不動産の賃貸時や購入時に不動産会社へ仲介手数料を支払わなければならないということは、皆さんご存じのことと思います。しかし「なぜ大金を不動産会社に支払わなければならないの?」「安くできないの?」と思う方は多いのではないでしょうか。

そこで仲介手数料はなぜ必要なのか、相場はどのくらいなのか、仲介手数料を交渉することができるのかといった疑問について解説していきます。仲介手数料の必要性を理解して頂き、納得のいく物件探しをしていただければ幸いです。

仲介手数料って何?賃貸と売買では仲介手数料に違いがあるの?


住宅を購入したりマンションやアパートを借りる時には、不動産会社に仲介手数料を支払います。不動産会社は顧客の希望に合った物件を探し、顧客に物件をご案内、顧客が気に入った場合には契約に必要な書類を揃え手続きを行います。

不動産会社はこのような様々な手続きを買主や借主と一緒に行ってくれますが、仲介手数料とはそのような不動産会社の仕事に対して成果として支払われます。それゆえ不動産会社のお世話になった場合でも契約が成立しなければ、仲介手数料を支払う必要はありません。

仲介手数料は賃貸物件と売買物件とでは、仕組みは異なります。それでは賃貸物件と売買物件の仲介手数料の仕組みや相場などについてご説明していきます。

不動産物件を借りる時の仲介手数料の相場はどのくらい?


マンションやアパートを借りる時の仲介手数料の基準はどうなっているのでしょうか?また仲介手数料がかからない物件はあるのでしょうか。

上限は家賃の1ヶ月

アパートやマンションなどの賃貸物件の仲介手数料の上限は、宅建業法により家賃の1ヶ月+消費税と決められています。ですから8万円の家賃であれば、仲介手数料の上限は86,400円となります。地域により差はありませんが、不動産会社によって異なります。一般的には「0.5ヶ月~1ヶ月分+消費税」という不動産会社が多くなっています。

不動産会社が同一物件の貸主と借主双方の仲介を行う場合もありますが、そのときも上限は変わらず合わせて1ヶ月分となります。
貸主が仲介手数料を支払えば、借主の仲介手数料はその分少なくすることができます。仲介手数料を減額したり無料にすることはできますが、1ヶ月分以上もらうことは法律違反になります。
ただし、遠隔地に住んでいる人の依頼で交通費が掛かったり、特別の活動を行った場合にはこの限りではありません。

仲介手数料0ヶ月物件もある!?

不動産会社によっては、仲介料が無料と宣伝している会社もあります。
しかし往々にして、別途事務手数料がかかったり、部屋の特別な清掃代などという名目で費用を請求される場合がありますので注意をしなければなりません。
仲介手数料が無料と謳っていても、結局は仲介手数料と同じ程度の金額が掛かったり、家賃の1ヶ月分以上かかったという話はよくあります。

大家さんが全額負担で募集している物件もある

物件によっては、貸主が借主の仲介料を負担してくれる場合があります。借主としては、仲介手数料を支払わなくて良いのは嬉しいですね。しかし仲介料がかからない理由が、建物が古かったり、あまり日当たりがよくなかったり、駅から不便なところにあったりと訳ありの場合もあります。
そのようなときには仲介料が無料の理由を聞いて、納得して借りるべきでしょう。

不動産会社の自社所有物件も仲介手数料はかからない

仲介手数料と言うのは、不動産会社が貸主と借主を仲介する仕事にたいして支払われる報酬です。そのため不動産会社が所有管理している自社物件については仲介業務が発生しませんので、仲介料を支払う必要はありません。よい物件であればお得と言うことが言えるでしょう。

不動産を購入時の仲介手数料の相場は?


不動産の売買は大きな金額が動き、それに付随して仲介手数料もばかになりません。それでは売買の仲介手数料は、どのような基準になっていて相場はどの程度なのでしょうか。

不動産売買の仲介手数料は上限が法律で決まっている

賃貸物件と同様に不動産売買においても、不動産会社に支払う仲介手数料は法律で定められています。報酬額は取引金額によって定められ、依頼者の一方からもらえる仲介手数料は下記の一覧表のようになります。
なお不動産売買の仲介手数料は買主、売主、双方の仲介業務をした場合には、双方からそれぞれ上限までの仲介手数料をもらうことができます。ここが賃貸の仲介手数料との違いです

 
取引金額区分 報酬額
売買金額が200万円以下 売買金額の5%+消費税 以内
売買金額が200万円超400万円以下 売買金額の4%+消費税 以内
売買金額が400万円超 売買金額の3%+消費税 以内

不動産売買時の仲介手数料を計算してみる

不動産売買の場合の仲介手数料は、売買金額に応じてそれぞれ報酬額を算出し、それに消費税を加えなければなりません。
例えば2,000万円の物件についての税額を含む仲介手数料は次のようになります。

取引金額区分 区分別取引額 消費税込仲介料率 仲介手数料(税込)
200万円以下 200万円 5.4% 108,000円
200万円超400万円以下 200万円 4.32% 86,400円
400万円超 1,600万円 3.24% 518,400円
合計 2,000万円   … 712,800円

なお売買金額が400万円超の場合には、次の式で簡単に求められます。

(売買金額×3%+6万円)+消費税=仲介手数料

前述の2,000万円の売買金額の例に当てはめると、次のようになります

(2,000万円×3%+6万円)+52,800円=712,800円

 

多くの不動産屋では仲介手数料を上限まで設定

大多数の不動産会社は仲介手数料を上限額まで設定していますが、これは顧客を案内したり、広告を掲載したり、書類を揃えたりする費用がかかるためです。また会社を経営し維持していくためには、様々な経費がかかりますので仲介手数料はこのような費用の原資となります

最近は仲介手数料を値引きする会社も

近年は仲介手数料を減額する会社もあります。例えば競争の激しい都会にある物件や、売り手と買い手双方から手数料をもらえる(これを不動産の用語で両手と言う)場合などが挙げられます。
近年はインターネット主体の業務をしている不動産会社では、経費が掛からない分仲介手数料を減額してくれたり、売主からは仲介手数料を取らない会社もあります。

不動産屋所有の自社物件は仲介手数料がかからない

不動産会社が所有している物件を売る場合や、売り主から直接不動産を買取する場合には、仲介手数料は発生しません。これは仲介業務がないと言うことで支払う必要がないわけですが、仲介手数料を支払わないことは大きなメリットになりますね。

不動産を借りる時、仲介手数料の交渉はできる?



不動産賃貸の仲介手数料は場合によっては、値引き交渉することも可能です。しかしあまり値引きにこだわっていると希望していた物件が埋まってしまったり、安くなったと喜んだら他の名目で別の費用がかかっていたということがないようにしましょう。

入居者が集まらない閑散期は値引き交渉も可能

3月半ば頃から4月半ばごろまでは引越シーズンであり、賃貸物件が最も動きがあるときです。しかし忙しいシーズンが終わり、5月のゴールデンウィーク終了後から8月にかけては閑散期です。不動産会社もじっくりと話を聞いてくれ、家賃のみならず仲介手数料も値引きしてくれる可能性があります。

仲介手数料がかかっても、フリーレント物件お方がオトクな時も

リーレントとは入居してからしばらくの間、家賃を無料にしてくれる契約方式のことを言います。期間的には1ヶ月から3ヶ月程度家賃を無料にしてくれる場合が多いです。フリーレントは仲介手数料の値引き交渉と同様、閑散期(早く空き部屋を埋めたいと考える時期)交渉すると勝ち取れる場合があります。
近年はインターネット上の賃貸物件検索サイトを利用して検索するとフリーレントの部屋がヒットする場合もあります。

値引き交渉をしている間に気に入った部屋が埋まってしまうリスクも

仲介手数料を安くしたいがためにあまり長く値引き交渉をすると、入居したいと考えていた部屋が埋まってしまう可能性もあります。特に人が多く動く3月から4月にかけては良い空き部屋はどんどん埋まってしまいます。値引きばかり考えて住みたい部屋がなくなったということがないようにしましょうね。

仲介手数料が安くても鍵交換費や清掃代が掛かることも

もうひとつ注意しなければならないのは、仲介手数料は安くしてくれたけれど、他の費用がかかってしまう場合があることです。部屋の清掃代や虫の駆除料金、新しい鍵の交換料金などの費用として別途請求される場合もあります。
仲介手数料は値引きしてもらったけれど、他の料金がかかり結果高くなってしまったということがないようにしましょう。

物件探しは2年間住んだ時の総合的なコストで決める

仲介手数料は、不動産会社に支払うものですので、値引き交渉は比較的しやすいと言えます。しかし仲介手数料を極端に値切ることは不動産会社の利益を減らすことになりますので、担当者のやる気を低下させてしまうかもしれません。
仲介手数料だけでなく、敷金や礼金・賃料の発生時期など交渉次第で低減できる余地のある費用は多くあります。2年間の総合的なコストを考えて決めるようにしましょう。

不動産購入時、仲介手数料の交渉はできる?


不動産売買の場合には仲介手数料も大きな金額になります。値引き交渉が可能な物件もありますが、仲介手数料は不動産会社経営の大きな原資となります。限度をわきまえて交渉するようにしましょう。

都内のマンションなど、高額な物件は交渉しやすい

都内のマンションは、郊外のマンションと比べると物件の価格は高額です。しかし安い物件でも高い物件でも仲介にかかる費用や手間は一緒であり、仲介会社にとっては高額マンションを売却して得られるの利益額は大きいといえます。それゆえ高額なマンションの場合には仲介手数料の値引きの余地があるといえます。

早急に売りたい物件も交渉可能

不動産会社が早急に売りたいという物件は、売主の事情や不動産会社の決算、閑散期などそれなりの理由があります。その理由を確認し許容範囲の問題であれば、不動産会社に交渉し仲介料を安くしてもらうことも良いでしょう。
一般的に売り出して間もない物件は、不動産会社は売却に自信があり価格や仲介料手数料を減額することは難しいと言えます。しかし売り出し期間が長引いている物件は、売り主や不動産会社も早く売りたいと考えていますので、値引きに応じてくれるチャンスがあります。

仲介手数料は不動産屋の収入源。削減すると売却活動に支障が出るケースも

不動産会社の仲介手数料は、会社の経営を維持していくための大切な原資です。この仲介手数料により広告などの物件の売却活動費や交通費、事務所の運営費用、人件費などが賄われます。従いまして極端な仲介料の値引き交渉は、不動産会社や担当者のモチベーションが下がるだけでなく、実際の売買に悪影響を与えますので注意しなければなりません。

最後に

いかがでしたか?不動産取引は大金が動き、それに付随して仲介手数料も大きく掛かることになります。
不動産を売買する際は、ただでさえお金がかかるので、仲介手数料はなるべく安くしたいと誰でも思うことでしょう。

しかし今までご紹介してきたように、仲介手数料は不動産会社にとって経営を維持する大切な収入源であることを頭に入れておかなければなりません。
不動産会社の仲介が両手であったり、訳ありの物件などの仲介手数料を値引き交渉を行って良い場合も多くあります。値引き交渉の限度をわきまえ交渉し、入居して良かったと思える物件に巡りあってくださいね。