賃貸物件を借りるときに、敷金や礼金だけでなく、仲介手数料も同時にかかります。不動産を紹介してくれた手前、支払うのが当然のように感じてしまう仲介手数料ですが、中には仲介手数料を取らない不動産会社も増えてきています。

なぜ仲介手数料無料で仲介をしてくれているのでしょうか。そこで今回は、「不動産における手数料は無料になることがあるのか」について解説していきたいと思います。

賃貸物件における仲介手数料無料

賃貸物件を借りるとき、予算を苦しめる要素の1つが仲介手数料です。敷金、礼金、仲介手数料を含めると、初期費用は家賃の5ヶ月分以上になる場合もあるので、可能であれば仲介手数料を支払いたくないという方もいると思います。

そんな人に朗報なのが、仲介手数料無料の不動産会社があるという話です。もしも仲介手数料が無料なら、不動産会社はどのように収益をあげているのでしょうか。

賃貸物件契約時の仲介手数料は普通0.5~1ヶ月が相場

賃貸物件を借りるときに、不動産会社を利用すると仲介手数料を取られることがありますが、どれくらいの仲介手数料を取られたことがあるでしょうか。おそらく多くの人が家賃の1ヶ月分を請求されたと思います。

これは宅建業法に、仲介手数料は家賃上限1ヶ月分(+消費税)しかとることができないと定められているからです。そのため賃貸物件契約時の仲介手数料は、0.5~1ヶ月が相場になっています。

最近見かけることが多くなった仲介手数料無料物件

不動産会社も時間を割いて仲介してくれているので、仲介手数料を払うのは当然だと考える人もいます。しかし最近では、仲介手数料が無料の物件も見かけるようになってきました。仲介手数料が無料の物件では、不動産会社はボランティアで紹介をしてくれているのでしょうか。

大家さんが1ヶ月分支払っていることが多い

仲介手数料が無料の物件は、不動産会社がボランティアで働いてくれているのかと言えばもちろん違います。実は大家さんが、家賃1ヶ月分の金額を賃借主の代わりに不動産会社に支払っています。

不動産会社は仲介手数料を、賃借者だけでなく、大家からもらうことも可能なので、どちらからか徴収しています。ただし宅建業法上、両方の金額を足して家賃1ヶ月分(+消費税)以内に抑える必要があります。

物件入居者がなかなか決まらない時期がポイント

大家さんが仲介手数料を払ってでも入居させたい理由は、空室が長引くとトータルの収入が減ってしまうからです。1ヶ月分の仲介手数料を仲介会社に払ったとしても、すぐに入居が決まれば1ヶ月で収支を合わせることができます。

つまり物件入居者がなかなか決まらない時期であれば、大家さんが仲介手数料を支払ってでも入居させたいので、仲介手数料を無料で契約してくれる可能性も高くなります。一方で引越しの多い繁忙期には、仲介手数料を大家さんが負担せずとも入居者が決まっていくので、仲介手数料を無料にしたり減らしたりすることが難しくなります。

不動産会社が直接保有している物件では仲介手数料を取ってはいけない

不動産会社が直接保有している物件では、宅建業法上仲介手数料を取ることができません。そのため不動産会社を利用する前に、その不動産会社が保有している物件がないかを調べていくと、仲介手数料を必要とせずに契約をすることができる可能性もあります。

売買物件における仲介手数料無料とは

賃貸物件を借りるときは仲介手数料が発生しますが、売買物件を購入するときも仲介手数料は発生します。それでは売買物件の仲介手数料は、どのように支払われているのでしょうか。

不動産は購入時と売却時に仲介手数料がかかる

不動産を購入する場合に仲介手数料が発生することは多くの人が知っていますが、実は不動産を売却する場合にも仲介手数料は発生します。またそのほかにも印紙税、登記費用、測量費用といった費用もかかりますので、発生する費用に関して正しく理解しておく必要があります。

仲介手数料の上限は法律で決まっている

不動産売買の仲介手数料の上限も以下のように法律で決められています。

・200万円以下の部分 取引額の5%+消費税 以内

・200万円超400万円以下の部分 取引額の4%+消費税 以内

・400万円超の部分 取引額の3%+消費税 以内

ただし不動産の売買では、ほとんどの物件が400万円を超えるので、以下のようにまとめられることがほとんどです。

「仲介手数料=(売買価格×3%+6万)+消費税」

つまり3,000万円の不動産売買をした場合は、3,000万×3%+6万=96万円になるので、96万+消費税が仲介手数料の上限になります。

最近仲介手数料半額や無料を謳う業者が出てきている

不動産業者の中には、仲介手数料半額や無料を謳う業者もいます。これらの業者が仲介手数料を上限まで取らない理由は、営業コストや広告費用を削減することで不要な支出を抑えているからです。しかし売買が成立しないと不動産を売却することはできません。

営業や広告に費用をかけていないということは、それだけ売買される確率が下がるということです。そのため仲介手数料を安くすることにこだわっていると、取引自体が成立しない可能性もあるので、バランスが必要になってきます。

不動産賃貸の仲介手数料は無料にできる?

賃貸物件を借りるとき、可能な限り支出は抑えたいものですよね。それでは不動産賃貸の仲介手数料を意図して無料にすることはできるのでしょうか。そこで不動産賃貸を借りるときの支出を抑える方法を解説していきたいと思います。

繁忙期以外は交渉しやすい

仲介手数料を大家が負担せずとも、どんどん空室が埋まっていくのが繁忙期です。そのため繁忙期の時期に、手数料の交渉を行ってもあまり意味はありません。一方で、繁忙期以外では空室をすぐに埋めることは難しいので、交渉に応じてくれる可能性は十分にあります。

そのため仲介手数料を大家に負担して欲しいのであれば、繁忙期以外に交渉するといいでしょう。たとえ仲介手数料を減らすことができない場合でも、家賃が少しだけ安くなる可能性もあるので、一度大家さんと交渉してみることをオススメします。

仲介手数料無料でも礼金が設定されていることも

仲介手数料が無料でも、礼金が設定されていることがあります。礼金も基本的には家賃1ヶ月分なので、項目が礼金でも仲介手数料でも入居者の負担は同じです。そのため仲介手数料だけでなく、敷金、礼金も含めた合計金額で物件を決めることが重要になります。

フリーレントなど総合的なコストで考える

敷金、礼金、仲介手数料がそれぞれ1ヶ月分かかるとしても、2ヶ月間無料のフリーレント物件に住むことができれば、礼金も仲介手数料もかからないことと同じになります。初期費用は少し高くなりますが、年間のラーニングコストでカウントすると、結果的に安い物件になるということです。初期費用だけでなく、月々の費用、年間の費用で物件を選ぶと、無駄な支出を抑えることができます。

あまりに交渉しすぎると対応が悪くなるケースも

交渉は支出を抑えるために重要なことですが、交渉しすぎると相手の対応が悪くなってしまう可能性もあります。大家さんも厄介ごとを起こす方を入居させたくはありません。そのため交渉をしすぎて大家さんの印象を悪くすると、大家さんから入居を断られる可能性があるので、もしも物件に満足しているのであれば交渉方法は十分考えましょう。

最大でも仲介手数料は家賃の1ヶ月なので、値引きの範囲にも限界がある

宅建業法に仲介手数料は最大でも家賃の1ヶ月と記載されています。そのため家賃の1ヶ月分以上の値引きを行おうとしても、交渉に応じることはできません。大家さんが1ヶ月分の仲介手数料を負担してくれるのは、数ヶ月後に収支で黒字になるとわかっているためです。あまり執拗に交渉をしてしまうと、物件の契約も断られる可能性があることを理解しておく必要があります。

不動産売買の仲介手数料は無料にできる?

不動産賃貸では仲介手数料を無料にできる場合もありましたが、不動産の売買では無料にすることができるのでしょうか。売買は賃貸よりも仲介手数料が大きくなるため、賃貸物件とは少しだけ割引になる条件が変わってきます。

物件価格が高い時は値引き交渉も可能

物件価格が高い時は、値引き交渉が可能なタイミングの一つです。物件の価格が高いということは、仲介手数料も高いので、不動産会社の手数料を少しだけ減らしても、十分に利益を確保することができます。

不動産の購入や売却を予定している人は複数の不動産会社で金額を比べているので、いつどこの不動産会社を使って決めるかはわかりません。そのため不動産会社は、手数料を少し減らしてでも自分たちが仲介したいと考えるので、交渉の余地があるということです。

人気物件の売却時は交渉しやすい

不動産売買は買い手と売り手がいて初めて成立します。そのためどれだけ売りたくても、買い手がいなければ売却することはできません。一方で人気の物件は売買に出されると、すぐに買い手が見つかる可能性があるので、不動産会社も積極的に仕入れたいと考えています。もしもご自身が人気の物件を売却しようと考えているなら、仲介手数料の交渉も可能なので、一度交渉してみることをおすすめします。

仲介手数料は不動産屋の収入源であることを忘れない

賃貸物件でも売買物件でも、仲介手数料は払いたくないというのが本音ではないでしょうか。しかし仲介手数料は不動産屋の収入源であることも忘れてはいけないでしょう。不動産会社がなければ、物件ごとにご自身で調べて電話をするしかありません。それらすべてのコストを不動産会社が肩代わりしてくれているおかげで、私たちは簡単に求めている物件を探すことができると言えます。

仲介手数料無料の注意点

仲介手数料は不動産への謝礼だと理解しつつも、できるだけ金額を抑えたいという人もいるかと思います。世の中には数えきれないほどの不動産会社が存在するので、仲介手数料無料の不動産会社で売買しようとすることは悪いことではありません。ただし仲介手数料が無料ということは、広告費や営業コストをカットしている可能性が高いので、取引そのものが成立しないことも理解しておく必要があります。

最後に

いかがでしょうか。不動産の仲介手数料は賃貸と売買によって条件は異なりますが、どちらも無料になる可能性があります。ただし賃貸で仲介手数料が無料の場合は、必ずその金額を誰かが負担しているということを頭に留めておく必要があります。また売買では、仲介手数料を減らすことができたら少しだけ得をしますが、取引が成立しない可能性もあるので十分に注意が必要になります。

仲介手数料無料はメリットだけでなくデメリットもあるので、まずはご自身の優先順位を正しく理解して、満足のいく不動産売買を実現させましょう。