年金が受給できない時代がくると噂されるようになってから、心配になってきたのが老後の生活です。普通のサラリーマンの給料だけでは、老後に安心できるほどの貯蓄を確保できないと考えている方も多いのではないでしょうか。
そんな方におすすめしたいのが、不動産投資による不動産収入です。不動産収入を得ることができれば、給与とは別に月々数十万円の収入を得ることも夢ではありません。そこで今回は不動産収入を得る方法と、税金や確定申告など注意すべきポイントに関して解説していきたいと思います。

不動産所得とは

まず不動産収入で大切なポイントは、「不動産収入(家賃収入)」と「不動産所得」の違いを理解するところから始まります。実は私たちが家賃収入だと感じていないものでも、税金の対象である不動産所得になっていることがあるのです。不動産投資を始めた後で後悔しない為にも、今から勉強しておく必要があります。

不動産収入(家賃収入)と不動産所得の違い

よく間違われるのが、家賃収入と不動産所得の違いです。不動産所得は以下の計算式から求めることができます。

「不動産所得=不動産収入(家賃収入)-経費」

ここでいう家賃収入には、礼金や更新料などが含まれており、月々の家賃収入だけを指しているわけではありません。また経費とは管理委託費、修繕費、減価償却費などが該当します。「不動産所得=不動産収入(家賃収入)」と思われている方もいますが、家賃収入等から経費を引いた金額が「不動産所得」となります。不動産を維持するためには様々な経費が必要になってくるのです。

家賃収入に含まれるもの

家賃収入とは月々に居住者から徴収する賃料だけでなく、以下の収入も含まれます。

  • ・礼金
  • ・更新料
  • ・駐車場料
  • ・共益費

 

礼金や更新料、駐車場の料金まで家賃収入に含まれるので、注意が必要です。これらの収入は、一つ一つは高額でありませんが、全てを合わせると大きな金額になります。そのため確定申告で漏れがあった場合は、漏れた金額に対して利息等が付与されて請求されるので、追加の費用が発生してしまいます。

不動産収入を得る上で経費になるもの

不動産を運営することで収入は増加しますが、同時に支出が増えることも忘れてはいけません。ただし不動産運営で必要になったお金は経費として申請することができるので、必ず経費として申請する必要があります。以下が経費として申請できる費用になります。

  • ・修繕費
  • ・管理委託費
  • ・ローン金利や各種振込手数料
  • ・減価償却費
  • ・収入印紙代
  • ・損害保険料
  • ・仲介手数料や広告費用
  • ・不動産取得税や固定資産税などの税金

不動産を運営するにあたって、修繕費や管理委託費だけでなく、様々な費用が必要になります。これらを経費として申請しなければ、確定申告の不動産所得が増えることになり、税金の金額が大幅に増えてしまいます。

不動産所得に対する税金はどれくらいか

日本は税金が高いと聞いたことがある方がほとんどではないでしょうか。それでは実際にどれくらいの税金が必要になるのでしょうか。

家賃収入に対する税金

個人の所得税の税率は、所得が多いほど税率が高くなるという累進課税制度を用いています。そのため収益が増えるほど、税金も高くなってきます。ただし累進課税制度には、税率は所得全てに適用されるのではなく、あくまでも該当する所得金額に課税されるという決まりがあります。少し理解が難しいかもしれないので、具体的な数字で解説していきます。

所得税率によっての計算例

所得が195万円以下の課税率は5%なので、所得が150万円の方への税金は7万5千円ということになります。一方で所得が195~330万円の方に課される税率は10%です。ここで300万円の10%が税金になると勘違いしてしまう方もいますが、実際は195万円までは課税率5%、195万円から300万円までの課税率が10%となります。そのため所得が300万円の税金は30万円ではなく、20万2,000円になります。

しかしこれでは計算が難しくなり、ミスが増えてしまう可能性があります。そのため最初から控除額を設定することで、シンプルに金額を求められるとうになっています。

課税所得金額の早見表

控除額を含めた、税金の金額の計算式は以下になります。

「税金=(所得金額×該当の課税率)−控除金額」

以下の表は所得金額に対する課税率と控除金額の早見表であり、該当する所得金額に課税率を掛け、最後に控除額を差し引けば税金が算出できるようになっています。仮に所得金額が300万円であれば課税率10%で控除額が9万7,500円、また4,500万円なら課税率45%で控除額が479万6000円になります。

所得税以外の税金

不動産購入時

所得税以外にも、不動産購入時には印紙税、登録免許税、不動産取得税という税金が発生するので注意が必要になります。特に不動産取得税は金額が大きいので、しっかり抑えておきましょう。

不動産保有中

不動産の保有中にも、固定資産税と都市計画税が発生するので、所得税だけではないということを頭に入れておく必要があります。

不動産売却時

不動産の売却時にも、取得税がかかります。高額で売却することができたことは素晴らしいですが、高額であるほど税金も高くなるので注意が必要です。

不動産所得の確定申告

不動産を購入した後で重要になってくるのが確定申告です。サラリーマンとして働いていると、会社が確定申告を行なってくれるので難しく考える必要はありませんが、自分で行う場合は注意するポイントがいくつもあります。ただし手間のかかる確定申告ですが、正しく行えばメリットもあるので、節税のためにも確定申告に関して十分に学んでおきましょう。

確定申告をすることで、得られるメリット

確定申告のメリットは、税金対策ができるということです。収益を申請することも重要ですが、経費をしっかりと申請することによって、適正に節税することが可能です。

申告の仕方

白色申告の場合

白色申告は複式簿記の記録を行う必要がないシンプルな申告書になります。シンプルなので初心者でも簡単に作成できることが大きなメリットとして挙げられます。

青色申告の場合

青色申告は複式簿記の必要がある、複雑な申告書になります。そのため簿記の知識がない方にとってはご自身で作成するのはなかなか難しいといえます。しかし青色申告による控除や、家族に給与を与えて経費にできること、3年間の赤字損失を翌年以降に繰り越して申請することができるなどのメリットがあります。
最近では、入力するだけで青色申告の申告書がつくれるクラウド会計ソフトもありますので活用を検討してみるのもよいでしょう。

不動産所得の確定申告で注意する点

不動産所得の確定申告は、税金や経費、減価償却で赤字になった場合には給与所得の税金を減らすこともできるというメリットもありますが、一歩間違えれば税金の金額が大きく変わってくる危険性もありますので注意をしてください。

新築と中古の築年数によって原価償却費の耐用年数が異なる

原価償却費は定額法を使用する場合には、以下の計算式となります。

定額法=購入代金×償却率(平成19年4月1日以後の取得の場合)

償却率に使用する耐用年数の計算方法は、築年数によって変わります。築年数が法定耐用年数を超えていない場合は、以下の計算式となります。

耐用年数=(法定耐用年数-築年数)+築年数×0.2(端数切り捨て)

新築マンションの場合は、耐用年数=(47-0)+0×0.2=47年となります。1年経過後は、対応年数=(47-1)+1×0.2=46.2≒46年となります。
一方、法定耐用年数経過後は以下の計算式となります。

耐用年数=法定耐用年数×0.2(端数切り捨て)

例えば築23年の木造中古物件では、22×0.2=4.4≒4となるので、建物の価格を4年で償却できます。

失敗しない大家デビュー

最後に、失敗しない大家デビューをするためのポイントをご紹介します。どれだけ綿密に所得や経費を計算していたとしても、賃借人がいなければ家賃収入を得ることができず意味がありません。そこで物件探しのポイントや、不動産会社の選定方法を見ていきましょう。

物件探しのポイント

利回り

利回りの良い物件を探すことは、物件選びの基本です。ただし気をつけなければいけないのが、不動産会社の販売図面に記載されている利回りが、表面利回りであるのかそうでないのかを見分けることです。表面利回りであった場合、そこから管理費や修繕費が経費として引かれることになるので、当初の利回りよりも下回る可能性があります。また、利回りが高いということは逆に何らの理由で物件の価値が大きく下がり、
物件価格が低くなっているかもしれませんので注意が必要です。

築年数

築年数も物件選びでは重要になります。新築であれば購入金額が高くなりますが、中古物件よりも満室になりやすくより安心できます。空室になってしまうと賃貸収入が得られないので、結果的に中古物件の方がオーナー自身の生活を苦しめてしまう可能性もあるので、特に注意が必要です。

駅徒歩

駅徒歩の分数は、居住者にとって利便の良さを判断する基準となるので、居住者が重要視するポイントの一つです。あまりにも駅から遠い物件では、生活の便が悪いという理由で好まれず空室になる確率が高くなります。逆に駅から近いのであれば、少し家賃が高くても賃貸借契約が決まる可能性も高いと言えます。

管理費・修繕積立金

管理費や修繕積立金が高額の物件は経費がかさむため、結果的に家賃収入が減ってしまいます。しかし修繕積立金が少なすぎると将来、大規模修繕の際に追加で高額な修繕費が必要になる場合があるので、管理費が高く修繕積立金が少なすぎる場合には注意が必要です。

不動産会社の選定

顧客の目線で物件を選んでくれる

不動産会社を選定するときは、顧客目線で物件を選んでくれているのかを見極める必要があります。不動産会社からすると、高い物件が売れるほど仲介手数料が多くもらえるので、とにかく高い物件を勧めてくる不動産会社もあります。自分の希望をしっかりと伝えて、その希望に沿った物件を選んでくれる不動産会社を選ぶようにしましょう。

リスクや失敗例も紹介してくれる

不動産会社を選ぶときに、メリットや成功した話ばかりを紹介する不動産会社には注意する必要があります。不動産投資は良い面もありますが、リスクや失敗する可能性もあります。都合の良い話だけを鵜呑みにするのではなく、リスクも十分に考えて投資をしましょう。

購入後のアフターサポートは充実か

不動産投資の成否を分ける要素の一つは、購入後のアフターサポートが充実しているかどうかも大切です。特に初めて不動産投資をする人は、知らないことだらけなので、管理実績があり、アフターサポートが充実している会社を選ぶようにしましょう。

最後に

いかがでしょうか。  定期的な不動産収入があると、間違いなく老後の生活を助けてくれます。また金融機関から融資を受けることも可能なので、サラリーマンでも気軽に始めることができます。しかし税金や確定申告など、独学だけでは見落としがちな点も数多くあるので、しっかりと選別して、購入後も頼ることができる不動産会社で契約する必要があります。老後も安心して生活していくためにも、たくさんの情報を集めて、十分に勉強をして、今から不動産で資産を築いてみてはいかがでしょうか。

監修:大長 伸吉(不動産投資アドバイザー)