自宅を大幅にリフォームしたいとか、海外旅行に行きたいとか、子供が大学の医学部に合入学する等、多額のお金が必要になる場合がありますよね。貯金は万が一の時に取っておきたいし、親戚に借金を頼むのは嫌だ、カードローンでお金を借りようと思っても、多額のお金は借りられず借入利息も高い。そんな時に不動産をお持ちの方ならば、不動産担保ローンを利用するということも可能です。

不動産担保ローンは使い道を制限されずに融資を受けられ、多額のお金を低利息で借りられるという特徴があります。また、借り主としても負担もあるため、必要に迫られたとき以外は無理せず使用しないほうがよいとも言えます。いずれにしても不動産担保ローンについて、メリットやデメリットをあらかじめローンの内容を把握しておくことがとても大切です。今回は、無担保ローンよりはメリットが多い不動産担保ローンについて解説をいたしますので、ぜひとも知っておいてください。

不動産担保ローンについて


不動産担保ローンはどんなものかご存じない方がほとんどであると思いますので、まず概略をご説明します。

不動産担保ローンとは?

不動産投資ローンとは、自宅や所有地などの不動産を担保にして、金融機関から融資を受けるサービスです。不動産が担保となりますので、返済ができなくなった場合でも金融機関は不動産を処分することで資金を回収できます。
それゆえ金融機関は、多額のお金を融資してくれます。担保に入れる不動産は本人名義のものだけでなく、親や配偶者などの名義でも可能です。しかし返済できなくなった場合には、不動産を失うこともありますので、注意してローンを組まなければなりません。

不動産担保ローン7つのメリット


無担保の個人カードローンは個人の信用力で融資してもらいますが、不動産担保ローンは不動産を担保にしてお金を借ります。
不動産を抵当権に入れることができますので、金融機関からして見れば比較的安全に融資することができます。また借り手にとっても様々なメリットがありますので、まずそのご説明をいたします。

(1)低金利

無担保の個人向け無担保ローンの金利は18%になりますが、不動産担保ローンの金利は1.0~10%程度(2018年3月現在)と無担保ローンより低く設定されています。これは担保を差し入れがあるため、貸し倒れのリスクが小さいためです。また借入金額が大きいので、借入金額に対する利息金額も大きくなることがその理由の一つです。低金利と言っても大きな金額を借りると当然返済額は大きくなり諸経費もかかりますので、融資を受ける人は返済する総費用のことを考えて借りなければなりません。

出典:東京スター銀行(http://www.tokyostarbank.co.jp/products/loan/mortgage_collateral/
出典:アイフル(https://www.aiful.co.jp/topics/?cid=PG13H010
不動産担保ローンを借りられる金融機関には銀行とノンバンクがあります。一般的にノンバンクの金利は銀行よりも若干高めに設定されている場合が多いですが、審査がスピーディーで基準も緩やかな特徴があります。金利の種類は固定金利と変動金利があり、主に銀行系の金融機関は変動金利・固定金利共に選択ができ、ノンバンクなどでは基準金利は定められていませんので固定金利が使われることが多くなっています。

*固定金利

固定金利は借入期間中、金利は一定で変動金利と比べると金利が高いことが一般的です。金利が変わりませんので、返済計画がたてやすくなりリスクも低い特徴があります。現在のような低金利時代で長期の借入の際はおすすめです。

*変動金利

変動金利は、市場金利の変化により利率が変動する金利です。金利の下落が予測されている局面ではその恩恵がうけられますが、金利が上昇傾向の局面では金利負担が増えるリスクを考えておかなければなりません。また短期間で借りる場合には、金利変動の影響も少なくなり許容できる場合が多いので選択するメリットがあります。

(2)借入限度額が大きい

無担保のカードローンの融資はたいてい500万円程度が限度額ですが、不動産担保ローンの場合には不動産を担保に差し入れますので、大きな金額の融資を受けることができます。一般的に不動産評価額の6~8割程度の借り入れができるとされますので、5,000万円の不動産評価額の住宅であれば3,500万円程度の融資を受けられる可能性があります。
なお個人の借入総額は年収の1/3に制限されるという規制がありますが、不動産担保ローンはこの規制から除外され年収の1/3以上の借り入れをすることができます。

(3)借入資金の使用用途が自由

自動車ローンや住宅ローンは決められた目的以外には使えませんが、不動産担保ローンは使用目的が自由という特徴があります。子供の教育資金や家のリフォーム代金などどのような目的でも使用することができます。また他のローンでは相続税や不動産取得税などの税金を納めるための借入はできませんが、不動産担保ローンは融資を受けることができ、大変使い勝手の良いローンということができます。またカードローンでは事業資金には利用できませんが、個人事業者や法人であれば開業資金や運転資金・新たな設備投資など様々な利用の方法があります。
不動産担保ローンの使途は自由ですが、返済が滞った場合には抵当に入っている不動産を失うリスクもあります。慎重に考えて利用するようにしましょう。

*不動産担保ローン利用の主要シーン

・住宅が老朽化したため大掛かりなリフォームが必要になった
・病気になり保険が適用されない先進医療を受けることになった
・子供がお金のかかる私立大学の医学部に合格した
・結婚記念日に海外旅行に行くことになった
・自宅を売却し新しい住宅に入居することになったが、つなぎ資金として利用したい
・既にいくつかの融資を受けており、低い金利の不動産担保ローンにまとめたい

(4)おまとめローンの利用に適している

不動産担保ローンは、低金利で借り入れ限度額も大きいですので、おまとめローンとして利用するのに適しています。既に借りているローンの利率が高い場合には、低金利の不動産担保ローンにまとめれば総返済額を少なくできます。また借入金を一本化することによって、管理を楽にすることができます。自動車ローンなどは低金利ですので、借入金をまとめる場合には不動産担保ローンよりも高いものだけを選ぶことが有効です。

(5)保証人が不要

お金を借りるときに、親戚などに保証人をお願いするのは抵抗がありますよね。受ける側も、進んで保証人になる人は少ないのではないでしょうか。不動産担保ローンは、所有している不動産を抵当に入れますので、保証人を立てる必要がありません。希望する融資額が、不動産評価額以上の場合には保証人が必要なこともありますが、原則保証人を立てる必要はありません。一般的には不動産担保ローンでは、金融機関が用意する保証会社が保証料を支払う場合が多くなっています。

(6)借入期間を長期で取れる

不動産担保ローンは、無担保カードローンンと比べると、長期間にわたって借入することができます。10年や20年、場合によっては30年という長期間のサービスもあり、これにより毎月の返済額が提言し、月々無理することなく返済することができます。短い期間の借り入れですと、日々の生活も切り詰めなければいけませんが、長期に渡れば計画的に返済でき生活も比較的楽に過ごせます。

(7)比較的、審査に通過しやすい

不動産担保ローンは、保有している不動産を担保に入れて融資を受けます。したがって返済が困難になった場合では、担保になっている不動産を売却することによって金融機関は資金を回収することができます。それゆえカードローンなどと比べると審査が緩やかになっていて、不動産評価額の7割前後までは融資をしてくれることがあります。

不動産担保ローン3つのデメリット


借り手のメリットをご紹介しましたが、反面大きなデメリットもあります。諸費用がかかること、審査に時間がかかることのほかに、最大のリスクは住宅を失うことです。特に細心の注意をして計画しなければなりません。

(1)登記費用などの高額な諸費用が掛かる

不動産担保ローンは無担保ローンよりも低金利で借りられるなど多くのメリットがありますが、事務手数料や不動産鑑定費用・司法書士への手数料・抵当権の登記費用など諸費用が多くかかります。無担保カードローンでは利息以外の費用が掛かることはありませんが、不動産担保ローンでは数十万ほどの登記費用が必要になります。さほど大きな金額を借りなかった場合には、総支払費用が無担保カードローンと変わらなかったということもあります。また繰り上げ返済を行う場合には、別途手数料が必要になりますので十分に考慮しておく必要があります。

(2)ローン審査に時間が掛かる

無担保カードローンでは、最短で即日審査・融資をするというノンバンクもあります。しかし不動産担保ローンでは審査に数日を要し、融資までには1週間~1ヶ月程度かかるのが普通です。これは不動産担保ローンでは不動産を担保としてお金を貸し出すため、物件の鑑定や審査を行うのに時間を要するためです。なお金利は借入日の利率が適用されますので、申込日から金利が大きく動く場合もありますので頭に入れておかねばなりません。

(3)返済できなくなった場合は所有している不動産を失う

不動産担保ローンで最も気を付けておかねばならないのは、返済金の滞りです。不動産担保ローンは、土地や建物を担保として抵当権の設定がなされます。それゆえお金を返済することができない場合には、金融機関がその不動産を売却し代金を返済に充当します。自宅を担保にしていた場合には、住むところを失い退去しなければなりません。
担保物件を売却してもローン返済総額に満たない時(担保割れ)には、もう一度銀行にローンを組んでもらい、残金を返済していかねばなりません。最悪の場合には返済することができず、自己破産に追い込まれる場合もありますので、目いっぱい借り入れをせずに間違いの起きないように返済計画をしっかりと立て実行する必要があります。

住宅ローンが残っている不動産、親族の不動産の場合


住宅ローンの残債があるときには融資をしてもらえるのでしょうか。家族・親族の不動産を担保にした場合には、どんな点を注意したらよいのでしょうか。

ローン残債が半分まで減っていれば可能性あり

住宅ローンの支払いが残っている場合には、不動産担保ローン借りられるの?と思う人も多いと思います。住宅ローンの残債があっても、その不動産に担保余力があれば不動産ローンを利用することは可能です。一般的に住宅ローンの残高が購入金額の半分まで減っていれば、第二抵当権を設定し借入れできる可能性があるといわれています。ただし銀行の場合には、第二抵当権は返済が後順位になるところから、不動産担保ローンを借りられない場合もあります。

両親や兄弟の不動産を担保に入れることも可能

自分がもっている不動産では希望する金額を融資されないときには、家族や親族の不動産を担保にお金を借りることができます。融資される家族の範囲は配偶者や親・子供という場合が多いですが、三等親の親族まで融資する金融機関もあります。この場合不動産を担保にする家族・親族の同意をもらい、連帯保証人になってもらわなければなりません。しかし返済が滞った場合には、同意してくれた家族に迷惑をかけることになりますので、返済計画を着実に実行していくという決意と無理のない借入をするが必要があります。

返済計画や親族間のトラブルには十分に注意すること

不動産担保ローンは、先に述べたように家族・親族の不動産を担保に融資してもらうことができます。その為には担保を提供してくれる家族・親族に連帯保証人になってもらわなければなりません。しかし連帯保証人になった以上、お金を借りた本人と同等の責任が要求されます。すなわち融資を受けた債務者本人が返済できなくなった場合には、金融機関から支払いを請求されます。連帯保証人の返済が不可能の場合には、連帯保証人も不動産を失うことになりかねません。そんなことになれば、家族・親族の良好な関係は崩壊してしまうでしょう。無理して借り入れをすることなく家族・親族に連帯保証人を依頼するときには、借入額・返済計画には十分気を付けて利用しましょう。

不動産担保ローンの申込み流れ、必要書類、審査のポイントは?


不動産担保ローンは、初めて借りる人が大半であると思います。それでは次に不動産担保ローンの申し込みの手順・必要な書類・審査でチェックされるポイントについてご説明いたします。

不動産担保ローンの申込みの流れ

金融機関に不動産担保ローンを申し込む場合には次のような手順を踏むことになります。仮申し込みから融資実行には大体1ヶ月程度かかるのが一般的です。

1.相談または仮申し込み

金融機関のウェブページ上のフォーマットから仮申し込みをする方法や、店舗に来店する方法・電話及びファックスにより仮申し込みをするなどの方法があります。その際に担保として差し入れる不動産の概要や希望する金額・予定使途について話をします。金融機関では提供された情報をもとに仮審査を行います。申し込みから仮審査までは早いところで当日、遅くとも数日中に結果の連絡があります。

2.本申し込み

金融機関を訪れ借入申込書に記載し本申し込みをしますが、郵送で申し込みの受付が可能なところもあります。金融機関では申込書をもとに信用情報機関に過去の借入履歴などを確認します。

3.審査

金融機関では融資審査を行いますが、融資が認められれば翌日から1週間ほどで連絡が入ります。

4.契約

必要書類を整え金融機関を訪れ、契約を行います。契約の説明などもあり時間を要する場合もあります。

5.融資

融資が決定すれば指定の金融機関の口座に振り込みがなされます。抵当権の抹消費用などが掛かった場合にはその費用が差し引かれ振り込まれる場合があります。

申込時と融資の実行時に必要な書類は?

申込及び融資の実行時には次の書類が必要になります。
・本人確認書類…運転免許証・パスポート・健康保険証・マイナンバーカードなど
・収入関連書類…源泉徴収票など
・担保関連書類…不動産登記簿謄本・地積測量図・建物図面・固定資産税評価証明書など。
・税金の未納がないことを証明できるもの…納税証明書・固定資産税納付書など
・担保不動産のローン残高を証明するもの

不動産担保ローンの融資審査でチェックされるポイントは?

金融機関が不動産担保ローンを貸し付ける上で、最終的に顧客に貸し倒れのリスクがあるのかないのかということになります。それゆえ審査する基準は担保に入れる不動産にどれほどの価値があるのか、貸し付けた場合に返済できるのかどうかという2点が重要になります。そこで次のような項目を審査することになります。

1.不動産の担保価値

不動産の価値が希望金額より大きいのか否か、売却した場合に十分な回収ができるのかという点について審査を行います。

2.本人の返済能力

不動産担保ローンを貸し付けた場合に、本人に返済能力があるのか、収入に対する借入金額が多くないのかという点について審査を行います。

3.他社の借り入れ状況

既に借り入れているローンが多すぎないのか返済の遅滞を繰り返していないのかという点についてチェックを行います。金融機関は個人向け貸付には個人信用情報で、法人向け貸付には法人信用情報や帝国データバンクで調査を行います。

4.税金の支払い状況

抵当権が上位ランクで設定されても、まずは税金の回収が一番に優先されます。税金の未納や滞納がある場合には、回収できないリスクがあるため支払い状況をチェックします。

5.個人の信用力

・雇用の形態…正社員が最も収入が安定しているとされ、アルバイトは評価が低くなります。
・勤続年数…転職を何度も繰り返している場合には、収入が不安定とみなされます。

不動産担保ローンの種類は?


それでは最後に不動産担保ローンにはどんな種類があるのでしょうか。また各社の不動産担保ローンのどんな点について比較したらよいのでしょうか。

(1)個人向け不動産担保ローン

個人向けの不動産担保ローンは、個人向けに設定されているサービスで事業資金以外であればどのようなものにでも使用できます。海外旅行でも生活費でも使い道は自由です。

(2)事業者向け不動産担保ローン

事業者向けの不動産担保ローンは、法人や個人の経営者を対象とし事業資金に対して使用できます。事業への投資や社員の給与支払い・商品の支払い等事業資金であれば使い道は自由です。

不動産担保ローン比較検討のポイント

どの金融機関の不動産担保ローンを選ぶかは、主に下記の3つのポイントを比較して申し込む必要があります。担保物件で希望する融資金額が借りられれば、なるべく金利の低い金融機関を選べばよいでしょう。限度額いっぱいの借り入れをしたいと希望するときには、金利よりもまず審査が通りやすいことが優先されます。

1.金利が低いこと

金利の低い不動産担保ローンを選べば、利息が少なくて済み総返済額が少なくなります。一般的にノンバンクは、銀行と比べると金利が若干高めに設定されています。

2.融資額が大きいこと

金融機関により同じ不動産を担保にしても、借りられる金額は異なってきます。一般的にノンバンクの方が銀行よりも大きな金額を借りられます。

3.審査が通りやすい

一般的に銀行の不動産担保ローンは審査が厳しく、ノンバンクはやや審査が甘いとされています。審査の時には、正直に適正な回答をすることも大切です。

最後に


以上が不動産担保ローンの説明となります。いかがでしたか?不動産担保ローンは大きな金額を借りられ、使途も自由・おまけに低金利とメリットが多いサービスです。利用しやすい反面、所有する不動産を担保に差し出しますので、支払いが滞れば最悪自宅などの不動産を手放すという大きなリスクあります。不動産担保ローンのメリット・デメリットを十分によく考え、その特徴を生かした使い方をすることが大切です。

監修:大長 伸吉(不動産投資アドバイザー)