資産運用に興味を持った方がまず勉強するのは株式や債券、または投資信託などです。資産運用の手段の一つに不動産投資がありますが、不動産投資は金額が高すぎるということで諦めてしまう人が多いのではないでしょうか。しかし、不動産投資の一つに「REIT(リート)」という仕組みがあり、間接的に小額から不動産に投資することができるのです。ここではREITの仕組みやメリットとデメリットをご紹介していきます。

 

J-REIT(J-リート)とは


「J-REIT(J-リート)」とは日本版の不動産投資信託のことで、複数の投資家から集めた資金で複数の不動産に投資する仕組みのことです。その際、どこの不動産に投資するかといった具体的な運用は不動産の専門家に委託することになります。投資家は不動産による賃料収入や不動産の売却収入から不動産の必要経費や委託手数料などを差し引いた後の利益を得ることができます。
もともとREITはアメリカで生まれた仕組みでReal Estate Investment Trustの略です。その日本版ということでJapanの頭文字であるJが付けられています。

J-REIT(J-リート)の仕組み


ではJ-REITの仕組みを詳しく見ていきたいと思います。J-REITの仕組みは、投資法人、運用会社、資産保管会社、受託会社という4つの会社によって成り立っています。

投資法人はなにをするの?

投資法人はJ-REITという仕組みを作っている会社です。具体的には、まず投資証券を発行して投資家から資金を集めます。投資家はこの投資証券を買うことでJ-REITに投資したことになります。投資法人は集まった資金を使って不動産で運用を行い、その利益を投資家に分配します。

このようにJ-REITの仕組みを作る投資法人ですが、実は法律によって運用などの実質的な業務を行うことが禁止されています。そこで実質的な業務を運用会社、資産管理会社、受託会社に委託することになります。

運用会社はなにをするの?

運用会社はどの不動産に投資するかを決定し、その不動産をどういった条件で賃貸するかという戦略を決定します。また複数の不動産に投資することから、それらの不動産を全体として見たときに(これを不動産ポートフォリオと言います)どれだけのリスクがあるのかを計測し、適切に管理していきます。

資産保管会社はなにをするの?

資産保管会社は投資家から集めた資金を管理し、また投資先の不動産の管理をします。投資法人が投資証券を発行して集めた資金を資産保管会社が管理し、運用会社が決めた運用方法に従って不動産を購入または売却します。主に信託銀行に委託されます。

受託会社はなにをするの?

受託会社は投資法人に関わる一般事務をします。たとえば投資法人の決算書を作成する業務、不動産投資の会計帳簿を作成する業務、納税に関する業務などです。また投資法人は会社ですから、役員会を運営する業務や投資主総会(株式会社でいうところの株主総会)を運営する業務もあります。

J-REIT(J-リート)の流動性

市場に上場し、流動性を担保する

流動性とは投資対象(ここではJ-REITのこと)の買いやすさや売りやすさを表す言葉です。この流動性が低いと買いたいときに買えない、または売りたいときに売れないということになります。

個人の不動産投資ではこの流動性が大きな問題になります。なぜなら不動産投資は基本的に相対取引(取引内容を1対1の話し合いで決める取引)だからです。ですから、いくら買いたい不動産があったとしても、実際に買うまで時間がかかります。または不動産を売りたいと思っても、まず買い手を探すところから始めなければいけません。

一方でJ-REITは流動性がとても高いです。つまり、好きなタイミングで売買することができるのです。これはJ-REITへの投資が不動産に直接投資しているのではなく、投資法人の発行する投資証券への投資だからです。そして、この投資証券は株式市場に上場されているため、流動性が担保されている(株式と同じように売買できる)のです。

REIT特有のクローズファンド型を用いている

J-REITが上場することで流動性を担保していることを先に説明しました。しかし、そのことで不動産そのものの流動性が確保されたわけではありません。依然として不動産の流動性は低いです。そのため投資法人は急な解約などによる返金に対処できません。

こうした事態を避けるために、J-REITは基本的に中途解約に応じないクローズファンド型を用いています。その代わりに株式市場に上場して流動性を確保するということです。

J-REITのメリットとは?


少額で始められる

まず何といってもJ-REITのメリットは少額で始められることです。普通、不動産を購入するためには何千万単位の資金が必要になります。一方でJ-REITは多数の投資家から資金を集めて不動産を購入するため、一人あたり10万円程度から始めることができます。

プロが運用してくれる

J-REITは不動産投資のプロに運用を任せるため、個人で不動産投資をするよりも手間がかかりません。

個人で不動産投資をする場合を考えてみます。まず1から不動産投資のことを勉強しなければいけません。さらに多数の不動産の中から自分の投資する不動産を選び出し、自ら不動産売買の交渉を行います。そして、不動産を購入することができた後でも不動産の維持管理や納税といった様々なことをしなければいけません。

J-REITに投資すれば、こうした手間をかけずに不動産投資をはじめることができます。

換金性が高い

J-REITは株式市場に上場されているため流動性がとても高いです。流動性とは売買のし易さですから、これは同時に換金性がとても高いことを意味しています。個人の不動産投資とは違い、急な出費などで資金が必要なときにも対処することができます。

1つに限らず複数の不動産に投資ができる

J-REITによって集まった資金は複数の不動産に投資されます。そのためJ-REITに投資するだけで1つに限らず複数の不動産に投資ができることになるのです。

複数の不動産に投資するというのは、とても重要なことなのです。なぜなら複数の不動産に投資していれば、何かの不運でその中の1つの不動産の賃貸収入が無かった場合でも、収入が全くないという事態は避けることができるからです。

このように出来るだけ資産を分散させて安定した収入を得る方法を分散投資といいます。J-REITは分散投資の方法を少額で提供してくれます。

安定した配当が期待できる

もとも不動産の賃貸収入は比較的安定しているのですが、その上さらにJ-REITは分散投資をしているので安定した配当が期待できます。

J-REITのデメリットとは?

倒産のリスク

J-REITに投資するということは、J-REITを作っている投資法人に資金を預けるということです。投資法人は会社なので、当然に倒産するリスクがあります。もし不動産の賃貸収入が安定的でも投資法人が倒産するようなことがあれば、J-REITの価格が著しく下落するということも考えられます。

金利が変動してしまう

投資法人は投資家から資金を集めるだけでなく、金融機関の借入によって資金調達をすることがあります。そのため金利の上昇は投資法人の借入コストを上昇させますから、そのことで分配金が少なくなることや、J-REITの価格が下落することがあります。

災害に弱い

J-REITは間接的な不動産投資と言えるので、不動産投資と同じように不動産を毀損するような災害に弱いです。ただし、J-REITの投資する不動産は耐震性や強度において一定基準を満たした不動産であり、災害によるリスクを軽減・抑制するように努力されています。

最後に

J-REITについて、その仕組みとメリットやデメリットについてご紹介してきましたがいかがでしたか?ここでは、基礎知識についてご紹介してきましたが、実際に取引を行うのであれば、さらに多くの知識が必要になります。今回の基礎知識を第一歩に、皆様のJ-REIT投資ライフに繋がれば幸いです。

 

監修:大長 伸吉(不動産投資アドバイザー)