賃貸物件の新規契約時では、様々な費用が発生します。敷金・礼金・仲介手数料や前家賃など、家賃の数ヶ月分の費用が必要です。その初期費用の中に火災保険料も加算されることはご存じでしょうか?2年更新となる場合が多いですが、最初に火災保険料2年分を一括で払い込みをすることになります。

今回のキーワードはこの「賃貸物件入居時の火災保険料」についてです。保険の内容や自分で保険を選ぶことが出来るかどうか?について解説します。

賃貸契約時に加入が必須な火災保険は、借家賠償責任保険と家財保険

賃貸物件を契約する時には、火災保険にも加入します。ほぼこれは強制と思った方が良いでしょう。火災保険というと「火事のときだけ?」と思われる方もいるでしょう。しかし、この場合の火災保険は借家人が入るべき保険という意味です。詳しく内容をご説明します。

借家賠償責任保険は自分の借りている部屋(建物)を守るための保険

借家賠償責任保険とはどのような保険なのでしょうか。

・入居者が火災、または破裂・爆発などを起こし部屋や建物に損害を与えた場合
・風呂などにて水を止めるのを忘れて階下の部屋に水漏れ事故を起こしてしまった場合

このような場合、入居者が建物や周りの部屋に多大な損害を与えたとき、建物の修復や損害補償のために支払われる保険ということです。保証例としては、建物の天井や壁や床などの補修などが保証があげられます。

家財保険は自分の家財を守るための保険

火災の被害などにあった・または風水害で家財のほとんどを失ってしまった、こんな場合に保証される保険です。一例としてテレビや冷蔵庫などの家電用品、ソファーやベッドなどのその日から無くては生活できない家財用品などを保証する保険となります。

失火責任法とは?火を出した時の責任はどこまで追求されるのか

不注意で自分が火元となり、建物や他の部屋まで類焼被害をだしてしまったら、大変な損害を与えたことになるでしょう。
しかし、日本では「失火責任法」という法律があり、重大な過失がなければ、隣家の失火が原因でも自分の損害は補償されません。

具体的な例をみていきましょう。

<例>
Aさんがストーブをうっかり倒して火事が起きてしまい、自分の家とお隣のBさんの家が全焼してしまった場合、Aさんが火災保険に加入していれば、その火災保険を利用して自分の家は建て直すことができます。

しかし、被害をうけたBさんの損害部分はAさんの保険では保証されません。あくまでBさん自身で火災保険を加入していないなら保険金も出ず自分で家を建て直すしかありません。火元のAさんはこの「失火責任法」の適用により、Bさんへの保証は一切しなくてもよいこととなります。

被害を受けた方からすれば納得出来ないようなことですが、これが「失火責任法」と呼ばれるものです。この法律があるため、もらい火をしても相手に保証をして貰えませんから、自分で保険に加入するしかありません。しかし出火元で重大な過失があった場合なら、保証する必要があります。

・寝たばこにより火災を起こした場合
・天ぷら鍋をガスコンロにかけその場を離れた場合

このような場合は裁判で「重大な過失」と認められて損害賠償請求をされた判例があります。

個人賠償保険は隣家を守るための保険

個人賠償保険とは、他人へ何らかの損害を与えた場合に保証する保険のことです。

先に上げた例ですが

水漏れ事故を起こして床から階下の天井から水漏れし階下の方の家電製品が利用出来なくなったような場合。

・建物への損害は「借家賠償責任保険」にて床や天井を修繕する
・階下に住む方の家財に損害を与えた部分「個人賠償保険」にて保証

ということになります。一つの保険で全てを保証することはできず、借家賠償責任保険と個人賠償保険により、保険の保証内容が異なります。

また最近の火災保険では、家財保険・個人賠償保険・借家人賠償責任保険、これら3つをワンセットにした保険に加入が多くなってきています賃貸物件での新規契約時に、入居者が加入する火災保険はこれらがセットになった保険を多く勧められているのが現状のようです。

いざという時、自分が損害を受けても、相手に損害を与えても十分な保証を受けられるように加入しておくべきです。

保険料や保険内容は適切なのか

賃貸物件加入時の保険の概要については今までご説明してましたので、次にその保証内容と掛け金について説明します。

なぜ入居者自身で選べないのか

一般的に、賃貸物件を契約する場合に火災保険もセットとなり初期費用の中に入ってきます。

大抵は、受付不動産会社から「保険料は2年分●●円です」と言われてそのまま支払う場合がほとんどだと思います。

しかし、どうしても納得出来ない場合はその受付不動産会社に「この会社は保険料が高いと思うので、同じ内容で安い保険料のところはありませんか?」と聞いてみましょう。

対応する不動産会社によっては「うちはこの保険会社に統一しています、
大家さんからも同じ保険会社にするようにお願いされています」
と言われる場合が多いでしょう。

なぜ、自分で選べないか?というと「加入しない人が出るのを防ぐため」です。入居者の自由にしてしまい、費用を嫌がり未加入の方が損害を起こした場合建物に多大な損害を与えても入居者に「保険未加入で支払えません」と言われたならば、大家さんなどそれで終わりとなってしまします。

そのような状況を起こさないために、大家さんや管理会社でほぼ強制的に同じ保険会社で加入してもらうことを選択しているです。

自分で補償内容を確認し、相見積りを要望する

最低ラインの保険に加入するという前提でどこまで保証するか?
など多少自分で決められる場合もあります。

そのような場合なら事前に見積りをして貰うことも可能でしょう。相見積もりは、不動産会社で1社ではなく数社の火災保険を扱っている場合なら可能かもしれません。

一般的な賃貸契約時の火災保険の相場は?

下記の表をご覧ください。

保険料 契約年数 家財保証 借家人賠償責任保険 個人賠償保険 修理費用
日新火災 6,000円 1年 300万円 2,000万円 1億円 300万円
全労済 5,500円 1年 100万 1,000万円 1億円 500万円(類焼被害)

 

1年契約でだいたい6,000円~10,000円前後です。
2年契約なら16,000円などど、お手軽なところで6,000円位という保険もあります。
当然ですが、安い保険料の場合は保証金額も低くなります。

自分が入居している建物の状況により加入する金額も変わってきます。
最近の保険会社には、損害賠償請求の為の裁判費用もセットになった保険もあります。
契約内容を十分に確認してください。

解約後の解約返戻金も忘れずに

2年契約で賃貸物件を契約。その後転勤などのため1年半で退去することとなる場合、賃借人の火災保険も解約となります。このような場合半年分の保険料が戻ってくる会社もあります。

例えば、全国一律の保険料金として賃貸物件の火災保険を扱っている「日新火災」はホームページで確認すると途中解約は残金が返戻金として戻ってくると案内があります。

出典:日新火災(https://direct.nisshinfire.co.jp/oheya/faq/cat07/

おすすめしたいこんな保険

上記でご詳細した一般的な保険以外にも便利な保険がありますので、ご紹介いたします。

火災保険の特約「個人賠償責任保険」はいろいろな場所で役立つ

最近は自動車保険や生命保険などにもセットされることの多い「個人賠償保険」ですが、賃貸物件のもしもの時だけでなく、他にも多くの使い道があります。

・自転車に乗っていて、誤って他人にぶつかり怪我をさせてしまった。
・ペットの犬が逃げて他人を噛んで怪我をさせてしまった

このような時にも個人賠償保険は利用できるのです。日常生活で困ったときに助けられる場面がありそうですね。

地震保険もセットできる全労済

全労済のホームページで賃貸物件火災保険の掛け金をシミュレーションしてみました。

検索条件として30代・単身・30㎡で自然災害・火災などの特約付き
個人賠償保険最高金額の1億円、貸主への賠償責任も最高の2,000万円、家財保険も付けた場合。

年払いで14,800円という試算がでました、最も高額な場合です。そしてこの金額の中には地震保険も入っています。

地震の多い日本では損害が大きくなるため、火災保険は適用されないのです。もし多少の差でおさまるなら地震保険も加入を検討されたほうがいいでしょう。

住居の構造によっては保険の費用も安くなる

火災保険のシミュレーションや試算をする時に「RC構造」「耐震構造」という条件選択がでてきました。建物の構造などで保険料が木造アパートより安くなる場合もあります。

≪鍵紛失時のサポートを含めた保険などもある≫ 三井海上保険の「GKすまいの保険」では契約保証プランにより「鍵開けサービス」があります。鍵を紛失してしまって家に入れないというとき24時間365日受付という嬉しいサービスです。

出典元:三井住友海上(http://www.ms-ins.com/personal/kasai/gk/service.html

まとめ

賃貸物件と入居者が入る火災保険についてご説明してまいりましたがいかがでしたでしょうか?

初期費用に加算されるのは、出費として若干痛い部分もありますが、何か事があった場合に1番困るのはご自身です。

年間数千円から1万前後で火災や地震、風水害にも対応でき自分が火元になった時も
他の部屋の損害は失火責任法で問われませんが、重大な過失という部分で責任を
負う場合もあるのです。

保険は費用面ばかりに目がいく部分がありますが、加入額が安い保険では、十分な保証が受けられないのも事実です。入居者や近隣に住んでいる方に迷惑をかけないためにも、このような保険をぜひ検討する価値はあると思います。

賃貸物件の新規契約時でのワンセット契約は大家さんや管理会社にはメリットがあるのです。

・大家向けの保険と借家人賠償責任保険がワンセットになり、借家人がどのような保証をしているのかが把握できる。
・加入漏れをふせぎ、被害を受けた場合保証が受けられないというリスクを避ける

このような原因があります。自分で保険会社を見つけても、受付不動産会社や大家さんが了承しない場合もあります。

最初の加入時に

・この保険会社以外にも選択の余地はあるか?
・プラン変更は可能か?

この点を確認しておくことが有効です。入居者がはいる保険に、必要な保証をつけて安心な賃貸ライフを過ごしてください。

監修:大長 伸吉(不動産投資アドバイザー)