不動産を借りたり売買するときには、不動産会社が取引の間に入りますが、その時に仲介手数料というものをとられます。時には仲介手数料は大金になることもあり、物件の費用だけしか用意していなかった人は考え込んでしまうこともあるでしょう。そんな人のために仲介手数料の計算方法や仕組み・注意点などについて解説をいたします。

仲介手数料を学ぶ前に知っておくべき用語の解説


仲介手数料について説明する前に、関連する用語についてご紹介いたします。

売主とは

売主とは土地や建物などの不動産の所有者をいいます。売主が不動産会社を通さずに、直接物件を販売する場合には仲介業務はありませんので、仲介手数料は発生しません。大手不動産会社が開発して分譲するマンションや中小不動産店が販売する建て売り住宅などがそれにあたります。仲介手数料が不要というのは買主にとって大きなメリットになります。売り出し図面や広告には「売主」とか、「自社物件」と記載されています。

売主が直接販売する場合のメリットとしては、仲介手数料が不要の他に、対象となっている物件について豊富な情報を持っていることです。また持ち主=売主となりますので、要望事項があればスピーディーに応えてくれるでしょう。

代理とは

代理とは販売代理とも言い、物件の所有者から委託を受けた不動産会社が、売主の代理として売却活動から契約まで一切の活動を行うものです。買い主からしてみれば、売主とイコールなので仲介業務はないものとされ、この場合にも一般的には仲介手数料は発生しません。ただし、販売契約が成立した場合には、売主は代理人に手数料を支払わなければなりません

仲介とは

仲介は媒介とも言い、不動産会社が売主と買主の間に入り、契約を成立させ双方から仲介手数料を貰います。不動産会社は買主あるいは借主の希望を聞き、価格やサービスの調整を行うこともあります。仲介業者を通すメリットは、周辺の情報をよく知っていることや、他の不動産会社が扱っている物件も紹介してもらえることなどがあげられます。

仲介手数料とは


仲介手数料とは不動産の売買や賃貸の仲介をしてくれた不動産会社に対価として支払われる手数で、これによって不動産会社は営業活動を行い会社の経営を行うことができます。売買の場合の仲介手数料と賃貸の場合の仲介手数料では、仕組みなどが異なっています。ポイントを押さえ、トラブルが起きないようにしましょう。

売買の仲介手数料

不動産物件の売買金額は大きなものですので、それに従って仲介手数料も大金となります。売買契約が成立した場合には、仲介手数料が成功報酬として不動産会社に支払われます。従いまして契約が成立しなかった場合には、仲介手数料は支払う必要はありませんし、業務の途中で支払う必要もありません。

なお仲介業務で発生する物件の広告費用や顧客の案内の費用などは、通常は仲介手数料の中に含まれます。そのため通常はその費用を請求することはできませんが、顧客の特別な希望で行われた広告や遠方への出張旅費などは、実費のみ請求することが認められています。

仲介手数料には法律によって上限が決められている

仲介手数料の上限は、宅地建物取引業法によって取引価格の金額区分毎に定められています。売主及び買主の一方から報酬としてもらえる仲介手数料は、下表のようになります。なお売主及び買主双方の仲介業務を一社で行った場合には、双方から仲介手数料の上限までもらうことができます。なお、大体の不動産屋は仲介手数料を上限で設定しています。

取引金額区分 仲介手数料(税抜き)
売買金額が200万円以下 売買金額の5%
売買金額が200万円超400万円以下 売買金額の4%
売買金額が400万円超 売買金額の3%以内

※別途消費税がかかります

売買仲介手数料の仕組み

仲介手数料は間に入る仲介業者が2社の場合と1社の場合で仕組みが異なっています

*片手取引の場合(2社)

ひとつの物件の売買にそれぞれ売主と買い主に異なる不動産会社が仲介することを片手取引と言います。この場合不動産会社がもらう仲介手数料は片方だけで、上表によりますが簡易方式では売買価格×3%+6万円+消費税となります。これから説明する両手取引と比べると利益は少なくなります。

*両手取引の場合(1社)

またひとつの不動産物件の取引に、同じ不動産会社が売主と買い主双方の仲介をすることを両手取引と言います。同一物件で双方から仲介手数料をもらうことができますので、片手取引の2倍の大きな利益を得ることができます。ただし両手取引は不動産会社による不動産物件の囲い込みがされやすく、他の不動産会社を排除することに繋がりやすいという問題点があります。囲い込みの結果買い手の契約を優先するために、売り手の不利益につながり売買価格が相場よりも低くなることがあります。

賃貸の仲介手数料

賃貸契約の場合には不動産会社が受け取れる仲介手数料は家賃の1ヶ月分+消費税が上限となります。また同一の不動産会社が双方の仲介をする場合でも、貸主・売主からもらえる仲介手数料の上限は同じで家賃の1ヶ月分+消費税です。それゆえ貸し主から0.5ヶ月分の仲介手数料をもらえば、借り主からは同じ0.5ヶ月分をもらうことができます。もし貸し主から1ヶ月分の仲介手数料をもらえば、借り主からは仲介手数料をもらうことはできません。

不動産売買の仲介手数料の計算方法と注意点


不動産売買の場合の仲介手数料の計算の仕方及び注意点についてご説明いたします。

仲介手数料の計算方法

それでは仲介手数料の計算方法について、取引価格が1,000万円の物件の取引例を挙げてご説明いたします。
仲介手数料は上表に記載した取引区分に従って算出をいたします。
(1)1,000万円のうちの200万円以下の区分…200万円×5%=10万円
(2)1,000万円のうちの200万円超400万円以下の区分…200万円×4%=8万円
(3)1,000万円のうちの400万円超の区分…600万円×3%=18万円
(1)+(2)+(3)=36万円
この算出した金額に消費税の8%を加えた額の388,000円が仲介手数料の上限となります。

なお400万円超の不動産について次の簡易方式によっても上限額を求めることができます。
仲介手数料=(売買金額×3%+6万円)+消費税
すなわち、(1,000万円×3%+6万円)+28,800円=388,000円

仲介手数料の+6万円って何?

売買の仲介手数料は、前述のように売買区分別に計算をして足し上げます。しかし簡易方式によっても算出できますが、その場合の+6万円とはいったいなんなのでしょうか?先ほどの例を見ると、簡易方式を用いて単に1,000万円の3%をかけた場合では、算出した金額は30万円となり6万円不足することになります。そこで簡易方式により算出した不足の6万円をプラスして、金額区分別算出した金額と同一額にします。すなわち+6万円とは差額を調整するための金額と言えます。

仲介手数料の支払い時期

不動産売買仲介手数料は大金となりますますので、用意をするのも大変です。それでは仲介手数料はどのようなタイミングで支払ったら良いのでしょうか。

仲介手数料は成功報酬ですので、支払いの時期は原則として取引が完了した後です。しかし実際は国交省の指導により契約を締結したときに半分、取引を完了したあとに残金を支払うことが多くなされています。なお住宅ローンが認められず白紙解除された場合には、不動産会社は請求権を失いますので支払った仲介手数料は返さなければなりません。ただし売主や買い主の自己都合で契約解除した場合には、仲介手数料を変換する必要はありません。

仲介手数料は消費税を含まない価格で計算

土地の売買に消費税はかからず、建物の売買について課税されます。従って土地付き住宅の販売価格は、建物は課税された金額であり土地は非課税の金額です。しかし仲介手数料の金額を出すためには、消費税を含まずに計算をしなければなりません。従って建物の価格から消費税を抜いた価格に修正して、仲介手数料を算出することになります。

例えば建物が2,000万円で、土地が3,000万円の合計5,000万円の建て売り住宅を仲介した場合の仲介手数料の計算は下記のようになります。
建物の2,000万円には消費税が含まれていますので、税を抜いたか価格は2,000万円を1.08で割った価格で1,851万円となります。従いまして1,851万円に土地代金の3,000万円をプラスした金額、4,851万円が物件トータルの税抜き価格となります。この仲介手数料を計算すると(売買価格×3%+6万円)×1.08%ですから163.6万円が仲介手数料となります。

契約の解除・無効・取消の場合の仲介手数料は?


何らかの事情で売買契約を結べなかった場合には、その理由により仲介手数料を請求できる場合とできない場合があります。

手付金放棄による売買契約の解除

買主に責めがある手付け放棄や、売主に攻めがある手付け倍返しの解除では、不動産会社に責めがなければ仲介手数料の請求はできるとされています。また不動産会社に何らかの責任がある場合には、仲介手数料を請求することができないとされています。しかし実際には責任の所在がはっきりとしない場合もあります。

ローン特約による売買契約の解除

住宅ローンを申し込んでいたが認可されなかったとか、自宅を売りに出していたが売れず売買契約を解除せざるを得ないということがあります。このように売買契約そのものが白紙解除となってしまった場合には、不動産会社は仲介手数料の請求権を失います。従いまして仲介手数料の一部を支払っている場合には返してもらうことができます。

売買契約が無効の場合

売買契約に思い違いなどがあった場合には、売買契約は成立していないということになります。契約は無効となりますので、成果報酬としての仲介手数料は請求できません。

売買契約が取消の場合

脅迫されて契約したり、ごまかされて契約したような場合には、売買契約を取り消すことができます。取り消された場合には契約が無効となりますので、仲介手数料を支払う必要はありません。

気になる仲介手数料の相場は?


仲介手数料の上限は決まっていますが、値引きができたり無料になったりする場合もあります。

売買仲介手数料に相場がない現状

不動産会社は規模の大きさを問わず、ほとんどの会社は横並びで仲介手数料の上限基準を適用しています。しかし両手取引や売買価格が高い物件・早く成約した物件などについては割引や無料とする場合もあります。

賃貸仲介手数料の相場

賃貸の仲介手数料は前述のように、貸主・借主双方合わせて家賃の1ヶ月分+消費税が上限となっています。しかし実際には貸主からは仲介手数料をもらわず、借主が1ヶ月分の仲介手数料を負担することが多くあります。しかし本来は借主が支払う仲介手数料は0.5ヶ月分が原則であり、それ以上の負担がある場合には不動産会社に値引き交渉を請求する権利を有するとも言えます。

近年は空き部屋にしておくよりも、仲介手数料をすべて貸主が負担し部屋を埋めたほうがいいという考え方も多く借り手市場にシフトしてきていると言えます。また早期契約を望む貸主の意向や、周辺のマンションやアパートの競争状況により、仲介手数料だけでなく敷金や礼金も無料という場合もあります。
インターネット上で物件を探せるエイブルやminiminiは仲介手数料を0.5ヶ月分とし、敷金や礼金が無料の物件もありますので検索してみると良いでしょう。

出典:エイブル(https://www.able.co.jp/
出典:minimini(minimini.jp/

不動産売買の仲介手数料は値引き交渉できるのか?

不動産売買の仲介手数料は、3%+6万円+消費税というご説明をしましたが、これはあくまで上限です。最近は周辺の競争が激しい物件や、建築してしばらくしても購入者が見つからない物件については仲介手数料を値引きしてくれる場合もあります。また売り手と買い手双方から手数料をもらえる両手の場合も値引きに応じてくれる場合もあります。

インターネットを通じて営業をしている不動産会社の場合は、経費が掛かりませんので仲介手数料を値引きしてくれる可能性があります。

不動産の自社物件の場合には仲介がありませんので、仲介手数料は発生せずお得と言えます。

仲介手数料が安ければ良いというものではない

不動産契約をする際には仲介手数料だけでなく、礼金や敷金・家賃・共益費などさまざまな費用が掛かります。また近年は家賃を数か月無料にするフリーレントなどのサービスがあります。必ずしも仲介手数料だけでなく他の費用やサービス・住環境なども含めた総合的な損得で判断するようにしましょう。あまり仲介手数料ばかりにこだわっていると、良い住宅が埋まってしまったりするかもしれませんよ。

最後に


いかがでしたか?ここまで仲介料の仕組みや計算方法・注意点などを解説いたしましたが、ご理解いただけたでしょうか。不動産契約というものはそうたびたびあるものではありませんが、仲介手数料の必要性や意味を考えて間違いのない取引をしてくださいね。