銀行を紹介します。(2018年4月時点)

変動金利

・じぶん銀行:0.457%
・住信SBIネット銀行:0.457%(新規借入)
・イオン銀行:0.570%(新規借入)

期間固定金利(10年)

・じぶん銀行:0.610%(当初引き下げプラン)
・イオン銀行:0.690%
・住信SBIネット銀行:0.740%(当初引き下げプラン)

全期間固定金利(35年 団信加入なし)

・ARUHIフラット8S:0.720%(11年目以降0.97%)
・楽天銀行フラット35S:0.900%(11年目以降1.15%)
・住信SBIネット銀行フラット35:0.900%(11年目以降1.15%)

出典:じぶん銀行(https://www.jibunbank.co.jp/products/homeloan/
出典:住信SBIネット銀行(https://www.netbk.co.jp/wpl/NBGate/i080101CT
出典:イオン銀行(https://www.aeonbank.co.jp/housing_loan/
出典:ARUHIフラット(https://www.aruhi-corp.co.jp/product/super_flat/
出典:楽天銀行フラット(https://www.rakuten-bank.co.jp/home-loan/flat35/purchase/
出典:住信SBIネット銀行フラット(https://contents.netbk.co.jp/flat35/

投資用不動産の金利

投資用不動産の場合は、住宅ローンではなくアパートローンや不動産投資ローンの扱いになります。住宅ローンは、居住用不動産に対して行う融資だからです。

また、投資用不動産のローン金利は、借入者によって異なるので、多くの金融機関で公表していません。しかし、同じ返済期間であれば、住宅ローンより高金利になります。

今後1年間の住宅ローン金利の予測

金利の動向は誰にも読めませんが、少なくともインフレが目標の基準を達成するまでは、マイナス金利政策を続行する可能性は高いでしょう。ただ、その後の金利は多少上がることも考えられるでしょう。

住宅支援機構の2017年公表データによると、住宅ローン利用者の予測は以下の通りです。

<今後1年間の住宅ローン金利見通し(金利タイプ別)>

全体的に「ほとんど変わらない」という意見が多く、次いで「上昇する」が続きます。また、現状よりも低下すると予測する層はほとんどいませんでした。今後の金利を予測する上で参考にしてみてください。

出典:住宅支援機構(https://www.jhf.go.jp/files/400344800.pdf

最後に

まずは、変動金利と固定金利の違い、そして3種類の金利タイプを理解しましょう。その後、金利の変動要因や、マイナス金利政策、ローン利用者の意見などを参考に、今後の金利を自分なりに予測してみましょう。そうすれば、自ずと自分の借りるべき金利タイプが分かってくるのではないでしょうか。

監修:上津原 章(ファイナンシャルプランナー)