賃貸物件に住み続けるか購入するかは、住宅に関する大きな悩みの一つではないでしょうか。物件を購入した場合、夢のマイホームを持つことができるだけではなく、賃貸と同じ値段でもより質の高い住居に住むことができます。
しかし一生同じ場所に住み続けるのかといえば、正直わかりませんよね。そこで今回は、賃貸と購入のどちらがお得なのかを、メリットとデメリット比較することで解説していきたいと思います。

いくらかかる?一生の「住居費」の比較

賃貸と購入のどちらがお得かを考える上で、まずは知っておきたいのが一生の住居費です。賃貸よりも購入した方が将来的なコストは少なくなると言われていますが、果たして本当なのでしょうか。そこでマンション、一戸建て、賃貸での50年間の住居費のシミュレーションを見ていきたいと思います。

50年間の購入vs賃貸 住居費のシミュレーション

*不動産購入(マンションの場合)の場合

東京郊外の新築3LDKを購入し、頭金500万、借入金3,500万、借入期間35年間で4,000万円の物件を、固定金利1%で購入したとします。以下が必要な費用になります。

  • 住宅ローン返済総額(35年) 約4,150万円(月々のお支払いは約10万円)
  • 購入諸費用 120万円(購入金額の3%と仮定)
  • 固定資産税 650万円(年間13万円と仮定)
  • 管理費修繕積立金 2,420万円(月額2万円、10年ごとに1万円ずつ増額と仮定)
  • リフォーム費用 150万円(15年ごとに50万円と仮定)
  • 住宅ローン控除 300万円(10年間で300万円、合計金額から差し引く)

これらを全て合わせると、合計費用は7,190万円となります。

*中古一戸建て購入

マンションと同金額の東京郊外の庭付き中古戸建てを、頭金500万円、借入金3,500万、借入期間35年、固定金利1%で購入したとします。以下が必要な費用になります。

  • 戸建て費用 約4,150万円(月々のお支払いは約10万円)
  • 購入諸費用 120万円(購入金額の3%と仮定)
  • 固定資産税 1,000万円(年間20万円かかると仮定)
  • リフォーム費用 1,000万円(10年ごとに200万円と仮定)

これらを全て合わせると、合計費用は6,270万円となります。

中古一戸建の方が新築マンションより管理費分、合計費用が安くなっています。しかし、新築戸建てにした場合、土地がある分一般的にマンションより物件価格が高くなる傾向にあるため、同様のシミュレーションとはならいないことをご理解ください。

*賃貸の場合

東京郊外に賃貸で、当初5年は10万の部屋、6~30年は子育て時期に広めの部屋で13万、その後31~50年は子育てがなくなるので10万の部屋に住むと仮定します。以下が必要な費用になります。

  • 賃貸費用 6,900万円(10万円の部屋3,000万+13万円の部屋3,900万円)
  • 仲介手数料 33万円(家賃1ヶ月分、3回の引越し)
  • 敷金礼金 66万円(それぞれ家賃1ヶ月分、3回の引越しと仮定)
  • 更新料 276万円(2年に1回家賃1カ月分と仮定)

これらを全て合わせると、合計金額は7,275万円となります。

ローンの返済が完了した後も支払い続ける費用とは?

シミュレーションの中には、借入期間が終わると支払いがなくなるものと、そうでないものがあります。例えばマンションを購入した場合、ローンの返済が完了した後でも管理費修繕積立金や固定資産税、リフォーム費用を支払わなければいけません
そのため物件の金額だけで将来のコストを計算すると、賃貸物件を借りるよりも圧倒的に安くなりますが、物件本体以外でも費用が必要になることを把握する必要があります。

50年後のトータルコストはあまり変わらない

中古の戸建ては少しだけ値段が安くなりますが、新築のマンションと賃貸を比較すると、50年後のトータルコストはあまり変わらないといえます。もちろん住宅のグレードによって変動はしますが、一概に購入した方が安いわけではないので、安いという理由だけで購入を選ぶのであれば、再度考えてみることをおすすめします。

賃貸のメリット

賃貸と購入を比較すると、大きな金額の差ではなくとも、賃貸の方が高額になってしまう確率は高くなります。それでも賃貸が良いという方も中にはいます。それでは賃貸にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

生活状況によって柔軟に対応できる

賃貸の一番のメリットは、生活状況によって柔軟に対応できるということです。単身赴任などの急な転勤を始め、住居を変えたいと急に思った場合でも対応することができます。物件を購入した場合は思いつきで住まいを変えることをできませんが、賃貸であれば可能になります。

まとまった初期費用は必要なし

物件を購入する場合、頭金や保険料などまとまった金額が必要になります。購入する物件の金額にも左右されますが、基本的には百万円単位で用意しなければいけません。一方で賃貸も初期費用は必要ですが、敷金礼金を含めても家賃の5ヶ月分前後です。そのため不動産購入に比べると、安価に契約をすることができます。

設備のメンテナンスも不要

シミュレーションでもご理解頂けたと思いますが、物件を購入すると設備のメンテナンスが必要になります。しかし賃貸では、設備のメンテナンスは大家さんが行ってくれるので、借主はメンテナンス料を支払う必要がありません。

賃貸のデメリット

ずっと支払続ける必要がある

賃貸のデメリットとして挙げられるのが、ずっと支払い続ける必要があるということです。不動産物件を購入すると、ローンの支払いがある時期は生活も苦しくなりますが、支払いを終えると固定支出は大きく下がります。しかし賃貸の場合は毎月同額を支払い続けなければいけないので、生活が楽になることはありません。

自分の資産にならない

賃貸はあくまでも借り物の家なので、自分の資産ではありません。そのため資産を増やすという観点でいえば、物件を購入した方がお得だといえます。

不動産購入のメリット

賃貸にはなかったメリットが、不動産を購入した場合にはいくつも存在します。マイホームを持ちたい理由にも、これらのメリットが関係しているのではないでしょうか。

資産として残せる

不動産購入の一番のメリットは、資産として残すことができるという点にあります。ローンの支払いが終われば、次の世代に引き継ぐこともできれば、売却してお金に変えることもできます。

賃貸よりもグレードの高い部屋に住める

不動産を購入する場合、同程度の家賃を払うのであれば賃貸よりもグレードの高い部屋に住むことができます。東京郊外の新築3LDKを月々10万円で賃借することは難しいですが、購入する場合であれば可能です。

自分の好きにカスタマイズ

購入した不動産は、ローンの支払いは残っていても自分の資産になります。そのため自分の好きなように家の中をカスタマイズすることが可能です。賃貸物件の場合は、あくまでも大家さんが住居の所有者になるので、大家さんの意向に従う必要があります。

住宅ローン減税でお得に購入できる

不動産を購入する場合、住宅ローン控除を適用することができます。住宅ローン控除とは、年末ローン残高の1%が所得税から控除されるという仕組みで、10年間で最大400万円(認定住宅は500万)控除することができます(※2018年3月現在/条件により変わります)。最大控除額が400万円なので、全ての人が400万円返ってくるわけではありませんが、通常よりもお得に購入できることは間違いありません。

不動産購入のデメリット

不動産投資はメリットばかりではなく、勿論デメリットもあります。デメリットについても正しく理解することが大切です。

初期費用がかかる

不動産購入のデメリットは、初期費用がかかるということです。頭金や保険料などの初期費用が必要になるので、不動産は気軽に購入することはできません。長期的にみればお得ではありますが、最初のハードルが高いとも言えます。

ローンを完済しても支払い続ける費用がある

不動産購入の落とし穴ではありますが、ローンを完済しても月々の支払いが一切なくなるわけではありません。管理費や修繕積立金は、ローンの支払いが完済しても支払う必要があるので、購入の際は頭に入れておく必要があります。

資産価値が減る可能性がある

資産が残ることは不動産購入の大きなメリットではありますが、購入時と同じだけの資産価値があるとは限りません。仮に新築のマンションを4,000万円で購入した場合、35年間のローンが完済した後の物件は築40年近くになってしまうので、当時ほどの資産価値はありません。また不動産の価格変動の影響によって、不動産の価値が減ってしまう可能性があることも理解しておく必要があります。

結局どちらを選べばいいの?おさえておきたいポイント

賃貸と購入のメリットとデメリットを比較してきましたが、結局どちらを選べばいいのでしょうか。賃貸にするか購入にするかという2択だけで考えてしまうと、どうしても悩んでしまう方もいると思います。そこで物件を選ぶ際のおさえておきたいポイントを見ていきましょう。

若い時はライフスタイルに柔軟に対応できる賃貸

抑えておきたいポイントとしては、賃貸か購入かの2択ではなく、ライフスタイルに合わせた不動産選びが重要であるということです。特に若い頃は、いきなり地方に転勤になることも珍しくありません。そのため、若い時はライフスタイルに柔軟に対応できる賃貸をおすすめします。

老後は資産として残る不動産購入が安心

若い時は賃貸をおすすめしましたが、家族構成が確立してきたり、仕事が落ち着くいてきたら老後を見据えて資産として残る不動産購入をおすすめします。不動産購入のメリットとしては、不動産そのものに価値があるので、不測の事態にも対応することができます。
また万が一ローンの返済期間中に亡くなってしまった場合にも、不動産が生命保険の役割も担っているので、ローンを次の世代に残してしまう心配もありません。

予想されるリスクにできるだけ備える

私たちは普段から交通事故、リストラ、入院など様々なリスクと隣り合わせで生きていますが、多くの方はリスクを自分とは関係のないことだと思っています。そのため、予想できないリスクが現実になった後に後悔することが往々にしてあります。しかし老後に資金が必要になることは、予想されるリスクです。予想できないリスクへの最大の備えは、予想されるリスクに対して備えておくことなので、今からリスクに対して備えるようにしましょう。

まとめ

いかがでしょうか。賃貸と購入にはそれぞれメリット、デメリットがありました。どちらを選んでも間違いではありません。しかし費用という観点だけで購入を選ぶのであれば、もう一度考える必要があるかもしれません。
一番大事なのはどう生きたいかということです。どの選択が最も自分のライフスタイルに合っているかを見極めることで、最も自分にあった住居を見つけることができるはずです。