「金利」という言葉を聞いたことがない人はいないと思います。しかし、「金利」を正しく理解している人は以外と少ないのではないでしょうか。資産運用を考える際に欠かすことのできないのが金利の知識です。なぜなら金利の知識がなければ自分の資産が将来どれだけ増えるのかという計算ができなかったり、銀行から住宅ローンを借りるときに将来どれだけの支払いがあるかを計算することができないからです。ここでは金利の基礎知識から、様々な金利の種類についてご紹介し、最後に住宅ローン金利についても解説していきます。

そもそも金利とは?

では金利の概念から見ていきましょう。金利を理解するためには基礎をしっかり理解することが重要です。

お金を貸す時(預ける時)に貰える

私たちは銀行に預金をすると、預金に対する金利分の利子が貰えます。当たり前のようですが、これはなぜでしょうか。それは銀行に預金をするということは、銀行に対してお金を貸しているということだからです。

お金を貸しているのだから、その対価を貰えるはずで、この「対価」が「金利」になります。つまり金利とは、お金の貸し手が借り手に要求することができる対価(=料金)の割合なのです。

お金を借りる時にかかる

預金の場合、私たちがお金の貸し手であり、銀行が借り手でした。では、貸し手と借り手が逆になった場合はどうでしょうか。

たとえば住宅ローンの場合、私たちが住宅を建てるために銀行からお金を借ります。つまり、私たちがお金の借り手であり、銀行が貸し手となりますが、その際に私たちが銀行の要求する金利分の利息(=対価)を支払わなければいけません。このように金利はお金を借りるときには費用としてかかるのです。

金利の計算

(1)金利

ここでは金利の計算の仕方を簡単に見ていきましょう。金利はふつう1年を単位として「%」で表されます。たとえば3%の預金金利で100万円を預けたとしましょう(本当は預金金利は3%よりもかなり低いのですが、ここでは簡単にするために3%とします)。

このとき1年で貰える額は、

元本(100万円) × 金利(3%=0.03) = 利子(3万円)

となります。この貰える3万円のことを「利息」ないし「利子」といいます。(※ここでは利子にかかる税金は考えないものとします)。では預けた期間が1年を超える場合はどうでしょうか。これには単利」複利」という2通りの考え方があります。

(2)単利

まず「単利」は1年間で払われた利子を翌年利子をもらうための原資にしないという考え方です。お金を預けている期間が2年間だとしましょう。そのときの利子の合計は、

元本(100万円) × 金利(3%=0.03) × 期間(2年) = 利子の合計(6万円)

となります。単利の計算は分かり易いと思います。

(3)複利

一方、「複利」は1年間で払われた利子を翌年の原資に乗せて利息をもらう考え方です。この場合、100万円の元本に対して利子が貰えるだけでなく、預金に残した利子に対しても利子が貰えることになります。単利と同じように預けている期間が2年間だとしましょう。そのときの利子の合計は、

1年目:元本(100万円)× 金利(3%=0.03)= 1年目の利子(3万円)

2年目:[元本(100万円)+ 1年目の利子(3万円)]× 金利(3%=0.03)= 2年目の利子(3.09万円)

1年目の利子(3万円)+ 2年目の利子(3.09万円)= 利子の合計(6.09万円)

となります。このとき複利の利子の合計(6.09万円)が単利の利子の合計(6万円)より利子(0.09万円=900円)だけ多いことが分かると思います。これは1年目で受け取った利子に追加で利子が付くからです。

金利の種類


金利は切り分け方によって様々な違いがあります。

(1)固定金利と変動金利

金利は固定金利と変動金利に分けることができます。

*固定金利とは

定められた期間において適用金利が固定された(変わらない)金利です。身近な例では定期預金が該当します。固定金利は市場金利が変わっても影響を受けませんので、安定した収入が見込めます。その一方で仮に市場金利が上昇したとしても、その恩恵を受けることはできません。

*変動金利とは

適用金利が一定期間で変更される金利です。変更されるときに参考にされるのが市場金利です。変動金利の身近な例は普通預金になります。変動金利は市場金利に影響されますので、市場金利が上昇すれば適用金利も上昇しますし、逆に市場金利が下落すれば適用金利も下落します。

*固定金利と変動金利はどちらがいいの?

では固定金利と変動金利のどちらを選択した方がいいのかというと、これは個人の市場金利の予想によって変わります。資産運用を考えた場合、もし将来において市場金利が上昇すると予想するならば変動金利を選んだ方がメリットがあり、下落すると予想するならば固定金利を選んだ方がよいでしょう。そして、そもそも「将来の予想をするのが嫌だ、そのようなリスクを取りたくない」と言うのならば、固定金利を選んだ方がよいでしょう。

(2)名目金利とインフレ率で分かる実質金利

*名目金利が一般的に言われる「金利」

また金利には「名目金利」「実質金利」という分け方があります。普段私たちが見ている金利のことを「名目金利」といいます。「名目」と付いていますが、これは次に説明する「実質金利」に対しての言葉なので、あまり深く考える必要はありません。

一方で名目金利からインフレ率を差し引いたものを「実質金利」といいます。式にすると、

実質金利 = 名目金利 - インフレ率

となります。

*インフレ率とは物価上昇率のこと

実質金利を理解するためにまず「インフレ率」を理解する必要があります。インフレ率とは物価上昇率のことです。たとえば世の中にリンゴしか商品がない(リンゴ経済)としましょう(極端ですが想像してみてください)。ある時リンゴの値段が100円だとして、その1年後にリンゴの値段が103円になったとします。リンゴの値段が3%上昇したのですから、インフレ率3%ということになります。実際はリンゴではなく様々な商品の物価指数を使用します。

*実質金利とは名目金利からインフレ率の影響を取り除く

では、なぜ実質金利は名目金利からインフレ率を差し引くのでしょうか。リンゴ経済の例に戻ります。仮に1年後にリンゴを買おうとしている人がいたとします。その人の資金は100円です。現在リンゴ1個を買ってしまうと、リンゴの値段は100円なので資金が0円になってしまいます。

しかし、この人はリンゴを買うのは1年後なので預金して資金を増やそうと考えました。資金100円を金利3%で預金したとしましょう。1年後の資金は103円になっています。そのお金でリンゴを買うのですが、リンゴの値段もインフレ率3%で103円になっています。これではわざわざ預金をしたのに、結局リンゴ1個を買って資金は0円です。

預金金利が7%だった場合はどうでしょうか。1年後の資金は107円です。これで103円のリンゴを買うのですから、資金が4円残ります。

このように名目金利(上記では預金金利)がどんな値でもインフレ率が高ければ、実質的にお金が増えたとは言えません。ですから名目金利からインフレ率の影響を取り除き、実質的にどれだけお金を増えるのかを見なければいけないのです。これを実質金利といいます。

リンゴ経済で計算すると、

実質金利(0%)= 名目金利(3%)-インフレ率(3%)

実質金利(4%)= 名目金利(7%)-インフレ率(3%)

となります。

*マイナス金利は日銀と金融機関の間の金利

ここで最近の話題にも触れておきたいと思います。2016年2月に日本銀行は日本銀行の口座(日本銀行当座預金)に「マイナス金利」を導入しました。

「金利をマイナスにする」とはどういうことでしょうか。ふつう金利は借り手が貸し手に支払うものです。その値を「マイナスにする」ということは、関係が逆になります。つまり、貸し手が借り手に金利を支払うことになるのです。ただし、マイナス金利は日本銀行と金融機関との話なので、私たちの預金が急にマイナス金利になることはないです。

*なぜ日銀はマイナス金利をはじめたのか

なぜ日本銀行はマイナス金利を始めたのでしょうか。通常、民間の銀行が日銀の口座に預けている資金には日銀から利息が支払われますが、マイナス金利になると逆に預けているだけで民間銀行は日本銀行に利息を支払わなければいけなくなります。そのため預金にしておくより貸出をした方がよいとして、間接的に企業が資金調達をしやすい環境をつくり、景気を刺激しようという狙いです。企業が資金を借りるとき金利はコストになりますので、できるだけ金利が低いことが望まれます。

もう一度、実質金利の式を見てみましょう。

実質金利 = 名目金利 - インフレ率

仮に名目金利を0%まで下げたとしましょう(実際に日本はこのような状態でした)。しかし、インフレ率がマイナス1%ならば実質金利が1%になるのです。しかし、マイナス金利を導入した場合はどうでしょうか。仮に名目金利をマイナス1%にしたとします。インフレ率がマイナス1%ですから、実質金利は0%になります。マイナス金利導入以前より実質金利が下がったことが分かると思います。

さてマイナス金利が私たちの生活に及ぼす影響なのですが、市中銀行と日本銀行の間で決められる金利は、日本のすべて金利の基準になる金利です。ですから、預金金利、住宅ローン、不動産投資ローンの金利はマイナス金利にならないとしても、かなり低い値まで下がっています。

(3)短期金利と長期金利

短期金利と長期金利はどれくらいの期間で分けるかがポイントになります。通常は1年を基準として、1年以内の金利を短期金利、1年を超える金利を長期金利とします。ちなみに短期金利でも長期金利でも年率で表されます。たとえば3ヶ月の金利だとしても1年の金利に換算されますし、10年の金利でも1年に換算されます。

短期金利と長期金利にわざわざ分けるのは、それぞれに基準とする金融商品や金融取引があるからです。たとえば短期金利は普通預金の金利の基準となりますし、長期金利は10年固定やフラット35等の比較的長期間金利を固定する融資商品の基準となります。

もちろん短期金利と長期金利はお互いに関係しています。一般的に短期金利が上がれば、長期金利も上がります(逆は逆)。ただし短期金利と長期金利が同じ値になるわけではありません。長期金利は将来の予想を反映しますので、将来において金利が上昇すると予想されればそれを先取りして短期金利より長期金利が先に上昇します(逆は逆)。

住宅ローン金利には3つの金利タイプがある



最後に、日々の生活になじみのある住宅ローン金利についてみていきましょう。住宅ローンには3つの金利タイプがあります。実際に借入をする際に参考にするのはどの金利なのでしょうか。

変動金利型

変動金利型とは適用金利が市場金利の変動に伴い定期的に変動するタイプの住宅ローン金利です。原則的に半年に1度見直しが行われます。また、金利が変動していた場合5年ごとに返済額の見直しが行われます。

*変動金利型のメリット

・市場金利が低くなれば住宅ローンの支払いが少なくなります。
・住宅ローンの設定金利が長期固定の設定金利より低い

*変動金利型のデメリット

・市場金利が上昇すると住宅ローンの支払いが多くなります。
・将来の返済額が確定しないので不安が残ります。

固定金利特約型

返済期間中の一定期間は固定金利が適用され、その後は改めて変動金利型か固定金利特約型を選択するタイプの住宅ローンです。

*固定金利特約型のメリット

・固定金利の適用期間は市場金利が上昇しても返済額が増加することがないです。一方、変動金利の適用期間には、市場金利が低下すると返済額が減少します。

*固定金利特約型のデメリット

・固定金利の適用期間は、市場金利が低下してもその恩恵を受けることができない。一方、変動金利の適用期間には、市場金利が上昇すると返済額が増えることになる。
・特約期間終了後に金利が上昇していたら高い金利設定でローンの支払いをしなければならなくなる

長期固定金利型(全期間固定金利型)

住宅ローン申込時に全期間の適用金利が決まるタイプの住宅ローン金利です。一般的なものにフラット35があります。

*長期固定金利型(全期間固定金利型)のメリット

・全期間の適用金利が決まっているので、返済計画が立てやすいです。
・市場金利が低いときに申し込むと、市場金利が高くなったとしても返済額が変わることがありません。

*長期固定金利型(全期間固定金利型)のデメリット

・市場金利が高いときに申し込むと、市場金利が低くなったとしてもその恩恵を受けることができません。
・変動金利より金利が高い

住宅ローン金利の仕組み


住宅ローン金利を理解するポイントは店頭金利と適用金利の違いをしっかり理解することです。

店頭金利と適用金利とは

「店頭金利」とは市場金利を反映して決まる住宅ローン金利のことです。店頭金利はいわばメーカーの設定する定価のようなものです。定価はあくまで参考にされるもので、交渉によって価格が低くなることがあります。同じように住宅ローン金利も店頭金利から交渉によって下がる余地があります。また店頭金利は基準金利といわれることもあります。

「適用金利」とは店頭金利から下げられた住宅ローン金利のことです。実際の住宅ローンの返済は適用金利の値で返済しなければいけません。ですので、住宅ローンを組む際は店頭金利を参考にして、適用金利がどれくらいになるかを考えなければいけません。また適用金利は店頭金利から優遇された値ということで優遇金利といわれることがあります。

先に説明した3つのタイプの住宅ローン金利と混同されるかもしれませんが、3つのタイプの住宅ローン金利にそれぞれ店頭金利と適用金利があるということです。

金利引き下げ幅とは

店頭金利を下げることができるということは、次に重要になるのはどれだけ下げることができるかということです。この「どれだけ下げることができるか」を「金利引き下げ幅」といいます。

金利引き下げ幅は、住宅ローンを利用する人によって異なります。その際に参考にされるのは、たとえば自己資金の額であったり勤務先が公務員や大企業だったりといった信用情報です。また、借入先の金融機関で新しく給与口座を開設したりクレジットカードを新規に申し込んだりすると金利引き下げ幅が拡大しやすいです。

当初特約期間終了後の金利引き下げ幅とは

金利の3つのタイプの1つに「固定金利特約型」がありました。これは最初の一定期間(当初特約期間)だけ固定金利が適用され、その後(当初特約期間終了後)は変動金利が適用されるか固定金利の見直しが行われるものです。つまり、異なった適用金利があるわけです。

ここで注意して頂きたいことがあります。それは固定金利特約型の中に当初特約期間だけ金利引き下げ幅が大きくて、当初特約期間終了後の金利引き下げ幅を小さく設定してあるものがあるということです。当初特約期間の金利引き下げ幅だけを確認するのではなく、当初特約期間終了後の金利引き下げ幅もしっかり確認しましょう。

最後に


ここまで金利についてご紹介してきました。金利とはお金の貸し手が借り手に要求することができる対価(=料金)の割合であり、単利と複利という異なる計算方法があることをご説明しました。その後、変動金利と固定金利、名目金利と実質金利、短期金利と長期金利という異なる切り口があることをご説明しました。

住宅ローン金利に関しては、変動金利型、固定金利特約型、全期間固定金利型の3つのタイプをご紹介しました。それぞれに店頭金利と適用金利があり、店頭金利を参考にして適用金利が決められること、また金利引き下げ幅が重要であることをご紹介しました。

私たちの生活に深い関わりのある金利についてお分かりいただけましたでしょうか。少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。

 

監修:田中 佑輝(AFP、シニア・ライフ・コンサルタント(SLC))